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東方大冒録

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VS永遠亭その1。 ~突入~

 
前書き
さて、永遠亭に乗り込みますよ。 

 
「ん……、あさのおつうじいででで!!!?」

暗基が目を覚ました。起き上がろうとしたが、とたんに激痛に襲われ、起き上がることができなかった。

「あー、そうだ。妹紅のマガイモノに滅多打ちにされたんだった……。すっかり忘れてたよ」

軽く死にかけたことを平然と忘れてしまっているのはどうかとは思うだろうが、気にするのは負けである。暗基は軽く目を動かしてあたりを確認すると、見覚えのある畳やふすまを見かけたので、ここが命蓮寺であることを理解することができた。そして、確認するときにとても暗かったのと、霊夢、魔理沙、咲夜の3人が部屋の中ですでに布団を敷いて寝ていたので、今の時刻が夜であることも分かった。

「何とか助けてもらえたのか、よかった……。さて、この傷をどうにかしないと……、ファンネル!」

今の暗基は冗談ではなく包帯ぐるぐる巻き状態で、身体を動かすことができなかったため、ファンネルを呼び出した。

「まず、この部屋の大きさの分だけでいい。結界を張ってくれ」

するとファンネルは、部屋の大きさ分の結界を張った。そして暗基は、部屋の隅のほうにもらったカバンを見つけた。

「ファンネル、雑用みたいで申し訳ない。あのカバンの中から、スペルカードを取って、おれの右手に持たせてくれ。右手ならかろうじてスペルカードを指で挟めそうだ」

そしてファンネルは、いつもの拘束用レーザーで器用にカバンを開け、その中から何も書かれていないスペルカードを1枚取り出して、暗基の右手に持たせた。

「ありがとなファンネル。そんじゃ、「霊治『ソウル・ヒール』」!!」

暗基は明らかに治療をするためのスペルを唱えた。すると、暗基の周りに身長と同じくらいの直径の魔法陣が現れ、柔らかな光が暗基を包み込んでいく。そして、

「いっ!? いでででででででで!!!!!?」

暗基の身体から若干ビキビキと音が聞こえながらも、

「いてて……、おっ、おおっ!? 治った!! 動かしても痛くない!!」

治療はうまくいったようだった。暗基は体に巻かれていた包帯をほどく。そして立ち上がり軽く飛び跳ねてみて、身体に響く痛みはどこにもなかった。

「よし、治った! 他のやつらに顔を出して、驚かせてやろうかな!」

いいながら暗基はふすまを開けて、廊下の向かい側にあった部屋のふすまを開けた。すると、

「あっ」
「おっ」
「噂をすれば」
「だね」
「おぉ、小傘とぬえと水蜜と一輪か」

ふすまを開けたすぐ前に、小傘、ぬえ、村沙、一輪の4人が、晩酌をしていた。

「お前ら晩酌なんかして、大丈夫なのか? 聖なんかにばれたりしないのか?」
「その辺は大丈夫さ。聖からはちゃんと許可はもらってるからね。度を過ぎないようにっていう絶対条件はあるけど」
「あ、そうなんだ……」

正直ものすごく不安だったが、一輪が言っているので、きっと問題はないのだろう。暗基はそう思い込むことにした。

「ていうか、あんた大丈夫なのかい? 半端じゃない怪我だったけど」
「そうだよ零君!! さっき血みどろもいいところだったんだからね!?」

一輪と村沙が心配してきたが、暗基は先ほど使ったスペルカードを見せながら言った。

「これで強引に治療したんだ。思いつきだったけど、うまくいってよかったよ」
「うわ、治療用のスペルカードだ」
「へぇ、大したものだわ、外の人間なのにそんなことができるなんてね」
「そんで? みんなおれのことをしゃべってたみたいだけど、何の話をしてたんだ?」

