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エル=ドラード

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7部分:第七章


第七章

「ずっと山ですよ」
「子供の頃からかい?」
「リマって高いところにあるじゃないですか」
「うん」
 高原にあるので有名な都市である。ペルーという国の殆どがアンデス山脈にあるからこれも当然である。この国の特徴でもある。
「ですから生まれてからずっと
「高い場所にかい」
「父はガイドで私もそれについて」
「アンデスを歩いていたんだね」
「はい」
 にこりと笑っての言葉である。
「ずっとです」
「そうか。ずっとなのかい」
「ですからこうした場所を歩くのも」
 その山道をというのである。
「慣れてます」
「僕は最初は、いや今でも」
 言いながら苦笑いになる。
「辛いね。特に最近歳かな」
「何言ってるんですか、教授」
 今のポンスの言葉に笑って返すシッドだった。
「その足取りじゃ大丈夫ですよ」
「大丈夫かな」
「はい、絶対にです」
 大丈夫だと太鼓判を押すのだった。
「ですから安心して進みましょう」
「そうしようかな。ただ」
「ただ?」
「いや、歳よりもね」
 困った顔になっていた。笑ったままであったが。
「太り過ぎかな、最近」
「太り過ぎですか」
「どうも食べ過ぎるんだよね」
 首を横に振りながらの今の言葉だった。
「何でもね」
「食べられるってことはいいことですよ」
 しかしシッドはそのポンスにこう述べた。
「とてもね」
「いいことかな」
「食べられるってことは健康な証拠じゃないですか」
 だからだというのである。
「ですから」
「そうか、そういえばそうだよな」
 シッドに言われてそのことに気付いたポンスだった。
「健康だから食べられる」
「はい」
「そしてエル=ドラードも探せる」
 そのことも言うのだった。
「全部健康だからだね」
「健康第一ですよ」
 何やら教会の文句めいていたがシッドが言うと不思議と明るいものになった。
「ですからね」
「そうだね。それじゃあ神に健康を感謝して」
「まずは食べて」
「そして先に進もうか」
「はい、そうしましょう」
 こうして先に進む彼等だった。そうして次の日にその目的地に辿り着いた。しかしそこも。
「今回もだったか」
「そうですね」
 残念そうに声を出すポンスとそれに応えるシッドだった。
「またか」
「すいません、ここだと思ったのですが」
「いや、いいよ」
 シッドの謝罪の言葉はいいとしたのだった。
「また次があるからね」
「次ですね」
「そう、次だよ」
 前向きに述べる彼だった。
 
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