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魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石

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第17話


聖夜市に来て2日目。朝ホテルを出た後、あたしとニコはサキに連れられて移動していた。

「で、穏便に行くっていってたけど、どうする積もりなんだ?」

「これを使うのさ。」

あたしが聞くと、サキはサインとかに使う色紙を取り出した。

「おいおい。そんなモンでどうするって言うんだ?」

「ほしな歌唄に会えたらサインをして下さいと言いながら、色紙と一緒にこのメモを渡す。」

メモには『エンブリオの事が聞きたい。知っているのなら午後8時に○○公園まで来て欲しい』と書かれていた。

「・・・そんなんで来るのかよ?って言うか、どうやって渡すんだ?流石に事務所に乗り込むって訳にはいかねえだろ?」

「大丈夫だ。ちゃんと考えてある。」

そう言ってサキがあたし達を案内したのは、ラーメン屋だった。

「おい。何でここなんだ?」

「ここはほしな歌唄の行きつけの店だ。だから、待っていたら来る可能性が高い。」

「おいおい。行きつけの店ったって、毎日来るって言う訳じゃないだろうが。」

「だが、今はこれしか手掛かりは無い。」

こうして、あたし達はラーメン屋の前を見張る事になった。


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昴さんが僕の家で暮らす事が決まって会議も終わった後、僕と昴さんは二階堂先生の車で家まで送って貰う事になった。

「何で初等部の教師の僕がこんな事を・・・」

「仕方ないでしょ。かずみは荷物が多いんだから。」

「それで、何でさり気なく2人以外も乗ってるのさ!!」

先生の言う通り、車には僕と昴さん以外にも真城さんと結木さんも乗っていた。

「え〜。べつにいいじゃん。」

「こらそこ!お菓子をボロボロこぼすな!!」

車内でお菓子を食べる結木さんに先生が注意する。そうこうしている間に僕の家に到着した。

「うわ〜・・・」

昴さんは僕の家を見上げながら驚いている様子だ。確かに、僕の家は大きい方だから。

「ここに、私は住む事になるんだ・・・」

「そうだよ。見ての通り大きいから、部屋は余っているから気にしないで。」

「ありがとう。でも、ちょっと意外だなあ。」

「意外?どう言う事?」

「ほら、唯世って“王子様”っぽい感じだからさ。洋風の家に住んでいるんだと思ってた。」

「王子・・・」


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「ほら、唯世って“王子様”っぽい感じだからさ。洋風の家に住んでいるんだと思ってた。」

私が何気無くそう言った時だった。

「王子・・・」

唯世が俯きながらそう言うと、頭の上に王冠が現れた。

「僕を、王子と呼ぶなあああああああああああああああ!!!」

そして、いきなり叫び出した。

「え?ちょっと待って?何!?」

「いいか!僕は王子などと言うちっぽけな存在では無い!!王だ!!!」

そう、まさに唯我独尊な感じで唯世は私を指差して来る。もしかして、これがキャラチェンジ!?でも、何でいきなり!?

「あ〜あ。言っちゃったね〜。」

「そう言えば、説明するのを忘れてたわね。」

すると、そこへややとりまがやって来た。

「やや、りま!これってどう言う事!?」

「唯世はね、王子って呼ばれるとキャラチェンジして王様モードになっちゃうんだ。」

「だから、なるべく呼ばないようにしておきなさい。」

「そ、そうなんだ・・・」

「は〜はっはっは!!!」

私が視線を唯世の方に戻すと、何故か高笑いしていた。

「帰ったのですか、唯世さん。」

その時、家の門が開いて和服を着たおばあさんが出て来た。

「お、おばあさま!?」

「叫んでいたようですが、何かあったのですか?」

「な、なんでもありません!」

「そうですか。おや?」

唯世との話を終えた後、おばあさんは私に視線を向けて来た。

「唯世さん。そちらの方が昴かずみさんですか?」

「はい。昴さん、こちらは僕のお祖母様。」

「どうも。話は司さんから伺っています。ですが、急な話だったので部屋の用意がまだ出来ていません。なので、今日は来客用の部屋で寝て貰います。」

「わかり、ました。」

丁寧ながらもお堅い感じのおばあさんに私もつい固くなってしまう。

「二階堂先生。わざわざありがとうございました。」

「いえ。それじゃあ、僕はこれで。他の子達も送らなきゃいけませんから。」

そう言って、二階堂先生はややとりまを車に乗せると去って行った。

「それでは、かずみさん。案内しますので、着いて来て下さい。」

「は、はい!」

私は荷物を持っておばあさんの後に続いた。


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あたし達はラーメン屋の外で見張っていた。当然ながら、ほしな歌唄は姿を見せない。そして、昼ごろになるちあたし達は腹が減って来た。なので、折角だから昼飯はそのアイドル御用達の店で摂る事になった。

