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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第1話デスゲーム開始

 
前書き
今回から本格スタートします! 

 
2022年11月6日。
今日という日を世界中ネットゲーマーたちは心待ちにしていただろう。従来のオンラインゲームの限界を超えたオンラインゲームの正式サービス開始日を。ヘッドギア型次世代ネットゲーム端末<ナーヴギア>を被り、脳に直接信号を送り、ゲームの中で実際に食事、走行、戦闘はおろか、現実で不可能なことも可能にすることができる世界へフルダイブできる《VRMMORPG》その名はーーー

「《ソードアート・オンライ》・・・やっと戻ったぜ、この世界に」

オレの名は《神鳴竜》ーーーこれは現実のオレの名前だ。さっき言ったがここはゲームの中の世界、そしてここでのオレの姿は自分が作ったアバター、ここで本名で呼ばれることはない。《ライリュウ》、それがこの世界でのオレの名前、言わばアバターネームだ。オレは5月にある事件にあって左腕を失った。その後しばらく入院していた病院を退院し、学校に復帰した。だがそれから登校や誰かとすれ違うたびに奇妙なものを見るような視線を浴び続けた。その結果9月から学校に行かずに家に引きこもった。勉強は自宅学習という形で続けている。
もうこんな暗い話はおしまいにしよう。自分で作っておいて気が沈んできた。ここにいるのは左腕を失い不登校の引きこもりになった《神鳴竜》じゃない、しっかりと左腕のある、また失っても数分で元通りになるある意味不死身の《ライリュウ》だ。恐れるな。気にせず進め。
とにかく冒険に行こう。このソードアート・オンラインーーー通称SAOの冒険の舞台は全100層の階層で構成された《浮遊城アインクラッド》、今いるのが第1層の主街区《はじまりの街》。

「とりあえず武器を見に行くか、たしかこっちの方に武器を売ってたはず・・・」

普通ならあちこち歩きまわり目的地を探す。だがオレは《はじまりの街》のことはほとんど頭に入ってる。なぜ今日正式サービスを開始したばかりのSAOの《はじまりの街》を迷わず走り抜けるほど知り尽くしてるのかというと簡単な話、オレは元ベータテスターだからだ。元ベータテスターとはSAOを正式サービスの開始より前にテストプレイしていたプレイヤーのことだ。どんなゲームでもテストする人間は必要だろう。オレは武器を選んで購入し、街の外へレベル上げに出た。




******





「ふぅ~・・・。まあ最初の狩りとしてはこんなもんか。''こいつ''もまだしばらく使ってもいいくらいだ」

”こいつ”とはさっき《はじまりの街》で購入した《両手剣》だ。SAOの武器のジャンルは《片手剣》、《片手斧》、《両手斧》、《片手根(メイス)》、《両手剣》、《短剣》、《細剣(レイピア)》、《刀》、《槍》の全9種類ある。SAOの世界には魔法は存在しないーーーというより実をいうと弓矢やボウガンなどの射出武器自体が存在しない。あるとしてもせいぜいピックなどのダーツのように投げる投擲武器だけ。だがこのゲームの戦闘はただ剣や斧を振り回すだけじゃない。SAOには魔法の代わりに《ソードスキル》というシステムのアシストによる必殺技が存在する。《ソードスキル》は武器の熟練度が上がれば上がるほど強力な剣技を習得できる。さらにいうと武器種によって使える技が異なる。
話がだいぶそれたな。もうすぐ5時半か、そろそろログアウトしよう。このゲームの機能のひとつが右手の人差し指と中指をあわせて縦に振ることで開くシステムウィンドウ、それを操作することで武器や防具の装備に他のプレイヤーとのアイテムのトレード、ログアウトを行える。オレがシステムウィンドウを開こうと右手の人差し指と中指をあわせた瞬間、突然オレの視界が光りに包まれた。




******




「・・・今のって強制転移?・・・ってなんだこの状況!?」

オレの視界が晴れるとオレは《はじまりの街》の大きな中央広場にいた。それで何が起きたのか理解した。SAOには転移結晶というアイテムや各階層の各街にある転移門による転移ーーーようするにワープ機能がある。だが今のは自発的に転移した訳じゃない、おそらくシステムによって強制的に転移された。全プレイヤーが。
当然みんないきなり起こった強制転移に驚いているが、どうやら他にもトラブルが起こっているらしくみんな口々にこう叫んでいるーーー「ログアウトできない。」と。

「ログアウトできない?まさか・・・そんなわけな・・・」

そこから先は言えなかった・みんなが言っていたのは「システムウィンドウからログアウトボタンが消えてる」ということだと理解したから。

(バグか?だがそれだと4、5人くらいならわからなくもないけどプレイヤー全員がバグってるのはどう考えてもおかしい。システムの不具合か?)

バグだろうが不具合だろうがどちらにしろこれはまずい。システムウィンドウにあるはずのログアウトボタンがないということが意味するのはーーー





ーーー全プレイヤーがログアウトできないということ。



そう思考を巡らせているうちに状況が再び変化した。オレを含めた全プレイヤーが集まった《はじまりの街》の中央広場の空が赤く染まりドロドロに溶け始め、そこから赤いローブに白い手袋という巨大な何かが形成された。システムウィンドウに写っている《GM(ゲームマスター)》の赤いローブを着た巨大な何かが。

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

私の世界?あのデカブツ赤ローブ、今そう言ったか?

『私の名前は《茅場晶彦》。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

《茅場晶彦》ーーーナーヴギア及びソードアート・オンラインを生み出した天才でVR(バーチャル・リアリティ)技術を作り出した。アーガス社の若き開発部長。だとしたらなぜ奴はこんなことを?

