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モンスターハンター ~厄災の狩人達~

作者:島原
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黒蝕の陰、天廻の陽
  危機!テツカブラを狩れ!【後編】

 
前書き
俺っち土竜族が採掘に出かける場所にテツカブラが現れた…。
まさかあのアゴで、あんな巨大な岩を持ち上げるなんて…。
おかげで鉱石が掘れず、
ありとあらゆる仕事がパァよ…。
誰か、助けてくれい…! 

 
先陣を切って突撃したのはダイラス。
肩に担ぐフラストレーションを腰付近へ運び力を溜めながらテツカブラの左半身めがけて飛び上がった。

「一番槍はもらったぞォ!」

そのまま攻撃をヒットさせるかという状況を魔の一手が覆した。
テツカブラの一唸りとともに横幅がハンター二人分はある強靭な右前脚がダイラスを瞬く間に薙ぐ。

「グッ…カッハ…」

そのまま天高く放り上げられた後地面に叩き付けられる。
重傷というわけではないが、衝撃の余波がダイラスの脳を揺さぶる。

「ゲホッ…こ、こんな話聞いてねえ…。」

「狂竜症により筋肉の身体的制限が外れているのか…。それに伴い感覚神経も研ぎ澄まされている様だ…。これは並のハンターや腕自慢でも勝てそうにない。と、なれば」

ポーチから円盤状のアイテムを取り出したアルフレッドはそれを地面にセットし、テツカブラの真下の空間に滑り込んで腹部に片手剣を突き立てた。
鉱石で十分に鍛え上げられた鋭い六十二式対飛竜剣がテツカブラの腹部を突き破る。
突き立てた片手剣で勢いをつけ、腹下から剣を引き抜きながら脱出した。
当然テツカブラはアルフレッドに敵意を向けるものと思われたが、突如ビンを変更していたアルマへその跳躍力の矛先を向けた。

「アルマさん!緊急回避を!」

跳躍するテツカブラの存在に気づき、回避を始めたその時

「ぜぉりゃあ!!」

フラストレーションを担いだダイラスが飛び掛かりながら側頭部に会心の一撃を命中させる。
テツカブラは衝撃波と共に吹っ飛んだが、着地したダイラスも若干フラつきがちであった。

「助かったわ、ありがとうダイラス。」

「ラス、大丈夫か!?」

「あんま…大丈夫じゃねえな…。体の中を変なのが蠢いてる感じだ。正直気持ち悪ぃ…。」

「体の中を変なの…まさか、狂竜ウィルスに感染した!?」

とっさにポーチの中身を探り出すアルフレッド

「まずい…いまだモンスターへの感染報告がされていただけで人体への被害は未知数…。
クエストリタイアもやむなしか…。」

サイン用の拳銃にリタイアを報せるための銃弾をこめるアルフレッドだったが

「アル、そんなことしなくたっていいぜ。
このまま俺たちがあのカエルを始末しなかったらナグリ村の皆にどんな顔して謝ればいいんだ?
あの女の子だって建前は元気そうに振舞っていたけど、心の奥底では絶対に悲しんでるはずだ。」

拳銃をつかみながら諭すダイラス。
テツカブラは衝撃から体勢を立て直し、標的を再びダイラスへ向けた。

「…そうだった、ありがとうラス。
僕は大切な事を忘れていた。」

ポーチから一粒の実を取り出した。

「本部から何かあった時のためにと支給されていたアイテムだよ。
『ウチケシの実』と言うそうだ。何かに使えるかもしれない。持っていてほしい。」

「分かった。さあいくぞ!!」

四人は再び武器を構え、テツカブラに立ち向かった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同刻、ナグリ村

「しっかし…一体全体どうしたってんだナグリ村は…。」

ガートン、お嬢と共に村内を散策するジャックス。
方々で悲嘆にくれる土竜族に声をかけはするものの、結果はみな同じであった。

「村長はっと…。あ、あそこだ!おーい村長!俺だ、ジャックスだ!」

小走りで村長の元へ駆け寄るジャックス。

「んあー…?ジャックスか…。どしたい…。」

「村長、どうしたってんだよ。もっと元気を出せって!
自慢のヒゲも地面に向かって垂れちまうぞ!」

「あーそうだなー…。」

「ダメか…。ひげの事をイジるとすぐに怒ってくる村長がこんな調子じゃ、周りの皆から活気が無くなっているのもどうしようもない…。」

帽子を深く下げたジャックスが静かに願う。

(何とかこの村に襲い掛かった脅威を打ち砕いてくれよ、皆。)



物陰から静かに周辺の様子を伺う料理長ネコ。

「フムフム…。どうやらこの村の皆はなぜか知らないけど元気がニャいらしいニャル。」

と、竜人商人のじいさん。

「会話を聞く限りじゃここを本来流れておるマグマも、今は見当たらんわな。」

二人は顔を見合わせ、策を講じるために考え込む。

「ワシは今回はお手上げじゃな。たとえ行商で鉄鉱石を仕入れたとしても、加工の源のマグマが無ければ仕事にならんわな。」

竜人商人はさもお手上げと言いたそうに両手を挙げた。

「とりあえず腹が減っては何とやら、ニャル。皆の分の料理も作って何とかして元気にしてみせるニャルよ。」

「ほっほ、ならばワシも行商の伝手を頼りに滋養強壮に効く食材を仕入れるとするわな。」

会話を終えた二人は頷くと同時に、各々の持ち場へと戻った。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同刻、ガルガン地底洞窟

