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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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GGO編
  第212話 新たな世界

 
前書き
~一言~


 明けまして、おめでとうございます。
 今年で、マザロザ編まで! 終わらせられるように、何とか頑張ります!

 大晦日の昼までが異常だったのですが、何とか正月前後は ゆっくりと出来る? かなぁぁ とか思いながらせっせと色々やってます・・・・・・。《師走》は去ったはずなのですが……、と愚痴は以上にしておきます!

 さて、ちょっと長くなりそうな感じがする……のですが、そんな長編にするつもりは有りませんのでw マザロザ編が近づいて来てるので、強く思うのかもです。

 最後になりますが、この二次小説を読んでくださって、ありがとうございます。

 2016年 今年もどうぞ、よろしくお願いします! 

                               じーくw 

 


 2015年 12月26日 AM 11:00


~SBCグロッケン 商業街 エイビーロード~


 それは、GGOの世界での事。
 首都のグロッケン、商業街にある酒場《エイビーロード》。その酒場の奥側の席で談笑する3人組。3人の美少女(・・・)がいた。

「………成る程な。さっき(・・・)のは そう言う事情、だったのか」
「あ、あははは……、私 びっくりしたよー。だって、リュウキくんを見るなり、すっごい慌てて逃げちゃうんだもん。まさに 一瞬だねー」
「……まぁ、私も驚いたけどね。うん。あれは 流石に。掴みとしてはOKだとは思うけど」

 美少女、と言う性別のプレイヤーは2人であり、1人は男。見た目が完全に女の子だから、そう間違われても仕方がない。更に言えば間違いなくGGOの世界でも屈しの美貌。可愛らしさを持つ者達だから(男も含めて)、本当に仕方がない。

「あはっ。だって、りゅーきくんだもんね~♪ やっぱり どの世界ででも、人気者なんだよねっ?」
「……っ。からかわないでくれよ、レイナ。あまり、オモイダシタクナイ」

 そう、会話から判る様に、このメンバーはリュウキやレイナ、そして もう1人はシノンである。





 






 それは、つい先程の事だった。

 GGOの世界での大型アップデートの話は、《MMOトゥデイ》や《Mスト》で頻繁に持ち上げられ、宣伝をされ続けてきた。勿論、その発信の多さにより、その情報を知っていた隼人は、参加を決意した。

 その大型アップデートの内容、予告動画等を見て リュウキのゲーマーとしての魂が強く反応。大いに興味をそそられた、と言う理由だった。何でも随分と昔から長く続いている大型タイトルのゲームとGGOの融合だから、と言う理由も勿論大きいだろう。

 その舞台が《GGO》の世界だから、かつて共に戦った詩乃や和人にも一声を掛け、そこから これまでのVRMMO仲間達全員に連絡をしたのだが、先程 玲奈がいう様に あいにくと時間の折り合いがつかなかった故に、今回の参加は4()人になるとの事だったのだ。


 その最後の1人について。


 それを説明する為には、少し時間を遡る事になる。


                    


                                                          






『ちょっと リュウキに会わせたい人がいるんだけど、良いかな?』

 それはログイン先で、待ち合わせていた場所でだった。
 その場所は、転移装置前だったのだが、そこでリュウキとレイナはシノンと会ったのだ。そして、その出会った時の第一声がそれだった。


 当然ながら、シノンの言葉を訊いて、リュウキは訝しんでいた。


 この手の話しは、随分昔だが色々とあったのだ。
 奇妙な髭をペイントしている要注意人物。ALOの世界ででも、何を思ったのか自分自身の字。その天敵とも言える妖精を選んで ちゃっかりとコンタクトを取ってきた厄介極まりない妖精。勿論、《鼠のアルゴ》

 因みに、シノンが この話をして、リュウキがそう言う表情をするという事は、これまでの経緯を色々と、レイナやキリトに訊いているからシノンも重々承知だった。

 それに、ここGGOの世界での話だ。『……容姿を勘違いした男プレイヤーに会わせられるのか?』とも考えてしまった上での強ばった顔だ。

『……あのね。そんな変なもんじゃないわよ。以前のBoBの時、戦ってたアンタの姿見て、憧れたってコがいたの。そのコから、以前会って熱心に話されたのよ。まぁ リュウキだけじゃなくて、キリトや私もそうだったんだけど、一番熱心だったのがリュウキなの。……こーんな、オイル臭いゲームの中に、女の子がなんにも知らない状態で、飛び込んできたんだよ? ちょっとはサプライズで会わせたい、って 思ってもいいじゃない』

