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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  七話~英霊と優しき少女

side ティアナ


私には夢がある。
執務官になること。そのために自分の力を証明し続けてきた。
でも、この部隊に来て思った。
天才や歴戦の勇士ばかりが揃い、『魔術』というレアスキルまで持っている人までいる。
同期の陸戦フォワードは将来有望。


凡人は、私だけ……………


だとしても、証明するんだ!


ランスターの弾丸はちゃんと敵を撃ち抜けるってことを。



side ヴィータ



「おらおらぁ!どうしたスバル!」


あたしは今、同じフロントアタッカーとしてスバルに訓練をつけている。


「くうっ………」
[Protection.]
「だありゃあああああ!!」
「うわあっ!」


いい強度だな。吹っ飛ばされても壊れねえプロテクション何ざそうねえからな。


「ま、筋はいいが、まだまだだな」
「あ、ありがとうございます………」
「おいスバル」
「なんですか?ヴィータ副隊長」
「あたしたちフロントアタッカーってのはな、単身で敵陣に切り込んだり、最前線で防衛ラインを守ったりすんのが仕事だ。防御スキルや生存能力が高いほど攻撃時間が長く取れる………てとこまではなのはに教わってるな」
「はい!」
「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身にまとって自分を守るフィールド系。この三種を使い分けつつポンポン吹っ飛ばされねえよう下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」
「頑張ります。」
[学習します]
「防御ごと潰す打撃があたしの専門分野だ。グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったら……しっかり守れよ」
「はい!」


こいつもタフだしな。ガッツリ厳しくやってやるか。



side フェイト


久しぶりにエリオとキャロに訓練をつけてあげられている。


「二人はスバルやヴィータみたいにタフじゃないからまずは攻撃を食らわないように」
「「はい!」」
「まずは動き回って狙わせない。攻撃が当たる位置に長居しない。それが低速で確実に行えるようになったら……スピードを上げていく」


見本としてはこんなところかな。じゃ………


ターゲットからの一斉攻撃。それを高速移動で回避。


「「うわぁ……」」
「こんな風にね」
「「す、すごい……」」
「今のも、ゆっくりやればだれでもできる基礎アクションを早回しにしただけなんだよ」
「そうなんですか……」
「スピードが上がれば上がるほど勘やセンスに頼るのは危ないの。ガードウイングのエリオはどんな状況でも攻撃と支援が行えるように。フルバックのキャロは素早く動いて仲間の支援をしてあげられるように。回避行動の基礎、しっかり覚えよう」
「「はい!」」
「あの……フェイトさん」
「何?エリオ。」
「今日はランスさんは……」
「ランスはね、新しい魔法を試すってなのはのところに行ったよ」
「そうなんですか……」
「きゅくる~」


残念そうなエリオ。かなりなついてるみたいだね………ちょっとさびしいかも。




side なのは



「良いよ、ティアナ。その調子」
「はい!」
「ティアナみたいな射撃型は一々避けたり受けたりしてたら仕事ができないからね」
「はっ!」


後ろの魔力弾を撃ち落とせずに回避するティアナ。


「ほら、そうやって避けると後が続かない!」


ちらりと横目でランス君の方を見ると………


背後の魔力弾をまるで目が後ろにあるかのように正確無比に撃ち抜いていた。
初見で私の魔法をまねたり、近接戦はフェイトちゃんやシグナムさんとも互角以上。しかも本気じゃないのに。
二人にはリミッターもあるとはいえ………


ほんと、すごい才能。


おまけに今日は………



朝~


「なのはの嬢ちゃん、ちょっといいか?」
「何?」
「収束砲、だったか?あれ教えてくれ」
「ええ!?」



…………………




ときたものだ。
まだ魔法に触れて三週間ちょっと。だというのに………


魔力量が嘘のような強さ……リミッターが付いたとしてもオーバーSレベルの戦闘能力があるのは間違いないよね……


しかも奥の手たる魔術と自身の持つ魔槍を使ってはいない(気づかれてないだけで魔術は使ってますが)のだ。


と、ティアナが今度はしっかりと魔力弾を撃ち落とす。


「そうそう!その調子!」


ティアナもいい感じ。


「射撃型の神髄は?」
「あらゆる相手に、正確な弾丸をセレクトして命中させる。判断速度と命中精度!」
「そう!チームの中央に立って、誰より早く中、長距離を制する。それが、私やティアナのポジション、センターガードの役目だよ!」
「はい!」




