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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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第19話 燕人と軍神との邂逅


「ああ、ありゃあ張飛のやつだね。」
村人がそんなことを言う。
「おばさん、あいつのこと知ってんのか?」
バサラが村人に聞く。
村人は
「ああ、あいつは張飛って言ってねえ、この村の近くにある山の小屋に住んでる子でねえ、前はこの村に住んでたんだけど、両親が病で死んじまってねえ。
その後に今住んでるとこに移ってったのさ。」
「んで、村の子どもたちを率いて山賊の真似事なんかして悪戯なんかしたりするけど、根はいい子だからね、村の人間はそこまで気にして無いし、むしろまだ子どもだから心配してるんだけど、村の役人なんかが気に食わないみたいでねえ。」
「役人がか?まだガキじゃねえか。なんでまた?」
「それがねえ、張飛が役人の家の壁に落書きしてねえ。それで怒った役人が兵を出して捕らえようとしたんだけど、張飛はああ見えて腕っぷしが強くてねえ。
兵隊を返り撃ちにしちまったのさ。」
「だからその時は役人の方が引いたけど、面子を潰されたってんで根に持ってるのさ。」
「へえ、そうかい。」
そう返事を返すバサラ。
「なあ、あのガキんちょはどこに住んでるんだ?」
「ん?それなら、山の向こうの小屋にあるから、そこに住んでるよ。」
「そうかい。色々ありがとな。そろそろ行くぜ。」
バサラは村人に礼を言い、その場を離れた。


それから時が経ち、張飛の家にて。
そこに村の子供たちを集め、一緒に語りあっている。
「はっはっは〜!今日もおもしろかったなあ〜。役人の家の壁にまた落書きしてやったし、他にもいろんな悪戯してやったし、おれたち鈴々山賊団は無敵だぜ!
ね、親分!」
『親分!」
そう子供たちが声を挙げる。
「うんうん!鈴々山賊団は向かうところ敵無しなのだ!」
「うおっしゃあ!どこまでもついてくぜ!親分!」
『親分』
「にゃっはっはっはっは〜!」
そう張飛が笑う。
しかし
「あ、やべ!そろそろ帰んないと母ちゃんに怒られる!」
「あ、私も!」
「僕も!」
「おらも」
そう言って子供たちは立ちあがる。
「あ・・・」
張飛は一瞬顔を寂しげに歪めた。
だがすぐに笑顔に戻し、それを隠す。
「じゃあな親分!また明日〜!」
『また明日〜』
「また明日なのだ〜」
張飛と子供たちはそれぞれ手を振りながら、一方は大勢で自分たちの家に帰り、もう一方は客人が帰り自分1人で客人を見送る。
その顔は寂しさに溢れている。
そして子供たちが見えなくなるまで見送る。
子供たちの姿が見えなくなると、
「いいなあ・・・」
そう呟く。
だが、張飛がその場に立っていた時に
「張飛とはお前のことか?」
声をかけるものがいた。
声のする方向に張飛が顔を向ける。
そこには1人の女性がいた。
その女性は黒い長髪を頭の横で止めており、緑を基調とした服装をしている。
その手には2mはあろうかという矛のようなものが握られている。
そして張飛に向かい名乗りをあげる。
「我が名は関羽。字は雲長。お主が村で悪さをしていると聞いたのでここまで来たのだ。
このままだと役人がまた兵を派遣しかねん。
だから村への悪さを辞めてもらえんだろうか?」
そう声をかける関羽だが
「ふん!なんで鈴々が見ず知らずのお前なんかの言うことを聞かなきゃいけないのだ!
鈴々に命令するななのだ!」
張飛がそう反論する。
「し、しかしだな、悪いことをしたのはお主なのだからそれを改めねばならん。その上で役人にお主が謝れば子供のやったこととして処理もできる。だから悪戯を辞め、役人に謝るのだ。私も着いて行ってやる。だから」
関羽が説得しようとするが、
「うるさい、うるさいのだ!そんなに鈴々に言うことを聞かせたいのなら」
そう言って家の中に入る。
そして何かを持って外に出る。
その手に握られているのは4mはあろうかという槍のようなものであり、その先端は蛇のようにくねくねと曲がっている刃物がつけられている。
そして、ほれを頭上で振り回し、関羽に切っ先を向け、
「力ずくでやってみろ!なのだ!」
そう宣言する。
同時に関羽は張飛から猛る闘気のようなものを感じとる。
関羽は旅をしている武芸者である。
その道中で山賊などを退治したりしている。
その為、彼女の見目麗しい長い黒髪と共に
『黒髪の山賊狩り』と呼ばれるようになる。
蛇足だが、黒髪の山賊狩りは美しい黒髪を持つ『絶世』の美女、と言える外見の持ち主という噂なので、初対面の人には気付かれにくい場合もあり、本人はそれを少し気にしている。
話が逸れたが山賊退治などで腕を磨いていて関羽の実力は並の兵士が100人200人が束になっても敵わない。
むしろお釣りがくるほどである。
その関羽が張飛から感じた闘気、それは今まで出会ったことが無い程の強いものであった。
そんな闘気を宿す張飛に関羽はただ驚くしか無かった。
そして同時に厄介な相手だと悟り、武器を構える。
「そうか・・・なら仕方ない。私も武人、言葉ではなく、武で語ろう!」
そう叫び、対峙する関羽。
2人はお互いに相手に仕掛ける。
そして2人の武器が重なろうという刹那