 シノンは何処か真剣だった。少なからず笑みがあったりと、企み顔もあったりと、していたのだが、それでも最後の方は至って真面目。元々、シノンが リズやリーファの様に《イタズラゴコロ》が結構ある、とは思えないから、リュウキは了承した。

 少なからず、そのシノンに対する印象が、間違いだと言う事に気づくは、暫く後になる。


『ま、今回のイベントにも一緒に参加してもらおうかな? とも思ってたし。良い?』
『ああ。別に良いよ』
『あはは。うん。あのBoBでのリュウキくん、ほんと凄かったもんね? 色々と、事情はあったけど、あれだけ大きな大会だったんだし。うん。そう言うのも仕方ないと思うよ』

 リュウキの隣で一緒にいた玲奈はにこりと笑いながらそう言っていた。

 薄い金色の髪が、すらっと肩より下にまで伸びたロングヘヤー。ALOで言う明日奈と玲奈の髪の丁度間程の長さの髪。目元や口元は ランダム生成なのだが、そこまでの変化は無く、大きな変化は髪の長さと色だけだったから、直ぐに判った。……どちらかといえば、リュウキの方が変わりすぎているから、画面越し、画像越しで見た時よりも、レイナが困惑してしまったのは こちらの話だ。

『因みにサプライズ、って言った通り、向こうには何にも知らせてないから。ここにリュウキがいる事とかも勿論。だから、その辺は合わせてね』
『む……。そう言うのはあまり得意では無いが、善処はするよ』
『あははっ』

 レイナは、リュウキの返答を訊いて笑った。

 確かに、どちらかと言えば、仕掛けられる方が多いのだ。SAOから解放されて、最後にオフ会をした時もそう。夏休みに、菊岡にカウンセリングと称されて呼び出された時もそうだ。……だが、レイナはそこまで不得意ではない、とも思っていた。

 それは、この世界にはない。……もう、あの世界にしかない物をリュウキにプレゼントしてもらった。それは、右手の薬指にあった《誓いの指輪》。覚えてくれていたら嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいから、口に出しては言えない。……ALOの世界の浮遊城アインクラッドが22層まで開通したら、《あの家》にもう一度、帰る事が出来たら その時に訊いて見たかった。……最高の思い出の1つを。

 そして、そうしている間に、シノンが席を立った。

 件の彼女を、……《エステル》と言う名前の彼女を呼びに行く為に。

 そして、シノンが席を外した後の事。
 その後は レイナとリュウキは そのコについての話題が中心だ。

『あははは。どんなコなんだろうね? リュウキくん』
『ん……。そうだな。聞いた話から考えたら、随分と活発な様な気がするよ。その、オレの事を、と言うのは光栄だが、……ただ、会う為だけで VRMMOの中でも一番ハードだ、と言われているこの世界に来た、と言っていたからな』
『あー、それはありそうだねー。……でもさ、リュウキ君、浮気、ダメだよ?』
『……ん? ははは』

 リュウキは、最後の方にちょっとだけ、頬を膨らませ、耳元で言っていたレイナの頭を抱き寄せた。 

『オレは、レイナが一番だ。どの世界ででも、それは変わらない』
『っっ/// りゅ、りゅーきくん。こ、ここお店の中でっ……』
『ぁ……』

 急いでリュウキは周囲を確認。……奥のテーブルだったから 見られてはいなかった様だ。そもそも、容姿が容姿だから この状態で、レイナにそんな事をしてしまえば、誤解から始まったそれが、更に、あらぬ方向へと一直線に膨らんでしまう事は目に見えているだろう。……だから 周囲を見てとりあえず、何事もなかったから ほっとしていた。

『ほっ……』
『も、もーっ 私も、恥ずかしいんだからね……っ(嬉しい、けど…… やっぱりね……///)』
 
 どんな世界ででも、いちゃいちゃしてしまうのは、もう、仕方がないのである。
 リズ達に色々と言われているから ある程度、弁えているつもりだけど。でも、以前にリズが言っていた『小っ恥ずかしくなる様なセリフ』を言う事も まだまだ健在の様だった。


