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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第2話パーティメンバー、キリトとアスナ

 
前書き
今回は、アニメ第2話「ビーター」の前半あたりまで書いていきます! 

 
2022年12月2日、SAOという名のデスゲームの開始から1ヶ月。その間2000人が死んだ。第1層はまだ突破されていない。元ベータテスターのオレでさえボス部屋にすらたどり着けていない。今オレがいるのは第1層のトールバーナという街。これからこの街で第1層のフロアボス攻略会議が行われる。
オレはリアルで左腕をなくしているから適当に《NPCショップ》で購入したマントを着ている。《NPC》とは《ノン・プレイヤー・キャラクター》の略称である。具体的に説明すると、RPGには元々システムに組み込まれたキャラクターがいる。例えばたまたま通りかかった町で毒消しの薬草をくれる町長のおじいさん。SAOではそういう役割を持っているキャラクターのことを《NPC》と呼ぶ。

「はーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」

この会議の会議場になった演劇の舞台のようなところの中心に立っている、髪色が水色で髪型を中分けにしている爽やかな感じの美青年と言われても納得がいく青年が声をあげた。
どうやらデスゲーム開始の時に解除されたアバターは顔や体格は変えられないけど髪型や色は自由に変えられるみたいだ。

「今日はオレの呼び掛けに応じてくれてありがとう!オレはディアベル。職業は気持ち的にナイトやってます!」

彼ーーーディアベルさんはジョークのつもりなのか職業はナイトなどと言い放ち会議に来ているプレイヤーのほぼ全員を大笑いさせた。SAOにはジョブーーーいわば職業のシステムは存在しない。まあ、鍛冶のスキルや料理スキルなどを上げればプレイヤーも自分の店を持つこともできるし、かなり難しいがモンスターをてなずけて飼い慣らし《ビーストテイマー》になることもできる。
ーーーん?ディアベル?どっかで聞いた名前だけど、どこでだっけ?オレがそんな思考を巡らせているうちにそのディアベルさんは真剣な顔つきになった。

「今日、オレたちのパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した!」

プレイヤーたちはその言葉に驚き聞き入る。オレも内心少し驚いてる。元ベータテスターのオレが単独でたどり着けなかったボス部屋をパーティを組んでいたとはいえ発見までいけるなんて、彼のパーティは相当優秀だと思う。

「オレたちはボスを倒し、第2層に到達してこのデスゲームを、いつかきっとクリアできるってことを、はじまりの街で待ってるみんなに伝えなくちゃならない!それが今この場所にいるオレたちの義務なんだ!そうだろ?みんな!」

今オレたちがここにいる理由は、このデスゲームをクリアするための最初の難関、第1層のボスを倒すため。第1層をクリアできればその先の層もクリアが可能だということ。それがはじまりの街にいるプレイヤーたちに伝われば希望が見える。ディアベルさんの言葉は真意をついていた。それに心を射たれたのか、拍手をしたり指笛を吹いたりして彼に声援を送る。ディアベルさんの言葉にはオレも全面的に賛成だ。

「OK。それじゃあ早速だけどこれから攻略会議を始めたいと思う。まずは6人のパーティを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティじゃ対抗できない。パーティを束ねたレイドを作るんだ!」

たしかに、ボスとの戦闘はバラバラに攻めて勝てるものじゃない。数人でパーティを組んで互いをカバーできれば安全性もかなり高くなるし危険性も大分低くなる。だが相手がフロアボスともなるとただパーティを組んでも勝てる可能性は0ではないがかなり低い。レイドーーー要するに連携を組み攻めや守りをこなせば可能性は上がる。
ん?パーティ?ーーーヤバッ!

「・・・余った。遅すぎたか。」

もう周りはほとんどすでにパーティを組みオレは取り残された。なんでこんなすぐにパーティ組んでんの?そんな仲良いの?親しい人がいない人はどうすんの?ヤバい。これマジでヤバイ!レイド以前にパーティすら組めてないんだけど!オレ今回ソロ(一人)でボス討伐すんの!?オレ死ぬの!?ヤベぇよオレの入る余地ないんだけど!

「なあ、キミ」

「!?」

後ろから声をかけられて思わずおもいっきり振り向いてしまって声をかけてくれた2人を少し驚かせてしまったーーーなんかごめん。1人はオレと同い年くらいの少年、もう1人はーーー赤いフードを深く被っててよくわからないが多分女の子だ。

「よかったら俺たちとパーティ組まないか?1人みたいだったから」

「えっ!?いいの!?よかった!オレ完全にぼっちになったかと思った!よろしく頼む!」

パーティに誘ってくれた少年はシステムウインドウを操作しオレの前にパーティ申請のウインドウを出した。オレは迷わず○ボタンを押した。視線をフォーカスするとオレの名前とHPバーの下に《Kirito》と《Asuna》という名前が出た。この2人の名前だろうーーーん?キリト?ーーーまさか!

