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『夢の中の現実』

作者:零那
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『愛』



父さんは、涙を堪えた優しい笑顔で手を繋いでくれた。
一緒に階段を昇る。

不思議な気持ちだった。
昔と同じ様で、でも、昔とは何かが違ってて...。
其れが何か知りたくて...
部屋に入る前、躰が勝手に父さんの背中に抱き付いてた。
父さんは、ユックリ振り返って、もう1度、優しく包み込む様に抱き締めてくれた。

温かくて優しい『父親の愛』が流れ込んで来るのを感じた。

解った...。

昔は、甘えたいのに甘えれなんだ。
父さんの手を求めたかったのに、求めれなんだ。
父さんの事、好き過ぎて緊張してたから。

滅多に逢えん父さんやったから、逢える時は嬉しい気持ちを抑えるのに必死やった...。

今は全身で父さんに甘えてる...甘えたい...
『もっともっと、抱っこ抱っこ』
そう何度もひつこくねだる幼児と同じ様に...。

父さんは多少困惑しながら、部屋に入ってからも暫く、膝の上に零那を乗せて抱き締めてくれた。
知らん人が見たらヤバイ光景やろなぁ。
でも今は家の中。
人目は気にせんでいい。

間違いなく親子愛だと、自分でも改めて解った。
決して変な感情では無い。
そんな汚れた愛なんかじゃ無い。

永遠に切れることは無い関係。
永遠に切れることは無い愛。

長い長い間、離れてた時間...零那は、其の分の愛を充分に注いで貰えてる今、至福のひととき...。

頬ずりでヒゲが痛かったりして、でも、その痛みでさえ愛しいと想えた。
存分に愛を注いで貰った後は、お返し。
白髪を抜いたり、全身マッサージしたり...その間、いろんな事を話した。

絶対、お互いに言えん事は在る。
零那は、父さんを危険な目に遭わさん為に嘘を吐く。
父さんは、零那に迷惑かけん為に嘘を吐く。
なんとなく解ってしまう。
やっぱりチャント親子なんやなって感じた。

今はマダこれくらいでいい。
一気に縮めたく無い。
リスクを背負わしたく無い。

ただ、零那は、父さんの為なら何でも出来る。
何でも耐えれる。
其の覚悟は、逢いたいと願う其の日から既にもう出来てる。
ずっとずっとずっとずっとず―――――っと前から...。

とりあえず、一緒に買物に行った。
御飯、何が好みなんか全然知らん。
まずは生活の基本を知りたい。
和食が好みらしい。
焼き魚、お刺身、肉じゃが、豆腐のお味噌汁。
此の4品が1番の大好物らしい。
うん、零那と好みが似てる。
こんな些細な事が、涙出るほど嬉しかったりする。
筑前煮も好きだと良いなぁ...。

全部作ろうかな。
スーパーで買った後、魚は魚屋さんで新鮮なものを買った。

家の階段の前で、父さんが零那の荷物を軽々しく持ってくれた。
鍵を渡された。
先に昇って、鍵を開けて、ドアを開けて父さんを待った。


 
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