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寄生捕喰者とツインテール

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説明開始

 
前書き
原作どおりな話に、グラトニー達の突っ込みが要所要所で入ります。

では、本編をどうぞ。 

 
 
 ツインテイルズの秘密基地がある観束家地下に帰還した総二達は、すぐにコンソールルームへと集合する。
  ……その際に総二の母・未春が皆をあろうことか『悪の女幹部』コスプレで出迎え、テイルイエローこと慧理那こそ嬉しそうに褒め称えてはいたが、愛香は埴輪みたいな顔で絶句し、総二に至っては魂が抜けた様になっている。
 更にグラトニーは何時もの無表情なので一見分かり辛いものの、しかし確りと何とも微妙なモノを隠そうともしない表情になっていた。


 そして集合してまず行ったのは、グラトニーの治療行為。
 自分にいい案がある、とトゥアールが……変態的な事をしないようにと、愛香に見張られながら運ぶ為、グラトニーを抱えた。
 が、結局比喩でもなくガチでペロペロしようとして一悶着起こし、後ろの少女と抱えられた少女二人にぶん殴られ―――――普通なら二分弱で済む所を大幅に時間をかけて、やっとこさグラトニーをカプセルの様な機械に入れた。

 トゥアールによるとこの機械は【トゥアヘル】と呼ばれる医療用機械の試作品だそうだが、問題は出来たは良いが強力すぎて、人間ではショック症状が起きる可能性が高い事らしい。
 だからこそグラトニーの様な人外相手なら大丈夫だろうと、グラトニーを回復用カプセルに入れた訳だ。
 結果は成功で、滞りなく傷は回復している。
 それでも回復しきれない場所はあるのか、十数分経てど本来のモノとは違う “柿色の左腕” はそのままだった。


「うーん……何故でしょうか? ヒーリングシステムは通常稼働していますし、ならその腕が本来のモノになっていると言う事ですかね?」
『イヤ、そりゃコッチの問題があるからだぜ嬢ちャン。お前の機械に不具合はねエシ、こっちの腕もすり変わっちゃいネェ』
「……前から気になっていたんですが、あなた誰なんですか? グラトニーちゃんの協力者、って言う事は分かるんですが……」
『アァ、俺は “ラース” って名前なんダガ……マア、俺らの事は纏めて話スゼ。だから先に自分等の案件を済ませとキナ』


 総二達もグラトニーに関して聞きたい事があるのは山々だが、声の言う通りまずはトゥアールの件に慧理那の加入の件を先に片付けておこうと、すぐ近くのテーブル前に集合する。

 まずはと慧理那が立ち上がり、深呼吸してから深く御辞儀をした。


「改めて皆さん、これからよろしくお願いいたしますわ」


 念願のヒーローと成れたからであろう。その表情は晴々しく軽やかで、曇りの一辺もない笑みであった。
 惜しむらくはどんどん脱ぎ棄てていくと言う、痴女顔まけな戦闘スタイルが可笑しいと言う事なのだが。
 されど、折角の笑顔もすぐに曇り気味となった。理由は言わずもがな……ウージの事だ。
 ボロボロに負けた事がそれなりに利いているのだろうか。 

 ……何故だか総二は彼女の表情が曇る前に、慧理那の顔ではなく“ツインテール” を見て悲しそうな顔へと変わっていたが……何を持ってそうなったかは追求しない方が良いと、また追及しても理解できないと誰にでも分かる。


「今回は相手が悪かったのよ。単純感情種だなんて、桁外れな敵が相手だったんだから。それに戦闘スタイル自体は、銃での遠距離型にしておいてよかったでしょう?」
「はい! 必殺技も思い描いていた通りのモノが出来ましたし……次回より、活躍させていただきますよ!」
「ふふ、その意気よ慧理那ちゃん」

(そういや銃にしろ、っていったのは母さんだったっけ……でもさぁ……)


 いまいち納得がいかないと言わんばかりな総二の思考では有るが、しかしイエローは武装をガンガン脱ぎ棄ててしまう上、前線にどんどん上がってくる困った後方支援者な為に、総二の懸念は実に尤もだと言える。

 せめて後ろから砲撃で援護しているだけならば、まだ脱ぐ方が問題なのだ、で済んだかもしれない。 となると……どの道味方には、ある種の苦行しか待っていないさそうだ。


「三人の同時必殺技も興奮したわねぇ。三色のエネルギーが混然一体となる様は、見入っちゃうぐらい圧巻だったわ」
「ふっつうに耐えられましたけどね……おまけに正面から」

