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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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GGO編
  第213話 広がる輪

 
前書き
~一言~

 これが、GGO編ラスト投稿になりますっ! ……GGO編? じゃない様な気もしますが……、プレイしてる世界はGGOなので、問題ないですよね?? 笑

 正確なコラボ、そのタイトルをはっきりと文字にした訳ではないですが……、今回のお話の世界。一体何とくっつけたのか……、凄く露骨なので、判る人は一発かと思われます。安直な気がしましたが……。やはり オリジナル話は難しいです…… 苦笑

 この二次小説を読んでくださって、ありがとうございます。これからも、頑張ります!!

                          じーくw

  

 



 舞台は、新たな世界(Dawn of the Dead)

 文字通りだった。本当に新しい世界だった。だが、第一印象はそんな物騒なサブタイトルが似合う様な世界ではない。それは、レイナの表情を見たらより判るものだった。

「あ、あははは……、うんっ 大丈夫! これなら、大丈夫だよっ! 頑張ろうねっ! リュウキ君、シノンさんっ」

 レイナは、このイベント開始してから、本当にずっと怖がっていたのに、あっさりと変わっていたのだ。《一目瞭然》と言う言葉の意味がよく判る、と思える程に変わっていた。

 始まる当初、レイナは何の捻りも無く、以前の様に、怖がってる事を隠している様子も全く見えなかった。……と言うより、隠す様なそんな余裕が無いのだろうと思える程、怖がっていたのだから仕方がないだろう。
 そして、この世界に 転送される時もずっと リュウキとシノンの2人にしがみ付いて離れなかった。シノンもリュウキも 苦笑いをしながらも、支えていた。確かに怖がっている姿は愛らしいけれど、それ以上は何もしてないし、しっかりと隣にいた。……行き過ぎると、もう 本物(・・)苛め(・・)になってしまうかもしれないから。そんな事は リュウキは勿論、シノンも望んではいないし、みたく無いから。それに、その本物(・・)は、ある意味では シノンも現実世界では同じだったから。もう 乗り越える事は出来たけれど、事実は変わらないから。


 一先ず、話を元に戻そう。


 転送される際、目の前が真っ暗になり、おどろおどろしいBGMが流れ出たかと思えば、画面の中央に

『このイベントは 過激な表現やグロテスクな展開が含まれています』

 と言う一文が現れた。基本的に年齢フィルターは掛かっているが、推奨年齢はR15だから、イベント前に、『保護者の承認を……』からの確認は必要ないから、別にプレイ自体は問題は無い。だが、その文章はまるで血文字の様な真っ赤な文字だったから、更にレイナは身体を固くさせていたのだが。

 降りたった世界は、あの荒廃したGGOの世界ではなかった。

「第7地球、って呼ばれてる世界らしいわね」
「ああ。……見も蓋もない言い方だが、極端な後付けの設定感が否めない。GGOの世界観を考えたら」
「まぁ、最終戦争の後の地球だったからね。……グロッケンの代表者達が、新たに暮らせる星を探して、ついに見つけて、環境や整備を整えて……、人も少しずつだけど移住して、更に増えて。……で、今の世界になったって訳だから。確かに 無茶な、無理矢理な感じはするけど、一応筋は通ってるし。プロローグ的な文章もあったし。この際かかった時間は? とか どこにそんな余裕が? とか 野暮なことは言わないわ」

