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ベーカー街

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第二章

「丸々としているんだ、お髭は反り返ってて」
「何か特徴あるね」
「尻尾も長くてね、ずっと見付からなかったけれど」 
 それでもとだ、ヘンリーは早速自分のノートから一枚取ってだった。そこにホームズへのお願いの手紙を書きつつ述べた。
「それでもね」
「ホームズさんなら」
「絶対に見付けてくれるから」
 是非にとだ、こう話してだった。
 ヘンリーは手紙を書いてお小遣いからお金を出して買った切手も貼った、勿論宛先の住所を書くことも忘れていなかった。ヘンリーはポストに手紙を入れてから満足して言った。
「これでいいね」
「うん、後はね」
「ホームズさんが見付けてくれるよ」
 ついて来たクラスメイト達も応える、彼はこれで万事解決だと思った。だが。
 その手紙を見た郵便局員のチャールズ=マックガーナは住所を見ただけでだった。同僚達にまたかという顔出言った。
「シャーロック=ホームズは何歳だろうな」
「十九世紀から生きてるよな」
「一回生死不明になってるな」 
 同僚達はチャールズに笑って返した、その郵便局の中で。
「まあ今は百歳は超えてるな」
「百五十歳か」
「ギネスブックに載る歳だな」
「立派なお爺さんだよ」
「そのホームズさんにお手紙だよ」
 こう笑ってジョークで応えた同僚達にジョークで返した。
「またしてもな」
「実際に手紙があるって聞いたがな」
「これまで結構あったな」
「それで今回もか」
「ホームズさん宛にお手紙か」
「ベーカー街にな、届けるか?」
 こうも言ったのだった。
「ここは」
「ホームズさん出て来るかね」
「実際にな」
「それで事件を解決してくれるか?」
「手紙の中身は知らないけれどな」
「一応届けてみるか」
 これがチャールズの考えだった。
「仕事は真面目にしないとな」
「そうだな、それじゃあな」
「まずはな」
「手紙を送ってな」
「それでな」
 そうした話をしてだ、そしてだった。
 彼は実際にそのベーカー街に手紙を送った。だが彼はまさかだと思っていた。
 しかしヘンリーは間違いなくホームズは来ると思っていた。しかしその話を言われて家族は皆こう言った。
「ホームズか、いいな」
「来てくれるといいわね」
「トムがそれで見付かるのなら」
「お金幾ら出してもいいわよ」
 両親も高校生の兄も中学生の姉も笑って言う。
「ホームズさんへの謝礼の用意しておくか」
「貯金おろしてね」
「コカインは出せないけれどな」
「パイプの煙草もね」
 それの用意もしてとだ、こう話してだった。
 彼のしたことを信じてはいなかった、しかしヘンリーだけは信じていてだ。
 数日待っていた、そして手紙がロンドンに届いて二日か三日経った様な時にだった。
 学校から帰って家の玄関の門を開けた彼にだ、後ろから声がした。
「ヘンリー=バルカン君はどちらかな」
「僕だけれど」
「それはよかった、では君が私の依頼主だね」
「まさか」
「そう、そのまさかだよ」
 彼が振り向くとだ、そこにだった。
 お決まりのファッションの長身の男性がいた、彼はその笑顔のまま名乗った。
「シャーロック=ホームズだよ」
「来てくれたんですか」
「ワトソン君は急用で来たのは私だけだけれどね」
 それでもというのだ。 
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