『仕方ねエヨ。お前らとは基礎が違うンダ、基礎ガ。一寸の間戦えてただけでも結構なもんダゼ』
「……ん。頑張った」

「う~ん……まあ、そうなんだろうけど……」


 剣やら槍やら銃やら使って漸くダメージを与えられたかどうかという相手に、辛勝とは言え追い返した者等からの励ましなのだから、気持ちの問題なのだと切り捨てるわけにもいかず、愛香は複雑な心境で軽く唸った。


「でも大丈夫なのかしら慧理那ちゃん? 露出度が高くなっちゃってたけど」
「恥ずかしくないと言えば、それは正直嘘になりますわ……これからも、はしたないさまを何度もお見せする事となるでしょうが……」
「大丈夫だって会長! 気にすることはない、格好よかったぜ!」
「! ……はい、ありがとうございます、観束君」


 相変わらずツインテールを見て話す総二に、別段気にしていないか言葉をちゃんと受け止め…………ていいのかどうか迷う物だったが、己の心に留めた慧理那。


「その通りですよ。慧理那さんは確かに脱ぎ癖が問題ですが、差し引いても戦闘スタイルに鑑みるならヒーローのそれでもあります。目的もないのに拳で暴れ回る、どこぞの原始人とは違ってね!」

 トゥアールもまたにっこり笑って、愛香の方へと如何にもわざとですと言った感じで、鼻を鳴らしながら告げた。


「あ、ちょうどいい毛皮が有るじゃない。寒かったし羽織ろうかなー。えいっ」
「あだだだだだだだだだだだだだだだだだ皮が皮が皮があだだああああぁぁぁ!?」


 暴力的かつ凶暴的なやり取りを、何がそうさせるか慧理那も未春も微笑ましそうに見ている。
 が、総二は当然の如く引き気味であり、グラトニーはジト目無表情の中に呆れが混ざっていた。

 正常な判断がどちらなのか、説明するまでもあるまい。



 と―――


『おいお前ラ。これ以上脱線しねえ内ニ、イースナとか言う奴の話に入った方がいいんじゃねェカ?』


 原始人も真っ青の暴力が依然やまないのに業を煮やしたか、グラトニーの中より響く声が愛香達目掛け割って入る。


「そーよ、ラースが言わなかったら頭から軽く飛ぶとこだったわ! 洗い浚い話してもらうからねトゥアール!」
「俺も気になるしな……言いたくない事以外、なるべく話してくれよ」


 総二と愛香、双方の言い分を合わせれば若干どころではない矛盾が生じるが、其処に対してはグラトニー達も話を逸らす気は無いか、ツッコミを入れず黙っている。

 ひねられ引っ張られた皮膚へ息を吹きかけながら、埃をはたいてトゥアールは立ち上がり、疲れたとばかりに息を吐く……原因は己なのに。

 そしてテーブルの前にたたずむと同時、何故か音が出る程思い切り両手でぶっ叩いた。


「最初に断っておきますが、私はまっさらな清い身体です! あの子とは何の関係もありませんでした!」
「何で女の子の話一つでそんな単語が出てくんのよ!?」
『寧ろヨォ、んな事言ってやがるから馬鹿みたいな勘違いが飛び出すんじゃねェカ?』


 同じく机を殴打して当然な疑問をぶつける愛香と、呆れた声色で意外と真っ当な所を突くラース。

 正論であったせいでラース相手に反論は難しいと感じたのか、トゥアールは何時も通り愛香の方へ向けて―――見せつけるように胸へと、余りに不自然に手を沈ませながら憮然となる。


「愛香さんなら今更どんなスキャンダルがあろうが、精々周囲からの取り扱いがチンパンジーがゴリラに変わるぐらいでしょう! ああ筋力上がったね、で済みますが清純派ヒロインの私はそうはいきません! 些細な誤解さえ命取りとなるのだからここで白黒ハッキリ―――」

「……いい加減、脱線止めて……。……余計な事言うなら、黙れ」


 底冷えする様なグラトニーの声に、激昂しかけていた愛香も、幼女好きであるトゥアールさえも震え上がる。
 その声を向けられていない筈の、総二達ですらちょっと仰け反ってしまっていた。