 広がる世界を眺めながら、レイナやリュウキ、シノンは苦笑いをしていた。

 GGOの世界では、長らく存在していないと言われている緑が広がっており、道路も整備されているのだろうか、新品同様に輝きを放っていたのだから。

「あははっ、でも この景色、この道 地平線の向こうまで ずーーっと続いてるけど、日本がモデルじゃないかもだね?」
「そうだな。……太陽の見え方も、違う気がする」

 リュウキは、大きな夕日が照らす景色を。緑が黄金色に染まっていく景色を眺めながら、レイナの言葉に頷いた。



 リュウキは 太陽は好きだ。

 暖かく全身を包んでくれるから。……良い思い出だけじゃないけれど、今でもきっと、……大好きだ。





「へい。新人の御三方、そろそろ行くぜ? 着任早々に遅刻なんて、洒落にならない。そんな伝説は作りたくないしよ」

 そんな時だった。後方に停車していた車から、声が聞こえてくる。

「あ、レオンさんっ! はーい! わかりましたーー!」

 レイナは、手を上げて 駆け出した。レオンと呼ばれる人は、NPCであり 愛車の窓から顔を出して呼んでいた。そして、これから向かう先へ送っていってくれる。

「うーん、でも まさか 移住した先で いきなり見習い警察のマネごとさされるなんてね」
「GGOの世界だ。銃の撃ち合いを殆どメインにしていたし、対Mobとの戦闘もオレ達は殆どプロフェッショナルと思われても、いや、認識されても おかしくない。何やらこの世界ででも、犯罪が後を絶たないそうだから、抑止とも言えるかもな。……それに、世界観をみてみたら、今の所、普通の世界。……普通の人間が《弾道予測線(バレット・ライン)》を見て、弾丸を回避したり、とか 出来ないだろ? だから、依頼者にとってみれば、オレ達は スーパーエージェント、って感じに優遇されるみたいだ」
「まぁ、確かに。……一応ゲーム的には、一応各プレイヤーの先着順に価格が変わるみたいだけど、これ クリアしたら その働いた分の給料として、お金も相当くれるみたいだしね」

 弾丸をよける事が出来る人間など、基本的にはGGO、グロッケンで戦い続けてきた兵士(プレイヤー)達だけだと推測出来る。後々の展開で 様々な強敵が現れて、と予想は出来るが、……その強敵の種類が違う、とも容易に推測が出来ると言うものだ。
 このイベントのサブタイトルを考えても。それよりも……、もっともっと安易に予想出来る材料があるのだ。

「だが、……この展開に、このNPCの名前。……それに警察署、ねぇ……」

 リュウキは、思わず笑ってしまっていた。

 まだ、根強く人気を誇っているそれこそ超がつく程世界中で愛されていると言っていい大型タイトルのゲームに、似ている。名前とか同じなのだから。

 著作権は大丈夫なのだろうか? とも思えたが 一応 明確に題名は言ってないが、『GGOとのコラボ』と謳っている面もあったから、別に問題視しなかった。……そもそも それは、プレイヤーが考える様な事じゃないだろう。

「うん? どうしたの? リュウキ」
「いや。……ネタバレは面白くないだろうし、早く行くか。レイナも あのNPC……《レオン》も待ってる」
「?? ん。了解」

 リュウキとシノンは、レイナ達の待っている車。今の現実世界で考えたら、かなり年式の古いであろうレオンの愛車の中へと入っていった。





――……ゲームがここから始まったのだった。






















「…………」

 そう、ゲームが始まった。
 本当に、あの綺麗な夕日を見終わった後に直ぐ後に始まった。OPが終わった後、安心しきった後に、始まったゲームの本当の内容は、……彼女(・・)には かなりのダメージを与えた様だ。

「ふ、ふ、ふ……」
「れ、レイナ? 落ち着いて、落ち着いて。ほら、傍にいるから」

 そう、レイナである。
 シノンが必死にレイナを慰め続けていた。

 確かに、レイナはアストラル系のモンスターは大の苦手だった。と言うより、ホラー要素は、全ての面で苦手だと言う事は今までの付き合いでもよく判っている。今回のはホラーなのは勿論だが、それ以上に ちょっと スプラッター系が色濃く出ている。勿論推奨R15となっているから、まだ マシな部類に入るのだろうけれど、レイナにとってはどちらでも同じだった様だ。