「うぐっ…これは手強い。」

狂竜症の疑いがあるテツカブラとの戦闘開始からおよそ十分。
各々手ごたえを感じるシーンがあったものの、有効打とはいかない状況が続いていた。
とはいえ、テツカブラも右前脚が部位破壊済み、アゴの牙も片方が折れ目に見える傷が増えていた。

「だが、これまでの状況において分かったことがいくつかある…。」

アルフレッドも武器を構え直し

「皆さん!次に黒い涎を垂らし始めたら今度は落とし穴を仕掛けます!その際に畳み掛けましょう!」

三人が頷くと同時に全員で攻撃を再開した。
アルフレッドがまず右側面から陽動も兼ねて右足を攻撃。
足の接地面を掬い上げる様に切り付け、転倒を誘発すると転倒先で力を溜めていたダイラスが頭部に合わせてジャストミートの打撃をお見舞いする。
それでもなお正気を保ち何とか姿勢を戻そうとするテツカブラにもう一度お見舞い。
めまい状態に持ち込むとガンナー二人からの援護射。
弓のアルマは矢が最も効果を発揮する射程距離を保ちつつ、重弩のマトレガは貫通弾に切り替え最大威力の圏内で各々弱点を狙撃した。
ようやく体制を立て直したテツカブラも、ハンマーの打撃によりスタミナを奪われ疲労を引き起こす。

「今です!畳み掛けましょう!」

片手剣を構えながらテツカブラの後ろからアルフレッドが
力を溜めながら真正面にダイラス
その両サイドの死角をガンナーの二人が埋めるという構図。

肩を狙撃され、苦しみながらも目の前に居るダイラスに攻撃を向けるが

「背中がガラ空きですね!」

尻尾から駆け上がったアルフレッドが素早い一振り
背中の異変にも気を向けずその豪快な右腕を振りかざすが、鈍い金属音

「…この程度の力で俺と勝負ってか?」

溜めきった力を手に集中させながら、ハンマーの打突面のみでテツカブラの拳を止めると

「舐めてんじゃ…」

接触する打突面でテツカブラを突き返し

「ねぇぞオラァッ!!!」

フルスイングをアゴにヒットさせ、三メートルほど吹き飛ばした。
地面に叩きつけられたテツカブラはすぐに姿勢を直そうとしたが

「トドメだァッ!!」

すぐさまダイラスのフルパワー叩きつけにより、その命は潰えた。



「ふぅ…やっと、依頼達成かな。」

額の汗を拭いながらアルフレッドがテツカブラの死体の傍へと近寄り、検体抽出を行った。

「さて、検体抽出が終わりましたしベースキャンプに戻るまでの間に今回で分かったことを整理しておきましょう。」

各々ベースキャンプへと歩き出した。



「まず、皆さんに謝っておかなければいけないことがあります。
アルマさんには事前に教えてありましたが、狂竜ウイルスは一か月ほど前、ちょうどエイン村でポポが暴れだす三週間前には既に発見されていた感染症…という事とされています。」

そのまま歩きながら説明を続けるアルフレッド

「しかし、今回の調査も兼ねた狩猟で分かったことがいくつかあります。
一つ目は、狂竜ウイルスはモンスターから人、とりわけハンターへの感染が確認されたことです。」

ダイラスが自慢げに頷く。

「今回はダイラスが奇しくも感染してしまい、一時はどうなる事かと思いました。
経過観察からしてもその後何事もなさそうで何よりです。」

「ああ、そのことなんだけどなアル」

ダイラスが思い出したように話し出した。

「体の中を変なのが蠢いてるって言った後、しばらく攻撃してただろ?
そしたら急にふわっと体が軽くなる感じがしたんだ。」

「軽くなる感じ…?多分症状が改善したからじゃないかしら?」

ダイラスの証言をもとに予測を立てるアルマ。

「いや、多分そうじゃないんだ。それに、いつもより武器を振りやすくなった感じっていうか…。」

「症状が改善して更に、端的に言えば攻撃力が上がる…。変な話ね。」

「いや、ちょっと待ってください。」

また何かをアルフレッドが思い出す。

「そうか…“克服“症例か!」

「こくふ…?何だそれ?」

「詳しいことは後で話すよ、ラス。次に二つ目は『時間制限がある』こと。これを知っているだけでも随分恐怖度が違うと思います。」

「三つ目は先ほどの克服症例とも関わってくるから、とにかく今はナグリ村へ帰ろう。」

四人はガルガン地底洞窟を後にした。 
 

 
後書き
ものっすっっっっっっっっごくお待たせ致しましたッッッ!!!!

次回はガンバッテ更新します! 
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