暗基はふと耳に聞こえたことを聞いてみた。するとぬえが答えた。

「あぁ、お前がなかなかいい男だなって話だよ」
「……、はっ?」

暗基は自分の耳を疑った。が、ここは軽いノリで返すのが正しいと判断し、おちゃらけた感じに返答をしてみた。

「えっ、おれがハンサムだってぇ? 照れるなぁオイ」

すると、やはり現実は厳しいもので、

「え……」
「うわぁ……」
「さすがに……」
「ないねぇ……」

ここにいる全員から最高に冷たい目をぶつけられてしまい、暗基のメンタルはみそ汁の豆腐のように細かく切り刻まれてしまった。

「Oh,no……」

さすがにここまで引かれると思っていなかった暗基は負のオーラを纏いながらうなだれた。それに対してぬえはあわてて励まそうとする。

「からかって悪かったよ零のあにき」
「いいんだいいんだおれが悪いんだぁーはははぁ……。てか待てよぬえお前あにきっつったか?」
「あぁ、言ったよ。あにきを驚かそうとしたあたしたちが、逆に驚かされたからね。アンタは尊敬に値するよ。なぁ小傘!」
「うん! 零のあにきには私たちは勝てないって思ったし、何より驚かすことに驚かすことで返されるなんて、考え付きもしなかったから、あにきって呼ぶことにしたんだ! いいよね、あにき!」

どうやら、勝手に子分が二人ほど増えてしまったようだが、どんなことに対してであれ、自分のことを褒められるとうれしいものである。

「まぁ、いいかな。悪い気はしないしな」

思わず、そう答えてしまった。すると、ぬえと小傘はものすごくうれしそうな顔をして、

「お~ありがとよぉ~あにきぃ~!!」
「うえぇぇぇありがとうあにきぃぃぃ」
「おいおいくっつくなってもう……」

2人そろって暗基に抱き着いてきた。それに対して一輪と村沙がからかう。

「おーさっそく見せてくれるじゃないか。いいつまみだ」
「もうそのままおそっちゃえよー」
「黙れぃ!!」






















こんな感じのやり取りが30分ほど続き、あげく酔いの回りすぎた小傘が暗基を脱がそうとしたため、らちが明かないと思った暗基は小傘を墓地にポイ捨てし、早々にぬえ達の部屋から立ち去った。ただ驚かしてやるだけのはずが、なぜ酔っ払いに脱がされる羽目になるのか、まだ未成年の暗基は全く理解できなかった。

「はぁ、酒は飲んでも呑まれるな、ってか。まったくもってその通りだよちくしょう……」

思わずため息が出てしまっていた。そして廊下を右に曲がろうとしたところで、

「おっと!?」
「うわっ!?」

誰かとぶつかりそうになった。相手が転びそうになったので暗基はとっさに相手の腕をつかんで転ばないように支えてやった。

「大丈夫か?」
「すまないな、ぶつかりそうになったうえ、支えてもらうことになるなんてな。ありがとう」
「いや、こっちこそ悪かった。俺も前をよく見てなか……って、慧音!?」

なんと、ぶつかりそうになったのは、霊夢たちが何とかしてくれた、上白沢慧音だった。

「ん? 私の名を知ってるということは、まさか君が、暗基優理亜の弟か?」
「あぁ。零だ」
「零か、いい名だな。実は私もさっき目覚めたばかりでな。どうなっているのか、なぜ今私が命蓮寺で目覚めたのか、そしてなぜ隣で妹紅が寝ていたのか、いまいちよくわかっていないんだ」
「あー、さっくりいうと、慧音は異変に巻き込まれちまってたんだよ。本物を封じ込めて、偽物だけの世界にしようとしてる、優理亜のな」
「っ!? そう、だったのか。すまなかったな」
「慧音が謝ることじゃないさ。悪いのは、おれの姉貴のほうなんだ。むしろおれが謝るべきなんだけど……」

と、廊下で軽く慧音と話をしていると、

ブオォッ!!!

