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魔法艦娘Reinforce

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第2話 その者、提督にして鉄の貴公子


時雨、夕立、白露、村雨の四人は鎮守府近海の哨戒任務を行っていた。そこで、電探が敵である深海棲艦と思われる反応を探知し向かった所、既に深海棲艦は所属不明の艦娘によって全滅させられていた。

「こちらは日本海軍所属の白露型駆逐艦、時雨です。そちらの所属と艦種、それに艦名を教えていただきますか?」

時雨が所属不明(アンノウン)に向かって尋ねた。すると、彼女はこう答える。

「私はリガミリティア所属、スペースアーク級巡洋艦リーンホースだ。」

時雨達には聞き覚えの無い艦種と艦名だった。だが、所属不明(アンノウン)の顔立ちと名前の響きから、恐らく海外艦なのではないかと考える。となると、問題は彼女が所属しているというリガミリティアとやらについてだ。

「その、リガミリティアとは何ですか?」

「ザンスカール帝国に対するレジスタンス組織だ。」

「ザンス・・・」

「カール帝国?」

聞き覚えの無い名前に白露と夕立は首を傾げながら、お◯松くんのイ◯ミがカールした髪のカツラをかぶって皇帝をやっている国を思い浮かべた。

「ザンスカール帝国を知ら無いのか?」

「はい。少なくとも僕達はそんな名前の国は知りません。」




目の前の少女、時雨の話を聞いてリーンホースは困惑したが、リインフォースはある仮説を立てた。

(私はどうやら、別の次元世界に来てしまったようだな。)

そして、ある可能性に気づいて時雨に質問する。

「それでは、時空管理局については知っているか?」

「時空管理局?SF映画か何かに出てくる組織ですか?」

「いや、知ら無いのならいい。」

時雨の反応から、この世界は管理外世界。つまり次元航行技術を持た無い世界なのだと認識する。

(未練がましいな。私も・・・)

もし、この世界が管理世界だったならば、リインフォースは管理局経由ではやての下に戻り、共に歩みながらこれまでの罪を償う積りでいた。

「あの、もしかしたら、沈むか解体されたら気付いたらヒトになってたとかじゃないですか?」

「ああ、そうだが。何故分かったんだ?」

「僕達も同じですから。」

「同じだと?」

「僕達は“艦娘”。“深海棲艦”の脅威から人間を守る為、平行世界から呼び出された存在です。」

リーンホースは艦娘達に艦娘についての説明を受けた。

「平行世界で役目を終えた艦船の魂がヒトとなった姿か・・・」

「うん。そして沈んだ船の怨念から生まれるのが先程リーンホースが戦っていた“深海棲艦”。あいつらの艦隊に制海権はもちろん、空母には制空権まで握られていたから、人類はその危険に脅かされる事になってしまったんだ。だから僕達は日々、深海棲艦相手に戦っているんだ。深海棲艦に対抗出来るのは艦娘だけだからね。」

「艦娘だけ?どう言う事だ?」

「深海棲艦は人間とほぼ同じサイズでありながら、火力や防御力は実物と全く変わら無いんだ。その点は艦娘も同じだけどね。」

「だから、艦娘のみが深海棲艦に対抗出来ると言う訳か。」

この話を聞いて、リインフォースは何故ブラッディダガーが通用しなかった理由を理解した。別に深海棲艦が魔法を無効化するような力を持っていたのではなく、単に対人用の魔法であるブラッディダガーでは装甲を貫けなかったと言うだけの事なのだと。

