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強い警官

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第四章

「あんな酷い殺され方は歴史でもそうない」
「それで警部は、ですか」
「着任してすぐにその話を聞いてな」
 それでというのだ。
「唖然となった、それで私に言ったんだ」
「何てですか?」
「どうしてこんな事件が起こるのを警察は事前に防げなかったかってな」
「あの事件の背景には」
 政治家の愚かな行動やマスコミの軽率極まる行動の他にもだ。
「治安の悪化もありましたね」
「当時のな」
「警部はそこに目を向けられたんですね」
「そうだ、それでだ」
「二度とああした事件が起きない様にですか」
「あいつは考えたんだ」
 そうだったというのだ。
「それで出た結論はだ」
「強くなられることですか」
「警官がな」
「それでなんですか」
「毎日激しいトレーニングをはじめてだ」
 そのうえでというのである。
「あそこまでなった」
「強く、ですか」
「そうだ、元々背はあったしな」
「それでああした身体になられたんですか」
「拳法も身に着けてな」 
 部長は劉のそのことを話した。
「そうして強くなったんだ」
「それまで運動らしい運動はされてなかったのに」
「それが変わった」
「あそこまで強くなったんですね」
「そうだったんだよ」
「ううん、あの事件のことを知ってなんですね」
「確かにな、警官が弱いとな」
 戦えない、そうした警官ならというのだ。
「誰も守れないな」
「はい、ああした凶悪な連中からは」
「治安をよくする為にもな」
「警官は強くないと駄目なんですね」
「そういうことだ、戦えないとな」
 それこそというのである。
「どうしようもないからな」
「そういうことなんですね」
「本当にな、若しもな」
 部長はここで遠い目になった、夜の台北の裏通りの路で。路には二人以外には誰もいないがその路の中でだ。
「あの時もな」
「警官が強かったら」
「本当にな」
「ああした事件はですね」
「起きなかったかもな」 
 こう言うのだった。
「強い警官ばかりだとな」
「悪い奴もことをしようとしませんからね」
「そうだ、だからな」
「警部はああしてですか」
「強くなったんだ」
「そうだったんですね」
「警官は強くないと駄目だ」
 本当にというのだ。
「強くないと何も、誰も守れない」
「そういえば警部は」
 曹は劉自身のことにも気付いた。
「市民の人達を守っていますね」
「そうだな、その強さでな」
「現場にいて」
「警察組織の健全化と有効な機能化も大事だが」
 それと共にというのだ。
「警官個々もな」
「強くないと駄目ですか」
「そういうことだ、あいつはそのことに気付いたんだ」
「それまでは」
「キャリアだからな」
 所謂だ。
「だから組織の健全化、機能化を考えていたんだ」
「ブレーンとしてですね」
「指導者としてな」
 そうだったというのだ。 
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