 どうも先程からしなくてもいいやり取りを展開し、話をあらぬ方向にすっとばし過ぎて、彼女の逆鱗に触れ怒りを本気で買ったらしい。

 場の空気が一気に氷点下まで下がった瞬間だった。


「……おほん」


 急にまじめな表情へ戻ると、トゥアールが一つ咳払いをして話を再開させた。


「そ、そうですね、何から話せばいいのか……正直に言って、私も混乱しているので……」


 どうやらそこは本当らしく、細かに沈黙を挟んで言葉を選んでいるらしい。


「ではまず、分かり切った事でしょうが……彼女の名前はイースナ。私の元居た世界の幼女(じゅうにん)でした」


 心で思い浮かべた単語に、誤魔化す為の奇妙なルビを振ったのを見抜いたか、総二がいや~な顔になりグラトニーがムッとした表情に変わる。

 だが、口を出す気は無いらしい。


「エレメリアンに襲われている際、助けた事で知り合ったのですが……」
「あの、その言い分だとトゥアールさんもツインテイルズなんですの?」


 言いながらも彼女の視線の先、腕のあたりにブレスは……無い。
 慧理那の至極尤もな疑問にも、トゥアールは苦笑しながら答えた。


「今は引退していますが、嘗てはそうでしたよ。別の世界で戦っていた私は、この世界でその役割を総二様達に託したのです」
「何故引退なされたのでしょうか?」


 詳しい事情を知らぬが故の深入りした質問に、総二は一端確認を取る為か口をはさむ。


「……トゥアール、今の会長なら大丈夫だ。話しておこう」
「分かりました……。ですが不安なので、握っていて貰えますか」


 そう言いながら差し出したのは震える掌―――ではなく自身の豊満な胸。

 二つの位置から種類の違う、ブチッ! と言った怒りの音が聞こえてくる。


「……遠慮なく握る、テイルブルー」
「言われなくても当然よ」
「にぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁ!?」


 断末魔にも近い絶叫をバックグラウンドミュージックとし、トゥアールの代わりに愛香が事の顚末について話し始める。

 必要以上に物悲しい、或いは悲惨な語りとなったが、この際誰も気にしない方針で行くらしく、ツッコミなどは一切入ってこなかった。

 全てを聞き終え、俯いていた慧理那は顔を上げた。


「つまりトゥアールさんは先代戦士であり、その想いとツインテールを次の者へ託したと言う訳ですわね! この引き継ぎイベントしかと承り、その意思をしかと受け止めましたわ!」

(……ま、会長が納得して居るならそれでいいか)


 悲劇を分かったうえでトゥアールを気遣い、自分なりに納得しているのかもしれないと、総二は少しばかりずれている慧理那の認識については、あえて言及しなかった。


「ひ、引き継いだのなら、無力な私と変わりこのゴリラと戦ってくださいませんか……む、胸が無いからソコがどれだけ痛いか、分かっていないんですよこのゴリラ……」

「……自業自得」
『ダナ。余計なことやってるかラダ』


 悲壮な声での懇願は、同じ身体から響く異口同音でバッサリ一刀両断され、トゥアールは牢屋内に居る冤罪が認められなかったものが如く、がっくり肩と顔を落とす。


 ……数分後に何とか立ち直り、トゥアールの世界での結末を踏まえてから、イースナの話へ戻り始めた。


「―――ですので、総二様の【テイルギア】には私のツインテール属性が組み込まれており、それを頼りにしてイースナはこの世界へとやって来たのでしょう。……他ならぬ、アルティメギルと共に来訪した所為で、どうやら私と総二様を勘違いしているようですが」
「つまるところ、あの子は自分をアルティメギルへ売り込んだって事?」
「……確実に言えるのは、洗脳されたり虚言で利用されているのではなく、自らの意思で味方している事ですか」
『守るべきモノの為とか言ってたシナ。それは間違いないだろウゼ』


 まだ救いがいのある展開ならともかく、本人が自ら取り入っている……その事実に皆一様に押し黙り、顔もそれなりに険しい物となっている。


「イースナが持っているギアは、妙な能力で【テイルギア】を解析した結果の賜物らしいですね。そして完全複製とまでは行かずとも、もとの属性力変換技術はアルティメギルのモノですし、調整事態は容易だったでしょう」
「問題は、人間そのものが味方に付けて、受け入れられている事……ですわね」
「……ん。アイツ、単純感情種じゃないのに……」