「それで、リーンホースの処遇だけど、海上でドロップした艦娘は保護した鎮守府の戦力にするって決まっているんだけど、大丈夫かな?」

「そうだな。海を彷徨っても野垂れ死にしそうだ。深海棲艦とやらとも仲良くなれそうにない。仲間になるかは別として、ひとまずお前達について行くとしよう。」

こうして、リーンホースは時雨達に案内され、鎮守府へと向かった。




「リーンホースさん!見えて来たっぽい!」

夕立が前を指差しながら言った。リーンホースがそちらを向くと、陸地とその上にある赤煉瓦造りの建物が見えて来た。

「あれが鎮守府か?」

「うん。まずは提督に報告をしないといけないから、執務室に案内するよ。」

そして、リーンホースは鎮守府に入港した。

「お帰りなさい。その人がドロップしたと言う艦娘ですか?」

入港したリーンホース達を出迎えたのは、鉢巻を巻いてセーラー服を着た桃色の髪の少女だった。

「そうだよ。」

「スペースアーク級巡洋艦のリーンホースだ。お前は?」

「どうも、ここで艦娘の艤装の整備や改良を行っている工作艦の明石です。見た所、リーンホースさんの艤装には飛行甲板のような物がついていますが、スペースアーク級と言うのは艦載機を運用出来る航空巡洋艦なのですか?」

「確かに艦載機を運用出来るが、航空巡洋艦と言うのは何だ?」

リーンホースの居た宇宙世紀では戦場の主役はモビルスーツであった。その為、艦がモビルスーツを運用する母艦としての能力を持つのは当たり前の事になっていた。なので、モビルスーツの運用能力を持つ母艦を特別な艦種に割り振る事は無いのである。

「重巡を改装して複数の艦載機を運用出来るようにした艦です。リーンホースさんは違うんですか?」

「ああ。私は最初から艦載機を運用する事を前提に建造されたからな。」

「最初からですか?そんな事をするくらいなら空母を造れば済む話だと思うのですが・・・」

「あの、明石。提督を待たせているからそろそろ・・・」

すると、時雨が話を中断させた。

「あ、ごめんなさい。では、話の続きはまた後程。艤装はそこに置いておいて下さい。」

「置いておく?これは外せるのか?」

「そうだよ。」

リーンホースが自分の艤装を見ながら首を傾げていると、時雨達が艤装を外し始めた。それを見たリーンホースはどこかに取り外し用のスイッチが無いかを探す。すると、そんな彼女に明石が言った。

「普通に外れろって念じれば外れますよ。」

それの何処が普通なのかリーンホースは理解出来なかった。だが、リインフォースは騎士甲冑を外すのと同じ感じと考えたため、あっさりと外す事が出来た。




艤装を外した後、リーンホースは執務室の前まで案内された。

「ここが僕達の指揮官の提督の執務室だよ。ちょっと待ってて。」

案内役の時雨はそう言うと、扉をノックする。

「提督、ドロップ艦を連れて来たよ。」

「ああ。入ってきたまえ。」

扉の向こうから男性の声が聞こえた。時雨はそれに従い扉を開けて中に入ると、リーンホースを招き入れた。
執務室に入ったリーンホースが見たのは、デスクの席に座り、白い軍服を身につけた壮年の男性だ。おそらく、彼が提督なのだろう。その隣にはヘソ出しルックのスタイルのいい女性が居た。

「君が時雨達が発見したドロップ艦かね。」

「ああ。スペースアーク級巡洋艦リーンホースだ。」

「スペースアーク級だと!?」

リーンホースの艦種を聞いた提督は、立ち上がりながら驚いた。その様子を見た女性、秘書艦の天城が尋ねる。

「提督。彼女の艦種を知っているのですか?」

「ああ。何せ、彼女は“俺の居た世界”の艦なのだからな。」

「俺の居た世界?まさか、提督は宇宙世紀の人間なのか!?」

「そうだ。そう言えば、まだ名乗っていなかったな。私の名は“カムナ・タチバナ”だ。」

「カムナ・タチバナ!?」

その名を聞いたリーンホースは驚愕した。

「あの『鉄の貴公子』と呼ばれたカムナ・タチバナ中将なのですか!?」

「懐かしい呼び名だな。」

「しかし、タチバナ中将はコスモ・バビロニア戦争で戦死したハズ!それに、年齢も・・・」

「ああ。確かに老いぼれだった俺はあの時死んだ。だが、気が付いたら若返った状態でこの世界に来ていたんだ。」

そんな馬鹿な。とリーンホースは言おうとしたが、自分もそれと同じくらいありえない状態なのだという事を思い出し、口に出さなかった。

「その後、色々あって俺は軍に入って提督をやっている。」

「そうですか。ですが、タチバナ中将は何故ここの軍に入ったのですか?」

「それについてだが…その前に1つ訂正しておこう。ここでの俺の階級は准将だ。」

「す、すみません!」

「いいさ。それで、質問の答えだが。俺も最初は何故ここに来たのか分からなかった。だが、深海棲艦に虐げられている市民を見て気付いたのだ。俺のすべき事は軍人として彼らを守る事だと。だからリーンホース。市民を守る為、力を貸してくれるか?」