「なあ、キリト」

「ん?なんだライリュウ」

やっぱりキリトのパーティメンバーの表示にオレの名前も出てたな。オレはキリトだけに聞こえるように近づき思ったことをぶつけた。

「お前、元ベータテスターだよな?」

「ッ!?お前まさか!」

「ああ、ベータテスト時代、ちょくちょく話したよな?」

「やっぱりそうか・・・。そういえばアバター解除されたもんな。わからなかった」

「お互い様だよ。オレもわからなかった」

そう、キリトも元ベータテスターだ。オレがベータテスト時代に一番会話を交わしたのはこのキリトだった。

「・・・なんの話し?」

「いや、気にしないでくれ」

オレたちがこそこそ話してたからアスナは気になったのだろう。とりあえず気にするなと言ってごまかしておこう。

「よーし!そろそろ組み終わったかな?それじゃあ「ちょー待ってんか~い!」?」

ディアベルさんがパーティが組み終わったかの確認をした後、いきなり関西弁のおっさんがどこからともなく階段を飛び降りてディアベルさんの目の前に来た。

「ワイはキバオウってモンや、ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある」

関西弁のおっさんーーーもといキバオウがボス戦の前に意見があるそうだ。なんだ?こっちはようやくパーティ組んでボス戦に問題なく出られると思ったのに。

「こんなかに、今まで死んでいった2000人に、詫び入れなアカン奴がおるはずや!」

何?

「キバオウさん、キミの言うやつらとはつまり、元ベータテスターの人たちのこと、かな?」

「決まっとるやないか!ベータ上がりどもはこのクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった!やつらは美味い狩場やらぼろえぇクエスト独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。こんなかにもおるはずやで!ベータ上がりのやつらが!そいつらに土下座さして溜め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな!パーティメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」

たしかにーーーオレたち元ベータテスターはデスゲームになる前のSAOを知ってるから良い狩場や報酬の良いクエストを知ってる。デスゲームが始まった時点で元ベータテスターであるオレたちには経験的なアドバンテージがある分有利という訳になるーーーだがこのおっさんはオレたちにも同じ条件が付いてることを忘れている。

「その辺にしといてくれねえか?マエバオウのおっさん」

「キバオウや!なんやワレェ!」

「えー、なんだツミはってか?そうです私が・・・あんたが死ぬほど嫌ってる元ベータテスターだよ」

「なんやと!?おまえが!?」

『!?』

全員がオレを見て驚く。まあ、当たり前か。あの状況で自分がそうだと言うのは自殺行為だ。

「ようするにあんたはオレを含めた元ベータテスターが面倒を見なかったからたくさんのビギナーが死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろってんだろ?」

「そうや!」

「別に構わねえよ。それであんたの気が治まるならこんなはした金もアイテムもびた一文もいらねえよ。死んでいったプレイヤーがそれで満足するなら金もアイテムもオレの首だろうが喜んで差し出すよ。それにあんた、元ベータテスターたちが1人も死んでないと言い切れるか?」

「なんやと!」

「HPが0になりゲームオーバーすればナーヴギアがプレイヤーの脳を焼く。その条件はビギナーもオレたち元ベータテスターも全く同じだ。元ベータテスターたちだってテスト時代の経験があっても無敵じゃない。あんたの言い分はごもっともだよ。だがオレたちは経験は上でもこの世界で死ぬ時はあんたたちビギナーと同じだ。それだけは覚えとけよ、おっさん」

オレの言ったことは間違っちゃいない、そう信じたい。オレがここまで言うと全員口を閉じた。

「オレも発言いいか?」

ここで口を開いた人間が1人いた。その姿を見た瞬間の感想を一言ずつ言うと、「デカイ」、「コワイ」、「黒い」、少なくとも日本人じゃない。アメリカ黒人かそのハーフかな。そのデカイ人が立ち上がり、キバオウの目の前で立ち止まる。

