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首輪

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3部分:第三章


第三章

「その首輪とね」
「そうかも知れないわね」
 菖蒲も彼女のその言葉に頷いた。
「若しかしたらね」
「それに」
 ここで薫はさらに気付いたのだった。
「一年の間にもね」
「あっ、そうよね」
 菖蒲も彼女のその言葉に頷く。
「少しずつだけれど首輪してる娘出てきてるわよね」
「それで時々ぼうっとなってね」
「何なのかしらね、本当に」
 菖蒲もここで首を傾げることになった。
「あの首輪って」
「さあ。先輩達は皆さんだし」
 またこのことを言う薫だった。
「とにかく何かあるのは間違いないわね」
「そうよね」
 そんな話をしていたのだった。そしてある日のことだ。薫は夜遅く不意に目が覚めた。トイレに行きたくなってそれで目が覚めたのだ。
 ベッドを出てそのうえでトイレに向かう。するとだった。
 何か地下の方から声が聞こえてくる。苦しいような、それでいて快いような。そんな声が下の方から聞こえてきたのである。
「何、その声」
 それを聞いて不気味なものを感じる薫だった。
 それでトイレを済ませた後で寮の一階に下りてそのうえで地下に行く階段なり扉があるかどうか調べた。しかし結局それは見つからずその日はそのまま眠りに戻った。
 部屋に帰っても先輩達は相変わらずいない。そのことにも不思議に感じながら眠った。そしてそれの翌日のことだった。
 学校に来るとだ。何と菖蒲の首にもだ。その首輪があるのだ。黒いその首輪をしてそのうえで恍惚とした顔になっていた。
 薫は驚いてその菖蒲に声をかけた。そのうえで問うのだった。
「あの、何で首に」
「ああ、薫ちゃん」
 菖蒲はぼんやりとした顔になっていた。そして我に返った様子で薫に応えてきた。その顔はまだ恍惚としているものが残っていた。
「おはよう」
「あんた何で首輪を」
「ああ、これ?」
「何でなの?それは」
「昨日ね」
 その顔でまた言ってきたのだった。
「昨日からなのよ」
「昨日何があったの?」
「とてもいいことがあったの」
 こう言うのである。
「それでなの」
「いいことって」
「ねえ、薫ちゃん」
 その顔で薫にまた言ってきた。
「よかったらね」
「ええ、よかったら?」
「今夜だけれど」
 彼女に静かに声をかけてきた。
「どうかしら」
「どうって」
「昨日私がしてもらったことを薫ちゃんにもね」
「私にも!?」
「そう、薫ちゃんにもよ」
 こう彼女に言ってくるのである。その恍惚とした目はぼんやりとしたものだったがそれ以上に濡れて、しかも妖しい誘いを彼女に見せている。
 その目でだ。薫に対して言ってくるのである。
「それをしてもらいたいのよ」
「してもらいたいって」
「今夜ね」
 また時間を言ってきたのである。
「今夜だから」
「今夜一体何が」
「すぐにわかるわ」
 今はこう言うだけだった。
「すぐにね」
「何なのよ、本当に」
「悪いことじゃないわ」
 菖蒲はそのことは確かに話した。
「ただね」
「ただ?」
「苦しいし切ない気持ちになったりもするけれど」
 薫にとってはおかしなことだった。少なくとも彼女は今はそのことを言われても理解できなかった。それで首を傾げさえしていた。
 
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