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転生者達による神世界開拓記

作者:三島 渓山
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東方
古代編
  第三話

 
前書き
次回で永琳編は終わりです、may be。 

 





 あれ(前回の話)から三年が経った。義姉さんの地獄の修行(いじめ)は苛烈を極めたと言っても過言ではないだろう。『妖怪の住む山林地帯でドキドキ!?サバイバル♪』や『私の恋の弓矢避けちゃいや~んww』など想像を絶するものばかりだった。だが、しかし!それももう終わりを迎える。



 「永巡準備出来た?」

 「ん?あと少しだよ」



 月への移住が明日に決まったからだ。ここまでの道のりは本当に辛かった・・・身体的な意味でな。



 「それより妖怪達の動きはどうなの?」

 「……」

 「その反応じゃ芳しくないみたいだね」

 「……十中八九月への移住時に襲撃をかけてくるわ。ここまで的確だとこちら側の動きが漏れてる可能性があるかもしれない」



 情報が漏れてる、か・・・妖怪に襲われて利を得る事が出来る人間なんて思いつかないな。ここの人間は博麗霊夢や霧雨魔理沙みたいに強くない。妖怪は倒せるかもしれないが装備が強いだけの話だ。なのでヒーローになるみたいな線もない。



 「(……となるとやっぱりあいつかな)」



 脳裏に浮かぶのは人外・安心院なじみ。今回の件はあいつが色々と絡んでいるのだろう。DAS(大体・安心院さんの・せい)だよ、DAS。



 「……!」

 「どうしたの永巡?」

 「……後の準備は部屋でやるよ」

 「そう……大丈夫よね?」

 「大丈夫大丈夫。それじゃ、おやすみなさい」



 そう言って俺は地下へ降りるが……やっぱりな。



 「何故ここにいる?」

 「暇つぶしかな」



 コイツはあの日から度々俺の部屋を訪れるようになった。いつも義姉さんがいない時に来るからまだいいんだがな。



 「義姉さんが妖怪に動きが漏れてるって言ってるけど」

 「それは僕だね」

 「義姉さんに二次創作でありがちな男の影がないんだが」

 「それも僕だね」

 「義姉さんの修行(いじめ)が鬼畜だった件について」

 「それは僕……じゃないね」

 「っち」

 「いや、舌打ちされても困るんだけど?」



 それはこっちも分かってる。あの時抱えたやり場のない筋肉痛をブツケタイダケナンダ。



 「急にカタコトになられても何も言えないよ」

 「こいつ使えねえな(…………)」

 「本音と建前が逆だからね!?そこで何故喋っちゃうかなぁ!?」

 「すっかりツッコミ役に抜擢されたな」

 「……そりゃまだ主要人物三人しか出てないし、君がボケまくるからね。せざるを得ない状況なんだよ」



 それはそれは立派な心がけで。



 「まあ、そんな事よりもあれは何だい?」

 「あれは義姉さんの修行(いじめ)さ」



 義姉さんの修行(いじめ)の合間に作った最高傑作。光線銃が主流になってるこの都市で原始的な武器を使う義姉さんの指導を受けた故に出来た一品。



 「名前はあるのかい?」

 「今の所無銘だ」

 「僕が付けてあげようか?“ライトボウ”とか“クロスボウ”はどうだい?」


 「どこのゲームの初期装備だよ」

 「ちょっとした冗談さ。それで僕の分は?」

 「ないよ」

 「え?」

 「え?」



 何言ってるのこの人外は?



