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ガラスの十代

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1部分:第一章


第一章

                     ガラスの十代
 僕はその時。本当に荒れていた。
 何でもない理由だった。上手くいなかった。
「何でだよ」
 部室でだ。楽器を手にして苦い顔になっていた。
 僕は吹奏楽部で。いつもサックスを吹いていた。僕のいた学校ではサックスもある吹奏楽部だった。それでサックスを担当していた。
 けれどだ。この時は。
 どれだけ吹いてもその曲をマスターできなかった。嫌になる位だ。
 先生も周りもいけてると言ってくれる。それでもだった。
 自分では満足できなかった。とてもだ。
 それで部活が終わっても部活がない時でも練習していた。それでもだった。
「駄目だ・・・・・・」
 あまりにも納得できなくてだ。それで苦い顔で言った。
 日曜の練習が終わっても自分で練習をして。やっぱり駄目だった。
 それで部室でサックスを前に項垂れている僕にだ。彼女が言ってきた。
 付き合っているといえば付き合っている相手だ。その娘が来てだ。僕に言ってきたのだ。
「駄目?やっぱり」
「駄目だね」
 僕は項垂れながら彼女に返した。
「もう全然ね」
「そうなの」
「どうしたらいいんだよ」
 僕は学校の木とパイプの椅子に座って項垂れたまま言った。
「どれだけやっても駄目だなんて」
「それじゃあ」
「それじゃあって?」
「ありきたりな言葉だけれど」
 彼女も暗い顔になってだ。僕に言ってきた。
「ここはね」
「どうしればいいっていうんだい?」
「練習したら?」
 これが彼女の言葉だった。
「もっとね」
「練習しろって?」
「やっぱりそれしかないんじゃないかしら」
 こう言うのだった。
「できないのならね」
「練習ならしてるよ」
 僕は眉を顰めさせて彼女に言い返した。
「もう飽きる位ね」
「それでもよ」
「もっと練習しろって?それでも」
「だから。できないと思ったら」
「だからしてるよ」
 僕はたまりかねた口調で言い返した。
「もうさ。嫌になる位」
「それでもよ」
 けれど彼女の言葉は変わらなかった。
「駄目だって思ったら。それ以上に」
「練習しろって?」
「うん、部長も言ってたじゃない」
 今度はこう言ってきた。確かに部長は僕達にこう言った。できないのならできるまで練習しろ、それこそができるようになる早道だって。
 だから僕も今練習をしている。けれどそれでもだった。
 全然できない。全くだった。
 それでうんざりとしていたところにそんなことを言われてだ。正直頭にきた。
 それでだ。僕は席を立って彼女に言った。
「そんなこと聞きたくないよ」
「けれど」
「けれどもどうしてもないよ。だから練習はしてるよ」
「本当に?」
「そうだよ、してるよ」
 また言う僕だった。
「それこそ。嫌になる位にね」
「あまりそうは思えないけれど」
 僕が怒って言うとだった。彼女はこう言い返してきた。
「今。何か」
「何かって?」
「悩んでるばかりで」
 こう僕に言うのだった。言葉を出すのを躊躇っているけれどそれでもあえて言うような。そんな口調で僕に言ってきたのだった。
 
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