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蚊の毒

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2部分:第二章


第二章

「アマニ=アッディです」
「アッディさんか」
「宜しく御願いします」
「そう、アッディと呼んで下さい」 
 そのアッディは気さくに二人に返してきた。赤い半袖のシャツがやけに似合っている。
「気軽に。それで仕事ですけれど」
「サバンナに行きたいんだ」
 塚本が彼に話した。
「もう聞いていると思うけれど」
「あのライオンですね」
 既にそれを知っている人間の言葉だった。
「水ライオンですね」
「うん、それだよ」
 今度はサルミネンが彼に答えた。
「水ライオン。最近じゃタンザニアを中心に目撃されているって聞いているけれど」
「まああのライオンはですね」
 ここでも知っている人間としての言葉を出す彼だった。
「滅多に見られるものじゃないですしね」
「ということはいるのは間違いないんだね」
「あの牙ですぐにわかりますから」
 そのサーベルタイガーを思わせる牙の話も出された。
「もうすぐにね」
「それでいる場所は」
「何処かな」
「それも案内しますよ」
 アッディは明るい声で二人に告げた。
「そこにね。ただ」
「ただ?」
「どうしたんだい?それで」
「虫には注意して下さいよ」
 不意に慎重な顔になって告げてきたのである。
「虫には」
「ああ、そうだね」
「それはね」
 このことはサルミネンにしろ塚本もよくわかっていた。そうして彼の言葉に頷いたのだった。
「ツエツエバエとかね」
「怖いからね」
「蚊もですよ」
 アッディはそれもだというのだった。
「蚊にも注意して下さいね」
「うん、わかってるよ」
「それもね」
 二人はそれは完全に頭の中に入れているつもりだった。そうしてそのうえで彼に対して言うのだった。そうしてまた言うのだった。
「マラリアとかね」
「それもね」 
 わかっているつもりだった。しかしであった。
「いえ、それがですね」
「それが?」
「何かあるのかい?」
「どうも最近マラリアとは別の病気が出ていまして」
 アッディの顔が一変した。その暗い顔になって話してきたのだ。
「それに注意して下さい」
「新しい病気?」
「エボラみたいなのかな」
 言わずと知れたアフリカの伝染病である。感染したならば瞬く間で死に至る恐ろしい病気である。死に至るのがあまりにも速く広域に感染しない程である。
 二人はその病気をまず連想した。そうしてであった。
「そんな病気だったら」
「注意しておくか」
「ワクチンも用意してきたし」
「そうだね」
「ええ、ですから」
 また言うアッディだった。
「虫には注意して下さいね。くれぐれも」
「よし、じゃあそれに注意して」
「行くか」
 こう言い合いであった。三人はそのまま街を出てジープでサバンナに出る。そうして湖のある場所に向かうのだった。当然水ライオンを探す為である。
 
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