『プレイヤー諸君はすでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う』

奴はオレたちプレイヤーのおかれている状況を理解していた。何か手をうってくれたのかと思ったが次に言い放ったセリフでその小さな希望はすぐに消え去った。とても、信じられないセリフを吐いたのだから。

『しかし、これはゲームの不具合ではない。繰り返す。不具合ではなく《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

仕様?本来の仕様?ログアウトボタンはなくなった訳じゃなくて、SAOには元からログアウトボタンはなかったのか?

『諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間の手により《ナーヴギア》の停止、あるいは解除もありえない。もしそれが試みられた場合、《ナーヴギア》の信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し生命活動を停止させる』

外部から《ナーヴギア》を解除したら、オレたちの脳を破壊する?周りのプレイヤーたちは本気にしてない。たしかにいきなりこんなことを言われても冗談だと思う。その時広場から2人のプレイヤーが出ようとしたらシステムによる防護フィールドにそれを阻まれる。
あの赤ローブーーーもとい茅場晶彦の言っていた高出力マイクロウェーブという言葉でやっと理解した。信号素子のマイクロウェーブは電子レンジと同じものだったはず。リミッターさえ外せば脳を焼くこともできる。電源を切ればと考えたがナーヴギアには内蔵バッテリーがある電源を切ってもしばらくバッテリー切れはない。

『残念ながら現時点でプレイヤーの家族、友人などが警告を無視し《ナーヴギア》を強制的に解除しようと試みられた例が少なからずあり、その結果213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界から永久退場している』

213名がアインクラッドからも現実からも永久退場ーーーつまり、213人が死んだ。そんなに死んだのか?

『ご覧の通り多数の死者が出たことを含めこの状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、すでに《ナーヴギア》が強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう。諸君らは安心してゲーム攻略に励んで欲しい』

いや、《ナーヴギア》の解除だけじゃない。なぜかそんな気がする。

『しかし、十分に留意してもらいたい。今後ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HP(ヒットポイント)が0になった瞬間諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に・・・』

何が言いたいのか察しがついた。今後一度でもゲームオーバーした場合ーーー

『諸君らの脳は《ナーヴギア》によって破壊される』

アバターのオレたちも現実のオレたちも死ぬ。

『諸君らが解放される条件はただひとつある。このゲームをクリアするだけだ。現在諸君らがいるのはアインクラッドの最下層、第1層である。各フロアの迷宮区を攻略しフロアボスを倒せば上の階へ進める。第100層にいる最終ボスを倒せばクリア』

たしかにいかなるRPGでもラスボスを倒せばゲームは全クリ。だがベータテストではろくに上がれなかった。オレたち元ベータテスターはテスト時のデータを引き継いでるがそれでも完全に無理がある。

『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ』

プレゼント?何を送った?アイテムストレージを操作するとたしかに入っていた。《手鏡》?とりあえずその手鏡をデータの状態からオブジェクト化した。なんの変鉄もないただの手鏡だった。これになんの意味がある。自分のアバターの顔が映るだけだぞ?
そう考えていたらさらに状況が変化した。周辺にいたプレイヤーがひとりずつ謎の光に包まれる。そしてその現象はオレにも起きた。光が消えた瞬間に周りを見ると何か違和感を感じた。すぐにはわからなかったが再び手鏡を見ると理解した。謎の違和感の正体を。

「オレの・・・顔?」

写っていたのはオレのアバターの顔ーーーではなく《現実》のオレの顔だった。

「なんで!?なんで現実の顔が・・・まさか!」

スキャンされた。その結論にいたるまでさほど時間はかからなかった。《ナーヴギア》は頭部をスッポリ覆える。《ナーヴギア》を被った時点で現実の顔をスキャンされた。身長や体格はーーーキャリブレーション。初めて《ナーヴギア》を被った時に身体をあちこち触った。最初はなんの意味があると思ったけど、このためだったのか!ーーーん?顔も身体も現実のものだとしたら、オレの身体はーーーまさか。

「左腕が・・・なくなってる」

やっと左腕が戻ってきたと思ったのにーーーまた。いまここにいるオレは、現実で左腕を失った《神鳴竜》でもない、バーチャルで左腕を手に入れた<ライリュウ>でもない。オレは、現実で左腕を失った仮想世界の《ライリュウ》。
茅場晶彦、奴はなぜこんな!

『諸君は今、「なぜ?」と思っているだろう。なぜ<ソードアート・オンライン>及び、ナーヴギアの開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと。私の目的はすでに達せられている。この世界を作りだし、観賞するためにのみ<ソードアート・オンライン>を作った』

そんなことのためにオレたちを現実の姿に、この世界に閉じ込めたのか?

『そして今、すべては達成せしめられた』

ーーーふざけるな。

『以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する』

ーーー待てよ。

『プレイヤー諸君、検討を祈る』

最後にそれだけ言い残し、あの赤ローブ・・・茅場は消え去った。
そしてひとりの少女が悲鳴をあげ、それとほぼ間髪入れずに他のプレイヤーが悲鳴と怒声をあげる。

「命をなんだと思ってる・・・」

今は左腕なんてどうでもいいーーー

「待ってろよ・・・茅場晶彦・・・」










「ゼッテェ・・・全クリしてやんよ!!」

オレは走り出した。








******






デスゲーム開始から1ヶ月、約2000人が死んだ。


第1層ーーー未だ攻略されていない。 
 

 
後書き
やっと・・・スタート・・・できた・・・。次回の更新は少し時間がかかるかもしれません。次回もお楽しみに! 
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