「ふぇぇ……」

 ……泣いてしまったから。初めて お化け屋敷に来た子供の様に……。

「……ちょっと、タイムだ」
「ええ。直ぐ傍にチェックポイントエリアがあるし……、これ以上は、駄目だと思う」

 だから、2人とも即決した。
 
 それは、警察署にある待合室の様な場所だった。

 色々な課に分かれていて、立札もあるのだけど、今は誰もいない。24時間、基本的には機能している警察署だと言うのに、本当に静かだった。 勿論それには訳がある。

「その、ごめんな。レイナ。断らなかったけど、やっぱり 無理してでも 止めた方が良かった」

 リュウキは、レイナに謝っていた。
 レイナは、少し落ち着いた様だが。やっぱり 怖い様だ。

「今日はもう止めにする? これ以上は可哀想よ」

 シノンも そう言っていた。大型イベントは確かに楽しみにもしていた事だったが、それでも レイナを悲しませるくらいなら、と想っているのだ。

「だ、大丈夫……だよ。うん。私も、少し……落ち着いた、から……」

 レイナは、涙を拭って 必死に立ち上がった。

「駄目だ。……無理するな。仮想世界とは言え、身体は動かないまでも、精神は繋がってるんだから。オレ達はそれをよく知っているだろ?」

 リュウキが座らせようとして、レイナの両肩に手をかけた。
 それでも、レイナは必死に首を振る。

「うん。仮想世界だから、よく知ってるからこそ、だよ。今の私にとっては、本物なの。今 この世界だって、本物なの。……確かに、すっごく怖くて、ちょっとその……な、泣いちゃったけど、だけど、このまま、あんな《小さな女の子》を、放っておく事なんて、私には出来ないよ」 

 レイナは 必死に涙を拭うと、リュウキの目をまっすぐに見据えた。

 小さな女の子、とレイナは言っているが所謂それもNPCであり、ゲームだ。確かにゲーム、所詮はゲーム、たかがゲームだと人は、そう言うレイナを笑うかもしれない。

 だけど……、この場にいる者達は誰も彼女を笑ったりしなかった。

「……だな。判った」
「はぁ……。仕様がない。ちゃんと守ってあげるから。……へカート(この子)で」

 リュウキとシノンは頷いた。

 シノンは、愛銃であるへカートの自分の身体をもあるかの様な、大きな銃身を撫で、リュウキは、ホルスターに収めていたマグナムとナイフを確認していた。

「残弾数には限りがある。一先ず、ここの警察署の武器庫に向かおう。……残念ながら、持ち込んだ弾丸が大分少なくなっていたみたいだからな」
「ええ。了解。そこに向かいながら、あの子を探しましょ。それで良い? レイナ」
「う、うん。私も、頑張る。頑張るからねっ!」

 レイナが持っているのは支給された自動拳銃(ハンドガン)、《ベレッタM92》。
 9mm口径で比較的扱いやすい銃だったから丁度良かった。
 後は、基本的にレイナは細剣使い(フェンサー)だが、SAO時代に少し使っていた《短剣(ダガー)》、その経験もあって、ナイフを使う事自体まるで問題なかった。

 

 これまでの経緯を説明しよう。


 今回のイベントのサブタイトルにあった通りな展開が待ち受けていたのだ。
 そう、《Dawn of the Dead》 翻訳しようとすれば《死者の夜明け》であり、昔の映画ででも原題名がそれだった。そこから、判る人は直ぐに連想する事が出来るだろう。

 そう、相手は《ゾンビ》だった。

 新人警察官として、配置された警察署、《グランドシティ》にある警察署に向かう途中に、事故に遭遇した。レイナは驚いて急いで助けに行こうとしていたが……、一先ずリュウキが抑えた。大体の展開が読めたからだ。

 レオン自身はNPCだから、そして 熱血警官らしく 一目散に飛び出して、確認をしていた。倒れた人は、それなりに規制はされているが、それでも血を流していた為、それを見て……レイナは震えてしまった。シノンも流石に同じだ。