「いらっしゃい。何名様で?」

「3人だ。」

「分かりました。こちらへどうぞ。」

店員に案内され、あたし達はカウンター席に座ると、それぞれ注文した。サキが塩、ニコが豚骨、んであたしはチャーシューメンを頼んだ。少し待つと、出来上がったラーメンが出て来る。丁度その時・・・

「いらっしゃい。」

新たな客が店に来た。その客は丁度あたしの右隣の席に座って注文する。

「塩、麺バリカタ、背脂多め、トッピング味玉。」

どうも相当なラーメン通らしく、かなり細かく注文している。

カタッ

その時、左隣に居たサキが箸を落とした。見て見ると、何かに驚いて固まっていた。ニコも目を丸くしている。

「ほ、ほ・・・」

「ん?どうした、サキ?」

あたしが聞くと、サキはニコと一緒にあたしの右隣を指差した。その先に視線を移すと、そこに居たのは・・・

「ほしな歌唄!?」

あたし達が探していたアイドル様だった。

「何よ。騒がないでくれる?」

「あ、あの。本物のほしな歌唄さんですか!?」

サキがあたしの前から顔を出してほしな歌唄に聞いた。

「おいサキ!前に出んな!!ラーメン食えねえだろうが!!!」

あたしが文句を言うが、サキは生でほしな歌唄に会えて興奮しているのか、全くあたしの言葉に耳を傾け無い。

「そうよ。それで、何の用かしら?」

「あの・・・サイン下さい!!!」

サキはまたしてもあたしの前から色紙とペンを渡した。だから、邪魔だっつてんだろうが!!

「それくらいなら構わないわよ。」

そう言ってほしな歌唄は色紙とペンを受け取った。その時、1枚のメモがカウンターの上にはらりと落ちる。サキがほしな歌唄からエンブリオの情報を聞き出す為に用意した奴だ。ほしな歌唄はそれを拾うと、書かれていた内容を見て目を見開いた。
この反応、どうやらエンブリオについて知ってるって言うのは本当みたいだな。
あたしがそう思っていると、ほしな歌唄はメモをポケットにしまってから色紙の上にサインを書いた。

「出来たわよ。」

「はい!ありがとうございます!!」

憧れのアイドルからサインを貰えたサキはホクホク顔だった。あたしはそれを無視してラーメンを食べ始めた。その時、あたしの右隣、つまりほしな歌唄のケータイが鳴った。

「もしもし・・・はあ!?何それ!?」

ほしな歌唄は電話の内容を聞いて大声を上げていた。あたし達だけじゃなくて他の客や店員もそれに注目する。

「・・・はあ、分かった。全く、私にこんな事を頼むのはあなたくらいよ。」

そう言うと、ほしな歌唄は通話を切った。

「何か、あったんですか?」

すると、またサキがあたしの前から顔を出してほしな歌唄に聞いた。だから邪魔なんだよ・・・

「別に、大した事は無いわ。ただのプライベートな電話よ。」

ほしな歌唄がそう言うと、丁度その前にラーメンが出て来た。


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私はおばあさんに案内されて、来客用の部屋まで荷物を運んだ。

「かずみさん。荷物と言うのはそれだけですか?」

「はい。」

私は着の身着のままトランクに詰められちゃったから、荷物は聖夜学園で貰った教科書と制服だけだ。

「おかしいですね。司さんは着替えは下着以外は大丈夫だと言っていましたけど・・・?」

そうおばあさんが首を傾げていた時だった。

ピンポーン

玄関のチャイムが鳴ったのは。




玄関のチャイムが鳴ってから少し経った後、部屋の戸が開いて1人の女の人が入って来た。

「失礼します。」

「瑞恵さん。どうかしましたか?」

「唯世あの人は?」

「僕のお母様だよ。」

私の質問に唯世はそう答えた。お母さんか・・・そう言えば“人造魔法少女”の私にそう言うのは・・・

「実は、歌唄ちゃんが久しぶりにうちに来たんです。」

「歌唄さんがですか?」

「はい。何でも、司さんからの頼まれ事で来たとかで。」

私が物思いにふけっていると、いつの間にか話が進んでいた。そして、部屋の中にダンボールを持った人陰が入って来る。

「ええ!?」

それを見て、私は大声を出して驚いてしまった。何故なら、入って来たのはプレアデス聖団の中にもファンが居るアイドル、ほしな歌唄だったから。

「歌唄ちゃん。どうしてここに?」

そんなほしな歌唄に唯世はなんとちゃん付けで親しげに話しかけた。

「さっきあなたのお母さんが言ったでしょ?あなたの学校の理事長に頼まれ事をされたのよ。」

「司さんが?でも、歌唄ちゃんに何を・・・」

「ちょっと唯世!これどう言う事!?何でほしな歌唄がここに!?って言うか、何でそんな仲よさそうなの!?」

「お、落ち着いて昴さん。僕と歌唄ちゃんはその、幼馴染みで・・・」

幼馴染み!?美形で生徒会長なだけじゃなくってアイドルと幼馴染みとかどれだけ恵まれてるの!?