彼の言葉は少なくとも“リーンホース”には響いた。彼女の戦っていた時代では、連邦軍に彼のような高潔な軍人が少なくなっていたと言う事もあり、彼が輝いて見えたのだ。ゆえに、リーンホースは敬礼しながら答えた。

「分かりました。私のような旧型艦で良ければ、どうぞお使い下さい。」

「うむ。よろしく頼む。しかし、旧型艦とはどう言う意味だ?」

「私が最後に戦ったのは、UC0153なんです。」

「何!?君はそんな未来から来たのか!?」

「はい。その時代では私はもう旧型艦でしたから。近代化改修や大規模改装を行いながら戦っていました。」

「そうか・・・仕事が終わったら私の死んだ後、あの世界がどうなったのかを教えてくれるか?」

「かまいません。」

「ありがとう。ところで、深海棲艦と戦闘をしたとの事だが、どうだったかね?」

「勝てない相手ではありませんが、油断は出来ません。実際、油断したせいで一発被弾してしまいました。」

「被弾したのか。ならば、入渠して来るといい。時雨、案内してあげたまえ。何なら、君も一緒に入って来るといい。」

「はい。」

そして、リーンホースは時雨に案内され、入渠へと向かった。




時雨に案内され、リーンホースが来た場所は、脱衣所のような場所だった。

「何だか、これから風呂にはいるみたいだな。」

「それはそうだよ。お風呂だもん。」

「何?」

「艦娘にとっての入渠はお風呂なんだ。」

そう言うと、時雨は服を脱ぎ始めた。

「僕も一緒に入るから、分からない事があったら聞いてね。」

「ああ、分かった。」

そう答えると、リーンホースは服を脱ぎ始めた。そこでふと、脱衣所にある鏡に目を向ける。そこに映っていた自分の顔は、紛れも無く夜天の魔導書の管制人格である融合騎、リインフォースのものであった。