「なんだ!?」
「くっ!」

突然慧音の後ろからフードをかぶった3人組が猛スピードで飛んで行った。

「侵入者かもしれないな。追いかけよう!! 慧音、行けるか?」
「もちろんだ! 行くぞ!!」

暗基と慧音は3人組の追跡を始めた。



























3人組は、すぐに命蓮寺の外に出て行ってしまった。

「くそっ!! 逃げられたか……!」
「はぁ、はぁ、飛んで逃げられたら、すぐに飛べないおれには少しきついよ……」

慧音も暗基も純粋に悔しそうにしているが、暗基はひとつ引っかかったことがあった。

「ん? 3人?」
「うん? 3人がどうかしたのか……?」

慧音は暗基に何か腑に落ちないことがあることを感じたので、何が腑に落ちないのか聞いてみる。すると暗基は、何かを察したのか、顔から血の気が引いた。

「ま、まさか……!!」

そして慧音を置いて大急ぎで寺のなかに戻っていった。

「お、おい零!? どうしたんだ!?」

慧音も慌てて暗基の後を追った。




























(あいつら……、なにをカッコつけようとしてるんだよ、まったくよぉ!!)

ドタバタと廊下の音を立てながら、暗基は輝夜たちのいた部屋にたどり着いた。

「どうか、おれが思っていることの通りにはなりませんように! そらっ!」

暗基は部屋のふすまを勢いよく開けた。すると、暗基が思っていたとおり、部屋の中はもぬけの殻だった。ご丁寧に布団もたたまれて、隅のほうにまとめておかれている。

「そうか……。やっぱりだったか……」

暗基は頭を抱えた。いったい何を思って3人だけで今の永遠亭に向かうという意味不明なことをしなければならなかったのか、暗基にはまったく理解することができなかった。
ふと暗基が床を見てみると、畳の上に一枚の紙が置かれていた。

「ん、なんだこれ、置手紙か?」
「零! どうし……、な、なんだこれは!!?」

置手紙を読もうとしたと同時に、慧音もこの部屋に入ってきた。とりあえず説明をする。

「予想通りだったよ。まぁ、見ればわかるだろうが、さっきの3人は輝夜たちだ」
「あいつら……! 3人だけでなんとかなるものじゃないだろう!!」
「同感だ。今見つけたんだけど、これ読んでみるか?」
「なんだ? 置手紙か?」
「そうみたいだ」

暗基が返事をすると同時に慧音は暗基から手紙をひったくり、流し読みをした。暗基は流し読みをしている慧音を黙ってみていたが、だんだんと怒りから慧音の顔が真っ赤になっていくのがはっきりわかった。

「……、そうか。あいつらは今更になって私たちを信用できないと、そう言いたいのか。そうか……!!」
「おれにも見せてくれよ」

慧音は無言で暗基に手紙を渡した。暗基も手紙を慧音ほどの速さではないが、流し読みをした。手紙には、このように書かれていた。

「皆様へ。勝手なことを言って申し訳ありませんが、3人で永遠亭に行ってきます。自分たちの問題は、自分たちで解決します。鈴仙・優曇華院・イナバ」

ざっくりというと、自分たちだけでやるからアンタたちは首を突っ込まないでくれ、という内容だった。これには暗基も怒りを通り越して、あきれてしまった。

「ははっ、そうかい、この内容なら、慧音もさすがにブチ切れたくなるな」

思わずつぶやいてしまった。少なからず自分たちでどうにもできないと判断したからこの命蓮寺に来たのではないのか。違うのだとすれば輝夜たちにマガイモノを倒す算段の一つでもあるのか。