「それで、歌唄ちゃん。司さんからの頼まれ事って何かな?」

「そうね。一応確認するけど、そこのチンチクリンが昴かずみで合ってる?」

「チンチクリン!?」

「うん。そうだよ。」

「唯世!チンチクリンってトコは否定してよ!!」

「そう。それで、頼まれ事って言うのは彼女にこれを渡す事よ。」

文句を言う私を他所に、ほしな歌唄は持っていたダンボールを差し出して来た。私はそれを受け取ると、畳敷きの床の上に下ろしてフタを開けた。そこに入っていたのは・・・

「服?」

「そうよ。あなた、着替えが無いんでしょ?」

「でも、こんなに貰うのは悪い気がするんだけど・・・」

「大丈夫よ。それ、私のお下がりだから。」

「へ?」

ほしな歌唄の言葉を私は一瞬理解出来なかった。

「ちょ、ちょっと待って!お下がりって!?」

「大丈夫よ。それ全部私服だから。流石にステージ衣装や下着は入って無いわ。」

「いや、そう言う事じゃ無くて!!って言うか私服!?」

どうしよう。アイドルの私服なんてとんでもないモノを大量にゲットしちゃった・・・

「全く、何を遠慮しているのですか。」

「そうそう。歌唄がやるって言ってんだから、有り難く貰っとけよ。」

その時、私の耳に聞き覚えの無い声が2つ聞こえた。その声がした方向を見て、私はようやく気付いた。歌唄の左右でしゅごキャラが浮いている事に。

「え?しゅごキャラ?」

「お、本当にアタシらの事が見えてるみたいだな。」

「どう言う理屈なんでしょうか?」

私が思わず呟くと、2人のしゅごキャラは私に寄って来た。

「おっと。自己紹介がまだだったな。アタシはイル。歌唄のしゅごキャラだ。」

「私はエルと言います。歌唄ちゃん共々よろしくお願いするのです。」

小悪魔のような姿をしたのがイル、天使のような姿をしたのがエルと名乗った。

「それじゃあ、私はもう失礼するわ。」

「もっとゆっくりして行ったらどう?お茶くらい出すわよ。かずみちゃんも一緒にどう?」

帰ろうとするほしな歌唄を唯世のお母さんが呼び止めた。いや、アイドルと一緒にお茶とか、多分緊張で味分からないと思う。

「悪いですけど、今日はちょっと三条さんに相談したい事がありますから。」

「そう。なら、時間が出来たら遊びに来てね。」

「はい。」

そう言って、ほしな歌唄は帰って行った。


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唯世の家を出た後、私は事務所の社長兼マネージャーの三条さんに会いに行った。

「どうしたのよ、歌唄。今日はオフなのに。」

「今日、サインを頼んで来たファンに色紙と一緒にこれを渡されたの。」

私はラーメン屋で会ったメガネの少女に渡されたメモを三条さんに見せた。

「『エンブリオの事が聞きたい。知っているのなら午後8時に○○公園まで来て欲しい』ね・・・まさか再びエンブリオを狙う人間が現れるとはね。それで、これを渡して来たのはどんな相手かしら?」

「中学生くらいの女の子だったわ。その友人らしい子も2人ほど居たわよ。」

「そう。まあ、イースターも歌唄がその位の時に利用していたから、別におかしく無いわね。」

「ええ。でも問題は、このメモに従ってノコノコ会いに行ってもいいのかと言う事よ。」

「そうね。確認するけど、その子達ってキャラ持ち?」

「違うわ。彼女達の側にしゅごキャラの姿は見えなかったし、あの子達もイルとエルの事は見えていなかったわ。」

「でも、変な気配はしたのです!」

「変な気配?」

エルの言葉に三条さんは首を傾げた。

「あいつらのしてたお揃いの指輪から、うっすらとこころのたまごの気配がしたんだよ。」

「指輪から?つまり、その子達の背後にはイースターみたいにこころのたまごを加工する技術を持った組織が居るって事かしら?」

イルの言葉から三条さんは推測する。かつて、イースターがエンブリオを探していた頃、二階堂や九十九といったイースターの技術者達は、✖️たまを動力に使用したロボットや、こころのたまごを抜き出す力を持った“おねだりCD”、それにイクトを洗脳して操るためのバイオリンや、動物を✖️たまで強化した合成獣などといったものを生み出してきた。

「リスクはあるけど、何者なのか確かめる必要があるわね。」

「三条さんもそう思う?」

「ええ。でも、私達だけで会うのは危険よ。もし、その指輪がイクト君のバイオリンみたいに人為的にキャラなりが出来るようにしたものなら、一度に3人を相手しなければならない事になるわ。」

「私1人だと、三条さんを守りながらじゃキツイわね。」

「ええ。だから、最低でもキャラなり出来るのがあと2人は居るわ。まあ、それはもう決まってるようなものだけどね。」



続く





 
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