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ドリトル先生の水族館

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第三幕その八

「そのスポーツをするのに相応しい体格があるんだ」
「ボクシングとかラグビーとか」
「サッカーや陸上でもなのね」
「それに相応しい体格がある」
「そうしたものなのね」
「うん、ボクサーが柔道をしてもね」
 先生はかなりわかりやすい例えを出しました。
「合わないんだよ」
「その体格の問題で」
「そうなるの」
「そう、ボクシングは足を素早く動かしてパンチで攻める」
 先生は歩きつつ右手の人差し指を立てて皆にお話します。スポーツはしなくてもその知識はしっかりしています。
「それに対して柔道は掴んで投げたりするね」
「うん、柔道はそうだね」
「そうして闘うものだね」
「柔道はね」
「そうしたものだね」
「そこが違うから」
 だからというのです。
「それぞれのスポーツに相応しい体格があって。それに」
「それに?」
「それにっていうけれど」
「今力士の人の稽古のことを言ったけれど」
 お話するのはこのことについてもでした。
「ボクシングにはスパーリング、柔道には投げる稽古があるね」
「それぞれのスポーツで」
「それぞれのスポーツがある」
「それでなんだ」
「それぞれのスポーツをしないと駄目」
「そういうことかな」
「そういうことなんだ」
 先生は皆にいつもの穏やかな笑顔でお話しました。
「野球をしていて格闘家の訓練をしたり格闘技の食事をいつも食べてもね」
「何にもならないだね」
「意味がないのね」
「むしろやったら駄目なんだ」
 決して、という口調での言葉でした。
「野球選手には野球選手のトレーニングと体格があって相応しい食事の仕方もあるから」
「そこで格闘家のトレーニングをしたりしても」
「いつも格闘家の食事を食べても」
「格闘家の体格になっても」
「全くいいことはないよ」
 先生はスポーツはしないのですがスポーツ選手の診察をすることもあるのでこうした知識もしっかりと備わっているのです、所謂スポーツ医学です。
「そうしたことをしたらかえって駄目なんだ」
「百害あって一利なし」
「それぞれに合ったことをしないといけない」
「そうしたことなんだね」
「絶対に」
「そうだよ、それでどうして僕がスポーツ選手のことを話したのか」 
 野球選手のことをです。
「日本である野球選手を見てのことなんだ、厳密に言うと元だね」
「その元野球選手がなんだ」
「そういうことをしていたんだ」
「野球選手なのに格闘家の訓練とかしてたんだ」
「そんな変なことしてたんだ」
「うん、それで格闘家より強いとか言って悦に浸っていてね」
 それだけではないとです、先生はそのお顔を曇らせてお話しました。
「しかもマスコミがその選手を持て囃していたのを知ってね」
「間違ってるって思ったんだね」
「そうしたことは」
「先生にしては」
「それはおかしいよ」
 絶対にという口調での言葉でした、先生はとても温厚な人ですが間違っていることは間違っているという人なのです。 
 それで、です。その元野球選手とマスコミについても言うのです。
「野球選手だからね」
「格闘家じゃない」
「それでそんなことをしても」
「変なことにしかならない」
「しかもそうしたことをする人を持て囃すマスコミだね」
「おかしいっていうんだね」
「幾ら人気があってもおかしいことはおかしいんだ」
 それを否定する先生ではないので今も言うのです。 
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