「おい、零」

慧音が怒りをあらわにしたものすごく低い声で暗基に話しかける。怒りを感じていたのは暗基も同感だったため、なんとなく慧音の言いたいことが分かった。

「……、霊夢たちを叩き起こして来ればいいんだな?」
「話が早くて助かる。私は妹紅を起こしてくる。5分後に玄関だ」
「りょーかいだ」

お互いにうなずき合うと、慧音は自分の寝ていた部屋へ妹紅を起こしに行き、暗基は霊夢たちを叩き起こしてくるために自分の部屋に向かった。


























暗基は部屋のふすまを勢いよく開けて、大声で叩き起こそうとした。

「おいお前ら! 起きろ!!」

それに対して霊夢、魔理沙、咲夜の三人は、

「くぅ……」
「んー……」
「……」

少しうめき声をあげるだけで起きる気配は全くなかった。

「まじか……。でも変に叩き起こそうとしたら霊夢に殺されるなぁ。かといって5分後までに玄関に行けないと慧音に何されるかわからねぇし、どうすっかなぁ……」

暗基は少し考え込んでみる。すると、運良く10秒後にどうすればいいか思いついた。

「そうだ、これならいけるか!」

暗基は大きく息を吸い込み、そして大声であるセリフを叫んだ。

「お嬢様が金とキノコを持ってきたぞ!!」

ありとあらゆる二次創作で使われそうなネタ「お嬢様(レミリア)が金とキノコを持ってきたぞ」。あまりにもありふれてはいたが、緊急を要することだったので、これを使わざるを得なかった。だがその効果はてきめんで、

「お嬢様!!!?」
「お金!!!?」
「キノコ!!? どこだ!!!?」

驚くべきことに「ぞ」を言い切るか言い切らないかのところで3人同時に目を覚ました。あまりにきれいに起きたので、

「なん……、だと……!!?」

暗基も驚きを隠せなかったが、驚く暇もなく3人が、耳に聞こえたものを探そうと意識が完全覚醒した様子だったため、暗基は大急ぎで全員の意識を暗基に集中させるために声をかけた。

「おいお前ら、行くぞ!」
「い、行くってどこにだよ?」

魔理沙に聞かれるが、詳しく説明するのは面倒だったため、

「永遠亭に殴り込みだ!」
「は!?」
「えっ!?」

結論だけを伝えた。霊夢、魔理沙は当然ながらいきなりのことのため驚き、咲夜に至っては、

「どうして!? あなただってまだ目覚めたばかりだし、ましてや傷だって……!!」

暗基を心配するあまり、声を絞り出すように、なんとか言葉をつなぐ。

「傷については何とかした。殴り込みに行く理由は、先に殴り込みに行ったアホが3人いるみたいでな。そいつらをぶん殴りに行くんだ」

暗基は咲夜にあまり心配をかけないように、軽いノリで答えるようにつとめた。

「まぁ、その3人はすぐ予想がつくな。で、ぜろ? いけばいいんだろ?」
「そういうことだ。慧音も待たせてる。相当ご立腹だったから、あと2分で玄関に行かないと、殺されるぞ」
「あー、慧音に殺されるのは勘弁願いたいわね。面倒だけど、行きましょうか」
「だな」
「……」

