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『茉莉花-マリカ-』

作者:零那
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『新学期』



零は家から逃げるのに必死。
公衆電話から茉莉花先輩にかける。
行っても良いか聞く。
迎えに来てくれる事も多かった。

中学生やのにブラすら着けて無い零を、見るに見かねてか買ってくれた。
でも、家に帰る前にはトイレで外して巾着に入れて隠しとく。
3年には実の姉が居るから。
バレん様に気を付けた。

家での姉は、養父と異様に仲良し。
零や母親には無愛想。
学校では、決まった友達と楽しそうにしてる。
移動教室とかで見かける度、憎たらしくてたまらんかった。

当時、無知過ぎて理解して無かったけど、茉莉花先輩は、姉と養父の関係に気付いてた。
確かに仲良しやけど母親の旦那と恋人関係とか有り得んやん?
おかしくて笑ってしまった。
茉莉花先輩の言うてた事が現実だったと知るのはマダ少し先。

茉莉花先輩は零に色々聞いてきた。
零が養父にされてきた事。
姉と養父の様子。
母親と養父の様子。
姉と母親の関係の変化。

暫く考え込む。
神妙な顔つきで言う。

『零、チャント児相に電話しよる?』

『たまに...。でもやっぱ、掛け合ってくれん。無意味な感じ』

『私も電話する!』

『えっ!』

『零、このままやったらアンタ養父に今より酷い事される!児相行き!』

『とりあえず早く保護して貰わな取り返しのつかん事になるっ!』

そう取り乱す茉莉花先輩...
取り乱す事自体珍しいから、呆気に取られてた。
零には何がどうなるんか解る由も無かった。

殴られ慣れてて、痛みを殺す術も知ってた。
筋トレと称した拷問も、辛いけど、異常な忍耐力がついた。
そのせいで、養父が楽しくないってレベルアップされたくらい。
身体測定は、養父の息づかいとか触り方とかが気色悪いけど、何とか耐えれた。
歌舞伎舞台の在る神社のトイレでの監禁は、虫が怖くて気色悪くて耐えれんくて泣いてたけど。

茉莉花先輩は、何も解ってない零に、悲しそうに言う。

『零、早く家を出ること、其れしかない...ウチおいで!』

『そんな事したら茉莉花先輩に火の粉飛ぶし無理っ!!』

『そんなんなんぼでも受けたる。...現状知ってる大人は?』

『警察の人は知ってるけど、証拠とか何とかで無理みたい。でも、ご飯くれたり勉強みてくれたり優しくしてくれる。大人の世界は色々面倒なんやって...』

茉莉花先輩は、泣きながら零を抱き締めてきた。
何か解らんけど何で泣いてんの?
知らん間に何か傷つける事言ってしもたんかな?
謝った。
更に泣かれた。

絶対に人前で泣かんって皆が言ってた茉莉花先輩が、今此処で泣いてる。
どうしたら良いか解らん。
パニクった。
この人はホンマに茉莉花先輩?
そこ疑い出すくらいホンマ信じれんくらい泣き止まん。
零は、ただただ茉莉花先輩を抱き締める事しか出来んかった。


 
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