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魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石

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第18話



双樹あやせから沙々のソウルジェムを取り返したあたし達は、マミさんの家に置いてある沙々の身体の所に来た訳だけど・・・

「このままソウルジェム返したら襲って来そうだよね。」

今更ながら、あたし達はその事に気付いた。

「確かに、そうね。でも、どうすれば・・・」

「考えていなかったのかしら?」

すると、何故か着いて来た暁美さんが淡々と、しかし馬鹿にするように言ってきた。

「仕方ないわね。私が手伝ってあげるわ。」

「ちょっと転校生。何を企んでんの?」

「そうね。折角だから優木沙々に少し頼み事をしようと思っているの。」

警戒するさやかにそう言うと、自分のソウルジェムを沙々の手の上に乗せた。すると、暁美さんが倒れて代わりに沙々が起き上がる。

「上手くいったわね。」

「優木沙々!?何で!?」

「落ち着きなさい。私よ。」

あたし達が驚いていると、沙々は“暁美さんの口調”で話しかけて来た。

「まさか、暁美さんなの!?」

「そうよ。ソウルジェムは魔法少女の魂で身体は器。理論上、他の魔法少女と身体を入れ替わる事は可能だわ。」

「それで、どうするの?」

「少し優木沙々を脅す材料を作るの。」




暁美さんのアイデアを実行した後、私達は沙々の手の上に沙々のソウルジェムを乗せた。

「はっ!?ここは?あれ?私のソウルジェムがある!?って、囲まれてる!?」

目を覚ました沙々は混乱しながら辺りをキョロキョロと見渡す。そして、あたし達は沙々にソウルジェムの真実を伝えた。

「ソウルジェムが私達の魂?な、何を言ってるの?」

「残念だけど、本当よ。ソウルジェムを奪われたあなたは、今まで死んでいたの。」

真実を受け入れる事の出来ない沙々に暁美さんが告げた。

「そ、そんなの嘘!そんなの!!」

すると、沙々は自分のソウルジェムを握り潰そうとした。それを見たあたしは慌てて沙々の腕を掴んで止める。

「ちょっと!何やってんの!!」

「放しなさいよ!あなた達の言ってる事なんて嘘なんでしょ!!だから、これを潰したって!!」

「だとしても魔法が使えなくなる事は明らかでしょ!それでもいいの!?」

「うるさいうるさい!!」

「全く。仕方ないわね。」

あたしが必死に沙々を取り押さえていると、暁美さんがケータイの画面に映ったある画像を沙々に見せた。

「あまり下手な事をすると、この画像がネットに流出する事になるわよ。」

「な、何それ!?」

暁美さんのケータイ画像に写っていたのは、沙々が裸エプロンなんて格好をしたものだった。ほかにも、私が着せられた犬耳メイドや、スク水セーラー(どっちもマミさんが中学生の時に使っていたもの)なんてものもある。

