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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第29話 王政復古

大政奉還がなったとはいえ、いまだ実権は徳川にあった。が、すでに倒幕へ、そして、天皇中心へのシナリオが着々と長州、薩摩、土佐そして、朝廷へと復帰を許された岩倉具視の手によってすすめられていた。
詳しい内容は省かせてもらうが、これがいわゆる「王政復古の大号令」である。
が、この計画も一両日にはならなかった。
何故なら、右大臣・岩倉具視と土佐藩主・山内容堂が徳川の扱いに対してもめたからでる。
容堂はたとえ大政奉還したとはいえ、徳川をないがしろにして新たな政権を決める会議に呼ばないのはおかしいと唱え、幼い天皇を擁して権力を私物化するものだと岩倉及び長州、薩摩を批判した。
これに、岩倉は激怒した。
「幼い天皇とは何事か。今まで徳川は皇室をないがしろにし、失政を行いながら反省もせず、名ばかりの大政奉還を成して、今なお領地、領民を手放していないでなないか」
と、まくし立てた。
両者の意見は平行線を辿った。が、西郷の一言で一気に岩倉有利に傾いた。
それは。
「こちらには容堂公がよく知っている人物がおわす。一番、恐れている人物が」
この一言で後藤は動いた。
(まさか、奴が薩摩にいたとは)
後藤は気づいたのだ。武市半平太が薩摩にいると。あの化け物が薩摩にいると。
後藤の報告に容堂も顔色をかえた。
「あの化け物が薩摩にいるというのか・・・・」
容堂は絶句するしかなかった。そして、一気に倒幕の最終章と動いていくのだった。

この会議の前のことだった。
武市は京都・薩摩藩邸に寄っていた。
都合よく宮門護衛の任務のために西郷隆盛が藩邸に待機していたから武市にとって好都合だった。
「西郷さん、土佐の武市というお方が面会を所望ともんす」
門番をしていた藩士が西郷に告げた。
「土佐の武市?」
西郷は首をひねった。
「申し訳ないこったが、今はとり急いでいるとのことを言い伝えてけれないか」
西郷は門番に藩士にそう告げた。が、数分もしないうちに飄々と歩いてくる牧師のような恰好をした男とその後ろで着流しの着物を着た男が西郷の元へ近づいてきた。
「薩摩の西郷隆盛殿とお見受けいたしますが」
牧師のような服装の男が話仕掛けてきた。
「おまはんは?」
西郷は刀に手をかけた。
「私の顔をお忘れですか?」
その男は傘をかぶっていたが、ゆっくりと傘を剥いだ。
「お、おまはんは、武市瑞山殿!!」
西郷は目を見開いた。何故なら、武市半平太は勤王党とともに滅んだと知っていたからだ。
「久しぶりですなぁー、西郷殿」
武市はにやっと笑った。
「お、おまはん、生きていたのか」
その笑みにさすがの西郷も背筋が凍る妖気を感じた。
「あぁー、私、西郷殿が思っているように一度死んでおりまする」
武市は一度西郷から目をそらし、空を見上げた。
「ですが、ある術によって魔界より転生致しました」
「ば、ばかな!!そんなことが・・・・・・」
西郷は絶句した。
「嘘ではありませぬ。では、この男を見てもそうおもわれますか?」
武市は後ろの男に顎をしゃくって傘を脱ぐように指示した。
「そ、そんな、馬鹿な!!」
傘を脱いだ男の顔にも見覚えがあった。
「高杉どん・・・・・・・」
高杉晋作もまた結核で亡くなったと桂小五郎から伝え聞いていた。惜しい男がなくなったと西郷は心から思ったものだった。
「これで、信じていただけましかな?西郷殿」
武市は呆然とした顔をしている西郷に言った。
「武市さ、それでおいに何の用でごわすか?」
我に返った西郷はにやりと微笑んで武市に言った。
「西郷殿と我らの目的は一緒。我ら魔界衆、あなた様に手を貸したく参上仕った次第」
武市は西郷の足もとに片膝をつきひれ伏した。
「わかり申した。ともに戦いもんそ」
西郷は武市の手を取り固く握手した。が、なんとも言えない冷たさに武市は死んでいると確信するのだった。
(ふふふ、我は倒幕など興味もない。西郷、あんたは戦争屋だ。せいぜい、利用させてもらおう)
武市は内心で狂笑するのだった。
 
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