 この場にシノンがいれば、なかなかの修羅場になりそうだが、残念ながら? お預けである。


 さて、そうこうしている内に。

『えっと、今日はココで何があるんです? シノンさん』
『ちょっとした 《お楽しみ会》よ。今日はイベント初日だし。エステルは 本当にGGO(ここ)に来て、日も浅いからね。ま、大型イベント参加前の景気づけ、かな。多分ビックリするから』
『え?? お楽しみ会で、ビックリ……ですか』

 話し声が聞こえてきた。

 普段の酒場であれば、GGO内の戦闘をモニターで中継し、その喧騒染みた声援や野次が店内によく響いていていて、ちょっとした話等、聞こえるようなモノじゃないのだが、今日は店内にはプレイヤーが少なく、良く聞こえる。

『あっ 来たみたいだね? 噂のリューキくんのファンがっ♪』
『はぁ、シノンやキリトのファンでもあると聞いたんだが?』
『イイじゃんっ♪ 今はキリトくん、いないし。シノンさんは もう会ってるみたいだからね~。それに、リュウキくんの事、一番熱心だって言ってたもんね~?』
『ううむ………』

 レイナの言葉を訊いて やや、ゲンナリ気味であるリュウキ。
 だけど、良い印象を持ってくれてるからこそ、ファン、とまで言ってくれてるから、邪険をする訳にはいかないだろう。だから、とても複雑気味な表情をしていた。

『あはっ りゅーきくん? 自然に、自然にー、だよ?』
『あ、ああ。……だが、慣れてないから、こう言うのは……』
『ふふ。大丈夫だよ。だって、リュウキくんだもん』
『……んな無茶な』

 レイナは妙にニコニコしていていた。
 

 因みに レイナ自身は当初こそは ちょっぴり複雑な思いもあった。

 リュウキのファン。
 つまり、ファンであり、実際にリュウキに出会ったら……、そこからまた、ライバルが増えてしまうのではないか? と思えてしまっていたのだ。
 勿論、リュウキの言う『レイナが一番』と言う言葉を疑っている訳ではない。……やっぱりレイナも 女の子だから どうしても 嫉妬と言うものはしてしまうし、姉の明日奈にも似て、少なからず独占欲も強い。



――……でも、リュウキくんに救われた、と言う人も本当に多い。だから、1から10まで 全てを、今の彼を全部、と言うのは、欲張り過ぎる、よね。



 時折、心の何処かで レイナは、そうも想っていたのだ。


 それは、シノンの姿を見て そして これまでの事を。……リュウキに貰ったモノ、してくれた事、全部見て、訊いて…… その想いが強くなった。

 だから それも受け入れた上で 自分の事を全てを包み込めたら と、今は強く想っている。……想ってたりしている。……想っていても、結局それでも妬いちゃうのは レイナだから致し方ない。

『(でも、最後は私………)』
『はぁ……、でも レイナもオレのSAOでの時の事、知ってるだろ? 色々と大変だったのが……。 ん? レイナ? どうした?』
『え、ええっ? ううん。何でもないよっ?? あ、ほら シノンさんだよっ』
 
 レイナは慌てて 話題を逸らせようとして、タイミングよく シノンが見えたから、指をさした。 ナイスタイミング! とレイナが思ったのは言うまでもない。

『はい。エステルの憧れの人とご対面だよ』
 
 シノンは、ひょい、と手を引っ張りよせた。

『えっ あこ……が……!?』
『っ……、そう言うのやめてくれ』

 ばったりと、対面した。シノンのいい方に苦言を呈したリュウキだったが、一先ず挨拶はすべきだろう。……その辺はリュウキはしっかりとしているのだ。勿論、人による、という幼っぽさはあるものの、綺堂の言葉は何よりも大切だし、それに 悪い印象を受けてる人ではないから。

『ぇ……は、ぇ……?』

 リュウキの姿を見て、口をぱくぱくとさせてる少女がいた。桃色のショートの髪。GGOでは 薄い黄緑の色、珍しいゆったりとした服を着用している。云わば女の子を主張する様な通常装備だ。それを羽織っているプレイヤーは この世界には少ない。女プレイヤー自体が絶対的に少ないのだが、その中で更に少ないと言っていいだろう。だから、来たばかりだと言う事がよく判る。