side シグナム



「いや~、やってますねぇ」
「そうだな。やる気があるのはいいことだ」
「初出動がいい刺激になったみたいだな」


現在、モニターで訓練を見ているのは私とヴァイス、デバイスが調整中の衛宮の三人だ。


「若いっていいっすね~」
「若いだけあって成長も早い。まだしばらくは、危なっかしいだろうがな」
「若いころは我武者羅なものだ。それが裏目に出ることもある。それを止めてやるのが私たち年長者だろう?」
「衛宮の旦那って年の割にずいぶん老けたこと言いますね」
「なにしろ私は平穏という言葉と無縁の人生を送ってきたのでね。自然とこうなったのさ」
「へぇ~」


(ヴァイス、衛宮の過去はいろいろあるそうだ。あまり深く聞くのはよしておけ)
(ま、そうすね。人にはいろいろあるもんすから)


「そういや姐さんは参加しないんで?」
「私は人にものを教えるというのが苦手でな。戦法など、届く距離まで近づいて切れ、としか言えん」
「ある意味最高の奥義何すけどね………まあ、確かに連中にはまだちっと早いっすね……」
「私は食堂の方の仕事があるのでこれで失礼する」
「ああ」
「うまい飯期待してますよ~」
「心得た」




side なのは



「はい終~了。お疲れ様」
「個別スキルに入ってくると、結構きついでしょ?」
「け、結構というか………」
「かなり……」
「フェイト隊長はあんまり出てこれねえけど、あたしは当分お前らに付き合ってやるからな」
「あ、ありがとうございます……」


かなり疲労が見られる中、一人だけぴんぴんしている人が一人。



「ラ、ランスさん……なんでそんなに余裕そうなんですか?」
「昔一人で一個大隊の足止めしてたことがあっからな、これくらい散歩と変わんねえよ」
「さ、散歩って………」
「その前にさらっとものすごいこと言ったような……」



一個大隊一人でって……英雄ってこんな人ばっかなのかな?


「と、とりあえずエリオとキャロは特にだけど、体が成長途中なんだから無茶はしないように」
「「「「は、は~い」」」」
「じゃ、お昼にしよっか」



隊舎に戻ると、はやてちゃんとリイン、シャーリーが。


「はやてとリインは外回りか?」
「はいです!ヴィータちゃん♪」
「ちょっとナカジマ三佐とお話ししてくるよ。スバルはお父さんとお姉ちゃんになんか伝言とかある?」
「あ~……いえ、大丈夫です」
「そうか、じゃ、行ってくるよ。」
「ナカジマ三佐とギンガによろしくね」
「行ってらっしゃい、はやてちゃん」
「うん」
「行ってきま~す」




side スバル



「スバルさんのお父さんとお姉さんも陸士部隊の方なんですね」
「そうだよ。八神部隊長も一時期父さんの部隊で演習してたんだって」
「へぇ……」
「しかし、うちの部隊って関係者繋がり多いですよね。隊長たちも幼馴染なんですよね」
「そうだよ。なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子供のころはそっちにいたんだよ」
「確か……第97管理外世界『地球』ですよね」
「97番ってうちのお父さんのご先祖様がいた世界なんだよね~」
「そうなんですか?」
「あっちには私も父さんも行ったことないからよくわかんないんだけどね」
「そういえばなんとなく名前の響きとかなのはさんたちと似てますよね」
「あとランスさんたちとも!」
「エリオはホントランスさんのこと好きだよね」
「はい!」
「そうか、そいつは光栄だ」
「「「「いつの間に………」」」」
「私もいるぞ」
「士郎さん!」
「俺らも97出身だからな、会話に混ざりに来たってわけよ」
「ああ!そうでしたね」
「スバルの嬢ちゃん、教えたことあったか?」
「え!ええと……」


そんな時、ティアから念話が。


(この馬鹿!あの事は秘密だって言ったでしょ!)
(ご、ごめん~)


「名前の響きからそんな感じがしてました」
「ほ~う?」


う、まずいかも……よし!


