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イナズマイレブン~クロスライジング~

作者:shoogel
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襲う悪夢

 
前書き
お待たせしました! 

 
「うおおおおおーっ!!」

ドッゴオオオオッ!

「ぐっ…!俺が世宇子中のボールを止めなきゃ…!」

「だぁぁぁ!!」

グシァァァァァァァ!

「くそっ!何でゴッドハンド出ないんだッ!!」

ゴッドハンドとマジン・ザ・ハンド習得のために、今日もまた鉄塔広場で特訓を開始していた俺と円堂。

特訓に使うタイヤも、今までの数倍あろう巨大なものに変わっていた。特訓の激しさは増していくばかり…、そんな雷藤と円堂の様子を遠くで鬼道、一之瀬、豪炎寺の3人が見守っていた。

「いいの?手伝ってやらなくて」

「あいつらは今、自分と戦ってるんだ」

「壁は誰かが作るものじゃないからな…」

「そうか、壁はここにあるんだな…」

そう一之瀬は呟きながら、胸に手を当てた。

「円堂の祖父さんもそれが言いたかったんだ、なんて言うなよ?」

「ははっ、バレた?」



「く…!ぐうっ!くっそぉっ…!もう1回!」

「おぉっ!ゴッドハンドォ!!」

もう何時間特訓を続けただろうか…。日が暮れるまでタイヤに吹き飛ばされ続けても、俺と円堂は決して特訓をやめることがなかった。

ガッシイイイイッ!

「くっ…!はぁ…はぁ…!や、やった…!?くぅぅぅぅーーっ!!やったぁぁぁぁぁぁ!!ようし、燃えてきたぁぁぁ!!」



ついに巨大タイヤに吹き飛ばされずにガッシリと止めてみせた円堂。

それから二時間俺たちはさらに、特訓を続けたが、円堂は流石に母ちゃんが心配していると、家に帰った。

俺は、あの巨大なタイヤを止めた円堂を思い出しつつ、呟いた。

「…俺も、負けてらんねぇ!」

俺が投げ飛ばしたタイヤが勢いそのままに俺に向かってくる。

そして…嫌な音が響いた。

ブヂッ!

「……えっ?」

グワチャァ!

途中で千切れたタイヤは、さらに勢いを増して俺に激突した。

(周りが歪んで見える…、…っ、くそ、意識が…)

そこで俺の意識は途絶えた。

最後に俺の名を呼ぶ声が聞こえた「お兄ちゃん!」と…。


その頃円堂は

「守…サッカー楽しい?」

「ん…?うん!あ、でも母ちゃんは反対なんだっけ…」

円堂祖父がサッカーのせいで死んでしまったことで、以前からサッカーのことを忌み嫌っていた円堂のお母さん。

特にイナズマイレブンの話をすることは、円堂家では完全にタブーとなっているほどだった。

「そうよ、私は守がサッカーするのは反対…でも…でも、一度こうと決めたら母親が反対したって貫きなさい…!男でしょ?」

「…ははっ、母ちゃん!」

円堂があれほど夢中になっている様子を見て、とうとう円堂のサッカーを認める気になった円堂のお母さん。

「おじいちゃんがね…私が小さかった頃いつも言ってたことがあるんだ」

「じいちゃんが?」

「キーパーはね…足腰だって。”ヘソと尻に力を入れて踏ん張れば、捕れない球はない”って」

「ほ…本当!?そっか!ヘソと尻に力を入れて踏ん張れば…ようし!頑張るぞ!!」

(お父さん…初めてお父さんのこと、守に話せたわ…)