霊夢の一声で、全員玄関へと向かった。そのなかで、咲夜だけは釈然としないといいたそうな顔をしていたが。

暗基立ち退いた部屋から玄関までは、さほど離れていなかったため、2分で玄関に行くことができた。

「遅かったなお前たち」

きっちり5分後に玄関についたとき、すでに慧音と妹紅が待っていた。慧音はまさに限界寸前で下手にいじろうものならブチ切れるんじゃないかと暗基が不安になるほどだった。

「悪かった。準備に少し時間がかかっちまってな」
「そうか。まあいいだろう。時間自体は守っているしな。多くを責める必要はないな。さぁ、行こうか」

出来る限り刺激しないように返事をして、暗基たちは永遠亭へと出発した。






















人里からそう遠くないところに、迷いの竹林はあった。竹林に入る前に、妹紅が少し前に出てきて話し始めた。

「よーし、ここからは私の出番だな。他の連中は一度でも永遠亭に行ったことがあるだろうから問題はないだろうが、零は初めてだから注意な。竹林の中はさっき歩いた場所のはずなのに全然地形が違うってことはもちろん、進んでるはずなのに元の場所に戻っちまってたってことはざらにある。だから、私や慧音みたいに頻繁に竹林に来ている者にしっかりついていかないと、ここでそのまま遭難して死んじまうってこともある。絶対に私や慧音から離れるなよ。いいな?」
「わかった。絶対離れないよ」
「よし、それじゃ中に入るぞ」

妹紅を先頭に、一行は竹林の中へと進入する。すると、入り終わったと同時に入り口がわからなくなってしまった。

「うわ、入り口が!?」

暗基は驚きで声をあげたが、

「だから言ったろ? 地形が変わったのさ。 だから初めて来るやつは迷って最悪ここで死ぬんだよ」
「こりゃあ気を付けなきゃな……」

妹紅は振り向きもせず暗基に言った。改めて気を付けなければいけないと誓った暗基は、竹林の景色を楽しむことなく、淡々と妹紅の後を付いていった。
まっすぐに歩いたり、Uターンしたのかと思えば急にさっき進んでいた道を進むなど、不思議な歩き方を続けると、目の前に屋敷が見えてきた。

「さぁ、ここが永遠亭だ」

妹紅が嫌そうに言った。それと同時に慧音が、

「さて、早速乗り込むか」

と言いながらいきなり永遠亭の門に手をかけた。暗基はそれに対して思わず突っ込みを入れた。

「ちょっと待て! 入り口で罠が仕掛けられてるってことを考えないのか!?」

だが、突っ込みを入れた頃には、もうすでに慧音は門の中に入り込んでしまった。門がギィ……と音をたてて閉じたと同時に、

ドカァン! ドカァン! ドカァン!!

「ぐっ……!?」
「慧音!!?」
「うぐ……、め、目眩が……!?」

爆発と共に暗基が先日感じた嫌な目眩に襲われた。堪らず妹紅と霊夢たちも中に入ろうとする。

(このままじゃみんなやられる!)

暗基が大声をあげてそれを止めようとするが。

「…………!!?」
(なんだ!? 声が……出ない……!!?)

突然、暗基の声がでなくなってしまった。そうしているうちに、みんな中に入ってしまった。

「……!! …………!!!」
(待ってくれ!! みんなやられるぞ!!!)

どうしても声が出ない。そしてやはり門が閉じると同時に、先程と同じ爆発音が、慧音の時よりもたくさん聞こえた。その爆発が収まると同時に、声が出るようになった。

「うが!? 声が出る!! みんな!!!」

堪らず暗基も門の中に入った。











「こっ、これはいったい……!?」

暗基が門の中で見たもの。それは慧音を始め、救助のために突撃した他のみんなもまとめて、ピンク色の粉にまみれて気絶している光景だった。それを見ると同時に、とても例えられないキツい匂いと目眩に襲われる。

「うぐぅ……、な、なんだこれ、臭くはないが、ものすごくキツい匂いだ……!? 目眩も、半端じゃない……!?」

みんなには申し訳ないがとてもこの場所にはいられないと思った暗基は、あとで土下座をすることを誓い、先に進もうとした。その瞬間だった。

ガシィッ!!

「ヒィィッ!!!?」

突然左足首を掴まれたのだ。恐る恐る左足元を見てみると、慧音が暗基の足首を掴んでいた。

(まさか、今の全部聞こえてたのか……!?)