 だが、更に驚いたのはそこからである。


『死んでいる』と言っていたのに、その数秒後、《ソイツ》が起き上がったのだ。
 明らかに《人》ではない表情をして、レオンに襲いかかったのだ。そこから、ゲームは始まり急いで彼を救出した。


 それからは、早かった。

 突然暴走車が突っ込んできたかと思えば、その衝突で車は大破、炎上。何とか逃れたのだが、レオンとは、燃え盛る車を挟んでしまって、且つ狭い道路だった為、合流する事が出来なかった、だから3人と1人に分かれた。『警察署で合流しよう』と言う事だ。

 その警察署に行くまでも 本当に沢山、ゾンビ達は現れた。一体何処に隠れていたんだ? と思える程に街中に溢れ出てきた。青ざめるレイナを何とか助けながら、シノンとリュウキは無事に目的地へと到着。

 レオンを探していた時に、小さな女の子にあったのだ。たった1人で この修羅場に。レイナは怖がっていたけれど、その少女に出会って気を取り戻すと、慌てて助けようとした。たった1人でこんな危ない場所にいたら! とだ。

 その容姿から、何処となくレイナは ユイを連想させたのだろう。
 だけど、追いかけると その少女は怖がってしまって、逃げてしまったのだ。

 このイベントの最終目的は、街からの脱出であり、その過程で他の生存者の救出。と言う訳だった。



「さて、一気に進めようか」
「ええ」
「う、うんっ! 待っててね! えと まだ名前……判らないけど、きっと助けるからっ!!!」


 目的がはっきりし、レイナも元気を取り戻した、といえばおかしいが とりあえず何時も通りのレイナに戻った。

 第3回BoBの優勝者と元血盟騎士団副団長・補佐。

 優秀な兵士と言えば、これ以上無い布陣だろう。



 そして、その日のGGO内でのイベントは、サービス開始初日、最高スコアを叩き出し、また《Mスト》で持ち上げられる結果になるのだった。























~エギルの店 ダイシー・カフェ~




 何時も通り、スローテンポなジャズが流れ出る。あの殺伐とした世界が、恐怖の世界が嘘の様だった。あの世界の街中も何処となくひと世代前の印象もあったが、それが更に恐怖を掻き立てる切欠でもあったのだ。

「ははは! よくやったな? レイナ。お前さん、アスナと一緒で怖いの苦手だったんじゃないのか?」

 カウンターの向こう側に絶つ、チョコレート色の肌を持つ巨漢。まさに、歴戦の兵士といってもいいであろう風貌の男、GGOの世界ででも十分通用する壁男、エギルがワイングラスを拭きながら、笑っていた。

「んもうっ! 良いじゃん! 私だって、克服~って思ってたのっ!」
「ははは。ほんとか? ほれ、もうちょっとしたら 来る2人の事が気に掛かってたんじゃないのか? 乙女だねー」
「ぅぅ……」

 ニヤニヤと笑うエギル。
 その真っ白いシャツとその結んだ蝶ネクタイがとてもユーモラスさを感じさせてくれるのだが、今はそんな事は、今思ってすらない。

「もうっ!! エギルさんっっ!!」
「はは。冗談だよ。……お前さんに色々してたら、怒られちまうしな? あの白銀様にな」

 エギルは更に笑って、準備を始めた。

 そう、今日はエギルの店で昨日の打ち上げを約束していたのだ。

 玲奈は、ここまでリュウキに、隼人に送ってもらった。次にシノン、詩乃を迎えに行ったのだ。あまり 来た事のない秋葉原駅東側の再開発地区の更に先だし、慣れていないだろうという事で、隼人が駅まで迎えに行く事になった。
 
 その間、玲奈はお留守番、と言う事。

「ふん、だ。……詩乃さんは、大切なお友達だもん。……それは隼人くんも同じ、だもん。そんなに気にしてないもん」
「ははは。……ま、大丈夫だよ。お前らは そんな風になったりしないさ」
「……そんな風ってなに??」
「ドロドロの三角関係」
「……も、もうっっ!!」
「どーどー、Just a momentだ、レイナ。抑えて抑えて。冗談だって」

