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SAO二次:コラボ―Non-standard arm's(規格外の武器達)―

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chapter3:Take the first step(最初の一歩を踏み出せ)

 
 
 疎らに気が生え、背の低い青々とした雑草の生い茂っている草原エリア。


 beginner's area(素人の為の戦場)と言われるだけあって、湧出するモンスターのレベル自体は低い。
 だから初心者プレイヤーがまばらに見え、武器を手に走りまわっている筈だ。

 ……そう、本来ならばその筈なのだが……ここはALOでもなければ、同じ外国製でも毛色の違うGGOでもない、奇妙な武器と、魔法の織り成す『Non-standard arm's』の中。
 動画のお陰で少しばかり知名度が上がったとはいえ度、やはり相対的に見れば余り知られていないも同義なソフトである。

 その所為なのかそれともログインしているプレイヤーが少ないか、キリト達を除いても十数人ほどが遠くに確認出来るぐらいで、人気が少ないにも程があった。
 何処か寂しいという感情がぬぐえないのは仕方ない事だが……同時にプレイヤー間でのリソ-スの奪い合いをしなくても良く、Pkを警戒しなくても良いという、決定的なメリットが存在しているのも確かである。

 限られた資源の取り合いもMMOの要素の一つであり、デメリットやペナルティがあるとはいえPvPやPkとて頑なに禁じられている訳ではないのだから。


 だからこそキリト達は広々としたフィールドを駆け巡り、横取りも迷惑も気にせず、『Non-standard arm's(この世界)』で初めての武器(あいぼう)を手にとって、臆する事無くモンスター目掛け突貫して行った。





「うぐっ……こいつ!」
「一旦下がらないと……!」

[ギィィィッ!! ……ウギッ!?]

「ナイス援護だ、シノン!」
「当然よ」


 ―――しかしフィールドに脚を踏み入れ初っ端に遭遇した、オオカミの頭と猿の身体を持つモンスター相手に、意外や意外それなりの苦戦を強いられていた。


 意外と背高でひょうきんな動きをする上に、如何やらレアエネミーで且つ一匹で現れた所為なのか、攻撃力は低くても体力がそこそこ多く、初心者レベルの武器を持つ彼らでは中々撃破までに至らない。

 そこでキリトはウェイを捨てた “ヒット&ヒット” で突撃し続け、体力が減ったと見るや形振り構わず強攻撃を叩き付け、待機していたリーファに鋭い声を掛ける。


「リーファ! スイッチ!」
「OK!!」


 コレはALOでも使われている『スイッチ』というモノで、強引にブレイクポイントを作って味方が割り込む、若しくは割り込ませる事により、今まで攻撃に当たっていた人物と交代するテクニックだ。


[ギイイィィィ!!]

「あ……キリト君危ないっ!」
「へっ? うぉあぁっ!?」


 しかし……狼頭の猿は一声唸ると、割り込んで目の前にいるリーファには目もくれず、思い切り突進して更にキリトへダイブ。
 油断しきっていたキリトに避けるすべなど無く、防御こそ出来たが転がされてしまった。



[キイイイアアアァァ!!]

「やべっ……」


 何の恨みがあるのかしつこくキリトへ詰め寄って来る狼頭の猿へ、己が受け持つとシリカは短剣を構えて……しかしこのままでは距離が足らないと判断する。


「キリトさんっ……ハアッ!!」


 だが敢えてシリカは更に地を蹴った。
 そして今こそ変形機能の進化だとばかりに、得物を『両手槍』に変化させ果敢にも跳び込んでいく。


 ―――――否、


「あっ―――にゃああぁぁぁあああ!?」
「ちょっ、シリカ!?」


 跳び込んで “行こう” とした矢先、どうも変形時の向きが悪かったか地面にガッツリ引っ掛かり、宛ら棒高跳びの如くキリト等を飛び越してしまった。

 オマケに本人が意図したものではないので制御も聞かず、大の字で横にクルクル回りながら地面に激突。
 当然、受け身なども取れない。


[ギキキィィ――――]
「やらせない!」
「っ!」
[―――ギィイイァッ!?]


