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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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第20話 軍神と燕人との別れ


バサラの歌が終わり、辺りは静寂と化す。
関羽と張飛はそれぞれ涙を流して歌に聴き入っていたが、歌が終わってから少ししてはっと気を取り直したかのようにバサラを見た。
バサラは
「へへっ、争いなんかよりもおれの歌を聴く方がいいだろ?」
と笑顔で語りかける。
その顔を見て関羽と張飛は
(ああ、なんて笑顔だ。)
そう思った。
だが同時になぜ、争いのさ中の2人に歌ったのか分からずにいた。
そのため、2人はバサラのことを疑問に思いながら視線を投げかけていた。
その視線に気づいたバサラは
「ん?なんだい?まだおれの歌が聴きてえのか?」
と不敵な笑みで2人に聞く。
それに関羽は
「い、いやそういう訳では・・・」
と返したが、
「ええ!?いいの?!是非聴かせてくれなのだ!!」
と張飛が答える。
それにバサラが
「いいぜ!聴かせてやるぜ、おれの歌を!
いくぜ!突撃ラブハート!!」
と答える。
バサラが歌い、張飛が目を輝かせて聴く。
そして、関羽は溜息をつきながらも、その様子を見ながら自らも歌に聞き入るのだった。

それから1時間程歌い、バサラの気が済んだのか、歌い終わった。
そこであたりを見た関羽と張飛、そしてバサラはもう日が暮れていたのに気づく。
そこで張飛が2人に
「ねえ、もう夜も更けてあたりも暗いし、危ないから鈴々の家に泊まっていくといいのだ!」
と言う。
「ええ?!し、しかし良いのか?」
と言いながら関羽は張飛に聞く。
バサラも
「いいのか?」
と張飛に聞く。
「鈴々がいいと言ってるから良いのだ!
さ、そうと決まったらさっさと家に入るのだ!」
と満面の笑顔で2人に言い、2人を家の方向に押し出す。
その顔はとても嬉しそうである。

それから、張飛は関羽やバサラが風呂に入る時には風呂釜の火の様子を見るなり、ご飯をご馳走するなりと様々な世話を焼いた。
その様子はとても嬉しそうであった。
そして、寝る時には張飛を挟み川の字になって寝るのであった。

次の日。
張飛は町に行きいたずらをした役人に謝罪に行くことにした。
それに関羽も着いていき、共にいてやるつもりのようだ。
そしてバサラはというと
「な、なあ、本当に1人で行っちゃうのか、お兄ちゃん?」
「ああ。もっと北に行こうと思ってるからな。」
どうやら2人と別れるつもりのようだ。
「それに、お前にはもうおれの歌を聴かせたからな。他のやつにも聴かせに行くよ。」
「そ、そうなのか。」
とあからさまに張飛は落ち込むのだった。
「ところで、バサラ殿。お主、なぜ私と鈴々の勝負のさ中に歌ったのだ?
それがどうしても分からなくてな。是非聞かせて欲しい。」
「鈴々も知りたいのだ!どうしてなの、お兄ちゃん?」
2人はなぜ最初の出会いで歌ったのか、それをどうしても知りたかった。
それにバサラは
「お前ら、あの時武器持ってお互いに振りあってただろ?
だからあの時は殺し合いをしてるように見えたんだ。だからおれの歌を聴かせて辞めさせてやると思ったんだ。」
と答えた。
それに2人は驚いた。
歌を聴かせて、戦いを辞めさせる?
そんなこと、聞いたことが無い。だが、自分たちが辞めたのは事実だ。
それも踏まえ、聞いてみたい。
関羽はそう考え、さらにバサラに問う。
「お主は本気で、本気で言っておるのか?この乱れた世で。それが誰であろうとも、だ。それでも歌で戦いを辞めさせると、そう言うのか?」
それにバサラは
「へっ!感動するハートに国や民族は関係ねえぜ!誰が相手だろうとおれはおれの歌を歌うだけだぜ!」
そう答え、ギターを鳴らす。
関羽はバサラの答えを聞き、考える。
(この男は、国や民族などといったものは歌を聴くのに関係無い。そして誰だろうと己の歌を聴かせ、感動させる。
それがたとえ民だろうが、皇帝だろうが、そして賊であろうと、だ。それにしか興味が無いということ、か。)

(甘い。甘すぎる。そんなこと、この乱世に向かいゆくこの大陸ではそんな考えなど通じぬだろう。
だが、この男ならば、この男の歌ならば、それも可能なのではないか。
これは理屈では説明出来ぬ。これは我が魂が感じたものだからだ。)
そこまで考え、
「・・・そうか。お主の考えは分かった。礼を言う。」
と言い、頭を下げる。
「おいおい、別にそんな頭下げなくていいぜ。」
と少し困った顔でバサラが言う。
「それに関羽、殿は付けなくていいぜ。そんなもん、堅苦してよ。」
「そ、そうですか。申し訳ありません。」
「ああ、頼むぜ。」
そう苦笑しながら関羽に語りかける。
「ね、ねえ、お兄ちゃん。」
「なんだ?」
張飛がおずおずとバサラに話しかける。
「その、鈴々の真名を受け取って欲しいのだ。」
「いいのか?」
「う、うん。その、お兄ちゃんならいいのだ。」
そう言いながらはに噛んだような笑顔をバサラに向ける。
「そうかい。なら受け取るぜ。おれに真名は無えから好きに呼びな。」
「分かったのだ、お兄ちゃん!」
「ああ、よろしくな!鈴々!じゃあ、そろそろ行くぜ。またな!」
そう言いながら赤兎と共に北へ向かって歩き出す。




「愛沙、よかったのかー?」
「何がだ?」
「お兄ちゃんに真名を預けなくて、なのだ。」
「ああ、そのことか。」
事実、関羽は悩んでいた。
鈴々がバサラに真名を預けた時に自分も預けようかと思った。
だが、
「・・・バサラ殿、いやバサラが己の信念を諦めずにどれほど貫けるか、見たくてな。
それを見てから決めたいと思う。」
「はあ〜、まるですぐにまた会うみたいに聞こえるのだ。」
「ああ、自分でも分からぬが、そんな気がしてな。」
「まあ、鈴々もそんな気がするのだ!」
「おいおい、本当かあ?」
などと2人は笑顔で語り合いながら村へと行くのだった。

おまけ
前日、バサラ、張飛、関羽は張飛を真ん中にして川の字になって眠りについた。
その際、バサラと張飛はすぐ眠ったが、
(う、うわあああ!り、鈴々がいるとはいえ、お、男と一緒に寝るなど、父上と兄上しか無いのにいいい!)
と、関羽は心の中で叫びながらバサラを意識しまくっていた。
(うう、鈴々はともかく、バサラ殿は意識すらしてないのに、私だけ意識するなんて馬鹿みたいだ。)
そう思っていると
「ううん・・・」
バサラの方から声がする。
関羽はビクッと体を震わせ、バサラの方をゆっくりと見る。
すると、特に変わった様子は無い。
そう思った矢先
「よっしゃあ・・・おれの歌を、聴けええ。」
「へ?」
「いくぜ、PLANET DANCE」
そう、曲名らしきものを言ったら、歌いだした。
「は?」
バサラは歌ってはいるが、起きてはいないようである。
つまり、寝言で歌っているのだ。
関羽はバサラが歌を好きなのは自分たちに歌ったことから分かっていたが
(まさか、これほどとは・・・)
そう思うしか無かった。
その後、関羽は自分ばかり意識しているのが馬鹿らしくなり、眠りについた。




 
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