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スーパー架神大戦ダンゲロス

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開戦前日;side 番長グループ

 ハルマゲドンを明日に控えた番長グループに一通の手紙が来た。
 手紙と言うよりは、通達と言った方がいいのかもしれない。

「こ、これは一体‥‥」
「なんで‥‥?? 一体誰が‥‥」
「そりゃあ、理事長からの通達なんだから犯人は理事長だとしか‥‥」
「ほんとに恐ろしいなあの理事長は」
「しかし本当にどうするべきでしょうか‥‥?」
「馬鹿なことを。今更やめられるか!」

 その手紙を見た面々は困惑していた。
 封筒に入っていたのは数枚に渡って書かれた伝書と、一枚の写真だった。

 伝書には以下のことが書いてある。

『ハルマゲドンは中止になりました。
 理事長である私が居ない間に勝手に開催されることになったハルマゲドンは黒川メイ校長の死亡に伴い、取り止めとなります。
 番長グループと生徒会は即刻殺し合いをやめてください。
 なお、以上の通達は命令です。
 背いた場合は処罰されます』

 そして、写真には頭部を砕かれた黒川メイの写真が写っていた。
「どうすんだ、超一郎(ちょういちろう)
 と、立派なリーゼントが特徴のリーゼント魔人李前途(りーぜんと)が番長グループのリーダーである現番長、大銀河超一郎に指示を仰いだ。
「‥‥ずっと言っていることだが、俺は戦いたくない奴を無理矢理戦わせるつもりはない。この通達を理由に逃げてもいいんだ」
 本音を言えば、大銀河はハルマゲドンに参加したくはない。だが番長グループの中には生徒会を激しく憎む者がいて、その魔人達はいくら説得しても聞かないのだ。
 そして、大銀河はそんな魔人達を見捨てることは出来なかった。大銀河にとって、彼らは今まで一緒に様々なことを乗り越えてきた仲間だったのだ。
「何を言ってるんだ。ようやく生徒会を皆殺しに出来る機会が来たんだ。全員で一致団結して頑張るべきじゃないのか!」
 そう言ったのは夜魔口(やまぐち)悪夢(ナイトメア)という十歳くらいの幼女魔人だ。
 見た目にそぐわぬ確かな実力と強力な能力を持ち、番長グループの副番を張っている。そしてヤクザに育てられた所為か番長グループの中では一番の過激派である。
 そして発言からわかるように生徒会を激しく憎んでおり、番長グループ全員で生徒会を打ち倒すべきだと考えている。ここで逃げ出す輩に対しては、よく思わないだろう。
「しかし、あの理事長がやめろと言ってるんですよ。わざわざ処罰するなんてはっきり書いて」
 それに十二歳くらいのショタ魔人熊田カヲルが夜魔口に反論する。ちなみに理事長からの通達を見つけたのは彼である。
「そうよ。逆らったらどんな目に遭うか‥‥」
 カヲルに同意するのは永遠なる(エターナル)LOVE子(ラブこ)というピンク髪の巨乳女子高生魔人だ。
「確かに、仮にハルマゲドンで勝利しても理事長に全員処刑される可能性は高いわね」
 そう言ったのは黒鈴(くろすず)。番長グループの古株の一人。ハルマゲドン参加には肯定的な彼女だが、リスクの大きさを冷静に計ることのできる有能な魔人だ。
「それに、戦意のない魔人がいても足手纏いだし、士気にも影響すると思います。戦う気が無いなら抜けてくれた方がありがたいです」
 黒鈴の後に合理的な意見を述べたのは一之瀬蒼也。まだ一年生だが、言いたいことははっきり言える積極的な性格だ。
「それがどうした! 理事長が邪魔するならもろとも潰せばいいだけだろうが!!」
「それが出来そうにないから悩んでんでしょ!」
「なら理事長を敵に回さないように生徒会だけを殺す方法を考るしか‥‥」
「それこそ不可能でしょ」
「いっそのこと一回命令に従ってハルマゲドンを本当にやめませんか? またチャンスは来ると思いますし」
「来るわけないだろ! あの理事長が同じ失敗を繰り返すか! この機会を逃したら奴等を殺すどころか攻撃すらも出来なくなるに違いない!」
「そうだ! 命なんか惜しくない!」
「それはあんたらだけだろ!」