「やっぱり、自分の人間としての姿を見るのは新鮮な気分かな?」

すると、時雨が聞いてきた。

「新鮮な気分?」

「うん。僕も鏡で人間の姿になった自分の姿を見た時はそうだったから。」

その言葉を聞いて、リーンホースは違和感を感じる。

「時雨。お前の中には艦としての記憶しか無いのか?」

「そうだけど、リーンホースは違うの?」

「それは・・・」

時雨の答えに驚愕し、自分と言う存在に困惑しながら、“リィンフォース”はどう答えるべきか考えた。その結果・・・

「私の中には、今の私の容姿の元になった“人間”の記憶があるんだ。」

少しの嘘を織り交ぜることにした。その理由は、“リインフォース”があまり魔法の事は明かすべきでは無いと考えたからだ。

「人間の記憶が?そんな話は聞いた事が無いよ。」

「そうなのか?」

「うん。でも、もし僕の容姿の元になった人間が居たのなら、どんな子か気になるね。」

そうやって会話をしている間に2人は服を脱ぎ終え、浴室へと入った。浴室は普通の大浴場と殆ど変わらない見た目だが、湯の匂いは独特のものであった。

「変わった匂いだな。」

「艦娘を回復させる為の特別な薬品を使っているからね。それじゃあ、お湯につかる前に身体を洗おうか。やり方は分かる?」

「ああ。」

リインフォースは改変される前、何度か風呂に入った事があった。なので、髪の洗い方ぐらいは知っている。そう言うつもりで頭を洗い始めたのだが・・・

「ダメだよ。そんな乱暴な洗い方をしたら。」

時雨に注意されてしまった。

「そうなのか?」

「そうだよ。それじゃあせっかくの綺麗な髪が傷んじゃうよ。ほら、こうやるんだよ。」

すると、時雨はリーンホースの髪を洗い始めた。

「すまないな。」

「いいって。でも、リーンホースには人間の記憶があるって言うから、こう言うのは大丈夫だと思ったんだけど。」

「普通の艦娘はちがうのか?」

「うん。元々艦だった僕達は最初、人間の身体をどう扱えばいいのか分からなくて、よく苦労するんだ。」

「そうか・・・」

それを聞いたリインフォースは自分も苦労しそうだと思った。何故なら、彼女が人間と同じような生活をした体験は、改変される前に何度かあるだけだからだ。
そして、リーンホースは時雨の指導の下で頭と身体を洗い終えた後、一緒に湯船に浸かった。

「確かに、これは疲れが取れていいな。」

そう言いながらリーンホースが入渠を堪能していると、時雨がじっと自分を見ているのに気付いた。

「どうした?」

「いや、じっくり見てみたらリーンホースってスタイルいいなって思って。」

「そうか?」

「顔も綺麗だし、元になった人っていうのも、モテてたんじゃないのかな?」

「いや、人間の私はあまり外には出なかったからな。」

「引きこもりだったって事?」

「まあ、そんな所だな。」

夜天の書が闇の書に改変されて以降、リインフォースが表に出るのは闇の書が完成し、暴走する時であった。そういった時に周りに居る人間は彼女を倒そうと向かって来る人間ばかりである。当然、敵である彼らがリインフォースとお近付きになろうとする訳が無かった。

「ヘーイ!あなたが噂のNew face デスか?」

すると、浴室へ1人の女性が入って来た。ここに来たと言う事は艦娘なのだろう。

「ああ。スペースアーク級巡洋艦リーンホースだ。お前は?」

「金剛型高速戦艦一番艦の金剛デース!」

「金剛か。これからよろしく頼む。」

「よろしくデース。それで、リーンホースは提督と同じ World から来たと言うのは本当デスか?」

「ああ。確かにそうだが、それがどうしたんだ?」

「実は、提督について教えて欲しいのデス!」

「提督について?」

金剛の頼みを聞いてリーンホースは首をかしげた。すると、時雨が彼女に説明した。

「提督は自分の過去の事をあまり話してくれないんだ。」

「そう言う事か。だが、私もタチバナ提督についてはあまり詳しくはしらないぞ。」

「そうなんデスか?」

「ああ。私が就役したのは向こうで提督が戦死した後だからな。クルーが彼の話をしていたのを何度か聞いた事があるだけだ。それでも構わないか?」

「OKデース!早速教えて下サーイ!!」

「分かった。何でも、タチバナ司令は昔はパイロットをやっていて、“鉄の貴公子”と呼ばれていたそうだ。」

「鉄の貴公子デスか?カッコいいデース!でも、どうしてそんな nickname がついたんですか?」

「それは私には分からない。ただ、市民を守る事こそが軍人の役目と言うのが持論の高潔な方と言う話だった。」

「まさに私達の知っている提督デース!」

「そうだね。でも、何で提督は過去を話したがらないのかな?」

「さあ、何でだろうな・・・」

首を傾げる時雨にリーンホースはそう言って誤魔化した。彼女はクルーの会話から知っていたのだ。カムナ・タチバナがかつて“あるエリート部隊”に所属していた事を。

「まあ、とにかく噂で聞いた私よりも、いつも合っているお前達の方が司令の人となりには詳しいだろう。今度は私に教えてくれるか?」

「もちろんデース!!」

「僕もいくつか話すよ。」

この後、金剛と時雨の話は約一時間続き、リーンホースは自分の発言に後悔する事になった。


続く


 
 

 
後書き
Q.何故ゆえカムナ・タチバナが提督?

A.提督は宇宙世紀出身のキャラにしよう!

①でもアムロとかシャアはありきたりだ
②リーンホースがこの人の下でなら戦いたいと思える人がいい。
③宇宙世紀で死んだら何故か艦これの世界に飛ばされたと言う感じで

カムナ・タチバナ!君に決めた!!
 
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