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『魔法の薬』

作者:零那
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『コカイン』



少女にとってコカインは微妙だった。
一瞬、フワッと軽くなって、飛んで行けそうなほど気持ち良く感じる時はあるけど、その感覚はスグ終わってしまう。

ほんの一瞬の夢を見てるだけって感覚。
夢の中で一瞬飛べたかもって程度。
こんなんなら、台風の時に傘さして空をシッカリ飛んでた、あの時の方が気持ち良かった。

コカインは効く。
絶対に間違いない。
そう言ってたのに、あの男。

『コカインなら効く言うたやん』

『マジで?コカインもあかんのんかぁ...』

『ホンマごっついやつ無いん?』

『...なぁ、もういい加減聞くけど、何をそんなに必死で忘れたいんや?』

『...なんか、あんたには言いたぁ無いわ』

『...そっか、まぁ誰にでも言いたぁ無い事くらい在るけどやなぁ。おまえマダマダ若いし。てか、クソガキやしな。くだらん屑みたいな大人に負けんなよ?』

『...知っとんやん』

『悪い。調べた』

『ほな聞くなや』

『...俺も何をどうしてやったら良いんか解らんけど...』

『てか、どうやって調べたん!』

『おまえ茉莉花の妹分みたいな感じだろ?茉莉花死んでサムライ死んで愛花死んで...おまえの大事な人も居場所も無くなったもんな。そりゃ自暴自棄にもなるわ』


『やけん、なんで知っとんかって聞きよんやん!!』

『おまえ、サムライ死んだ後に、売人捕まえて突っかかったろ。話は意外と廻っとるで、田舎やけんなぁ。まぁ茉莉花の妹分だけあって度胸ある嬢ちゃん言う話やけどな』

『...田舎、怖っ!
それに、別に度胸あるとか無いとかゆう問題ちゃうやろ...』

『まぁ俺も聞いた話やけんなぁ。でも、おまえの真っ直ぐな性格なら解る気がするわ』

男は笑い出した。
この人はホンマ笑い上戸。
でも、此の笑顔の下では泣いてるんやろうな...

そんな事を考えてたら涙が出てきて、自分では気付かんくて、此の男に拭って貰って気付いた。

男は、穏やかな笑顔で言った。

『なんか、おまえの心の声が聞こえた気がした、今。ありがとぉな。でも俺は平気や。おまえはもっとおまえを大事にしてやれ。愚痴ならなんぼでも聞いてやる』

男の笑顔が余りにもキラキラしてるから何も言えんかった。
でも何か言わなあかん。
で、出たセリフは『アホ!』

それでも男は笑ってた。
余りにもアホ過ぎて、少女もチカラが抜けて笑ってしまった。

コカインは、覚醒剤と同じで、神経を興奮させる作用がある。
でも、覚醒剤より効果の持続時間は短い。

だから、精神的に依存してしまうと回数が増えて乱用するようになる。
乱用が続くと、幻覚等の症状が出る。

コカインは大量に摂取してしまうと呼吸困難で死亡することも。


 
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