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ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
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第47話 陽海学園へようこそ?




「えーみなさん、ようこそ!陽海学園に! 私はこのクラスの担任になった猫目(ねこのめ)(しずか)です」

 一先ず 入学式が終わり 其々の教室で生徒達は、この学園の説明を受けていた。
 等の自分、御剣カイトも同様であり、クラス分けを訊いて、安堵をしていた。

「(良かったな。……同じクラスになれて、月音とモカの)」

 別のクラスになってしまったら、正直な感想で、楽しみが減ってしまうだろう。だからこそ、決して仕組んだわけではない、この偶然に感謝している時。


 丁度、自己紹介を終えた担任教師の猫目先生が、この学園 陽海学園にて、学ぶべき事・人間と妖怪についてを、大真面目に一通り説明をしていた。

「(……あ、月音、絶対にメチャクチャ動揺してるな。 席が後ろだからよく判る。……周囲の奴らにバレなきゃ良いけど)」

 担任の説明の時、カイトは 月音の方を見た。と言うより、嫌でも目に入った。

 月音はと言うと、身体事に 左右に動いたり、何やら突然 突然震えだしたりしていた。飛び上がらないだけマシだと言えるが、十分に目立ってる……と思う。ただ、自分自身が気になっているから、だけかもしれないが。

 そして、そこはカイトとしても、月音の気持ちは判る。突然、お化け屋敷みたいな場所に放り出されたのだから。判る。
 だけど……、とても不謹慎だと思うけど。

「(やばっ… 反応(リアクション)が、……お、おもしろっ!)」
 
 俺は声に出して笑いそうになるのを必死に抑えていた。確かに怖がっているんだけど、オーバーアクションなのだ。顔を青ざめて、ブルブル震えている……傍から見ても、可哀想に思える様な驚きではない。盛大にツッコミを入れている様な感じだったから。
 そんな時だ。

「センセェ~~ 人間なんてみんな喰ってしまえばいいだろ? 相手が、美女なら襲えばいいだけだしぃ~」

 そこで、生徒の1人が過激な発言をした。

「(たしか… 砕蔵? だったかな。……はぐれの)」

 それは、過激な発言だったが、そこはやっぱし陽海学園、妖怪だけの世界だ。

「おおーーー  カゲキーーーー」

 彼の発言は 大歓迎、と言わんばかりに盛り上がるばかりだった。


 カイトは もちろん、後1人(・・)を除いて。






「(ひいいいいいい)」

 只今、絶賛混乱。その文字が、頭の中で うろうろしていた。

「(何だーーー!!? 何だこれぇぇぇ)」

 月音はバスの運転手の言葉を改めて思い出し、その真意を理解した様に、体を震わせていた。その最中でも、身体に刃を向けられる様な感覚がする。

「この学園は結界の中にある学園ですからね! ここの存在を知った人間には死んでもらってます! なんっちゃって~」

 猫目先生の所謂ジョークトークにクラスが笑い声で包まれる。ジョークはジョークでも、実際に殺すかどうかは判らない。と言うより、これまでにそう言う出来事が無かった為、判らないだけなのだが。

「(ひいいいぃ オレ正体バレたら殺されるーーー! 何でだ??何で人間のオレがこんな学校にーーっ?)」

 月音は親父に貰った妙な学園入学チラシを渡され、入学したのを思い出した。

 初めはかなり不安で入学を拒否したが、何せ、全ての志望校に滑った、不合格だった不幸息子。
 両親の申し出を、全力で拒否するのはさらに親不孝者だろう。浪人生にもなれば、更にだ。

 そしてしぶしぶ入学したのだった…が……、こういう自体に巻き込まれてしまった。

「(親父ーーー 確かに高校も入れないの親不孝だって思ったけど 流石にこんなとこやっていけないよ!! 早く…一刻も早くオレここから逃げ出さないと…)」

 不自然な感じで、小さく暴れまくる月音だった。

「(いやはや、ほんとに 席教室の後ろの方でよかった!!)」

 カイトは、ちょっと性格悪いかな?っと思いつつも、明らかに挙動不審な月音の姿を楽しんでいた。でも、楽しむだけで終わる様な事はしない。彼とは入学前に知り合った仲だ。

 まだ、友達、とは言えないけれど。

「(まあ いきなり、こんな学園(ところ)に来たらこうなるのも無理ないよな。 ……オレは、影ながら応援するぞ。月音)」

 月音をフォローする、と決めつつ 月音の挙動を楽しんでいたその時だ。遅れて、教室に入ってきた生徒がいた。

 ガラッ! と勢いよく開いたかと思えば、女子生徒が入ってきた。一目見て判った。……モカだったから。

「すみませんっ! 入学式の後、校舎、迷ってしまって… 遅れました!」
「あら? 大丈夫よ。初めてだもんねー。仕方ないって。 空いてる席に座って まァかわいーコ♪」