今まで心の奥に固く封印してきた父親こと、円堂大介のことを、とうとう円堂に話すようになった円堂のお母さんだった。


───────────
ガラガラガラガラ

「いらっしゃ…ん!?お前は…影山!!」

「ほう、随分な態度じゃないか。この店は客を選ぶのか?」

「…」

「ではラーメンでも作ってもらおうか」

その日の夜遅く、雷雷軒に思いもしない来客が入ってきた。それはなんと影山…一体何の目的で…。

「ふん…!」

「そうツンケンするな…お互い同じイナズマイレブンの仲間だったじゃないか?」

「…!」

馴れ馴れしい影山の態度に、かつてない怒りの表情を見せる響木監督。

何しろ目の前にいるのは、自分やイナズマイレブンの仲間達を破滅させ、雷藤や円堂達を鉄骨で殺そうとまでした男なのだ。

「同じフィールドに立っていたというのに、今ではずいぶん違うな?お前はラーメン屋の店主、私はフットボールフロンティアを制しサッカー界の頂に立つ」

「頂点に立つかどうかは分からんだろう」

「分かるさ、試合をする前からな。私は勝利を掴みお前はまた負け犬になる。地べたを這いつくばり、運命を呪うことしか出来ない負け犬にな」

そこで響木監督が持ってきたラーメンには目もくれず、ただただ嫌みを続ける。

「食わないのか」

「フン。食いたくないな、負け犬が作ったラーメンなど…、ひとつ教えてやろう、お前は人を信じすぎる。それが弱点だ」

「それは俺の長所でな。お前は選手を信じることが出来ない、だから汚い手を使ってしか勝つことが出来ないんだ」

「心外だな、いつ私が汚い手を使ったと言うのだ?証拠があるなら見せてもらおうか」

「証拠はそこにある。全てはお前の胸の内にな」

自分の悪行を認めようとしない影山に、監督は自分の胸に聞いてみろとおたまをグイッと突きつけた。

さすがの影山も息が詰まったように口ごもる。

「………ふ………ふふふふ…ふふふふふはは、ふはははははははは!!少しは変わったようだったから利口になったのかと思えば…!お前はお前だな…!決勝戦の日、己の愚かさを呪うことになるぞ。目の前で大切な円堂達が倒されて行くのを、お前は黙って見ているしかないんだ」

「……」

「試合、楽しみにしているよ。いや…円堂はすでに倒されているかも知れんがな」

「…なに!?」

影山が店を出ると一本の電話が掛かってきた。

「はい、もしもし…」

「監督…!お兄ちゃんが、お兄ちゃんが…!」

「───なんだって!?」

その電話を掛けてきたのは、心美だった。

監督は急いでタクシーに乗り込み、雷門病院へ向かった。

「雷藤ぉ!」

監督はそう言い、病室の扉を開けた。

そこには顔の左側を包帯でぐるぐる巻いている、雷藤の姿があった。

「すみません、監督…」

俺は監督を見るなり、謝罪した。

響木監督は動揺しながら、呟いた。

「大丈夫なのか?」

「正直、かなりやっちゃいました、タイヤに吹き飛ばされて、俺はその後、坂に落ちていって、木に激突したらしいので…」

俺は左目が一時見えなくなっていた。ちゃんとした治療をすれば治るらしいが、決勝戦まで間に合うか、それは微妙だ。

そして最悪なことに右足の骨にひびが入ってしまったのだ。左足なら良かったが、利き足という、泣きっ面に蜂な展開だ。

俺は次の日、練習に顔を出したが、全員の顔が凍りついた。

俺は「すまない」の言葉しか出なかった。

そんななか、円堂が叫ぶ。

「大丈夫だ雷藤!試合はフィールドに出ている選手だけで、試合をしている訳じゃない!ベンチの選手…、応援してくれているみんなで試合を作っているんだ!」

「円堂…、そうだな!俺も出来るだけ、サポートするよ!」


そしてみんなは練習に向かった。

俺にも何か出来るはずだ…。
俺はそんなことを思いつつ、円堂の方を向いていた。

(ヘソと尻に力を込めて踏ん張れば、捕れない球はない…!そしてポイントは胸だ!)

「よし!来いッ!!」

「「ドラゴンッ!!トルネエエエエドッ!!」」

「「ツインッブーストオオッ!!」」

グオォォォォォ!!

2個のボールでドラゴントルネードとツインブーストを同時に撃ち込むキーパー特訓をしているみたいだ。

確かにこれほどの威力なら、世宇子のシュート対策としちゃかなり有効かもしれないな。

バシバシイッ!!