 リーファの剣から放たれた風の刃により音を立てながら数撃打たれてガラ空きになった頭部目掛け、少々離れた位置でスナイパーライフルを構えたシノンが間一髪の所で銃撃。


「おととっ……!」


 敵が仰向けに倒れた隙を逃さず、キリトは何とか転がって離脱……事無きを得た。


「……何やってるのよ……? あんた達は」


 彼女の元には追加で買っていたのか、狙撃用の簡単な台座を受け持つ、一部がへっ込んだ四角いブロックが置かれている。
 そこからは動かず、シノンは呆れ声で告げた。


「いや、仕方ないだろ。まさか “スイッチ” が機能しないなんて思わなかったんだ」
憎悪値(ヘイト)の仕様、やっぱり違うのかな……」


 与えられたダメージの総量によって、モンスターが狙い定めるプレイヤーが変更される事など、MMOプレイヤーにとっては当たり前に持っている知識だ。

 けれどもリーファはALOしかプレイした事が無く、キリトやシリカが今までダイブしたゲームも“スイッチ”の使える物ばかり。
 例外はGGOに長らくログインしていたシノンだが……銃での戦闘が主になる以上、そもそも“スイッチ”という手段自体、ALOへログインするまではホトホト知る由もなかっただろう。


 これらの事に鑑みれば、今しがた起きたアクシデントは、もしかすると起こるべくして起きた失態かもしれない。

 ……棒高跳びを披露したシリカという例外こそいるが。


「ツいてないな。よりによって、一番最初のモンスターがレアMobなんてな」
「本来なら喜ぶべきものだけど……まあ、運が悪いわねこの状況は」
「うぅ、酷い目に逢いましたぁ~」
「大丈夫、シリカちゃん?」


 彼等は一旦集まってから全く銃撃機構を使わないキリトと遠距離一徹のシノン、適性距離が幅広いリーファとまだ武器の扱いに慣れないシリカの二組に遠近バランス良く分かれ、転倒状態(タンブル)からまだ起き上っていない狼頭の猿を挟んで会話を続ける。


「どうするキリト君! 逃げる!? 続ける!?」
「……まだ続けよう! HPゲージだってもう結構減らしてる。あと少しで倒せるのに、勿体ないだろ!」
「了解!」
「……そういう訳だ、また援護頼むな」
「言われなくても」


 言い終わるか終らないかのタイミングで返したシノンは走り退き、再びアイテム欄から先程の四角い固定台を取り出して、構えたスナイパーライフルのスコープを覗きこむ。

 漸く悲鳴にも近い声を上げて起き上がった狼頭の猿は、二組いるプレイヤー達の内どちらに仕掛けるかを数瞬首を振りながら迷い……キリト―――――を無視してシノンの方へと飛びかかった。


「!? シノン!」
「チッ……!」


 舌打ち一発かますと身を屈めて爪を躱し、左手で固定台を握りパルクールの要領で飛び越える。

 更にスナイパーライフルを何と“ぶっ叩いて”半回転させ、持ち手を掴むや否や『アサルトライフル』へ変形させる。


[ギギイイイイイィィィ!!]
「近……寄るなっ!!」
[バババババババ!?]


 ガガガガガガァッ! と胴体を狙いコレでもかと叩き込まれた銃弾に勢いを殺され、追加とばかりに固定台へ引っ掛かってド派手に回転。
 モンスターは頭から地へ激突し、結果攻撃の阻止に成功した。

 バックステップで下がって行くシノンと入れ替わりで、キリトを先頭とし次にリーファ続き、最後尾からシリカが接近していく。


「はあっ! ……ゼッ!!」


 まずキリトは袈裟掛けに一閃、すぐさま振り上げ二撃目、擦れ違いざまに三つ目の斬撃を叩き込み背後へ抜けていく。

 彼を追い掛け振り向こうとする、狼頭の猿へとリーファは半月状の氷刃を放ちながら妨害し、憎悪値を溜めて自分へと目標を変更させた。
 更にリーファは、敵の目線を確認するとただ数歩退くのではなく、軸を変えながら有利な箇所へ誘導する。
 追加で、切っ先から射出する氷槍を鼻っ柱にぶつける。


 AIが動かすに過ぎない存在である筈の狼猿が、瞳に怒りの炎を滾らせ大きく踏み込めば……


「引っ掛かったな……っと!!」
「せえぃっ!」
[!?]