 当然ながら、モカが入ってきたら教室は大騒ぎだ。騒ぎ立てる大多数は男子である。

「美しい!」
「こんなことクラス同じになれて幸せ~!」
「変化にしてもあんなに美しくなれるやつなんていないぞ…」

 なーんて会話の嵐だ。
 騒ぎさえはしてないものの、斯く言うカイトも同じくであり。

「(確かに改めて見ると綺麗な子だな…。綺麗、うん。可愛いって表現も正しいかも……)」

 クラス中が盛り上がってるその時だった。更に衝撃的な光景が広がってしまうのは。

 モカが、席へと移動している最中に月音を見つけたと同時に、その体に抱きついたのだ。


 当然だが、この行動にクラスは大騒ぎ、特に男子にとってはだ。

「やあ、 ご両人。……が、今は一応授業中、と言うかHR中だよ。愛し合うのは、これが……いや、学校自体が終わってで良いんじゃないか?」

 抱きついているモカに皮肉を交えながら話しかけた。
 あまりにも騒ぐ教室内で、収拾がつかない様子だったから、一応顔見知り、としてのフォローをしたつもりだった。

「あ…っ カイトだっ!? あなたも同じクラスだったの!? うれしい!! 2人ともいてくれてとってもっ!!」
「おおっと!!」

 月音の腕を組んだ状態で、モカはカイトの腕も空いたほうの腕で組んだ。ぎゅっと自分に抱き寄せるモカ。両手に花(男版)である。

「(これは……流石に恥ずかしいかな…)」

 周囲には視線が異常に集まる。
 当然ながら、殺気もそれなりに感じるが、全く問題ではない。……が、それでも ここまで集中的に見られてしまうのには慣れてなく、恥ずかしさを感じていた。
 

 兎も角、一度離れた後、月音、モカ、カイトは改めて挨拶をし、それぞれ机に付いた。猫目先生に侘びを一つ入れて。

 笑顔で許してくれたが、周囲の男子たちは許してくれる様子は無かったのだった。



 HRも終わった後、 3人は学校内を探検していた。
 あまりに広い学園だったから、約束をしていたのだ。

「わぁー すごいね!! この学園、廊下とかも広い! ほらっ 2人ともあっち見てみようよ!!」
「う、うん……。そ、そうだね……気持ちは判るよ」
「コラコラ…。廊下は走らない。……なんてな」
「えー、だって時間すごくもったいないし!」

 両手を、其々と繋ぎながら足早に校内を移動していた。

「(な… 何だコレ 夢だ今日はまるで夢の中にいるみたいだ… こんな幸せな思いできるなら 妖怪とかどーだっていいかもーーーッ)」

 明らかに ぎこちない対応を月音はしていた。

「(やっぱし、面白い……月音。 反応(リアクション)の1つ1つが。正直初心(ウブ)過ぎ、なんだよな。 ん…? そういえば、オレも結構シャイな方だと思ってたのに、何で結構スムーズに会話してるのかな? モカに、慣れてる気がする?)」

 何か引っかかるものがあった。
 まるで前にも会った事があるような感覚がしたのだ。

「(な、 わけないか……。会ってる(・・・・)、じゃなく 見てる(・・・)が正しいかな)