「な…!?」

なんと4人がシュートを撃ったその瞬間、円堂の前に姿を現した白のユニフォームを来た長髪の人が現れ、ボールを止めた。

しかも必殺技を使わずして軽々ボールを受け止めていた。

「す…すげえ…!ドラゴントルネードとツインブーストを止めるなんて…!?お前、凄いキーパーだな…!」

「いいや…私はキーパーではない。我がチームのキーパーは、こんなもの指一本で止めてみせるだろうね」

「そのチームってのは世宇子中のことだろう…!アフロディ!!」

帝国の仇を目の前にして激しく昂ぶる鬼道。

こいつの名前はアフロディって言うのか…

「お前、宣戦布告か…?」

俺が呟く。

「宣戦布告?ふふふふ…私は君たちと戦うつもりはない。君たちも戦わない方がいい、それが君たちのためだよ」

「何故だよ…!」

「負けるからさ。神と人間が戦っても勝敗は見えている」

「…!試合はやってみなけりゃ分からないぞ…!」

「そうかな?リンゴが木から落ちるように、世の中には逆らえない事実というものがあるんだ。だから練習もやめたまえ。神と人間の間の溝は練習では埋められるものじゃないよ、無駄なことさ」

まるで大人が聞き分けのない子供をさとすように、試合の放棄を勧めてきたアフロディ。

戦う前からすでに俺達を対戦相手と見てすらいない、同じ土俵に上がるのも無意味としか思っていない…対戦相手としてこれほど屈辱的なことはない。

さっきまで温厚だった円堂の表情も、みるみるうちに険しいものへと変わっていく。

「うるさい…!練習が無駄だなんて誰にも言わせない!練習はおにぎりだ!!俺たちの血となり肉となるんだ!!」

「あぁ…なるほど、練習はおにぎり…ははは、上手いこと言うねぇ、ふふっ」

「笑うとこじゃないぞ…!」

俺ですら、今まで見たことがないくらいの、凄まじい怒りの表情に円堂がなっていた。

円堂の心が、アフロディの不遜な物言いで一気に決壊してしまったんだろう。

「しょうがないな…じゃあ、それが無駄なことだと…証明してあげるよ!」

持っていたボールを突然空高く蹴り上げたアフロディ。

いきなり何を…と思ったその瞬間、円堂達の目前にいたアフロディは高く上がったボールよりさらに高い上空へと移動した。

「なっ!?一瞬で!?」

ワープのような恐ろしい速さの身のこなし…単に移動するだけでも、こんな肉眼で捉えられない圧倒的なレベル…。

「うっ…!?い…いつの間に!!」

アフロディがボールを優しく撫でるように蹴る。

ゴゴオォォォォ!!

そんな限界まで手加減されたシュートですら、とてつもない破壊力を持って円堂へと飛んで行く。

(ヘソと尻に力を入れれば…!捕れない球はない!!)

グググググググッッッ!!

「ぐ…!ぐぐぐぐ…!ぐおおおおおーーっ!!」

全身全霊を懸けてこのシュートに挑みかかり、相討ちに近い形でボールを弾き飛ばした円堂。

かろうじてゴールの外へボールを押し出すことに成功するが、円堂も激しく吹き飛ばされて気を失ってしまう。

「円堂!?おい、大丈夫か円堂!」

「しっかりしなさい円堂君!」

「……う……ぐ…っ!どけよ…!来いよもう一発ッ…!今の…本気じゃないだろう!本気でドンと来いよッ!!」

朦朧とする意識を激しい怒りで繋ぎ止め、世宇子への敵意を剥き出しにする円堂。

「…面白い。神のボールをカットしたのは君が初めてだ、決勝が少し楽しくなってきたよ」

その言葉を残して、一瞬のうちに俺達の前から消え去ってしまったアフロディ。

どうやら自分のシュートを初めて止めた円堂を見て、ようやく雷門イレブンを戦うに値するチームだと認識したようだった。

「決勝戦…とんでもないことになりそうだな」

「…世宇子中はあいつみたいな奴ばかりなんだ」

「はぁ…」

「円堂、手はいるか?」

「あ、あぁ、いるいる…へへっ、今のシュートで新しい技が見えたような気がするぜ…やれるよ俺達!」

今のも必殺技を使わずに世宇子のシュートを止めたことには変わりないし、勝ち目も完全にゼロというわけではないのかもしれない。

俺がそう思った時だった。

「いいや…今のお前たちには絶対に不可能だ!」

監督の俺たちに対する、希望を打ち砕く言葉が告げられた。 
 

 
後書き
心美「お兄ちゃん…」
雷藤「なんだそんな暗い顔するなよ!」
心美「だって…」
雷藤「円堂も言ってただろ?ベンチに居たって俺は雷門イレブンだ!」
心美「……うん、そうだね!」 
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