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蚊の毒

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3部分:第三章


第三章

 黄緑の草がカーペットの様に広がり時々木があるサバンナの中にあるその湖は黒い水がある。その中にカバ達がいる。いるのは彼等だけであった。
「カバだけだね」
「そうだね」
 サルミネンと塚本はそれを見て言い合う。確かに湖の中にいるのはカバ達だけである。彼等が目当てにしているあのライオンはいなかった。
「ここにはいないか」
「やはりそう簡単には見つからないか」
「気長に探しましょう」
 アッディはその彼に対して言ってきた。
「とりあえずここにはいないですね」
「そういうことだね。ここにはいないから」
「別の場所に移るか」
「あのライオンはとにかく数が少ないんですよ」
 それを知っている彼の言葉だった。
「とにかくそうなんですよ」
「少なくともここにはいない」
「そういうことか」
 二人はそれで結論付けるのだった。
 そうして場所を変える。別の湖に向かった。だがそこにもいるのはカバ達ばかりであのライオンはいなかった。ここにもであった。
「また別の場所だな」
「行くか」
 こうしてまた別の場所に行く。そしてまた探す。それを繰り返していた。
 数日それを繰り返していたがやはりあのライオンは見つからない。だがここで一つのことがわかったのであった。
「カバの生息区域は」
「とりあえず現状維持になってるね」
 夜のテントの外で三人で火を囲んで話をしていた。サルミネンと塚本はカバのことも調べていたのである。水のライオンと一緒にである。
「それはいいことだね」
「数もね」
 減っていないということも調べているのだった。
「まずはいいことだね」
「それも」
「しかし」
 ここで腕を組んで述べたサルミネンだった。
「あのライオンはいないか」
「いないね、それだけは」
「絶滅したとかはないと思うけれど」
 サルミネンはこんなことも述べた。持って来た携帯用の干し肉とパンを水で流し込んでいる。そうしながら話をしているのだった。
「それでもね」
「まだ見つからないね」
「まだね」
 こう塚本にも返すのだった。
「明日は別の湖に行くか」
「河も見ていって」
「そうだね。まだまだ探そう」
 こう決めるのだった。しかしここで。
 サルミネンは不意に自分の右手に軽い痛みを感じた。見るとだった。
「!?蚊か」
「刺されたかい?」
「みたいだね」
 塚本に対して述べたのだった。
「どうやら」
「えっ、刺されたのかい」
「うん、どうなのかな」
 刺されてから不安な顔になる彼だった。
「まさかとは思うけれど」
「そうですね。注意しましょう」
 アッディが言ってきた。暗がりの火の中に照らされた顔は下から赤く映えていた。そして上の方は黒くなっている。そうなっているのだ。
「街で言いましたけれど」
「その病気だね」
「はい、それです」
 まさにその病気のことだというのだ。
 
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