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強い警官

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第三章

「今みたいになったんですか?」
「そこだよな」
「はい、何であそこまで」
「ちょっとな」
「ちょっと?」
「あることを知ったんだよ」
「あること?」
 曹は部長の言葉に即座に問い返した。
「それは一体」
「今食って飲んでるな」
 部長の言葉は真摯だった。
「そうしながら話すことじゃない」
「かなり酷い話みたいですね」
「そうだ、君ももう知ってるかも知れないがな」
「僕もですか」
「警官、それもこの国の警官ならな」
 台湾の、というのだ。
「若しかしたらな」
「そうですか」
「ああ、とにかくな」
「はい、今はですね」
「後で話そう、知らないで聞いてもな」
 それでもとだ、部長は警告もした。
「吐いたりするなよ」
「わかりました」
 曹もここで覚悟した、そしてだった。
 二人は一旦飲み食いを止めてだ、屋台を後にした。そして。
 そこでだ、二人で街の裏通りに入ってだ。二人だけになったところで話した。
 部長は真剣そのものの顔でだ、曹に話した。
「日本の人気漫画原作者の娘さんがこの国にいたんだ」
「あっ、その話は」
 曹もだ、部長の話にはっとなった。
 そしてだ、すぐに彼に問い返した。
「その人がこっちの女の人と結婚して」
「その娘さんもこっちにいたがな」
「それで誘拐されたんですね」
「知っているんだな」
「はい、その事件のことは有名ですから」
 曹は顔をこれ以上はないまでに曇らせて部長に答えた。
「僕も知ってますか」
「やっぱりそうか」
「というかその話は」
「この国の警官ならな」
「はい、大抵知ってますよな」
「とんでもない事件だからな」
「そうですね」
 曹も顔を顰めさせたまま部長に答えた。
「実際にその話を最初に聞いた時に吐きそうになりました」
「実際にそうなったか」
「あまりにも惨たらしい話なので」
「そうだろうな、それでだ」
「警部は、ですか」
「その事件のことを知ってな」
「それで、なんですね」
「あの事件は確かにマスコミの不手際だった」
 部長は忌々しげに言った。
「馬鹿な政治家が得点稼ぎに警察の情報をマスコミに流してだ」
「マスコミが身代金受け渡し現場に殺到してでしたね」
「身代金を渡せなかった」
 言うまでもなく誘拐された被害者の引渡しの為のものだ。
「その結果だった」
「あの娘は殺されました」
「どんな殺された方をしたかはな」
「はい、聞いてます」
「ならそれは言わない」
 警部は忌々しい顔で返した。
「しかしだ」
「あんな殺され方は他にないですね」
「検死官も言っていたがな」
 その死体を検死した人物だ、他ならぬ。 
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