そう思っていると、

「うぅ……」

うめき声をあげながら慧音か顔をあげた。そこまではよかったのだが、

「ふふふ……」
「うそやん……!?」

慧音の顔が、惚けていたのだ。軽く紅色に染まっていて、眼も据わってしまっている。そして、慧音の青い服と青い帽子が、少しずつだがピンク色に染まってきていた。先日暗基が見た霊夢たちと全く変わらない、スーパー淫乱モードになっていた。暗基は自分の身と貞操を守るために慧音の腕を引き剥がそうとするが、さすがは人間と妖怪のハーフであると言うべきか、全く離すことができなかった。

「ぐっ、はなせ! お前らに構っている暇なんてないんだ!!」
「そんなことを言うな人間よ、楽しもうではないか」
「うわぁお前も名前呼んでくれないやつかよ!! ていうかお前教師だろ!! やるにしてもこんな開けたところでやるのはどうかと思うんだけど? ましてやこんな逆レみたいなことをさぁ?」

とにかく慧音から離れたかった暗基は無駄だとはわかっていてもとりあえず会話を試みるが、

「いいじゃないか、そういうのも」
「あぁわかりきったことだけど全然話が通じねぇ!?」

話はちゃんと聞いてくれる。だがそのうえでしっかりと否定してくれるというまさにいじめの領域に達していた。勘弁してほしいと思っているうちに、

「おーいぜろーふへへぇ……」
「うげぇ余計なもんが増えやがった!!」

魔理沙もスーパー淫乱モードで目覚めてしまった。呟きながら暗基の右足首を掴み、そのままズボンを脱がそうとしてきた。

「やめろてめぇ!? 実行に移そうとするな!!!」
「いいじゃねぇかぜろー」
「よくねぇからいってるだろうが!! 少なくとも野外プレイする趣味はない!!」

やめてほしい。その思いで暗基は必死に叫んだ。しかし、選ぶ言葉を盛大に間違えた。慧音と魔理沙が急に動きを止めたと同時に、暗基の顔をじぃー……っと見つめたてきた。そして慧音が話しかけてきた。

「なぁ人間」
「な、なんですか?」

とりあえず返事しないと死にそうな気がしたので返事だけはしてみる。すると魔理沙が明らかになにかをたくらんだ顔でとんでもない発言をした。

「それってあれか、室内だったらいいって訳か?」
「!!?」
(ヤバい、確かにそんな言い方しちまった気がする!!?)

自分の発言の穴をつついた発言を魔理沙がした。暗基はつくづく思った。どうしてこう、スーパー淫乱モードの魔理沙は痛いところをつついてくるのだろうかと。

「気のせいだから、気のせいだから頼むから離してくれ!!」
「えーどうしよっかなぁー」
「いいから離せ!! 慧音も離せよコラァ!!」
「離すものかぁせっかくいい男が目の前にいるというのに。ましてや人間の男なんて、ちょっとなめてやればそれだけで」
「やめて!! それ以上は聞きたくないよぼくは!!!」

変なものを想像しかけたが、強引に理性を保とうとする暗基だったが、

「うぅ……」
「ふふふ……」
「……」
「おいおいもっと増えやがった……」

霊夢、咲夜、妹紅の順にぬぅっと起き上がり、最初に起き上がって少し呻いたり笑ったりした後すぐに暗基に掴みかかった。

「待って待って待って待ってここまで来られると対応できないお願いだから離して頼むって!!」

必死に暗基が叫ぶが、もはやだれも返事すらしてくれなくなった。それと同時に暗基からすべての希望が消えた。

「…………、もう、なんかもう…………、もういいや…………」

暗基がすべてをあきらめて、眼からハイライトが消えた、その時だった。

























「傘符『大粒の涙雨』!!」
「こおりつけぇぇえええ!!!」





















どこかで聞いたことのある声とともに、ものすごくデカい氷の塊が襲い掛かってきた。

「な、はあぁぁぁぁぁああああああ!!!!!?」

暗基は思わずデカい声で驚いてしまったが、それをよく見てみると、氷の塊ではなく、凍っている水色の弾幕であることが分かった。そして、それはどうも暗基自身には当たりそうもなく、狙っているのは周りにくっついているスーパー淫乱モードの連中だということもわかった。

