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シークレットゲーム ~Not Realistic~

作者:じーくw
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襲撃

 徒党を組む。 

 刀真は無論初めてではない。
 だが、流石に ゲームも序盤。いや 始まってすらないだろうこのタイミングで、となれば初めての事だった。故に、この状況から察するに……悠奈はリピーターと言う事は間違いないだろう、と刀真は考える。

 だが、これまでのタイプのリピーターではない。

 誰もが犠牲者だとは思うが、参戦理由には色々ある。

――金目当てで参戦する者。
――一度、殺人の快楽を覚えおぼれてしまった者。

 そして。

――殺されたプレイヤーの仇を討つ為に参戦する者。

 それらが、過去にはいた。
 誰もが被害者だ。ゲームのせいで人生を捻じ曲げられた、と言っていい。まだ状況のみではあるが、その中で 悠奈は後者だと思えた。

「……悠奈はこのゲームを終えたらどうするんだ?」

 刀真は、それとなく聞いていた。

「え……?」

 不意に聞かれた為、今度は悠奈は 即答は出来なかったようだ。

「このゲームを終えたら……だ。先程から言っている、『誰も殺さないし、死なせない』 つまり、そう言う以上は、自分自身も含まれているんだろう? じゃなければ、その過程で自身が死ねば本末転倒、だからな」
「ああ……確かにそうね」

 悠奈は少し俯き考えると、口を開いた。決意を胸にひめて。

「私は今後も戦い続けるわよ? ……私の命を懸けてでも。――アイツ(・・・)の命の分まで」
「……ふむ。成る程な」

 刀真は、納得したように頷いた。

 そして、自分の考えは間違えてはいなかったと思って。

 だからこそ、悠奈に。一応仲間となった以上、余計な世話だとは思えていたが口にした。

「だが、1つ忠告だ。――自分の命を軽く扱うなよ」
「……え?」

 悠奈は、日影の言葉に思わず驚いていた。
 確かに、命を懸ける……とは言ったが、軽んじているつもりは毛頭無い。だけど……、直ぐに否定を出来なかったんだ。いつもの自分なら……きっと出来ただろう。

 でも、悠奈はできなかった。

 刀真(この人)の前だと……、何故か……。

「聞く所によれば、そのお前の言うアイツ(・・・)という者は、人生を180度変え、且つお前を救ったんだろう? だったら尚更だ。……お前は、誰かの為になら 死ねるって思うな、と言ったんだ」
「わ、私はそんな風には思ってない!」

 悠奈は、今度はきっぱりと否定した。

「確かに、私の命は彼から貰った! 私の生きてる時間は彼のものだった。でも……、私が戻ってきた理由は……」

 その悠奈の瞳の奥底を、すっ……と瞳を細めながら見た日影は悠奈に言った。

「そうか……? 確かに。言葉の意味を考えれば、違いはないんだろう。――が、その深層域、後追いをしたいと言っている様に聞こえるぞ? オレには」
「ッ……!!」

 刀真の言葉を訊いて悠奈は息を呑んだ。
 彼女の想い人と別れて今日まで、考えなかった事はない。いつもいつも、頭の中で思い描いていたのだから。

 そして、いつも――いつも、会いたい。そう強く願っていたんだから。

 それが形を成して、今の自分の行動となっている。

――彼に会いたい。 

 即ち、彼のいる場所に行きたい、というのは 心の奥底に眠っている願望だった。
 そう、改めて理解した。

 そんな悠奈を見て、刀真は続けた。

「――このゲームに乗じて、誰かの為に命を落とせば、そいつから受け取った命を。次に引き継ぐ事が出来る。思ってるんだろうが……、仮にお前が死んだ後渡したそいつが助かる保障はあるのか?」
「え……っ。そ、それは……」

 悠奈は言葉に詰まっていた。
 このゲームの事はよく知っているつもりだ。

 仮に、自分がそうなるであろう状況になったとしたら……?