 レイナ自身も、リュウキやシノン、キリトに会う為に飛び込んできた、と言う話が本当であると言う事がよく判った。

『どんな紹介が合ったのか、それは 判らないが……、初めまして。オレがリュウキだ、え、えっと……ふぁん? だったかな。こう言う時、どういったらいいのか……』

 ファンを公言している人の前で、しどろもどろになってしまうリュウキ。いつもの彼を知っている人が、更に戦っている姿を見ている人が、今のリュウキをみたら、所謂ギャップが凄く激しくて、何処か面白いと言うものだ。若しくは萌えてる! と言う人もいたりする。
 だが……、エステルはそのどちらでもなかった。

『ぴゃ、ぴゃあああ!?』
『ふぁっ!?』

 突如、背筋をぴん、と伸ばして、奇声をあげていた。
 突然の奇声にシノンも驚いた。

『ははははは、はじめましてっっ!! ですですっっ!! わ、私の方から、私のほうから ごあいさつをっ! って、おもってたんですがっっ! ま、またせてちゃったです! その上に、先にあいさつを、なんてっっ!?』
『!?』
『ちょ、ちょっと。エステル落ち着いて』
『そ、そうだよー、ほ、ほら 深呼吸深呼吸っ』

 何を言っても無駄であり、完全にパニックってしまってるのはエステルだ。

『ふぇっ、あ、そ、そうですね、お、おちついて、お、おちゃでも 持ってきますですっ!!』
『だから、落ち着いてって、NPC酒場なんだから、全部自動だって。それに』
『いいい、いいですいいですっ!! NPCさんにめいわくですからっ! わ、わたしがっっ!!?』
『め、迷惑って……』

 シノンが必死に落ち着かせているんだけど、動きの全てがぎこちなくなってしまっている。ロボット店員のマネでもしているのか? と思える程。だが、最終的には 動きも多少良くなった様で、慌てて NPCのロボットに突撃? するかの様に走ろうとしたから。

『ひゃあっ!!』
『っと……っ!!』

 盛大に転んでしまったエステル。
 リュウキが傍にいたから、受け止めようとしたんだが……、体勢が悪かった事もあって、一緒に転がってしまった。

『い、いたたた……ご、ごめんな……さ……』
『っ……、大丈夫か? 少し落ち着け。シノンの言うとおり、深呼吸だ』

 至近距離に、リュウキの顔がある。
 物凄く近い。ドラマや漫画である様な、壁ドンの距離が可愛く見える程に。目と鼻の先、1cm位?

『~~~~~~~っっっっ!!!!!』

 ここから先の動きは、スムーズ。いや、スムーズと言うよりは、ハイスピードだ。アスナ、レイナ顔負けの閃光速度で、エステルは、リュウキから飛び起きる様に退いた。

『し、失礼しましたです~~~~~~~っっっっっ!!!』

 瞬く間に、この酒場からエステルは退店していった。
 本当にあっという間だった為、リュウキもどうすれば良いのかが判らず、ただただ、きょとんとするだけだった。

『はぁ……、ま、出会い頭の掴みはオッケーだとは思うけど……、ミーハーにも程があるというか、何というか……』

 シノンは、最初こそ追いかけようとしたのだが……、店の外へ出た所で、光に包まれるエステルを見た。つまり、ログアウトをした様だ。気が動転しているのに、指の操作だけはしっかりと出来ていた様子。

『……一体何だったんだ? 今のは』
『あ、あははは。やっぱり、りゅーきくん、人気者、だね?』
『??』
『あはは………』

 相変わらずの反応であるリュウキを見てレイナは、更に笑っていたのだった。












 そして、3人が残った今に至る。
 当初は、エステルを含めた4人でのプレイだったのだが……、今日は都合? が合わなかった様だ、と言う事になっている。

「………」
「はいはい。もーからかったりしないから。今日のイベの打ち合せ、しとこ?」
「そーだよー。リュウキくんっ エステルさんとはまた、今度改めて、だね? シノンさん、また 宜しく言っておいてよー。フレンド登録する間も無かったからね?」
「ん。了解、レイナ」

 笑いながら話をしているのは レイナとシノン。 リュウキはさっきの事がまだあるから、色々と複雑な気分だった。どちらかといえば、照れてる?

