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TOL~幸運と祝福の物語~

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プロローグ③

朝ごはんを食べ終えた俺が外に出ると、良く似た二人の少女が同時に振り返る。

「もう、遅いわね!町に持っていく荷物全部乗せてしまったじゃない!」
「とか言いながらフォルナに任せっぱなしじゃ駄目だよね、って言って必死に動いてたじゃん」
「そ、そんなこと言ってないわよ!!変なこと言わないで!」
「はいはい、分かりましたよお姉様」
「もう!」

顔を赤く染めそっぽを向いてしまうフェニモールと、クスクス笑いながらそれを眺めるテューラを見て俺は近づく。

「流石双子の姉妹だな。息ぴったりで感心するよ」
「でしょー?お姉ちゃんいじめるの楽しくて!」
「あー分かる。反応良いしな」
「そうそう!凄く可愛いよね」
「二人ともいい加減にして!!」

俺がテューラと手を組んでフェニモールをからかうと、フェニモールが顔を真っ赤にしながら睨んでくる。

「ほら、早く行ってこないと帰ってくるの遅くなるわよ!」
「おっと、それを言われると耳が痛いな。じゃあ行くか」
「うん!!」

テューラに手を差し出し荷馬車にエスコートする。
テューラを乗せて振り返るとフェニモールがソワソワしている。

「ん?どうした?行ってきますのキスでもしてほしいのか?」
「な、何言ってるのよ!このバカ!!」
「えぇー、いいなー。私にしてよ、お兄ちゃん?」
「テューラまで何言ってるのよ!そういうことじゃなくて!」

顔を真っ赤にしながら怒るフェニモールといたずら笑顔で満載のテューラを眺めつつ。

「ってか今回はフェニモールが留守番だろ?去年は一緒に行ったと思うが…」

この双子姉妹の誕生日の時は、この付近での中心街に行ってプレゼントを買うことになっている。
確かテューラの発案だったと思うが、俺と一緒に行くのは1人にしてサプライズ的な物を贈り合いたいって感じだったかな?
俺的にも護衛対象が1人だと何かあったとしても対処できるし、街に行く間話し相手がいると気が紛れるので助かってはいる。

「それはそうなんだけど…」

真っ赤にしていた顔から少しずつ物憂げな表情に変わっていく。

「欲しいものでもあるのか?」
「ううん。フォルナとテューラが選んできてくれるのが一番嬉しいから欲しいものとかはないんだけど…その…」

歯切れが悪そうに徐々に俯く。
フェニモールがこんな感じになるのは凄く珍しい。

「遠慮せず何でも言えよ?」
「…その、ちょっと胸騒ぎがするというか…何か嫌な感じがするの」
「嫌な感じ?」
「うん…」

テューラもフェニモールの心配そうな不安そうな表情を見て茶化すことも出来ず、むしろテューラにも同じような表情が移る。

「心配することないよ。これまで何年間街まで行ってると思うんだ?余程のことがない限り大丈夫だよ」
「それは分かってるつもりなんだけど…」

フェニモールの不安を取り除こうと言葉を選んでみるものの一向に表情が晴れる様子はない。
少し強引ではあると思いながらも、フェニモールの頭に手を乗せる。

「大丈夫。何があってもお前とテューラ、ここの水の里は俺が守るよ。安心してくれ」

フェニモールが落ち着くように、ゆっくり、頭を撫でながら言葉をかけていく。
物憂げな表情から少しずつ柔らかな表情に変わっいくのが感じ取れる。
フェニモールが落ち着いたのか、こちらを見上げる。

「うん、分かった。約束よ?」
「ああ、任せとけ」

俺は出来る限りの笑顔を向けるとフェニモールの顔から笑顔が戻る。

「いちゃついているところ悪いんだけど、そろそろ出発しない?帰り遅くなるよ?」

フェニモールが落ち着いたと見や否や、茶化すような声色でテューラが声をかける。
俺としては名残惜しいが、フェニモールがまたも顔を真っ赤にしながら俺の手を払いのけ、テューラを睨み付ける。

「い、いちゃついてなんかいないわよ!変なこと言わないで!!」
「はいはい、頭撫でられて良かったねー、お姉ちゃん?」
「テュゥーラァァー!!!!」
「キャー、お姉ちゃんこわーい!」

フェニモールがテューラに近づき頬をつねって伸ばす。
痛そうにしてるテューラだが、フェニモールに元気が戻って安心したのかテューラにも元気が戻る。
正直姉妹のやり取りを暫く眺めてはいたいと思う気持ちをぐっと堪えて馬車に乗り込む。

「じゃあ、そろそろ行ってくる」
「あ、うん。気を付けて行ってきてね?」

テューラの伸ばしていた頬を手放し俺に顔を向ける。
テューラは頬を擦りながら俺の隣に座り直す。

「あぁ、なるべく早く帰ってくるよ」
「うん。行ってらっしゃい。テューラもフォルナの言うこと守りなさいよ」
「言われなくても分かってますー」
「はは、じゃあ、行ってきます」

俺は馬に鞭を打ち走り始める。
フェニモールが手を振りながら送ってくれるのを尻目に街へと向かう道を走る。

「テューラ、欲しいもの決めとけよ?」
「ちゃんと考えてるよ。お姉ちゃんに誕生日忘れてたってこと伝えてないんだから、そこら辺も考慮してね?」
「…善処します…」

街へと向かう道は雲一つない青空だと言うのに、俺の財布に雨が降るのはなぜだろう…
そんな思いを抱きながらも、馬は変わらずの速さで街へと走り続ける。 
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