「オレの名前はエギルだ。オレが聞きたかったのはさっきその少年が言ったことと同じだ」

その大柄な黒人ーーーエギルはそう言いポーチから何かを取り出した。それは茶色い表紙のガイドブック。

「このガイドブック、あんたももらっただろ?道具屋で無料配布してたからな」

「もろたで。それがなんや?」

そういえばオレもあれもらったっけ。まだ読んでないけど。

「配布していたのは、元ベータテスターたちだ。」

エギルのそのセリフでここにいるプレイヤーたちが騒然とする。オレもそれを聞いてこのガイドブックの製作者を確認した。製作者《Alugo》。すごく聞き覚えのある名前だった。情報屋《鼠》のアルゴ。たしか頬に鼠の髭のようなペイントが描かれているからついたアダ名だったはず。

「いいか。情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、オレたちはどうボスに挑むべきなのか。それがこの場でのみされると、オレは思っていたんだがな」

エギルの言葉は今のこの状況の中にいるオレたちには良い薬になった。キバオウは「フン!」とあまり納得がいかないような感じで席に戻った。

「ありがとう。正直、あの後どうやってあの重い空気を壊そうかわかんなくなってた」

「礼なら()()()を作った奴に言ってくれ。」

オレはエギルに近づき自分で作って壊せなかったあのくそ重い空気を壊してくれたことと、口には出さなかったがオレたち元ベータテスターたちを弁護してくれたことについて礼を言うと、礼ならこのガイドを作ったアルゴに言ってやれと言い返した。人は見かけによらないって本当なんだな。アルゴに会ったらありがとうって言っとかなきゃな。

「よし、じゃあ再開していいかな?」

ディアベルさんが会議の続きを宣言し、全員がそれにうなずく。

「ボスの情報だが、実は先程、例のガイドブックの最新版が配布された」

ついさっきボスの情報付きの最新版のガイドをばらまいたのか?さすがアルゴか、びっくりするくらいちょうどいいタイミングだ。

「これによると、ボスの名は、《イルファング・ザ・コボルト・ロード》。それと、《ルイン・コボルト・センチネル》という取り巻きがいる」

そういえばベータテスト時に第1層のボス戦出た時、たしかに取り巻きのコボルトがいたな。コボルトの王を守る親衛隊。あの時は結構苦労したっけ。

「ボスの武器は《斧》と《バックラー》。4段あるHPバーの最後の1段が赤くなると《曲刀》カテゴリーの《タルワール》に武器を持ち変える。攻撃パターンも変わるということだ」

ボスモンスターはHPバーの色が変わると攻撃パターンが変わることはザラにある。自身の身が危険だということだからな。だからせっかく読めたパターンも崩れてしまうから。言ってしまえば終盤が勝負どころと言っても過言じゃない。

「攻略会議は以上だ。最後にアイテム分配についてだが、金は全員で自動均等割り。経験値はモンスターを倒したパーティのもの。アイテムはゲットした人のものとする。異論はないかな?」

ーーー誰も文句はないみたいだな。

「よし!明日は朝10時に出発する。では解散!」

攻略会議はようやく終わり、それぞれパーティが集まり相談したり、キバオウはさっきの元ベータテスターの件で会議を止めてしまったことをディアベルさんに謝罪している。

「キリト、オレ少しやっておきたいことがある。明日の出発の時間までにはかならず終わる。とりあえずまた明日」

「?わかった。じゃあ明日はよろしく」

キリトはオレが何を考えてるのかはわかっていないだろう。オレのやっておきたいことーーーいや、正確には確かめておきたいこと。それはキバオウとのもめごとの際に確信したことだったーーー








******


その日の夜9時ーーー


「ディアベルさん!」

オレは会議の日の夜にディアベルさんをたずねた。

「ライリュウくん、だったかな?どうかしたのかい?」

「えぇ、ちょっとディアベルさんに尋ねたいことがありまして」

「なんだい?今日の会議で聞きそびれたことでもあったかな?」

「いえ、そうじゃなくて」

オレはずっと考えていたことをディアベルさんにぶつけた。

「あなた、元ベータテスターですよね?オレと同じ」

「・・・気づいていたのか。でもどうして・・・?」

「テスト時代にあなたの名前を聞いたことがあったんです。SAOは完全にデスゲームになったけど一応オンラインゲームです。オンラインゲームでは別々のプレイヤーが同じ名前のアバターを作ることはできない。最初はどっかで聞いたような?って感覚だったけど、キバオウとひと悶着起こした時に思い出しました。」

オレがここまで言うとディアベルさんは「参ったな」と言いたげな顔をした。

「オレから元ベータテスターたちを売るような真似はしない。けど・・・いつまでも黙っていられることじゃないですよ」

オレは振り返り宿に向かって歩き出した。

 
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