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Blue Rose

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第一話 植物園でその五

「繊細でね」
「そうかな」
「ええ、この味付けは」
 優子は自分とは違う顔立ちの弟を見つつ言う。優花が少女そのものと言っていい顔立ちなのに対して彼女は細面で切れ長の黒い瞳を持ち眉は細く見事なカーブを描いている。鼻は高く紅の唇は細く引き締まっている。髪は黒のロングヘアですらりとした体型は胸がはっきりと出ていてモデルの様だ。膝までのスカートやズボンの上に白衣が似合うと勤務している大学病院でも評判だ。
 その彼を見つつだ、こう言うのだ。
「女の子の味付けね」
「姉さんもそう言うの?」
「だって男の子の味付けはもっと濃いわ」
 そうだというのだ。
「こう言ったら何だけれど姉さんの彼氏のね」
「何とかって人だよね」
「何とかじゃないけれど彼も料理好きだけれど」
 その彼の料理はというと。
「もっと濃くてはっきりした味よ」
「そうなんだ」
「優花の味付けも前はそうだったし」
 それにというのだ。
「それが変わったわ」
「女の子の味付けに」
「そちらにね」
「そんなつもりはないけれど」
 味を変えた、その自覚はなかった。優花には。
「どうしてかな」
「作っている間に味見するわね」
「うん、それはね」
「その時に自分の舌に合った味付けにするからよ」
「だからなんだ」
「つまり優花の舌が変わったの」
 彼のそこがというのだ。
「だからなのよ」
「ううん、舌が」
「好みは変わるのよ」
「食べるものにしても」
「そう、だからだと思うわ」
「そうなんだね」
「だからよ、けれどね」
 それでもとだ、優子はその優花が作ったホワイトシチューに鳥肉をオリーブオイルで焼いてスパイスで味付けをしたものにポテトサラダを食べつつ言った。
「優花は何かね」
「何かって?」
「可愛くなったわね」
「可愛くって」
「女の子みたいにね」
「姉さんもそう言うの?」
 姉の言葉にだ、優花は眉を顰めさせて返した。
「僕が女の子みたいって」
「あっ、気にしてるの?」
「最近学校でもよく言われるから」
「そうなのね、学校でもなの」
「それで姉さんもなんだ」
「何かね」 
 それこそとだ、また言う優子だった。
「あなたが気にしているのなら悪いけれど」
「僕女の子みたいなんだ」
「私の気のせいかしら」
 優子もこう言う、だがそれは前置きだった。
「優花女の子みたいに可愛くなってきてるわ」
「そんな筈ないけれど」
「ええ、普通はないの」 
 優子は医師として答えた。
「人は成長すると次第にその性別の特徴が出るから」
「徐々にだよね」
「精神はともかくとしてね」
 肉体のそれはというのだ。
「変わっていくのよ」
「男の子の体型に、だよね」
「優花はね」
「いつもそう聞くけれど」
「女の子は女の子らしくね」 
 lこうも言うのだった。
「なっていくけれど」
「僕の場合は」
「それが遅れているか」
 医師として考えつつだ、優子は優花に言っていった。その繊細な味付けの料理を口にしつつ。
「優花にはそもそも少ないか」
「男性ホルモンが」
「そうかも、確かに優花は男性ホルモンはね」
「少ないよね」
「ええ、お顔や体型を見てもね」
「そうなんだ」
「けれどそれでも」
 優花に男性ホルモンが少なくとも、というのだ。 
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