「抜け殻になったあなたの身体を私のソウルジェムで動かして撮ったものよ。」

「そ、そんな・・・」

身に覚えの無い写真を見た沙々はやっと現実を受け入れたのか、ヘナヘナと座り込んだ。

「どうして、こんな事に・・・」

「あのねえ、ソウルジェムの件でそう言いたいのはあんただけじゃないんだよ!!」

すると、さやかが沙々に怒鳴りつけた。

「あたしもマミさんも、真実を知った魔法少女は皆そう言いたいんだよ!これが願いの代償だなんて、聞いて無いって!!」

「全く。君たちは本当に理解出来ないね。」

その時、聞き覚えのある声が響いた。私達が声のした方向を見ると、そこにはキュウべえが居た。

「キュウべえ、これはどう言う事!!」

すると、沙々がキュウべえの姿を見るなりその胸倉を掴んだ。

「どう言う事というと、ソウルジェムの話かい?」

「そうよ!何で言わなかった!!」

「聞かれなかったからさ。」

またしても詐欺師の理論を口走るキュウべえ。そんな奴を沙々は思いっきり床に叩きつけた。

「痛いじゃないか。」

「黙れ!とにかく、契約は破棄!破棄するから元に戻してよ!!」

「それは無理だね。僕に出来る事は君たちの魂をソウルジェムに変える事だけだ。逆は不可能だよ。」

「それじゃあ!私はどうすればいいのよ!!」

「別に、その身体である事にデメリットなんて無いじゃないか。むしろメリットしか無いよ。」

そう言うと、キュウべえは沙々が右手に持ったままのソウルジェムを奪い取った。

「ちょっと!何をするの!?」

「まあ、見ていてよ。」

そう言ってキュウべえはソウルジェムを床の上に置くと、前足で軽くつついた。その時・・・

「があっ!?」

沙々が急に苦しんで後ろに倒れた。あたしとキリカが慌ててそれを支える。

「今のが生身の状態で魔女のパワーで薙ぎ払われた時のダメージだ。でも、魔法少女ならばそれが軽減出来るんだよ。」

「ふざけ、るんじゃ、無いわよ・・・」

沙々は息絶え絶えになりながらキュウべえを睨みつける。でも、キュウべえはそれを無視してあたしに話しかけて来た。

「ところであむ。君はあやせから奪ったソウルジェムをどうするつもりだい?」

あやせから奪い取ったケースには、沙々の物以外のソウルジェムも入っていた。

「・・・何であたしに聞くの?」

「君は4つのしゅごたまを生んだ特別な存在だ。ならば、なんとかする方法を持っているんじゃないかと思ってね。」

「・・・一応、心当たりはあるよ。」

「本当かい?」

「でも、あんたなんかにそれは見せない!とっとと出て行って!!」

「そうか。そんな風に拒絶されたら仕方が無いね。出て行くとするよ。」

そう言ってキュウべえは意外とあっさりとこの場を去って行った。

「ねえ、あむちゃん。キュウべえにはあんな事を言ってたけど、大丈夫なの?」

「うん。確実じゃないけどね。でも、思いつく方法はこれしか無いから。でも、今はそれより。」

あたしはまだあたしとキリカに支えられた状態の沙々を見た。

「あんた、これからどうするの?」

「どうするって、どうすればいの・・・あんな事を知らされて・・・」

「確かに、あんたはキュウべえに騙されてた。でも、そのキュウべえから貰った力で好き勝手してたんでしょ?」

「・・・」

「別に、今直ぐ答えを出せとは言わない。でも、考える事だけは止めないでおいて。」


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あの後、優木沙々は巴マミの家を後にした。私はその後に着いて行き、話しかけた。

「少しいいかしら?」

「何・・・?」

「もう直ぐ、この街にワルプルギスの夜が現れるわ。」

「ワルプルギスの夜!?」

ワルプルギスの夜。それは魔法少女達の間で言い伝えられている超弩級の魔女。通常の魔女とは異なり結界を張らず、その絶大な力で破壊を振りまく存在。

「あなたに頼みたい事はワルプルギスの夜を倒す手伝いをする事。それが無理なら私達の邪魔をしないで。」

「・・・分かった。邪魔をしない方向で行くわ。」

そう答えると、優木沙々は去って行った。


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沙々が出て行った後、あたしはあやせから奪ったソウルジェム達を元の持ち主に返す準備をしていた。と言っても、あやせから奪ったケースを持っただけだけど。

「行くよ、ダイヤ。」

「いつでもいいわよ。」

「あたしのこころ、アンロック!!」

あたしの言葉と共にダイヤはたまごに戻ってあたしの胸に吸い込まれる。そしてあたしはアイドル衣装風の格好に変化した。

「キャラなり!アミュレットダイヤ!!」

「それがダイヤとのキャラなりなんだ。」

「でも、それでどうする訳?」

「こうするんだよ。」

あたしはさやかの疑問に答える形でラン達と一緒に“星の道”へと飛び込んだ




星の道。それは、光だけが通れるひみつの抜け道。光が何よりも速いスピードで動けるのはこの抜け道があるから。そして、ここを抜けたずっと先の先に“たまごのゆりかご”がある。あたし達が目指すのはそこ。だからひたすら先へ進んで行く。でも・・・

『大変よあむちゃん!流星ゾーンに入っちゃったわ!!』

「ええ!?こんな時に!?」

星の道は気まぐれで、時々“流星ゾーン”って言う津波みたいに星が流れる所が現れる・・・って、呑気に説明してる場合じゃない!!

「な、ながされるううううううううううううううう!!!」

あたし達はそのまま流星ゾーンに流されてしまった。


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荷物を運び込んで替えの下着を買った後、私は唯世の家族と夕食を済ませてから、唯世の部屋で勉強を教えて貰っていた。明日から初めての学校だし、恥をかく事にならないようにしないと・・・

「これなら、明日の学校は大丈夫だね。」

「ありがとう、唯世。」

でも、私にはミチルの“思い出”は無くても“知識”があったから大丈夫だった。流石に、私がかずみとして生み出されて過ごした間に進んだ範囲は分からなかったけど、そこは唯世に教えて貰った。
でも何だろう。男の子の部屋に入るのは初めてだから、さっきからドキドキしっぱなしだなあ・・・

「それじゃあ、今日はここまで。先にお風呂に入って来てもいいよ。」

「うん。それじゃあ、お先に。」

そして、私が唯世の部屋を後にしようとした時・・・

「キャア!」

「ぐべっ!?」

上から誰か落ちて来た。


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流星ゾーンに流されたあたしは、星の道から放り出されてしまった。その拍子でキャラなりも解けちゃう。