 タイミングを多少ずらしながら待ち構えていた二人が地を蹴り、背中側をシリカがスッパリ切り裂きながら通り抜ける。

 腹部側にはキリトが陣取り、踏みとどまって再び剣を振りかぶる。


「……喰らいなさい」
「落ちろっ!」
[ギイァヤッ!?」]


 オマケとばかりに発砲された追い打ちが眉間に命中。
 キリトが放った、追撃の斬撃を腹部に喰らい―――反撃すら出来ず狼猿は金切り声を上げて……肉体を硬直させた直後、黒い煙の様なものとなって掻き消えていった。


 消えてから数秒と経たず彼等の耳に陽気なファンファーレが響き、同じタイミングで経験値や獲得アイテムを記したメッセージウィンドウが、キリト達の目の前に出現した。


「金銭の名前はG(ゴールド)って言うのか。分かりやすいな」
「あっ、モンスターの一部みたいなアイテムがある!」
「こっちも似たようなものよ。……シリカは?」
「凄い……レアアイテム手に入れちゃってるみたいです!」


 問うたシノンの言葉に、シリカは嬉しそうな声音で答える。

 同時にメニューウィンドウを可視モードにして三人にも見える様にし、何を望んでいるのか容易に分かったかキリト達はウィンドウ覗き込んだ。


 確かにアイテム欄に “New!!” と付いている物の内、すぐ横に書かれているレア度がキリト達の獲得したアイテムよりも、二つほど数値の高い物が存在していた。


「一体何なんだろうな……」
「ちょっと出してみますね」


 次にシリカはレアアイテムを取り出し、オブジェクト化する。

 板状の鉱石らしきそのアイテムには不規則な模様が刻まれていて、一見するとALOでも見かける様なインゴットかプランク、もしくはプレート系のアイテムにも見える。

 だが飽くまでそう見えるだけであり、キリト達は詳細など勿論知る由もないので、詳しく知ろうと指先でその石板をクリックしポップアップ・メニューを呼び出した。


「……へぇ…………どうやら、武器が作成できるアイテムらしい」
「じゃあこれで、石器系の武器でも作れるの?」
「いや、多分『Non-standard arm's』の世界観設定にあった “謎の鉱石” がコレなんだろう。鉱石の使い道は、俺達も持っているロマン武器が主らしいしな」
「……ということは見た目は石だけど、材料通りの武器になる訳じゃない―――ってこと?」
「ああ、だろうな」


 リーファの質問に頷きながらキリトはアイテムの詳しい説明が乗った、ウィンドウ上のテキストへ眼を通して行く。
 どうも鉱石や石板毎に作成できる武器が決まっている様で、キリト達が手に入れた石板アイテムの作成可能武器欄には、[dagger(短剣)][claw(鉄爪)][knuckle(手甲)]と記されていた。


「俺では役に立たなそうだし……」
「私の武器とも違うわ」
「私もー……というか今の気に行ってるしね」


 つまりこの中で武器を製作して得するのは、短剣使いのシリカだという事になる。

 元よりシリカが手に入れた本人なのだ。
 如何使うかは彼女の自由である。


「強い武器が作れると良いな」
「はい!」


 ウィンドウを呼び出したシリカがアイテムをしまい込むのを確認し、キリトは草原の彼方を見やって再び剣の柄を握った。


「じゃ、武器のコツを掴むまで何匹か倒してみようぜ」



 キリトの提案に異論はないと三人とも頷き、次のモンスターのPOPを狙って草原を練り歩き始めた。











 幸いというべきか……あの後レアモンスターはとんと姿を見せず、数匹で組んで襲いかかるモンスターばかりであり、キリト達にとっては武器を扱う良い練習となった。
 ―――尤も、彼らとて事を全てスムーズに運べた訳ではなく、慣れている筈な武器の扱いでも戸惑う事はあったのだ。