「え、エリオはどこ出身なの?」
「僕ですか?僕は本局育ちです」
「本局?住宅エリア、ってこと?」
「いえ、本局の特別保護施設育ちなんです。」


あっちゃ~、まずいこと聞いちゃった………
皆からの視線が痛い……


「そ、そんなに気にしないでください。とても良くしてもらってましたから」
「その頃からフェイトさんが保護責任者なんだっけ?」
「ええ。僕は今でもフェイトさんに育ててもらってるって思ってます。フェイトさん、子供のころに家庭の事でさびしい思いをされたそうで、そういう子供を放っておけないんだそうです。自分も、優しくしてもらえる手に救われたから、って……」
「そうか……優しくしてもらえる手、か……」



何かを呟いていた士郎さん。その眼はどこか遠くを見つめていた。




side はやて



「お久しぶりです。ナカジマ三佐」
「おう。八神よぅ、新部隊、調子いいみたいじゃねえか」
「はい。今のところは、ですけど」
「にしても、今日はどうした?古巣の様子見に来ただけじゃねえだろ?」
「愛弟子から、お願いがあってきました」


そんな時、来訪者が。


「失礼します」


スバルの姉、ギンガ・ナカジマだ。リインもいる。


「ギンガ!久しぶりやなぁ」
「八神二佐!お久しぶりです」


お茶をいただいて話を続ける。


「で、本題はなんだ?」
「お願いしたいのは、密輸物のルート捜査です」
「おめぇんとこで扱ってるロストロギアか」
「詳しい事はリインがデータを持ってきてますのでそちらを」
「まあ、うちの捜査部を使ってもらうのは構わねえけどよ、なんで本局とかじゃなくてうちなんだ?」
「捜査自体は彼らにも依頼してます。ですが、地上の事は地上部隊が一番知ってますから」
「ま、筋は通ってるな。いいだろう。引き受けた」
「ありがとうございます!」
「捜査主任はカルタス、その副官にギンガをつける。二人とも知った顔だろ。それに、ギンガならお前も動かしやすいだろう」
「うちの方はテスタロッサ・ハラオウン執務官が捜査主任ですので、ギンガもやりやすいんじゃないかと」
「そうだな、ギンガもハラオウンのお嬢と一緒にやれるのは嬉しいだろうよ」
「すみません…スバルに続いてギンガまでお借りすることになっちゃって」
「なに、二人とも満足だろうからいいさ。しっかし……お前も気付ば俺の上官なんだよな。魔導士キャリア組の出世は速いねぇ」
「魔導士の階級なんて飾りですよ。中央や本局ではまだまだ小娘扱いです」
「そうか……おっと、そういう俺も小娘扱いしてたな。すまん」
「いえいえ、ナカジマ三佐は今でも私の尊敬する上官ですから」
「そうかい。それにしても、おめえんとこの……衛宮兄弟だっけか?一部でうわさになってるみてえだぞ?」
「あの二人はもともと魔導士ではないんです」
「そうなのか?」
「はい。これ以上は彼らのプライバシーにも関わりますから………」
「すまねえな。無粋なこと聞いちまって」


そんな時、通信が入った。


「失礼します。ラッド・カルタス二等陸尉です」
「八神二佐から外部任務の依頼だ。ギンガ連れて会議室で打ち合わせしてきてくれ」
「了解しました」


通信が切れる。


「ま、そういうこった」
「ほんとに、ありがとうございます」
「会議終わったら飯でもどうだ?」
「はい!ぜひ」



さてと、これでひと段落つきそうやな。





side ギンガ




「そうですか……フェイトさんが」
「六課の捜査主任ですから、一緒に捜査することもあるかもしれないですよ」
「これは、頑張らないといけませんね!」
「はいです!それと、捜査協力にあたって六課からギンガにデバイスをプレゼントするですよ~」
「デバイスを?」
「スバル用に作ったのの同型機で、ちゃんとギンガ用に調整するです!」
「そんな……いいんでしょうか」
「はい!」


フェイトさんと一緒の仕事に新デバイス……これは一層頑張らないと!