 因みに シノンとレイナは、ある意味其々 リュウキよりも仲良くなっちゃってる部分がある。
 
 現実世界でも、よく買い物に行ったり、ご飯を食べに行ったり、と言う事が多いのだ。基本的に、皆一緒に とも思っていて、予定が合わなくて2人で、が重なるに連れて、更に仲が良くなったのだ。

 本当に明るいレイナに、救われたのはシノンも同じであり、レイナ自身も 同情などという事はなく、ただ友達として 接していた。


――……同じ人を好きになった。


 そう言う、ちょっぴり複雑だけど、その縁もきっとあっただろう。シノンがリュウキに対して、好意を持っているのは、当然ながら判る。判らないのは1人だけだ。……キリトでも判っているから、たった1人だけです。
 

 そんな2人の心の機微に判る筈も無い、たった1人だけ、と言う人物は 《リュウキ君》です。




 リュウキは、ただ レイナと話をした時に、《シノンと友達になって欲しい》と心から思っていたから、だからこそ、ただただ嬉しいだけだった。


――他の誰かが、ずっと傍に居てくれたから、支えてくれたから自分がいる。


 それは あの世界で、剣の世界(SAO)で培ってきた物であり、心から学んだ物だったから。

「……ん、エステルと言うコもそうだが、その他の皆も残念だったな」
「う~ん。そうだねー。リズさんやシリカちゃんは、家の用事だし。クラインさんは お仕事。お姉ちゃんとキリトくんは 学校の課題関係で残って頑張ってるし。リーファちゃんは部活だし……。うん、また今度誘えば良い、って思うよ。ALOなら兎も角、別のVRMMOのGGO世界のイベントまでは 確認してなかった、って事はあると思うしね……」
「こっちでキャラも作ってないし、無理は言えないわよ。(……2人でも、その……来てくれただけでも、嬉しかった……し)」
「あはは。私は 折角シノンさんとも友達になれたから、シノンさんの世界も見てみたい、って想ったからねっ!」

 リュウキの言葉を訊いて、他の皆の事を伝えるレイナ。そして、それに感謝をするシノン。……所々ではあるが、レイナは 何処か様子が上の空と言うか、空元気の様な感じがするのは、リュウキにも勿論判った。男女関係の感情の機微は、よく判ってなくても、それとは別のレイナのその表情はよく判るのだ

「……だけど、レイナ、本当に大丈夫なのか?」
「えっ? な、何が??」
「今回のGGOでのイベントだよ。……今の今まで、こう言う系(・・・・・)には参加しなかっただろう? ユイの時だってそうだったし。自分から、って言うのが凄く気になった」
「ぅ………」

 レイナは、その言葉を訊いて、一気に表情を引きつらせるのだった。











《GGO 大型アップデート》


 これまでも、幾つかのアップデートは勿論、この世界にもあった。
 だが、それは殆どが新たな武器の出現や新たなエリア。そして、対人戦(PvP)が主とされるVRMMOだが、対MoB(PvE)の面で大きな話題となるのが強力なクリーチャーの出現だ。

 そして、今回は 大型(・・)アップデートである。それに相応しい程の容量の多さ。内容は、上記に記した殆どが含まれるモノなのだ。

 そう、新たな世界(New World)の出現だ。


「《GGO ~Dawn of the Dead~》。このタイトルから、今回のアプデからのイベント。……大体どう言う類のモノか、判りそうなんだが……。 今回は レイナはその内容と言うか、パッケを見た時 大分表情が強ばってたのに、断らなかったから、逆に心配になったんだが……」

 リュウキは、そう思っていたのだ。

 因みに、リュウキがちょっとした《S》だと言うのは、最早説明をするまでもないだろう。それは、レイナだけでなく、キリトの妹のリーファにも ちゃっかり及んでいるから、限定仕様、と言う訳でも無さそうだ。
 だが、それは 本当に強制したり、と言った類の事は決してしない。軽い悪戯程度で終わらすのが彼である。勿論、その軽い(・・)が、相手にとって最悪な事にもなり得る。その辺も勿論弁えている。

 だから、レイナが 可愛い反応をみたら~ と少なからず思っていたのだけど、まさかの反応、完全な予想外なのである。

「だだ、だいじょーぶだよー! だ、だって、シノンさんだって、いるんだし……、そ、それに リューキくんも、まもって、くれるでしょ?? シノンさんだけじゃなく、わ、わたしの事も……っ」

 説得力の無い『大丈夫』なのだが、この感じはリュウキはよく知っている。可愛らしい、とずっと思ってきたモノ、つまり、レイナが怖がってる時のモノだ。今までは 《怖いモノ系》から 必死に逃げようとして、この表情だったから、今回はちょっと、過程は違うけれど。

