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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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23.ペットの躾は飼い主の義務。不可抗力なんて存在しない。

<カボチ村西の洞窟>
ピエールSIDE

魔法使いのマーリンを仲間に加え、即刻出立した我々は昼前にカボチに着いた。
『裸のねーちゃんのダンスショウは?』と、若干一名が出立を渋ったが、金を受け取っている以上、これはれっきとした仕事!
首根っこひっ掴んで出立させた。

村に着くやタイミング良く畑を荒らす化け物に出会した。
あれはたぶん、キラーパンサーだろうが大きさが半端じゃない!
通常のキラーパンサーより二回りは大きい。
まさに化け物だ。
しかし我々の気配に気付くと踵を返して去っていった。

カボチ村の村民は皆、理解する事が出来ない訛りの人々で、辛うじて村長とは会話が出来た。
村長曰く「あの化け物は西の洞窟からやって来る」
私もマーリン老師も待ち構える戦術を提示したのだが、リュカが乗り込む事を強行した。
本来ならば魔獣の巣へ乗り込むのは危険なのだが、リュカは一人で乗り込みそうな勢いだったので渋々ついて行く。

何か変だ!
カボチ村からここまで、黙り考えている。
それまではダンスショウを見れなかった事を愚痴ったり、揚々と歌ったりしていたのに…
あの魔獣を見てから表情が硬くなった。

私は怖くなってきた。
リュカは村に被害が出る事を危惧し村での戦いを避けたのだ!
それ程の強敵…
リュカ程の男を、これ程緊張させる。
強敵との戦いは騎士の本懐、そう思っていたのに…今は逃げ出したい程恐怖している。

リュカは分かっていたのだ。
恐怖で押し潰されそうになる我々の心を。
だから普段は歌い、緊張をほぐしてくれていた。
だが、今はその余裕が消えた。
我らが束になっても勝てなかったトロルを、一人で瞬殺してしまう程の男が…

奥に進むにつれ魔獣の気配が高まっていく。
そして魔獣の巣へ辿り着いてしまう…
巣の奥で魔獣がこちらを睨んでいる。
剣を握る手が震え、喉が渇くのを感じる…

こんなんじゃまともに戦えない!
リュカの足を引っ張ってしまう…そう思った時、
「ここからは僕一人で行く。みんなはここで待機していてくれ」
心を見透かされたのか?
リュカは我らを守る為、一人巣の奥へ進む。
私は恐怖で声が出ない。
一歩も動けない。
リュカ一人を見殺しにしている。

いやだ!
そんなの、いやだ!!私は兎に角叫んだ!
「リュカ!!」
次の瞬間、キラーパンサーは襲いかかりリュカを押し倒して噛み付いている…………………様に見えた。

「ふにゃ~」
ふにゃ?
「あははは、やっぱりプックルだ!」
え……やっぱり?
「くすぐったいよ!大きくなったなぁ!」
大きくなった??
「ふにゃふにゃごろにゃーお!」
ええ!!

「あ~…リュカ?何じゃ…その、説明を…」
老師が呆れ口調で問いかける…
「ん?あぁ!紹介するね、10年前に僕が飼っていた猫のプックル。僕の大事な家族だ」
か、家族…?

私の緊張の糸が切れ、その場にへたり込む。
「あれ?どったの、ピエール?猫、嫌い?」
「ね、猫じゃない!それは、猫じゃない!!キラーパンサーだ!地獄の殺し屋、キラーパンサーだ!!」
「どっちでもいいよ!そんなん!プックルはプックルだ!」
私はこの怒りをどうすればいいのか…やり場のない怒りをどうすればいいのか…途方に暮れる。
老師が私の肩に手を置き、瞳を閉じて首を横に振る…きっと、同じ気持ちなのだろう。

「ふにゃーご」
リュカとじゃれてたプックルが突然、巣の奥から一降りの剣を持ってきた。
リュカは剣を手に取り抜き放つ。
その刀身は10年間手入れをされてなかったにも関わらず、美しい光を放っていた。
「父さんの剣だ。プックルがずっと守っていてくれたんだね。ありがとう」
剣を構えるリュカを見て、私の背中に稲妻が走った。
美しかった。リュカの為に存在するかの様な剣。
そして、それを構えるリュカ。
そのどちらも美しく、私の目と心は奪われた。
リュカは剣を納め腰に携えると、こちらに戻ってきた。
思わず顔を背けると、楽しそうにニヤけている老師と目があった。
くっ!見られた!
「も、もう用は無いだろ!さっさと帰るぞ!」
恥ずかしさから、先頭を歩き出す。
「はぁ~…やっぱり、報告しないとダメだよね?」
往路よりテンションの低いリュカがいる。
私は、助けん。
お前が話をつけろ!

ピエールSIDE END


<カボチ村>


「な~んも言うな!分かってからぁ、な~んも言うな!ほれぇ!約束の金だぁ!それ持って、とっとと出てってくんろ!」
1500G入った袋を投げ付けられ立ち尽くす。
感じ悪!
ものっそい感じ悪!
「あの、お金は受け取れません!前金の1500Gもお返しします」
「いんや、ま~た、あったら恐ろしい化け物けしかけられてぇこまるけぇ!その金持ってこんの村から出てけぇ!」
さすがに腹立つ!言い方が腹立つ!
「ええ!こんな胸くそ悪い村からは、出て行きますよ!胸くそ悪い村の、胸くそ悪い金なんぞいらん!」
「んなぁ!!」
「ご安心下さい!もう二度とこんな胸くそ悪い村には来ません!旅する先々で、ここに胸くそ悪い村がある事を広めておきます!近づくと胸くそ悪い思いをするだけだっと!」
言い終わると、後ろでギャーギャーわめく村長を無視して退室した。


<カボチ~ポートセルミ街道>
ピエールSIDE

私達は暗い街道を黙々と進む。
疲労感が募る中歩き続ける。
リュカ以外、我々は皆モンスターだ。
そのモンスターをリュカは、仲間と言い、友達と言い、家族と言ってくれる。

しかし世の人々にはモンスターと言うだけで忌諱する人がいる。
そんなモンスターと仲の良いリュカも忌諱の対象になる。
そんな思いが我々に重くのし掛かる。
「ふにゃ~…」
「馬鹿だなぁ~。プックルは悪くないって」
「ぐるにゃ~…」
「この10年…色々あったのだから、しょうがないさ」
リュカの優しさが心に染みる。
私はリュカの為に尽力しよう。そう心に誓いを立てた!

ピエールSIDE END



 
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