「うげっ!!?」
「うわっ!!?」

いろいろな反応が聞こえる中、暗基の上に二つの影が現れた。

「あにき!! たすけにきたぜぃ!!」
「あたい、さんじょう!!!」
「……、う、うおぉぉぉぉ今マジ救世主だよこがさぁ、チルノぉ!!!!」

その救世主は、さっきぶん投げたはずの多々良小傘と、つい先日精一杯遊び倒したチルノだった。なんだかんだ言って、ゲームだとエクストラ中ボスを張ったり、主人公になったりもするやつらだし、何より猫の手も借りたい気分だった暗基はこの際誰でもよかった。暗基は思わず涙が出てしまった

「助かったぜ小傘、チルノ!! てか、なんでお前らここにいるんだ?」
「あたいはぜろとれーむたちがなんかいっしょにうごいてたからさ、ついてってたら、こいつとあって、いまこんなかんじだ」」
「まぁ、あにきが巫女と魔法使いとメイドと一度に動くんだもん、どんなに酔っていても酔いはさめるし、巫女が動くってことは異変だから、手伝ってやろうと思ってね」
「おぉ……、やっぱり仲間ってあらゆるところに作っておくべきだな、つくづく思ったわ……」
「それよりもずいぶんとハーレム状態だったけど、これって少なくともあにきが望んでるものじゃないとあちきは見ていいんだよね?」

小傘が弾幕が直撃したスーパー淫乱モードの連中を見て、気分が悪そうに言った。

「その通りだよ。おれとしてはさっさとこの場から離れたかったけどこいつらが全然離してくれなくてさぁ……、もう少しで逆レされるところだった」
「それは災難だったねぇ……」
「ぎゃくれ? なんだそれ?」
「チルノは知らなくてもいいことだ。というか知らないでほしいですはい」
「そ、そうなのか」

暗基と小傘の話についていこうとしたチルノであったが、清純なこのおバカを穢したくなかった暗基は思わず敬語で知らなくていいと言ってしまった。なんとなく釈然としていないチルノであったが、チルノはすぐに考えるのをやめた。

「まぁ、あたいはサイキョーだからな。ぜろ、これはわかるぞ」
「ん? なにがだ?」
「とりあえず、こいつらをあしどめしとけばいいんだよな!!」

暗基は思わずチルノをうれしさから抱きしめたくなったが、あとにとっておこうと思ってか、ものすごく我慢した。全力で我慢した。

「……、おれはうれしくて仕方がない……!! 頼むぞチルノ!! 小傘!!」
「わかった!! まかしといて!!」
「これでたすけてもらったかりはなしだぞぜろ!!」
「おう!!」

暗基は永遠亭の中に突撃した。












「さぁて、よくここまで待ってくれてたね、あんた達」

暗基がいなくなった後、すでに意識を取り戻していたスーパー淫乱モードの連中に対して声をかける小傘。

「うるさいわよ小物が……!!」
「よくも私たちの邪魔を……」
「してくれたなぁ……?」
「さて、特別補修の時間だ……」
「生きて帰れると思うなよぉ?」

せっかくの男を取り逃がし、激昂している5人。

「うわぁ……、これはすさまじい大役を任されちゃったねぇ……」
「サイキョーのあたいだけど、いまはさすがにこわいよ……」
「まぁ、そうも言ってられないのは確かだね。それじゃあ」

そういいながら小傘は自分の傘の先を5人に向け、チルノはポーズを決め、

「ここから先は!!!」
「あたいたちがまもる!!!」

最凶と化した5人を相手に、2人は立ち向かった。 
 

 
後書き
最凶の5人を相手にたった2人で戦う小傘とチルノ。1人永遠亭に入った暗基。そして、いまだ姿を見せないうどんげ、てゐ、輝夜の3人は、いったいどうなったのだろうか。 
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