 この世界の事を考えたら 気のせいだろうと、カイトは深く考えるのを止めた。
 色々と、今後の事を頭の中で考えている時だ。周囲が騒がしくなってきたのは。

「うわっ!! 美しいッ」
「あんな美少女見た事ねえぞ!!」
「つっ… つきあいてぇ…!」

 初めは↑のような会話だったのだが、 次第に怒気や殺気が混ざってきた。

「両手の男は何だよコラ…」
「知るか! どけよッ!! コラッ」
「どかねぇえと殺すぞテメェ達!」
「殺す…」

 ↑的な声が聞えてきそうだった。もちろん、口にした訳ではない。ただただ、そう言う目つきとオーラを放ってきたのだ。

 当然の如く月音は、全身に悪寒を感じ、体を震わせていた。モカには向けられてないから、特に何も感じておらず、月音の仕草の意味が判らなかった。
 カイトは、もちろん右から左へ受け流すスルーの構えだ。

「へぇ~ やっぱカワイイな~~」

 今度は、直接、男が話しかけてきたのだ。

「あんた、確か 赤夜萌香(あかしやもか)って言うんだってな。 オレ 同じクラスの小宮砕蔵(こみやさいぞう)! っていうんだ。よろしく!」

 その男が現れたと同時に、周囲の怒気・殺気がおさまり、周囲は一気にざわめき出した。

「ところで 何でアンタみたいな美人がこんな男達と仲良くしてんだ? 全くつりあわねぇだろ?」

 砕蔵はカイトを突き飛ばし、月音の襟首を掴み持ち上げた。

「きゃっ!!」
「おっと…」

 カイトが突き飛ばされた為、モカはバランスを崩しカイトの手を離した。モカが倒れそうだった為、空いたほうの手で支えた。

「うわわっ!!?」

 月音はまったく手が出ず成すがままの状態になっていた。

「(こいつっ…さっきの…)」

 月音が砕蔵の事を思い出しているその時、砕蔵は乱暴に月音を叩き下ろした。

「砕蔵だ! あいつあの小宮砕蔵だよ」
「何でもタチの悪いはぐれ妖らしくて相当女好きで人間の女襲ったりしたらしい…」
人間社会(あっち)で問題起こしすぎてムリヤリこの学園にぶち込まれたらしい」

 また周囲がざわめきだした
 話を聞く限り、正直馬鹿らしい。妖怪と人間。確かに 身体の強さを考えたら 圧倒的に妖怪に軍配があがるだろう。……だが、猫目先生の話によれば、いや 話を聞く前から明らかなのだが、数が圧倒的に上だ。そして、軍と言う手段をも持っている。
 世界を壊す程の力を持っているのだから。……人間を甘く見ている典型的な男、そして ただのタラシ。

「こんなクズみてぇな男どもよりオレの方がずっとマシっしょ? 今から2人でどっか遊びに行かない?」

 砕蔵は、さらにモカに一歩近寄った。

「なあ? ちょっとつきあってよ」
「わ!」

 今度は、顔を近づけてきた。正直見てられなくなった為、カイトは。

「(……モカさん、月音を連れてここから離れて。俺が話しつけるから)」

 小声で、モカに離れる様に、と伝えた。モカは少し慌てて戸惑っていたが。

「(でも…)」
「(いいからさ! ここ学校だし、生徒同士だ。……とって食いやしない。……だろ?)」

 軽くウインクをして小声で話した。その言葉に少し安心したモカは頷くと。

「ごめんなさい!!」

 そう言いながら月音の手を握り走って離れた。

 月音は、手を引っ張ってくれたこの行動に赤面していた。恐怖よりも優った様だ。

「(まぁ、仕方ないとは言え……普通は男が女の手を引っ張って逃げるんだよ?? 月音?)」

 カイトは、その姿に苦笑しながら砕蔵の方に向いた。

「オレは…にがさねぇぜ… お前みたいないい女…」

 砕蔵は、舌なめずりをしながら呟いていた。まだ全然諦めてない様子だ。

「……女性はもっと丁寧に扱うもんだぞ? 砕蔵君?」

 その自分の欲望にストレートな物言いを訊いて、ため息を吐きながら カイトは もっともな事を言った。

「へっ… うるせぇよ。女にフラれた分際でエラソーな事言うんじゃねェ!」

 砕蔵は、まさか言われるとは思ってなかった様子で、少しイキリ立ってきた。モカと言う美少女を見つけて、舞い上がっている様子だ。
 だからこそ、カイトは 再びため息を吐く。

「いやいや、 お前さ、モカに「ごめんなさい!!」って 言われてんじゃん……。 そう考えたらオレよりやばいだろ。それって、フラれる言葉の定番だろ? 《ごめんなさい》ってさぁ……頭、大丈夫か?」