 あの時(・・・)は、生き残りが2人しかいなかった。

 片方が死ねば、片方が助かる状況だった。でも……、都合よくそんな展開になるなんて思えない。でも……それ以上に。

「わ、私は! 誰1人として死なせない! その覚悟を持ってここにいるの!」
「そう、それが理想だな」

 悠奈の言葉に、刀真は頷いた。

「だが……、知ってるのであれば言う必要は無いと思うが 世の中はそんなに甘くは無い。そして《この世界》も……な」

 その瞳を、悠奈ははっきりとみる事が出来た。

 何処か、無機質だと思えた。そして、さき程までの刀真の眼じゃない、とも思えた。

「――抗ってやるわよ……。命を懸けて、全力で」

 悠奈はふっ……とため息を1つ吐き、そして……ゆっくりと、もう一度深呼吸をすると、ゆっくりと彼の眼を見据えて答えた。

「でも――、日影さん。確かに貴方の言うとおりだって、わかった」

 悠奈は、軽く頭を下げた。

「……」
アイツ(・・・)の所に行きたいって、思って無い訳じゃない。だけど……他人の命を自分の言い訳にして、……自分の願望を叶える為の道具にしちゃ駄目だよね」

 そして、下げた頭を元に戻すと同時に、再び口を開く。

「ありがとうございました。……貴方に言われなかったら……、私は最後の瞬間まで解ってないままだったと思う。自己満足のまま、だったと思う」
「礼は、いらない。これは、ただ忠告をしただけだ。……最善な選択を常に選べるように。安易な決断を生まぬようにとな。組む以上は 利己的、打算的、と受け取ってくれ」

 そう一言だけ添えて……。
 そのまま、2人は再び歩き出した。








 そして、暫くしての事だ。


 他愛も無い話を続けていた時。
 ふと、刀真は脚を止めた。

「どうかしたの? 日影さん」

 悠奈も思わず脚を止めそちらを向く。
 日影は何も言わず人差し指を口元へと持っていった。悠奈は、口を閉じろと言う合図なのは直ぐに理解した。そしてそのまま日影はゆっくりとした動作で背後を振り返る。

「……何か様か? そこにいる者」

 低いが、まだ薄暗い森の中で透き通るように声は響いた。

 距離的は、およそ15m程だろうか?
 悠奈の時より気配の消し方が上手い。だから、この背後にいる者は恐らくは訓練をつんでいるか、それに匹敵するほどの修羅場を経験している者だと推測がついた。茂みがゆらっと動くのが目に見える。

 その次の瞬間。

 茂みから人影が躍り出てきた。
 真っ直ぐ向かってくるのは、刀真の方だった。
 
 ハンドポケットをしていた日影はそのままの姿勢で動かなかった。一見すると、明らかに隙がある、と思えるのは、刀真の方だったのだが、その姿を見た襲撃者は 一瞬だが速度が遅くなった。

 何かを感じ取ったのか……距離にして5m程手前で向かう角度を変えた。

 狙いは男の方じゃなく女の方。木々を蹴って素早く悠奈に近づくとその勢いのまま悠奈の脇腹に蹴りを入れた。

“ガスッ!!”

「ッヅ!!」

 悠奈の脇腹に走る鈍い痛み。
 そして、思わず口から苦悶の声が漏れる。打たれた脇腹を抑えながらたたらを踏んだ。

「こ、このぉぉぉ!!!!」

 だが、悠奈は、すぐさま反撃に出ようとしていた。
 燃え上がるような赤い髪を振り乱しながら、突進する。だが、この襲撃者は相手が2名いる為、攻撃をしたら直ぐに回避をすることを予め決めていたのだ。だから、悠奈が反撃しようとした時にはもう間合いにはいない。その相手の動きはまさに迅速だった。

「あッ!! くそっ!!」

 悠奈はその事に気がついたが、もう後一足ほどでまた茂みへと隠れられるだろう。ならば、この闇に加えて、追いかけるのは無理だ。

「――止めておけ。もう、追いつけない。体力と時間の無駄だ」

 日影は、今にも追いかけそうな悠奈を止めた。
 もうそろそろ、夜も明けるとは言え、森の中だ。追いかけるとなると、闇雲にもなりかねない。なら、言うように後を追うのは時間と体力の無駄なのは明白だ。

「くそ……、アイツ、信じらんない、何なのよ! アイツ!?」

 蹴られた脇腹がズキリと痛み奥歯をかみ鳴らしていた。
 日影の言うとおり、深追いするのにはリスクが高く、相手の確認と蹴り返すくらいしかメリットが無い。故に、逃がす以外に選択肢はなかったんだ。