 慧理那とグラトニーの言葉に続き、総二も疑問であろう事柄を口にする。


「人間に敬意を払う事はあっても、受け入れる事は出来ないとも言ってたし……何より恐れるべき存在とか、単純感情種みたいな捕食者でもないんだし、強力な属性力を奪わずに置いておく理由ってなんだ……?」


 総二の言う通り……よしんばイースナ、もといダークグラスパーが戦闘力そのものを買われていたのだとしても、洗脳も騙しもしていない相手をそう簡単に登用できるものなのだろうか。
 幾らお気楽変態集団なアルティメギルであっても、そこまで気の抜けた組織を築いている訳では有るまい。
 現に総二達はそう考えているからこそ、疑問が現れてきているのだから。

 オマケに満身創痍であったツインテイルズから属性力を奪わず、本来であれば真っ先に滅さなければいけない筈のグラトニーまでも放っておくなど、どうもアルティメギルの旨味になる様な事を率先して行っている訳でもない様子。
 トゥアールの事を慮ったとしても尚、ウージすら手にかけぬ対応の甘さ……そんな彼女が首領直属の執行官をしているなど、不自然さがより一層際立っている。


「どうあれ、あいつトゥアールの元恋人なんでしょ? なら適当に色香振り撒いとけば、釣られてホイホイ戻って来るんじゃない?」
「なに滅多なこと言ってくれてるんですか! イースナとは本当に何もありませんでした! 総二様が不安に思ったら一体全体どうしてくれるんです!!」

『……お前らの言い分、どっちもどっちだっつーノ』


 愛香の方は無理矢理汚点を擦り付けようとするなと、トゥアールの方は別段不安に思うような繊細な奴でもないし無駄骨だと、二種の意味を込めてラースが呟いた。

 当然双方とも耳に入ってはいないが。


「……」


 何時も通りなやり取りの交わされる……その一方、総二は思案顔になって俯いていた。


(コレから人間と戦うんだろ……? 容赦なく命を奪うなんてしたくないけど、だからって同じ人間同士で戦うのも……)


 至極まっとうな理由で悩んでいる。

 命がけの闘いをするのは、アルティメギルの化物(へんたい)共でもなければ、単純感情種の様な人に似ているだけの怪物ではない、ダークグラスパーは紛う事無き本物の “人間” 。

 もしもの事があったのなら―――それを背負う事が出来るのだろうかと、総二は不安に思っているのだろう。


(きっと、愛香達も内心では同じ思いな筈……)


 だがら態と何時ものようにふるまって、己の心身を安定させているのだと、総二は下げていた視線をまずは慧理那の方へと向け―――


「燃えますわ!」
「へっ?」


 突然彼女は夢見る乙女と、ヒーローにあこがれる少年の、ちょうど間の雰囲気を纏って立ち上がった。


「同じ力を持つ敵幹部の出現! そしてその敵は嘗て先代戦士(トゥアールさん)を慕っていた少女……そんな敵との避けられぬ戦い! 運命の一戦! 超、燃えちゃうシチュエーションですわーーーーっ!!」


 落ち込むどころかキラキラ輝いており、宛らそれは外国の甲虫を目のあたりにした少年の様。
 間違っても、悩める乙女の顔では断じて無い。


「ちょ、会長!? 気楽な問題じゃないんだってば! 人間と戦わなきゃいけないんだぞ!?」
「? ……どんなヒーローだって、分かりあう為拳をぶつけるのは当然の事。中盤のエピソードでは特に避けられませんわ!」

『特撮基準カヨ、この嬢ちゃンハ……』


 ラースの言う通りヒーロー番組でも良くある、仲間になる事前提で小競り合いする決まり切ったモノと一緒くたに考えられても、こっちはガチモノなのだから困ることこの上ない。