「いたた・・・ここは?」

「あむちゃん!?」

あたしが身体を起こすと、聞き覚えのある声がした。そして、目の前に居たのは・・・

「唯世君!?」

「久しぶり。でも、どうしてここに?」

「ちょっと、流星ゾーンに巻き込まれちゃって。」

「流星ゾーンって事は星の道に入ってたの?」

「まさか、またあいつらが消えたのか!?」

私が小学校を卒業する直前、ダイヤ以外のしゅごキャラが消えちゃったの。その時はダイヤと司さんの導きで星の道を通って3人を探したんだ。

「私達は大丈夫だよー!」

ラン達は唯世君とキセキの前に姿を現して自分達の無事を伝える。

「良かった。でも、それなら何で?」

「実は・・・」

あたしが説明をしようとした時だった。

「お、重いよ〜。」

あたしの下から声がしたのは。

「へ?」

あたしが下を見ると、1人の女の子があたしの下敷きになっていた。

「ご、ごめん!」

あたしは慌ててその子の上から飛び退く。

「大丈夫だよ。でも、あなた誰?」

「この子は日奈森あむちゃん。少し前に転校しちゃったんだけど、僕達聖夜中生徒会の仲間で、僕と同じキャラ持ちなんだ。あむちゃん、この子は昴かずみさん。今度うちの学校に転入してくる子なんだ。」

唯世君があたしの事を女の子に、女の子の事をあたしに紹介した。

「あれ?昴さんって、しゅごキャラの事を知ってるの?」

「うん。キャラ持ちじゃないけど、霊感が強いみたいでしゅごキャラの事が見えるんだ。」

「そうなんだ。あたし、日奈森あむ。よろしくね。」

「ランだよ〜!」

「ぼくはミキ。」

「スゥですぅ。」

「ダイヤよ。よろしく。」

「かずみだよ。よろしく、皆。」

あたしとラン達、それに昴さんは互いに直接名乗り合った。

「ところであむちゃん。星の道に入った理由だけど・・・」

「あ、そうだった。実は、これについてなんだけど・・・」

唯世君に聞かれて、あたしはソウルジェムのケースを開けて中身を見せた。

「それって、ソウルジェム!?」

すると、何故か昴さんがそれを見て反応した。

「え?これを知ってるって事は、昴さんもしかして・・・」

「うん。私、魔法少女なんだ。」

昴さんはそう答えると、耳に付けている鈴型のイヤリングをソウルジェムに変化させた。

「訳ありってこの事だったの?」

「でも、それなら司さんは説明してくれるハズだけど・・・」

「ええと、2人はどこで魔法少女の事を?」

「あたしの転校先に魔法少女が居て、それでね。」

「あと、何代か前のガーディアンが魔法少女と関わってたみたいなんだ。」

「そうなんだ。でも、そのソウルジェムは?」

「あ、これは・・・」

あたしは唯世君と昴さんにあやせと戦った時の件について説明した。

「そんな事が・・・」

「それで、ソウルジェムって元々こころのたまごだからさ。“ゆりかご”に持って行けば何とかなるんじゃないかなって思ったの。」

「なるほど。確かに、それなら大丈夫かもしれないね。」

「ゆりかご?」

昴さんがゆりかごの名前を聞いて首を傾げた。

「ゆりかごって言うのは、生まれる前のしゅごキャラや、持ち主の前から去った後のしゅごキャラが居る場所なの。」

「そうなんだ。でも、どうしてそこにソウルジェムを?」

「ソウルジェムはこころのたまごを変化させたものなの。だから、そこに持って行けば元の持ち主の所に帰って行くと思うんだ。」

「こころのたまごを?ちょっと待って、それは違うよ。ソウルジェムって魔法少女の魂でしょ?」

「魂!?それってどう言う事なの!?」

昴さんの言葉を聞いた唯世君が大声で驚いた。

「落ち着いて、唯世君。実はね。」

あたしは唯世君にキュウべえから聞かされた事について説明した。

「そんな・・・」

「キュウべえめ、何と言う奴だ!!」

それを聞いた唯世君は愕然として、キセキは怒りで拳を震わせる。

「あむちゃん。ソウルジェムが魂って事は、その子達は・・・」

「多分、殆どがもう手遅れだと思う。」

ソウルジェムから引き離された身体は抜け殻、つまり死体になってしまう。多分、その多くがもう火葬されたりしてもう存在しない。

「でも、それならせめて帰るべき場所に帰してあげたいって思うんだ。あたしに出来るのは、それだけだから。」

そう言ってあたしは立ち上がってキャラなりした。

「あたしのこころアンロック!キャラなり!アミュレットダイヤ!!」

「これが、キャラなり・・・」

「そう言えば、昴さんはキャラなりを見るのは初めてだったね。」

昴さんが驚いているけど、私は急がなくちゃいけない。

「あむちゃん、頑張ってね。」

「うん。」

唯世君に見送られて、あたしは再び星の道に飛び込む準備をした。

「それじゃあ、唯世君。皆によろしくね。」

「助けが必要なら、いつでも呼んでね。」

「うん、またね。」

そして、あたしは星の道に飛び込んだ。


続く

 
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