 そんな感じで賑わっていた所で、隼人の独特な静かだが低音の排気音(エグゾース・ノート)が、店内に流れるBGMに混じって聞こえて来た。

 そして、店の扉もゆっくりと開く。その先、まず入ってきたのはマフラーで口元を覆っている詩乃、遅れて入ってくるのは、銀色の斜めラインが入ったネックウォーマーを付けた隼人だ。

「ほれ、来たみたいだぜ?」

 エギルは、あくどさ満点の笑みを見せながら、顎をしゃくり上げた。
 そして、丁度エギルの顔を見た事で、隼人は少し表情を歪めた。

「……ん? 妙な噂話でもしてたのか? エギル」
「ど、どうも。こんにちは」

 ため息を吐く隼人と やっぱり 現実世界ででもシノンと同等と行くにはまだ日が浅い詩乃。それでも、2人とも笑顔だったのは言うまでもない事だった。



 エギルに色々とサービスをして貰いながら、打ち上げは始まる。



「でも、あの子、シェリーちゃんが無事で良かったよー。……まさか、お父さんが 最終BOSSだったのは 驚いたし、悲しかったけど」
「確かにね。物語としては ありがちな面もあるけど。訊いた話じゃ、昔のゲームをGGOの世界で再現したんだって。銃を使うゲームで メジャーなのは やっぱりGGOだから」
「確かにな。殆ど再現しているだけだったから、VR世界でのリメイク、と言うよりはリマスターかもしれなないな。……それでも 面白かったが」
「あぅー。でも、私は暫くは良いかな……、あの世界は……」

 話の内容はやはり、あのイベントの事だ。

 サバイバルホラーのゲームをクリアした事で、玲奈も耐性が着いたのだろう。と思えるほだが、実はそれ程でも無かったりする。

 昨日、イベントを無事にクリアする事が出来た後、玲奈は自分の部屋じゃなく、明日奈の部屋で一緒に眠ったのだから。……それは 玲奈と明日奈の秘密になっているのだった。

「それにしても、やっぱり リュウキ、っと 隼人は凄いと思うよ。ハンドガンで 最後のあんな大きい奴の弱点部分を簡単に撃ち抜いちゃったんだから。へカートで狙おうと思ったけど、大量の触手みたいなのが邪魔してたから出来なかったし」
「そーだね。隼人くんがいなかったら、私たち、綺麗にあの列車の中で吹き飛んでたと思うくらいだよ。あー、今思い出しても焦るなー。ああ言う時間制限があるイベントって……」

 3人の話はどんどんと盛り上がり、クライマックスの部分。

 街からの脱出に使用したのは、貨物列車だ。列車の整備をレオンと協力しながら 行って、動かす準備を整えて、いざ脱出。と言う時に最後の戦いが始まるのは どんなゲームでも定番だろう。

「基本的なモンスターの弱点は 頭だったり、目だからな。後はただ 単純にハンドガンスキルを上げていたからに過ぎないよ。オレからすれば、玲奈と詩乃が、シェリーをフォローして、列車の緊急停止ボタンを押させた所も凄いと思うがな?」
「あはっ。だって シェリーちゃんは とっても賢いんだよ? ユイちゃんときっと同じくらいだよっ」
「あはは……、確か 映画の知識で ボタンの事を知ってた、って言ってたけど……あの歳で覚えてるのは私も凄いと思ったよ。もう、途中からNPCなんて、思えなかった程だし。別れた時も残念だったしね」
「あぅ……、私もそれ 思ったよ」

 隼人達が化物を貨物列車後方へと追いやった後、一緒に脱出したシェリーを2人がフォローして、列車を止めさせた。これも定番だが 列車の自爆プログラムが動いていた為、シェリーに止めさせたのだ。