side フェイト



現在、私とシャーリーは本局で回収したレリックのデータ整理を行っている。


「う~ん、それにしても、わからないんですよね。レリックの存在意義。エネルギー結晶体にとすると無駄な機構が多いし、動力源としてもなんだか……」
「まあ、すぐに使い方のわかるようなものならロストロギア指定はされないよ」


ディスプレイが切り替わり、ガジェットの画像が。



「今度はガジェットの残骸データ?」
「はい。こっちはあまり旧型との違いはないですね……」
「!!アレは……」
「どうかしました?」


その画像の中に一つだけ気になるところがあった。



「少し戻して。たぶん、内部機構の分解図のところ」
「はぁ。この辺ですか?」


そして見つけたそれは……


「ジュエルシード……」
「なんです?それ?」
「ずいぶん昔に私となのはが回収したロストロギアで、いまは局の保管庫にあるはず……」
「なんでそんなものが!?」
「シャーリー、ここの拡大を。何か書いてある」
「これ、名前……ですかね」



まさか、あの男の…………



「ジェイル・スカリエッティ………」
「だれなんですか?」
「Dr.ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連の事件で数えきれないくらいの罪状で超広域指名手配されてる次元犯罪者だよ」
「次元犯罪者………」
「ちょっと事情があってね、この男の事は何年か前から追ってるんだ」
「そんな犯罪者が、どうしてこんなにわかりやすい自分の手掛かりを?」
「本人だとすれば挑発、他人だとしたらミスリード狙い。どっちにしても私やなのはがこの事件に関わってることを知ってるんだ。だけど、本当にスカリエッティならロストロギア技術でガジェットを製作できるし、レリックを集めてる理由も想像できる」
「理由……?」
「シャーリー、このデータをまとめてすぐ隊舎に戻ろう。隊長たちを集めて緊急会議をしたいんだ」
「わかりました」


これでレリック事件についても見えてくることがある。あの男は、今度こそ捕まえる……!



side はやて



ギンガとナカジマ三佐との昼食中にフェイトちゃんからの連絡。


「そうか……なら私もすぐに戻るよ。丁度こっちも捜査の手を借りれたとこやし。ほんならまたあとで」


通信を切るとギンガが質問してくる。


「何か進展が……?」
「事件の犯人の事でちょっとな。……そういうわけですので、ナカジマ三佐。私はこれで失礼します」
「おう」


お勘定をしようと伝票を取ろうとすると……先に奪われてしまった。



「そんな!?」
「さっさと行って来い。部下が待ってんだろ?」
「はい。ありがとうございます。ギンガには私かフェイトちゃんから連絡するから、それまで待っててな」
「はい。お待ちしています」


ナカジマ三佐にはほんとお世話になってばかりやけど、ここは甘えさせてもらって早く戻らんと!



side フェイト



「あの広域指名手配犯……Dr.スカリエッティでしたっけ?どうしてレリックを集めるんですか?」
「あの男は、生体研究に関して異常なまでの熱意と技術を持ってる。そんな男がガジェットみたいな道具を使ってまで探し求めるっていうことは、何かの生体兵器を作ろうとしてるとしか考えられないよ」


………母さんが関わったあのプロジェクトのように………



side なのは



「じゃあ、夜の訓練は終了。おつかれさま~」
「「「「お、おつかれさまでした~」」」」



みんなが帰った後、データ整理をしていると、不意に横から紅茶を差し出される。



「君もよくやるな。朝から晩まで一日中面倒を見てやるなどなかなかできることではないぞ」
「士郎君………」
「しかし、君の教導を見ていると、私がされていたのがものすごいスパルタで訓練と呼べるようなものでなかったことを改めて思い知らされるよ」
「いったいどんな訓練をされてたの?」



あの強さを生み出すような訓練、とても気になった。



「そうだな…………手合せと言って一方的にやられる中での剣技、魔術の訓練と称した一方的暴行、後は人外相手の実戦などだな」
「あ、あははは………」


全く参考にはならなそうな訓練だった。


「だが、おかげで………命のやり取りの中で生き残る術は身についた」
「命の………」


士郎君やランス君の戦闘で感じた違和感。それは……



『負け=死』という残酷な世界で生きてきて身についた動きだったからなのかな。



「すまない、辛気臭くなってしまったな」
「ううん………あのね」
「なんだ?」



だからだろうか。あの事を話してみようという気になったのは。



「私……死にかけたことがあるの。任務中に」
「………」
「小学五年生の時にね、任務の帰りに襲われたとき、今までの無茶がたたって撃墜されて。体とリンカ―コアに深刻なダメージを受けたの。医者には立って歩けなくなるかもしれないって言われて。とっても怖かったし、みんなに迷惑をかけた。絶望もした。だから、ね。私は教え子に無茶をしてほしくないんだ。あんな思いは、してほしくないから………」
「そうか」