 まず一つ目はスキル関係。

 百聞は一見に如かずとは良く言ったもので、エギルこそ『簡易的な“ソードスキル”みたいなものだ』と言っていたが、実際に試してみた所 “そこそこ違う” という印象をキリト達は抱く結果となっていた。

 そもそもソードスキルとは、指定されたプレモーションで構えれば、後は剣がライトエフェクトを纏って『半自動的に』得物を動かしてくれる代物。
 動作を適正位置まで少しばかり補正してくれる、このゲームの武器スキルとは訳が違う。

 ソードスキルが放っておいても速度と威力を両立させた攻撃を放てる『必殺技』なのだとすれば―――スキル補正は差し詰め見えない教官が手伝ってくれている『補助』に近いだろう。

 このシステムがあるお陰で、初心者でもALOの如く不格好に剣を振ってしまう事が少なくなっている……その反面、今繰り出した一撃しか手伝ってくれないので、連続技の繋ぎや防御の組み立てなどは、自分で考え行わねばならない。


 そして二つ目は武器毎の仕様だ。

 知っての通り『Non-standard arm's』の武器群は、片手剣から両手剣になったり、剣に銃が仕込んであったり、そもそも魔法で攻撃することが前提だったりと、序盤に関して言えばシンプルな武器など “皆無” といっても過言ではない。

 勿論運営とてすぐさま覚えろと言っている訳でもなく、お約束とばかりに序盤の敵は弱いので、ビギナーにとって最初の難関となる変形機能や仕込み等は後々覚えていけばいいだろう。

 しかしキリト達はある程度武器を扱いなれている。
 慣れているが故に、すぐさまその変形機構等を活かそうとしていた。

 だが……結果は結構なまでに散々であり、キリトは試しに銃撃してみてリーファやシリカを巻き込みかけ、そのシリカは身長の所為か変形後の両手槍を扱い兼ねており、リーファもリーファでトリガーを押すタイミングを間違えたりと…………まともに使えているのは銃撃一徹であるシノンのみ。

 そこまで瞑想するのなら、別に使わなければ良いのではないか?

 ……されどキリトは勿論リーファやシノンも、動画でソリッド・ガイやエーデリカが使っていた様に、古参や上級のプレイヤーともなればバンバン使ってくるだろうと予想していた。
 だから少なくともキリトにとっては、傷跡を残したいと思っている為にそれらを使いこなすのは最低条件だと考え、何とか銃撃機構を使おうとし―――命中精度こそ上がって来たが巻き込みかける事も少なくは無い、という惨事を繰り返しているのだ。



 丁度、弾倉が空になった頃……眼に前に現れる獲得アイテムと経験値を示すウィンドウを見やりもせずに、中身を取り変えながらキリトはぼやいた


「剣技は何とかなるんだけどな……銃って中々難しいな……ホントに」
「剣に付いてるってところが曲者ね。構え方も変ってくるし、GGOと違ってバレット・サークルの命中補正が無いから、ちゃんと的に向けて撃たないと当たらないし」


 こうなるならばGGOで光剣ばかり使わずに、もう少しぐらいは拳銃の扱いを学べば良かったかと、今更ながらにキリトは後悔していた。


「スキルも取り始めだから、簡単な調整しかしてくれないしな。オマケに当たり前だけどモンスターは動くし、だから斬った後すぐにトリガーに指掛けなきゃいけないけど……撃とう撃とうって考えると如何しても暴発するんだよなぁ」
「そういえばキリトさんの銃撃が当たったのって、モンスターが背を向けている時が大半でしたよね……」


 安全に構えて狙える状況でしか機能しないのなら、これでは左手に銃を持った方が幾らか手っ取り早く、一見メリットが無いようにも見える。
 しかし―――キリトの持っている銃撃剣は、一つの武器で二つのアクションが行え、何より左手が開く為に幾らか選択肢が広がるので、やはりかちゃんとメリットが存在している。

 ……まあメリット云々を抜かしたとしても、それなりの得物を手に入れるまでは現状手にしている武器を使わざるを得ないのだし、今後の為にも慣れておいた方が得では有るだろう。