 「ないの?」

 「ないよ」

 「何それ怖い」

 「お前に武器が必要とかどの口が言ってるんだ?」

 「バレた?」



 可愛く舌出してあどけなさを演出しようとする安心院さんマジ鬼っす。



 「……それで?結局これからどうするの?」

 「俺は月に行かない。“穢れ”を取り払う為に玉兎の地を侵攻するなんてナンセンスで醜い。“穢れ”を失えば欲を持てず、変化を失い、個を失う。それ即ち個の死と同義」

 「人間ってのは欲があるからこそ進歩する。だけど、この都市は発展しすぎた。早すぎた発展は進歩を妨害し、怠惰へと誘う」

 「“穢れ()”を取り払うを取り払う事自体が欲なのに気づいてない」

 「……滑稽だね。僕はここまで哀れな人間を見た事はないね」

 「義姉さんにそこまでの意図はないと思うけどね。ただ純粋に今の人類の危機を救おうとしているだけ」



 その純粋さを上層部に利用されてるだけどね。やっぱり月に行かないと覚醒しないか。



 「明日には地球(ここ)を出る」

 「それは良い事を聞いたよ。早速伝えてくるね」

 「人間と妖怪が争う混乱の中、俺は行方を眩まそう」

 「僕はせいぜい見学するよ。人間(鉛筆)妖怪(消しゴム)の戦いを」



 なんかシリアスにそれっぽい事言って纏める俺達。



 「……なあ」

 「……何も言っちゃダメだぜ」

 「やっぱり普通に会話してた方が執筆速度上がるって」

 「メタ発言禁止!」

 「俺らの存在自体がメタだよな」

 「それはどうしようもないんだぜ」



 何時何処でどうやって誕生するのか分からない転生者達を一瞬で抹殺する手段は安心院なじみにもないようだ。俺にもないんだけど。



 「それじゃ僕はそろそろ帰るけど……」

 「ん?」

 「三年も一緒に会話してるのに君の名前を知らないんだ。教えてくれるかい?」

 「ああ、そうだったか。俺の名は八意永巡、永久を巡ると書いて永巡だ」



 それ以外にも旧姓が○○だとか、前世の名前が○○○○だったとか色々あるけど言わなくていいだろう。



 「永巡ね……僕の名前は知ってるだろうけど一応言っておくぜ。安心院なじみ、親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」

 「ワカタヨーアンシンインサン」

 「ニュアンスがおかしい気がするけどまあいいや。それじゃあね」



 安心院さんが別れの言葉を告げると一瞬で消えてしまった。



 「一瞬で消えた……これが腑罪証明(アリバイトリック)



 好きな時に好きな場所にいることが出来る技術(スキル)か。これで1京2858兆519億6763万3865個分の1個だから規格外にも程があるな。



 「さて、明日に備えて寝るとするか」





 ~~~~~~





 カンカンカーン!ヴィーヴィー!キュイーン!ガンガンガン!



 「う……」



 外からけたたましい音が聞こえる。時刻は……5時?何かあったのか……?



 「永巡!(ドガッ)」

 「どうしたの義姉さん……?」

 「どうしたもこうしたもないわ!妖怪が攻めてきたのよ!」

 「はぁ!?」



 いくら何でも早……くないな。妖怪の活動時間は夜……寧ろ遅いくらいだ。



 「市民の避難は?」

 「兵隊達が今必死に促してるわ」

 「ロケットは?」

 「私達の部下がロケットの稼働を急いでるけど時間が足りないわね」

 「妖怪の進行状況は?」

 「外門を突破して第一都市で暴れてるわ」



 不味いな……多分今暴れてる妖怪達は先遣隊だと思う。この後に控えてる強力な妖怪が来るまでに先遣隊を滅ぼさないと先にこちらが滅ぼされてしまう。ぶっちゃけこの都市の住民で上位の妖怪に勝てるのは俺と義姉さんだけだし、数の暴力にはさすがに勝てない。義姉さんの体力が尽きるのが先になるだけだ。



 「義姉さんはロケットの稼働を直接指揮して。俺は兵隊達と協力して妖怪を倒す」

 「駄目よ!そんな危ない事!」

 「だけど、このままじゃ全滅する。誰かがやらないといけない事なんだ」

 「……るのよ」

 「?」

 「……絶対帰ってくるのよ、これ約束だから」

 「ああ、分かった」



 義姉さんから死亡フラグを受け取った俺は妖怪達を止める為に外に出る。今こそ修行(いじめ)の成果を示す時だ!
 
 

 
後書き
~都市の地図~

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外側から第一(農家や工場労働者)、第二(商店や高層ビル群)、第三都市(お偉いさん達)と隔離されている。第一、第二都市は自由に行き来可能だが第三都市は関係者以外立ち入り禁止。第三都市の真ん中にロケット発射装置がある。 
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