「泣き寝入り……、くそ、腹立つわね」

 口をへの字に曲げ、ぶつぶつと文句を言う悠奈。そして、蹴られた脇の状態を確認していた。

「大丈夫か?」

 刀真は傍にまで近づきそう言う。
 鈍器の様な物で殴られたのなら兎も角、拳より高威力があるとは言え、体術の蹴り一回。致命的なものになるとは考えにくい。そして、直ぐに後を追おうとした所を見るに、特に問題ないだろうと判ってはいた。

「ん……、内出血もないし、打撲未満ってトコだと思う。気が晴れるわけじゃないけど……」

 悠奈は軽く手を上げる。

 そして、それに軽く頷き答えた刀真。

「でも、顔は覚えた……。次あったら絶対蹴り飛ばしてやる!」

 悠奈は、闘志むき出しに逃げた方を睨みつけた。

「随分とまぁ……、勇ましいもんだな」

 リベンジに燃える悠奈を見てため息をつきつつ、そう言う刀真。女にしておくには惜しい、とも思えていた。

「当たり前でしょ! いきなり蹴られたんだから! それに、結構痛かったし、まだ、痛いし!」

 悠奈は刀真にそう言っていた。八つ当たり、とも取れる勢いで。

 そして、何よりも悠奈には思うところもあったのだ。

「日影さんなら、アイツとっ捕まえれたんじゃないの!」
「……おいおい。オレに八つ当たりをするな。――……それに、『いきなり蹴られた』と言うなら、オレはお前にいきなり銃突きつけられたが?」
「ゔ……、そ、それは……そーだけど。で、でも 日影さんは 気にしないって……」
「なら、気にしない事だ」

 泣き寝入り……を我慢しろと言われている。
 かなり屈辱だし、腹もたつが……、目の前の男にいきなりした事を考えれば、安いものとも思える。直接的攻撃を加えてはいないが、凶悪な武器を向けたのだから。

 そして、日影は笑ってそれを許した。寛大な大きな男だって思えるし、少なからず憧れたのも事実だ。

「わ、わかったわよ」
「ん……。それに《アイツ》は恐らく……」

 日影は、少し考え込むそぶりを見せ、向こうを向いた。もう、木々や草が揺れる音も何も聞こえない静寂が漂っている。完全にこの場から離れた事に疑いは無かった。
 悠奈は、刀真の言葉が気になったのだろう、彼の方を向いた。

「……恐らく?」
「まぁ、いずれ判ると思うってことだ。さっきオレの言った事も気にするな」
「あのね……、そこまで意味深なこと言われてどーやったら、気にしないでいられるってのよ」
「ん。そうだな。……気にしなければ良いんじゃいか?」
「はぁ!!」
「まぁ、そう言う事、だ。あまり熱くなりすぎるな」

 刀真はそう言う。
 まだ、腑に落ちない様子の悠奈だったが、直ぐに一変した。

 それぞれのPDAが振動、アラームが鳴ったのだ。

「っと!」
「……」

 殆ど同時に2人ともPDAを確認していた。

 それは開催者からのメッセージ。

 いつもの事といえばいつもの事。何が来ているのか 日影は大体最初から把握出来ていた。

「そろそろ来るとは思ってたな。……どうする?」
「もち。行くに決まってるでしょ? 他のプレイヤーに会える絶好のチャンスだし」

 悠奈は少しだが笑みを見せた。
 さっきの憤怒を少しは忘れられたようだった。

 そのメッセージの内容。それはゲームの説明会の案内。

 文章の出だしが、『参加者の方々へ、重要な連絡です』から始まり、非常に淡々と要件だけを告げていた。

 その内容が次のとおり。

『先ほど、基本ルールを配信しましたが、恐らく参加者の全ての疑問を解消するには至らないと思われます。つきましては、一度参加者を集めて説明会を開きます。会場は村の中央管理施設となっていますので参加を希望する方は、村の北東にある白い建物へ集まってください。なお、参加は自由であり、不参加の方へのペナルティ等は有りません』

 このメッセージが送られれば大抵の人間は参加するだろう。

「ふむ……。ん?」

“ピロリッピロリッ♪”