 まずいな、と番長グループ所属の魔人三毛ランジェロは思う。
 議論がただの罵り合いになりつつある。ハルマゲドンは
、殺し合いは明日だと言うのに。
 理事長は優れた支配者だな、と思う。
 今までの治世で、理事長への畏怖や尊敬は生徒の身に染みついている。背いたときの処罰も、リスクの大きさが周りが明確に分かるように行ってきた。
 処罰の内容も理事長にレイプされるとか誰かの性奴隷にされるとか、そういった理不尽な内容は無い(稀に処刑されることはあるが)。一応、理不尽ではないとは言える範囲のものだが、誰もが恐れるような内容の物ばかりだ。しかも処罰は理事長のみが決めるわけではなく、裁判所のような場所で第三者が論理的かつ合理的に決める。理事長はその決定を事務的に執行するだけ。だから言い訳もしにくい。
 そのようにして、『理事長の命令に従うのは正しい判断だ』という常識を作り上げた。
 今回の場合はその、いつの間にか出来た常識、暗黙の了解が役に立っている。
 自分の存在を利用して、従う派と従わない派。ハルマゲドンが始まる前に内部分裂を誘発している。
 また、理事長は『本当はハルマゲドンに参加したくはない魔人』が相当数いることを見抜いていた。
 そんな魔人達に、理事長は『戦わなくていい理由』を与えたのだ。
 命令されたから、という理由は誰もが納得してしまう―――――



ドゴン!!!!

 と、轟音が響いた。
 音のした方を見ると、番長グループの番長である大銀河超一郎が己の拳で壁に大きな蜘蛛の巣状の亀裂を入れていた。
「‥‥こんな時に仲間同士が争ってどうすんた!」
 一括し、胡座の姿勢から立ち上がる。
「理事長の件は今は後回しだ。まずは最初の議題に戻る。戦いたくない奴は、死にたくない奴は今すぐでも後でもいいから逃げてくれ!! 誰にも責めさせはしない!!」
 超一郎がそう言うと、数秒室内は静まり返り、やがて一人、また一人と番長小屋から出ていく。

 すみません、大銀河さん。
 ありがとうございます、番長。
 このご恩は一生忘れません。
 生きてまた会いましょう。

 などと、様々な言葉を大銀河に掛けながら番長小屋からから、戦いから逃げていく。
 小屋から出ていく最後の一人は大銀河さんも一緒に逃げましょう、と涙声で言った。
 超一郎は俺のことは心配すんなと笑って返し、その生徒を見送った。
 三毛ランジェロはこの様子を見て、理事長の思惑が完全に成功したことを悟る。
 おそらく、大銀河超一郎の性格も考慮に入れた上だったのだろう。
 理事長の目的は始めからハルマゲドンの参加人数を減らすこと。ハルマゲドン自体を止められるとは端から思っていなかったのだろう。
 理事長から命令されたという名目で、参加者達に逃げることのできる理由を与えた。大銀河超一郎が戦うことを強制させないこと、本当はハルマゲドンなど望んでいないことも見抜いていた。
 そして今、理事長と番長大銀河超一郎の二人から逃げていいと言われたのだ。
 どうなったかは、見ての通りだ。
 まあ、最年少のカヲルが逃げなかったのは意外だったが。超一郎もそう思ったのか必死にカヲルを説得している。
「カヲル、お前はまだ小学生だろ。こんなところで死ぬ必要はない!」
「いいんです。理事長は確かに怖いけど、皆さんを少しでも助けたいんです」
「だけど‥‥」
「それに、僕が死ぬと決まった訳じゃありませんし、負けると決まった訳でもありません」
 爽やかに笑って答えるカヲルを見て、超一郎はついに折れた。
「‥‥わかった。だけどお前は死なせねえ。カヲルだけじゃない、ここにいる皆は全員生きて帰す!」
 超一郎の決意が、番長小屋に響いた。
 番長グループに残ったのは、十名。 
 

 
後書き
夜魔口悪夢は飛行迷宮学園ダンゲロスに名前だけ登場する魔人。漫画では恐ろしい見た目のおっさんだったが、元ネタを見てみるとまさかの幼女。これは使うしかあるまいと思い、現在に至る。

『夜魔口悪夢』
http://www35.atwiki.jp/takahashid/pages/26.html?pc_mode=1 
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