『ドン!!』

低く重い力のこもった音が響く。
それは2人の重なり合う武器が交差することで発生した。
2人は驚く。
片方は子供のような体躯には似合わぬ力に。
もう片方は己の一撃を受け止める者がいることに。
だが、それも少しのことでお互いに距離をとる。
そして同時にまた相手に仕掛ける。
その顔には笑みが浮かべられている。
そしてまた重く低い音が響く。


同時期に2人が闘い始めたころ、
「なんだあ、この音?」
そう声をあげるのは森を歩くバサラ。
その横には赤兎もおり、どこかへ向かっているようだ。
「まあ、いいか。」
そう言ってまた歩きだす。
彼の向かう先には張飛の住む山小屋があり、彼女に歌を聴かせるのが目的なのだろう。






関羽と張飛が打ち合うこと50合。
2人は多少息を乱してはいたがその手に握る武器の速さは衰えることが無い。
その顔には笑みさえ浮かべられている。
だが、関羽には疑問が湧いた。
その疑問を問う為に一度張飛から離れた。
「張飛とやら。お主がその歳でそこまでの武勇を備えていることに驚いたぞ。そしてその膂力、子供とは思えんほどだ。見事だ。」
「へへっ、当然なのだ!鈴々の強さに驚いたのならそれはしょうがないことなのだ!」
そう嬉しそうに返事をする張飛。
「だが、それほどの強さを備えているにも関わらずなぜ村にくだらぬ悪戯などをするのだ。」
そう聞く関羽。
続けて
「そんなことにその武を使うのは勿体無いと思わぬか?やっていることは村の子供たちと共に悪戯三昧、それではその武の腕の持ち腐れではないか。」
そう諭すように話す関羽。
それに張飛は
「う、うるさいのだ!鈴々に偉そうに説教するな!なのだ!」
そう言って再び突撃する構えをする。
そして関羽もそれに応じようとする。
だがそこに

「お前らあああああ!!やめろおおおおお!!」

『!?』

突然、大声が聞こえ、2人はその声の方向に顔を向ける。
そこにはバサラがギターを構えていた。
「な、何者だお前は!いきなり現れて!」
「そ、そうなのだ!なんなのだ、お前は!」
バサラに問いただす2人。
だがバサラは
手を振り上げ、ギターを一際大きく鳴らす。
「うるせえ!てめえら、争いなんか辞めて、おれの歌を聴けえええええ!!」
『は??』
2人は思わずポカンとした顔をバサラに向ける。
バサラはそれに構わず歌い出す。
「いくぜえ!!出来たてほやほやの新曲だあ!!DAIMON!!」



私と張飛が戦う中で、いきなり出て来て歌い出した謎の男。
なんなのだ、この者は?
張飛も同じだったようで私たちはこの男に問いただしたが、それを無視して歌う。
まったくなんなのだ、この男は!
だが、この男が歌い続けていくうちに私は聴き入ってしまう。
この歌、たまに意味が分からぬ言葉が混ざっているが、難しい言葉は無い。
それゆえに頭に、胸に、心にすっと入ってくる。
この歌は誰かを探すところから始まる。
どうすればいいのか、それすらも分からずに探す。
そして、それを邪魔するかのように、さまざまな障害が立ちはだかる。
それは記憶や幻さえも薄れるほどのものである。
そこまで歌い、さらに声に力がこもる。
その後の詩に、私は衝撃を受ける。
だが、どれだけ遠回りをしようと、過ちを繰り返そうと立ち上がり、這い上がれ。
困難であればあるほど、報われる。
そして、探し人を見つけたのか、抱きしめるところで終わる。
私は、この歌を聴いているうちに、涙が出てきた。
私には昔兄がいた。
その兄は私が幼き頃に、賊に殺された。
それ以来、私は自分のような者を少しでも減らすため、この乱れた世を正すことのできる人を見つけその方に仕えるために、旅に出た。
その道中で山賊退治などをしながら武を磨いてきた。
困っている人がいたならば、手を差し伸べてきた。
だが、終わりの見えない道を進むかのような、そんな気分になることもあった。
それでも、前に進み続けなければならない。
そう思い、今まで生きてきた。
その私の人生は間違っていない、そう言われたかのようだ。
そして、最後の詩は、亡き兄上が温かく見守り、優しく抱きしめてくれた、そんな風にさえ思えた。
そう思うと、涙が溢れても止まらなくなってしまった。
ふと、隣にいた張飛を見たが、こちらも涙が止まらないようだ。
ああ、こんな歌を歌う者がいるなんて、お前は何者なんだ?


関羽と張飛が涙が止まらなくなり、溢れ出しても、バサラの歌はその場に響き続けていた。


 
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