 メッセージを確認していたその時だ。アラーム音が鳴り響いた。

「お……? またメッセージ?」

 悠奈のPDAにも届いたようで、説明会の案内文を消すと次の文を開いた。そのメッセージを確認すると、表情が固くなる。

「なんだ? 何が来た?」

 刀真は、悠奈にそう聞く。
 聞きつつも、自分のPDAにも目を通した。

 どうやら、運営側からの指示文≪R:CODE≫と表示されている。つまりは、リピーターにのみ送られてくる文面。そして、恐らくは悠奈も同じようなメッセージが来ていると推察できる。

「前回はこんなメール無かったのに……」
「ああ、なるほどな」

 悠奈の独り言を聞き推察を確信することが出来た。

「っっ!!」

 悠奈は思わず口を噤んだ。
 妄りに口に出して言うような言葉ではない≪前回≫と言う言葉だ。

「もう遅いだろう。それに、さっきのやり取りでお前が経験してる事くらいは判っている。……が、確かに思わず口に出すのには危険な内容だな。他の連中に聞かれたりしていれば」
「う……、うん。……以後気をつけるわ」

 悠奈は、PDAの画面をスライドさせながら軽く頭を下げた。

「う~ん……、ちょっといいかしら?」
「ああ、構わない」
「それがね……。《プレイヤーナンバー4》の人を探して24時間共に行動しろって来てるみたいなの。探さなきゃいけなくなって」
「ふむ……、内容は大体似たり寄ったりだ」
「え?」

 悠奈は刀真の言葉を聞いて少し驚く。
 身のこなしから只者じゃないとは思っていたけど、同じリピーターとは思ってなかったようだから。

「日影さんにも R:CODEが?」
「さぁ……どうだろうな。メッセージは来た事は確かだが」

 軽く笑いつつそう言う日影。
 さっきから、妄りに情報を漏洩しまくりなのは悠奈だ。だから、命を軽く見ていると言うんだ。と日影は軽く苦笑いをしていた。

「ま……まぁ、今後の私を見て頂戴!」
「そうだな。見る機会は増えそうだしな。……オレのメッセージは、『プレイヤーナンバーJと行動を共にしろ』と言う事。後は、『離れる場合は、2時間以内に戻る事』……だから、必然的に悠奈と一緒にいる事になるからな。追加で『4も探せ』とさ」

 刀真はそう答えた。
 だが、この時の言葉に悠奈は疑問を抱いていた。

「……私、PDAのナンバー教えたっけ?」

 そう、刀真は確かに『Jと行動を共に』と言っていたのだ。つまり、『悠奈=J』という事は判っているという事だ。何で、判ったのかが判らなかったのだ。

「ん? ……ああ、さっき お前を投げ飛ばした時に、PDAの画面が見えた。……画面は基本的にはみたら直ぐに消しておく事を薦めるぞ」
「……あの一瞬で、そこまで見れることが出来るのなんて、あんた以外いないって思えるのは気のせい? 寧ろ、そんなのが他にもいたらって考えたら心底恐ろしいわ」

 悠奈はそう答え、少し肝を冷やす。
 今でこそ、協力関係を築けているが仮に100%敵で、あの技量の持ち主が他にもいたら……、瞬殺されそうだから。

「さて……、そのプレイヤー4を探すか? 恐らくはこの辺りにいるだろう」
「……え? 何で?」
「運営の連中は、オレ達を見ているからな。狙ったかのようにメッセージを送ってきた以上、そう離れた位置にはいないだろ。行動を共にする事で、面白い展開になる事を望んでいるのだからな」
「あー……、なる程、考えられるわね」

 悠奈は刀真の考えを聞き納得した。
 運営側が望んでいるのは、楽しめる展開を所望しているのだ。どういった考えを持っているかは、まだ判らないがそのプレイヤー4と合流する事で何かを期待していると言うのなら……遭遇する難易度は低いだろうと思える。

 そう、会うのは簡単だろう。だが、問題はその先(・・・)、連中が考えている延長上でのシナリオだ。

「(……一先ずは、様子見、だな)」

 刀真は、そうも考えていた。




































~プレイヤー・ナンバー~



 No. 氏名  解除条件


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□ J  藤堂悠奈   ??????????     
更新:No.4と24時間行動を共にする。

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□ XIV 日陰刀真  PDAを5台以上所持する。
更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)

 
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