 全てが終わった後、最後の最後に頼りになるのは 自分達の脚だ。


 長い長いトンネルの中での戦闘だった。出口ギリギリの位置で、停車する事が出来たから、何とかトンネルから脱出し、爆発の衝撃と炎を躱す事が出来たのだ。

「うんうん。でも シェリーちゃんには 幸せになってもらいたいよね……。レオンさんもしっかりしている様だけど、なーんだか 気障っぽい所もあるし……」
「ん。それは、……まぁ 警察署で 女の人と歩いていたのを見ての偏見じゃない?」
「えー、そうかな? ほら、もう1人、女の人。すっごく綺麗で、大人って感じの女の人といた時、な~んか そんな感じしなかった?」
「あ、それは……判るかも……」

 そして、話題は、レオンの女関係の話で持ちきりになった。

 その辺については、隼人にはよく判らないから、首をかしげるだけだ。

「ほら。……この話題は、お前さんには少し難しかったか?」

 エギルが、タンブラーに入れた烏龍茶をそっと差し出してくれた。
 以前、痛い目にあったから、飲む前は勿論確認をする。……アルコールじゃない事を。

「馬鹿。お前さんはこの後、送っていかなきゃならんだろ? 店側の責任問題にもなるし、アルコールなんて、出さないって」
「オレに関しては、確かに自業自得の面があるが、他の。……未成年のリズやレイナ達に、アルコールの入ったジュースを提供したのはどこのどいつだっけ?」
「……1%未満だから、問題なし!」
「はぁ……」

 苦笑いをしつつ、タンブラーを口に運ぶ隼人。

 そのやや焦げた琥珀色の烏龍茶、そして それを収めているタンブラー。飲むたびに、からんっ と氷同士やタンブラーにぶつかって奏でる音が、まるで 一杯やってる! 様な印象を持たせるが、間違いなくノンアルコール、お茶である事は此処で断言しておこう。
  
 隼人も、以前の……、痛い目にあった事に 関しては、かなり 懲りているから。

「それにしてもよ。随分と面白そうなイベントだったんだな。何分、再現したのが古いタイトルのゲームの奴だし、ネットじゃ結構な大盛り上がりだったらしいぞ? それなりの年齢のユーザー達中心で」
「まぁ、な。オレ自身は、原作はした事無いけど、まだ根強く人気を博してるし、いつかはしてみたい、って思ったから、大体の世界観とかは解ってたし。……うん、あのイベントの難易度とか全部含めても 面白かったよ。ホラー系が大丈夫だったら、また メンバー達と一緒にしたいがな」
「ははは! そりゃ 無理っぽいだろ。レイナは ちょっともう無理、ってさっきから言ってるし、アスナだってそりゃ論外だ。アインクラッドの65、66層が可愛く見える程のもんだからな。リズベッドは……、まだいけるかもしれんが、シリカに関しては 無理だろ? リーファだって、確か怖いのは苦手だって訊いてたし。……改めてメンバーに提案しようもんなら、から大顰蹙(ダイヒンシュク)かもしれんぜ? クラインは……、ま 女の子が少なくなりゃ、来ない気もするしな」
「ああ。それは判る」

 そう、もう殆どギルド。チームだと言っていいメンバー達は殆どがそう言う系統のゲームが苦手っぽいのだ。明言してるのがアスナ、レイナ、リーファ、シリカであり、リズは訊いてはいないものの、どっちつかずな感じだろうと予想出来る。本人を前にして言えば『私の事、どー思ってんのよ!』と怒られそうな気がするので、口に出して言わない方が吉だろう。

 ……シノンも特には問題なさそうだった。

 だが、本人曰く『ゾクゾク系は大丈夫だけど、突然のびっくり系は苦手かな』らしい。
 だけど、今回のイベントでは、突然のトラップや突然のクリーチャー出現など、多彩な要素満載だった。だから、普通はびっくりする場面は多かった筈だが、そこは歴戦の狙撃手(クール・スナイパー)であるシノン。冷静に見極めて、あのへカートの50口径の弾丸を撃ち込み、殆ど倒してしまったから、もう説得力はあまりない。