 溜息を吐いて銃弾を込め終えるキリト。
 そんな彼に、リーファが挙手して恐る恐る提案を述べた。


「あのさ……一回街に戻ってさ、武器の扱いに慣れてみない? ほら、コンビネーション事態はALOのプレイ歴でバッチリだし、御誂え向きに鍛錬場もあったしさ!」


 リーファの言う鍛錬場とは文字通り己を鍛える場で、店屋では変形機能や軽い素振りしか試せない武器の扱いなどを本格的に練習出来たり、ダミーモンスター相手に闘って感触を確かめたりできる施設だ。
 恐らく、大半の武器の扱いが複雑なのだからと、運営が本番で狼狽してしまわぬ様にと用意した建物だろう。

 リーファの提案にキリトは悩みながら残り二人を見やり、別段異論は無いのかシリカは二回程素早く、シノンはゆっくりと一回頷くのを見て、キリトは顎に当てていた手を放した。


「わかった、やっぱり慣れてないと無理だよな。……じゃあ、何時集まる? というか、時間は大丈夫か?」
「私はまだまだ行けますよ!」
「……右に同じ」
「あたしも大丈夫だよ」
「そうか……それじゃあ、一時間後にあの広場へもう一回集合しよう」


 取りあえず予定の決まった彼等は目的地を目指すべく、二度ほどモンスターのPOPに出くわしながら、街へと戻っていった。















「やっ! ぃやあぁぁっ! はあああっ!」


 システムのお陰で声が遮られてはいれど、しかし現実世界ならば扉を超えて高らかに響くであろう、気迫の籠った叫びが迸る。


 手に握られているのは短剣、髪型はツーサイドアップ……勇ましき声の発信源は、小柄なシリカからだった。


「せいっ!! ……あ、にゃああっ!?」


 短剣を鋭く振り切り、そのまま槍へと変えて―――またも身長から扱いきれず脚が柄に引っかかって、ポーンと放り出され転んでしまう。

 小柄な体型である彼女と、両手槍カテゴリ武器の相性は、誰が如何見ようと良くないのは自明の理。

 なのに、そうまでして新しい武器を買おうとしないのは……買おうにもお金が足りず、オマケに何の恨みか、初心者用短剣カテゴリ武器の可変機構も、槍の他には薙刀や二刀流しか揃っていなかった所為と、魔法具付きでもカートリッジが買えない所為で、今の武器を使わねばならなくなっているらしい。


 そも短剣とは、敵の動きを読んだりスピードと体術を活かした上で、自分の間合いに引き込むか思いきって接近できる者が扱う、所謂 “中級者向け” の武器。
 当然ゲームなので幾らか抑え目とは言えど、しかし同時にVRゲームでもある『Non-standard arm's』では、“ソードスキル” が無い事も相俟ってその特性が顕著に現れてしまい……オマケに序盤はある程度武器に慣れてもらう為なのか、そこまで数が用意されていない。


 折角手に入れた武器作成アイテムも、十分ほど練習してから取り変えようと店へ持ち込んだものの、ゴールドは兎も角メイン以外で選択できる可変先や仕込み機能が、『槍系統』や『銃撃』位しかシンプルな物がなかったので、泣く泣く今の武器を使い続けている……という訳らしい。

 完全な余談では有るが、そのシンプルで無い可変機構はというと―――――短剣が三つの刃に分かれて鍔元から90°折れ曲がり『クローに近いジャマダハル』になったり、鞭が鍔の根元から現れて奇妙なウィップに成ったりと、初心者にとっては散々な代物であった様だ。



 ……まあ、如何にシンプルとはいえ身の丈に合わないのだから、早々得物を軽々扱えている訳ではないのも、無視できない事実なのだが……。


「ハァ……」


 溜息一つ吐きつつ鍛錬室を出たシリカは、プレイヤー等が疎らに行き交うロビーのベンチに腰をおろし、オマケでもう一つ溜息を吐いた。

 皆の表情が活き活きとしている中で、一人だけ憂鬱な表情を浮かべている場違いさからか、彼女の自然と視線は己の得物に向いていた。
 だが……手の中にある武器をどれだけ眺めても、扱い方に関連した良いアイデアなど浮かんでは来ない。


