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ヴァンパイア騎士【黎明の光】

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黒主学園、開校。
  2

「これぞ本物の眠り姫、だな」



振り向くと、金髪の青年が笑みを浮かべて立っていた。
紫陽花色の瞳から放たれる視線は澪を通り越し、その先の樹里愛に注がれている。


―――同族?
目の前の男が放つ同族特有の雰囲気に、澪は眉を寄せた。
口に出して確かめなくてもわかる。彼が着用している制服は白――夜間部専用のものだ。

吸血鬼だからだろうか。
男の柔らかな微笑みが妖艶な、不敵なものに見えた澪は問い掛けた。



「誰だ?あんたは」



問い掛けに反応し、彼の瞳が初めて澪を映す。
柔らかいけれど、どこか傲慢そうな笑顔は崩さないまま青年は自らの胸元に片手を添えて、頭(こうべ)を垂れてから何も答えないままに澪の横を通り過ぎた。

…今のは、澪ではなく姉の樹里愛に向けられたものだろう。
当の本人にそれが伝わっているかは不明だが。


多数の生徒に混じり校舎に消えていく白い背中を見て、澪は首を傾げる。



「坊ちゃま、そろそろ……」



声を掛けられ車内を振り返ると、運転手が何やら困ったようにこちらを窺っていた。
同時に差し出されているのは懐中時計。
時刻を確認すると、午前9時45分だった。

入校式は10時から、という事を瞬時に思い出すと未だに眠ったままの姉を担ぎ上げ、片足で乱雑にドアを閉ざした。




「…初日から遅刻なんて絶対後免だ。あんたも行くぞ」




片手で姉の身体を支えつつ、余った片手の拳で助手席の窓を小突く。

白い制服を身に纏った端正な顔立ちの青年が、窓ガラス越しに赤い瞳を動かし、静かに笑って頷いた。 
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