 後クラインは、仕事があって参加出来なかったのだが、やはり女の子が少ないと乗り気も下がる様なのは、周知の事実なのだ。

「そう言えば、ALOの方では 何もないのか? ……そろそろ《開通》しても おかしくないだろ?」
「はは。お前さんだったら、注目してるとは思ってたよ」

 エギルは笑いながらそう言っていた。
 隼人が気になっているのは、ALO内でも勿論あった。それは、あの浮遊城アインクラッド。今 一番行きたい場所が、ALO内に存在するアインクラッドの中にあるから。

「……まだ、正式にはきていない。が今年中に連絡配信はする事は間違いないらしい」
「そう、か。……それは楽しみだ」

 隼人は、エギルの言葉を訊いて 笑みを浮かべた。

 そこ(・・)へ行く為に 色々と努力を重ねているのだから。


「ねー、隼人くんっ。 隼人くんも、そう思うよね?」
「……ん? 何がだ?」
「もぅっ、訊いてなかったの? 最後の所、だよ。あの貨物列車のゲートを開けようとした時に出てきた、BOSSとの戦いの時の事だよ」

 レイナは指を立てながら説明をしていた。

 列車での決戦は 本当にラストの戦い。……が、それに負けない程の戦いは何度かあったのだ。

「ほら、最後の最後で危なくなった時、助けてくれた人がいたじゃん? 全然倒れなくって、皆の弾も切れそうになって、接近戦じゃ殆どダメージ与えられなくて、更に時間も迫ってて……、八方塞がりだった時の」
「……ああ。あったな」
「ええ。まさかへカートの残弾全部当てても、倒れない、倒せない相手がいるとは思えなかったから、……本当にびっくりした」

 確かに、対物ライフルの攻撃を何度も受けても倒れる事が無かったのは驚愕モノだった。どんな強靭な身体であっても身体自体が鋼鉄ででも出来ていない限り、バラバラになりそうなのだが、それはゲーム仕様だと言う事で、納得した。

「最後に助けてくれた人って………、きっと あの人(・・・)だよね?」
「状況的に考えたらそうよね。他にあの場所にいる人なんて、いないと思うし」
「……だな。それは オレもそう思うよ。所謂 命懸け、だったしな。オレ達の為に。いや レオンの為、かな?」
「あはははっ そーかもねー!」

 その後も、暫くはあの世界ででの話が続く。
 怖がっていたレイナだったが、もう吹っ切れたのだろうか、或いはもう戻ってきたから大丈夫なのか、……そんなに怖くなかった場面の話は 結構乗り気で話をしていたのだった。









 そして、更に時間は過ぎる。楽しい時間であればある程、進む速度はとても早い。

 エギルがサービスしてくれた、デザートメニューの皿も空になり、皆で紅茶を楽しんでいた時、話題はALOへと向かった。

「そう言えばさ。詩乃さんは ALOの世界には慣れたかな? えっと確か……2週間くらい前に、キャラを作ったんだよね??」

 シノンとして、ALOの世界ににもキャラクターを作っている事は、皆周知の事だった。
同じ世界で一緒に冒険が出来る事は やっぱりレイナにとっても、他の皆にとっても嬉しい事だ。以前シノンがリュウキがGGOの世界にまだいてくれた事に対して、喜びを感じた事と同じだ。

 自分達の好きな世界に友達が来てくれる事が嬉しかった。だから、訊いてみたかったのだ。

「……う、うんっ。最初は随意飛行に随分と苦労をしたけど、今は何とか。弓の扱いにも慣れてきたしね?」
「ははは。そうだったな。ちょっと、店の弓の性能に不満がある、って確か言ってたよな? 詩乃は」
「だ、だって。やっぱり GGOの世界にいたから、射程距離とか全然違うし……」
「まぁ 気持ちは判らなくもないけど。あ、でも リズに今度作ってもらう約束してるんだろう? まぁ 金額は弾むと思うが、市販系より性能はかなり上だよ。保証する」
「うん。時間が合わなかったから、まだ だけど。色々と訊いてみて 弓のデザインも見せてもらって、凄く素敵だった。ふふ。楽しみにしてるんだ」