 的外れな事を言われてからの、清々しいカウンターだ。これには、砕蔵も完全に頭に来た様子で。

「んあ!! 何だと!? テメェ!!」

 己の手の形状を、明らかに大きく肥大化させて、殴りかかってきた。

「よっと!」

 カイトは、余裕を持ってその拳を躱した。

「アホ。ここは学校だし、入学早々に問題児扱いされるのも嫌だ。 それに、つまんないケンカはしたくないんでな。じゃあ、連れを待たしてるもんで」
「なんだ!逃げんのかコラァ!!」

 砕蔵が振り返った先にはもうカイトはいなかった。周囲の野次馬生徒達も、いつの間に消えたのか判らず、戸惑っている。

「っけ…覚えてやがれ モカを手に入れた後はテメェを潰してやる…」

 言われるだけ言われて、消えたカイトに、悔しそうに呟いた砕蔵は、廊下から姿を消した。




「さて… モカと月音はどこかな?」

 カイトは、2人を探し、一通り学園内を散策していた。『話をつける』とモカに言ったのだが、正直な所、つけたとは言えないだろう。少なからず苦笑いをしつつ、2人を探していた時。

「あ、……そういえば、自分に出来る能力や、自分の(しょうたい)についても 確認しないと。いざ聞かれた時、判りません、じゃ 洒落にならないし」

 カイトは、軽く腕を振った。
 この場所で確認を、と一瞬思ったが、以前女神の彼女に頼んだ時の能力が発動でもしてしまえば、間違いなく、校舎が壊れる。……いきなり校舎で技なんかぶっ放すのは、問題児以前の問題だ。だから、それは流石にまずいので屋上に移動する事にしたのだった。






 そんなカイトを見て、言葉を盗聴している女性がいた。
 遥か上空高く、人差し指と親指で円を作って 彼を眺めていた彼女は、慌てていた。

「ヤバい!! 確か、そのまんまの能力持たせてた!! 能力そのままにしてたら、流石に前の仲間達に正体ばれるかもだし。え、えっと……あの学園の理事長がそうだったよね? そ、それで あっという間に思い出したりしたら…」

 数日で思い出されてしまったら、命懸けで彼を救おうとしたアカーシャの気持ちを踏みにじってしまう結果になるだろう。だからこそ、もう少し介入することを決めた。

 そう、見ていたのは女神シェリアである。

「よし!」

 彼女は、何か思いついたのか、カイトの方へ向かった。







 そして、学園の屋上。
 休み時間だが、人気がなかったのは幸いだ。

「さて… 能力の確認をするか」

 だが、実際に悪魔の力ってどうやってるのか判らない。身体の何処に力を込めれば良いのか見当もつかないのが現状だ。

「(ん…… 何かそれらしき感じないな…)」

 頭に、己の力を想像して、思い浮かべても、……何やら集中してみても何にも起こらなかった。

「(確かに、体術は申し分ない。 砕蔵の攻撃も完全に見えた。止まって見えた。……それに、一瞬で動けた。 でも、肝心の自然(ロギア)系の力は?)」

 考えても分からない為、荒療治とは思ったが、とりあえず確かめる事にした。

「ん。この鉄パイプで自分をちょいどついて見るか。正直実感は無いけど、アレを使えてるのなら、流動する身体だったら、捉えられずに無効になる、筈だろう」

 カイトは、屋上に落ちていたいかにも不良が使いそうな鉄パイプを持った。

「りゃ!」

 掛け声と同時に、カイトは自分に向かって、鉄パイプを打ち下ろした。


 スカーーン!! と言う衝撃音が屋上に響き渡った。……もし、教室の窓とかを開けてたら、聞こえたかもしれない。

「いっ………たーーーーーーー!」

 確かに、恐怖心もあったし、ある程度加減したとはいってもそこは鉄のパイプだ。頭に打ち下ろした事もあって、結構痛い。

「い、痛い… クラクラする…」

 当然の成り行きだ。傍から見れば、おバカなのは自分だろう。
 カイトは、フラフラしながら立ち上がった。

「何だよ… あの女神さんちゃんと付けてくれてないじゃん…! もー! 欠陥能力じゃんか!!」

 カイトの叫びが屋上に木霊するのだった。





 
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