「まぁ…… 別に。 あー、でも……、それはどうだろう」
「……え?」

 シノンからのまさかの反応に、レイナは背筋をぴん、と伸ばしていた。これでもか! と言えるレベルまで。

「ほら、四方八方から 襲われる事だってあるし。想像通りのステージ、世界観だったら、敵が少ない、って言うのは有り得なさそうでしょ? 元々から生息してるGGO内Mobも結構馬鹿に出来ないレベルだし。 まぁ プレイヤーには流石に劣る部分は当然あるけど、AIは優秀だから。その レイナが嫌いな所謂 《そっち系》のモンスター達が四方八方から、現れたら……単発(ボルトアクション)のへカートで 守りきれるかどうか……」
「えっ、ええっ……?」
「ん。そうだな……。一応、オレの武器も2つともが拳銃だ。マグナムは威力が高いが弾丸に限りはある。リボルバーの方も同様だ。重火器を持ってるプレイヤーがいれば、一掃は出来そうだが……」
「えっ、ええっ、えええっ……?」
「そうよね。立てこもりリッチーや、ベヒモスみたいな 装備。STR一極、までとは行かずとも、それなりに、優先して上げて、大型の銃火器持ってる人がいないと……」

 2人の会話が続くに連れて、どんどんと表情が青くなってしまうレイナ。

「あ、あぅ、あぅぅ……」

 遂には、涙目になりそうだったから、この辺りでやめた。

「ふふ。じょーだんよ。大丈夫だって」
「ふぇ……?」
「例え、弾切れになっても 無茶苦茶戦えるでしょ? リュウキは。それに、レイナだって、接近戦だったら、明らかに私より強いでしょうし。大丈夫でしょ」

 そこまで言い切った所で、レイナは 狙ってからかわれていると言う事に気づいた。
 リュウキだけだったら、直ぐに判っただろうけれど、今はシノンも一緒になっていっていた。この世界の戦歴が一番長いシノンが言っていた言葉だったから、リュウキの説得力と相余って、威力向上して しまっていたのだ。

「も、もーーーっ!! ふ、2人ともひどいよっ!!」
「あははは。ごめんってば。レイナの事見てると、つい、ね?」
「ついでもなんでも、ひどいよっ! うわぁぁんっ! シノンさんも、りゅーきくんのいぢわるが、伝染ったーーっ」

 レイナが両拳をシノンに、ぽかぽか、と擬音が聞こえてくるのではないか? と思える様に振るっていた。それを見て 少し微笑むとリュウキも近づく。

「はは。ごめんごめん、レイナ。でも まぁ……オレとしては、伝染す様な 事はしてないんだが……な?」
「ま、確かに」

 リュウキは、シノンの前では どSな部分は見せていない。でも 息はピッタリだった。

「ぅぅ……」

 その部分は、ちゃっかりと妬いているレイナだった。


「ごめんってば。レイナ。ちょっと緊張をほぐしてあげよう、って思ってさ?」
「……ぅ~、そんなの、うそだよー…… だってシノンさんも、なんだか楽しんでるように見えたもんっ……」
「まぁ、否定はしないけど」
「う~~、リズさんみたいな事、言うー……」
「あ、確かにリズなら 有りそう……」
「有りそう、じゃないもんっ! 有るのーーっ! だからって、シノンさんも駄目だよーっ!」
「あはは。大丈夫。レイナの事 しっかりとフォローしてあげるから」

 まだまだ、楽しそうに言いあっているレイナとシノンだった。





 そして、大型アップデートは、PM 0:00から。


 時間が経つのは本当に早かった。

 首都グロッケンの灰色の空に、ファンファーレの様な音楽、BGMが流れた。

 そして、最初こそは まだ陽気なBGMだったのだが 段々とおどろおどろしさが出てくる。そのBGMの中には、時折 その新しいモンスターの声、だろうか。明らかにホラー系。レイナが嫌い系の声が聞こえてきた。

 勿論、その頃 また レイナの表情が固まってしまったのは言うまでも無いことであり、今回はしっかりとリュウキとシノンが支えてあげて 何とか 新たに現れた転移装置へと。



 新しい世界、《Dawn of the Dead》と冠される世界へと向かっていったのだった。








 
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