 詩乃は笑顔をみせながらそう言っていた。

「あはははっ ALOでのイベントクエストも一緒に行こうね? 詩乃さんっ! ……それに私、GGOじゃ、ちょっと残念なプレイだったけど、ALOだったら きっと、大丈夫だからっ!!」
「あ、うん。でも、GGOでも玲奈さん、凄かったよ。銃は慣れてない筈なのに、沢山当てれてたし。……ふふ。それに とても……可愛かった」
「……へっ??」

 可愛い、と突然いわれて 玲奈は 表情を一気に赤くした。
 詩乃に、そう言われたのは 初めてで……、でも。

「う、ぅ~~、それって、詩乃さん…… まさか 怖がってる私を見て楽しんでただけなんじゃ……」
「ふふ、そんな事ないよ」

 詩乃は少し頬を膨らませている玲奈に向かって微笑みかける。

 彼女とたくさん接して、たくさん話して、……詩乃は改めて思った。


 《結城 玲奈》 と言う人が本当に素敵だと言う事を。


 彼女の言葉は、周りを暖かくしてくれる。周りに笑顔をたくさん作ってくれる。心を落ち着かせてくれる。それは、初めてあった時もそうだった。
 だからこそ、よく判ると言うモノだった。



――隼人が、好きになった理由が。



「ははははっ」
「ちょ、ちょっとー! りゅーきくんも笑い過ぎだよっ! もうっ」

 詩乃が、横目で見てみると 本当に楽しそうに隼人と話をしている。詩乃自身も隼人の事が好き。……だけど、2人のやり取りを見ていたら、嫉妬の類より、その何倍も笑顔に、心、穏やかにさせてくれるのだ。



『私は、第二ラウンド、するんだけどねーっ!』



 その言葉は、以前リズに訊いた事だ。隼人に関しての心の機微をあっさりと見抜かれてしまって、以前に話をした時に リズにも似た様な事があった、と言う事を訊いた。それは、シリカだって同じとの事だ。


――これが、普通なのかな。やっぱり……。確かに少し苦しい時もあるけど、それ以上に……。


 例え恋が実らなかったとしても、傍にいる事は出来るだろう。……本当に大切な友達として。親友として。

――……《朝田 詩乃》 としてではなく、あのGGOの世界で勇猛に戦っている《シノン》であれば、どう言うだろうか。 

 自分自身の事だが、中々答えが出てこなかった。だけど、これだけは判る。
『シノンだったら、前に進み続ける』と。


 そんな時だった。


「まぁ、詩乃が言いたい事はよく判るよ」
「……っ!?」

 色々と考えていた時に突然、話を振られてしまったから、少し驚いたのだ。

「はは。玲奈が可愛い、って事が」
「も、もうっっ!! りゅーきくんっっ!!」

 にこっと笑って言う隼人と、顔を真っ赤にさせて怒る玲奈。
 少しきょとん、とした詩乃だったが、直ぐに笑顔に戻った。

「でも、それ ちょっと惚気に聞こえるかな? 隼人が言うと……さ?」
「っ……、そ、それは……」
「あぅ……///」


 
――いつまでも、変わらない。ずっと、友達でいて欲しい。



 そんな人達が、出来るなんて ほんの数週間前までは考えられなかった。だからこそ、強く思う。

 詩乃は、そっと 隼人の左手の上に、自分の右手を添えた。

 少し、照れくさかったけれど、しっかりと隼人の顔を、目を見て笑顔で声に出さない様に、詩乃は思いの丈を隼人へと向けたのだった。







――私の手を、握ってくれて。……たくさんの輪を紡いでくれて、……ありがとう。




 
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