 助けを求める様に総二が顔を向けた先は、幼馴染である愛香。彼女ならば正常な判断を下してくれるだろう―――


「まあ、別にいいんじゃない? 爆発させる訳にもいかないし、強めにぶん殴ればいいんでしょ? なんて事ないわ」
「……わーい、頼もしいなー(棒)」


 総二が棒読みになってしまったせいで色々誤解が生まれそうなので、此処で誤解無き様に言っておけば、彼女は誰かれ構わず暴力など振るわない。

 友達や家族思いだからこそ、此方に牙をむく存在に対しては容赦しないだけである。

 ……其処で総二がある結論に至ったらしく、打って変って実に渋い顔をした。
 その内心を読み取ったか、グラトニーがボソボソと代弁し始めた。


「……限りなく、野生の獣に近い生態……」
『普通は敵対しててもヨォ、思い切り殴ったりはしねぇよナァ、ウン』


 グラトニーとラースの言葉に総二は小さいながらも、確りとした肯定の意思を持って頷いた。
 どうも当たりらしい。

 そんな彼らに最後の癒しを求めたか、総二が口元を緩めて視線を傾け―――


『マ、手加減する理由がねぇンデ、コッチはガチ技ぶつけてやっけドナ』
「……“風砲暴”(ふうほあかしま)―――違った、“ブレーク=マグナム”……それでドカーン」


 ものの見事に裏切られた。

 考えて見れば……否、手心加える理由が無いのだし、属性力も摂取せねばならないのだから、考えるまでもなく当たり前のことである。


「ありがとうございます愛香さん慧理那さん、グラトニーちゃんにラースさん……イースナも、心のどこかでは倒してほしいと思っている筈です……なので手加減せず余計な事を口走る前に、全力全開の全壊でボッコボコにしてやってください。そりゃもう足腰立たなくなって、みずぼらしく地を這うぐらいに」


 トドメとばかりにトゥアールからも過剰なまでのOKサインが出てしまい、本格的に頭を抱えているのは総二だけとなってしまった。


「戦利品としておっぱいが手に入りますし、愛香さんは特に頑張ってくださいね!」
「いやよそんな奮戦の仕方は! 敵からの施しなんて受ける気は無いわ!」
「私の胸はちぎろうとしたのに何で向こうはダメなんですか!? 何なんですかその胸と同じで薄っぺらいプライド!」


 言いながらもトゥアールはとある宝玉を幾つも取り出し、愛香のまえに突き付ける。


「ほら! 同じ属性同士を融合させ、力を使えるレベルまで引き上げましたよ! そんな薄っぺらいプライドを持っている愛香さんならば、この貧乳属性(スモールバスト)を使えるでしょう!」
「捨てなさいよそんな汚らわしい物!!」
「ええっ!? 折角幾つもの同属性を練り合わせて使用可能にしたのでしょう!? もったいないですわ!」
「その通り! それに愛香さんならば、貧乳属性の力をこの世界で一番、最大限発揮できる筈です!」
「絶対嫌ーーーーーーーーーーーっ!!!」


 ふと、今まで自分の母親が嫌に大人しい事を不気味に思ったか、総二の目線が自然と其方へ向く。


「女幹部の出現……まって、これってもしかして……!?」


 唇に手を当て何やら体を震わせていた未春は、不意に立ち上がると総二の肩をがっしり掴む。


「総ちゃん! チャンスよ、これはチャンスなのよ! 御父さんとお母さんがかなえられなかった願い、確り託すからちゃんと叶えてね! トゥアールちゃんにゾッコンな彼女を、自分の方へ振り向かせるのよ!!」
「いや、一体何を託そうとしてるんだよ母さんは!?」


 自分の預かり知れぬうちのとんでもない計画が進みそうなのに、子を想う母親そのものの顔を向けられてしまい、総二は結局否定の一言を口にできない。


 そうやって、やんややんやと盛り上がる地下秘密基地の中に―――一つ声が響いた。


『それじゃあ話も終わっタシ、今度は俺らについて話す番ダナ』
「……ん」

「「「「あ」」」」

『……やっぱ忘れてやがっタカ。どうにも記憶力の無い奴らダゼ……』


 そうだったそうだったと、今度はテーブルの前から回復カプセルの前に移動し、話を聞くべく寝たきりのグラトニーへ皆が視線を向けた。


『そんじゃ話す前に一つ言って置クゼ―――






―――暫くお前らと共闘するかラヨ』
「……ん、(きょー)(とー)……」

「「「「…………」」」」


 そんな、刹那の静寂ののち……


「「「「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーっ!!!??」」」」


 部屋を揺るがさんばかりな、四重の絶叫が響き渡った。

 
 

 
後書き
意外な展開……!?
ラースが協力を打診した訳とは……。

では次回。 
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