しばらく黙っていた士郎君だったが、不意に語りだした。



「私の肌と髪の色、不思議に思うだろう?」


意図が分からない質問だった。だけど、確かに気になっていた。私と同じ日本人。白髪は百歩譲ってあったとしても、浅黒い肌になどなるはずはない。だから……



「理由が、あるの?」



そう、聞いていた。



「ああ。これはな、投影の使い過ぎ、なんだ」



投影―――


士郎君の魔術。その所為―――?



「以前、私の固有結界の話をしただろう?あれはな、行使しすぎれば自らを滅ぼす――と言って、師にあまり多用するな、と言われていたんだ。だが――――
私は師と決別し、その力を使い続けた。結果は、もともと赤銅色だった髪は白く、肌の色は変色した。強すぎる力は己自身を滅ぼす………まさしくそんな感じだ」
「どうしてそこまで………?」
「かなえたい、約束があった」
「約束……?」
「私を育ててくれた養父、その人はな、正義の味方を目指していた。すべてを救う、正義の味方を………
だが、なれなかった、と。亡くなる直前に、()に話してくれた。だから約束したんだ。
『俺が代わりになってやる』って。だが現実は正義の味方はきれいなものではなかった。十のため、一を見捨てる。百のため、十を殺す。万のため、百を切り捨てる。たとえその一に、十に、百にどんなに愛したものがいようと……そんなことを、ずっと、ずっと続けていた。そんな私を皆はこう呼んだ」



――――化け物、と―――――


そういって語る士郎君が……………はやてちゃんの見ている夢の人みたいだと思った。だから………



「士郎君は傷ついてきたんだね……、でも私はそんな士郎君の支えになりたいよ」


自然と、そう言っていた。


「……フッ、本当に、私の周りには強い女性が多いな」


彼は、笑った。出会ってから一番いい笑顔で。



「ありがとう、なのは。君のような女性(ひと)に出会えて、呼ばれた甲斐があったというものだ」
「私は何もしてないよ……してあげるのはこれからだよ」
「もらいっぱなしというのも何だ。()も君を守ろう。英霊エミヤではなく、衛宮士郎として」


そう言って私を見る彼が、月明かりに照らされる彼が、とっても格好良く、私の目にはまるで騎士のように映った。




side ランス



「いい雰囲気じゃねえか」



アーチャーの奴。本当に変わった。


こっちに来るときに流れ込んできた奴の記憶。その中の表情からは想像できないような笑顔。



「ありゃ惚れたかねぇ……」



経験が長いからわかる。嬢ちゃんのあの顔。まさに恋する乙女、って感じだ。自覚があるかはわからねえけどな。



「いや~やりおるなぁ、士郎の奴」
「全くだ。ほんとに女を落とすのが上手いやつだぜ」
「なに?士郎は女たらしなんか?」
「ああ。それも筋金入りの――――」


またこのパターンか。


「いつの間にか会話に混ざんのはよしてくれよ、マスター」
「ええやんか、減るもんでもないんやし」
「そういうことじゃあねえんだがな……」
「ま、これでも飲んで元気だしや」


そういって酒瓶を渡してくる。


「お、気が利くねぇ」
「気が利くんはええ女の最低条件やで?」
「ちげえねぇな」
「ほんなら、なのはちゃん達も戻ってきたし、私も戻るわ。月見酒もほどほどにしとき~」
「へいへい」



あいつのこともそうだが、俺も、ここで何かを探してみるか………
 
 

 
後書き
今回はなのはに転機を与える回でした。


本人は気が付いていない恋心……ってやつです。


ランス&フェイトはもう少し話が進んでからになるかな?


とりあえず今回はこれで~


修正しました 
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