(……どうしようかな)


 シリカは考えた。
 無茶を承知でフィールドに出てお金を稼ぎ無難な武器を買うか、それとも有る程度おんぶに抱っこで支えて貰ってから買うかを。

 そして―――ゲームなのだからある程度の無謀も利くかと、前者を選んで立ちあがりかけた…………その時だった。


「如何か、なさいましたか?」


 非常に丁寧な言葉遣いと柔らかな声音で、一人の女性が声を掛けてきたのは。


「……えっ……?」


 思わず反応したシリカが見上げた先にいたのは、白い髪を持った女性プレイヤー。

 首に巻かれた黒いマフラーと正反対な白く艶のある髪に、ルビーの様な紅い瞳が印象的であり、何よりシリカの属する全てのコミュニティ内で比べても、ぶっちぎりの美少女である明日奈に勝るとも劣らない整った容姿だとシリカには思えた。


「とても辛そうな表情をしていましたので、何か酷な事でもあったのかと……」
「あ、あ……え、えっと……」


 どうも感情表現がオーバーなのはVRMMO業界では共通らしく―――そして確かに結構落ち込んでいたのは真であるが、同時に心配されるほど深刻ではないのも事実なので、シリカは尚更相手への返答に困る。

 白髪の少女も暫しの間、困惑したように黙ってはいたが……シリカの装備のレアリティ、手元にある武器、今いるこの場所という三つの要素から合点がいったのか、少しかがんで彼女に目線を合わせてきた。


「間違っていたら済みません……貴女は、武器の扱いで悩んでいませんか?」
「! は、はい……」


 悩みを言い当てられて其れなりに驚くシリカだったが、しかし彼女も伊達にALOをプレイしてきた訳でもなく、少し時間こそ掛ったが場所や装備を見て気が着いたのだと納得する。

 思案顔から呆け顔に、慌てたモノから真剣な物に、コロコロ表情の変わるシリカを見て、白髪の少女は素直に面白いと思っているのか、嫌な物の感じない柔らかな頬笑みを浮かべていた。

 そして再びシリカが彼女の方へと視線を向けてから、改めて口を開く。


「もし貴女が差支えなければ……可変武器の基礎を、教えましょうか?」
「え……い、良いんですか!?」
「はい。まだ“私の方”も時間は取れますし……何よりプレイするならば、より楽しい方が良いですしね」


 此処は圏内であるのだし盗みやPkは不可能であり、SAOの様なデス・ゲームでもないのだから無用の警戒をする必要もなく、加えてシリカよりも『Non-standard arm's』のプレイ歴が長い人物からのお誘いだ。


「よ、よろしくお願いします!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いしますね」


 相手が同性プレイヤーだという事もあり、それでもきっかり十秒は悩んだ後……シリカは大きく頷きOKを出して、三度鍛錬ルームへ向け白髪の少女と共に戻って行くのだった。







 そんな、少女らの会話から数分後―――






「おっ…………ふむ……セツナさんから連絡来たっス。どうも少し遅れるから吟味して置いてください……ですと」
「予定って、そりゃすいぶん行き成りじゃねえか。まあ、良いけどよ」
「良くないですー。折角アトラクションパスと新作ポップコーン買ってきたですのに……ぽーいっ、からのハムッ」
「あっ……ちょっとアマリ、そのポップコーンはヤバいっす―――」
「仕方ないのです、早い者勝ちなのです~」
「だって『カカオ87パーセントタイプ』っすけども……」
「!? ?!!?!?? おおおぉぉぉぉおおおぉぉにがいのれふぅ~~っ! り、リュウ殿うらめしや~~っ!」
「何故に矛先が俺へ向くんだっての!?」
「いや、日頃の悪戯(おこない)の所為っスから。そりゃ関係無い上にトバッチリっスけど」


 仮想とはいえど眼に優しくない、過激なネオン煌めく怪しげな通りで、とある三人組によるこんな会話が繰り広げられていたという。
 
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