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真田十勇士

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巻ノ十四 大坂その七

「そういうことですな」
「そうなりますか」
「はい、それではこれから」
 あらためてだ、老人は一行に誘いをかけた。
「その鍋を食しに行きますか」
「そうですな、それではお願いします」
「これが実に美味で」
 昆布でだしを取り味噌で味をつけた海の幸の鍋がというのだ。
「是非お楽しみ下さい」
「それでは」
 こうしてだった、一行は店に行きその鍋を囲んだ。幸村は赤い色の魚や海老に貝、それに昆布を見て目を丸くさせて言った。
「これが海の幸か」
「はい、どれもです」
 老人が幸村に答える。
「海のもので。この魚は鯛です」
「これが鯛か」
「お侍様は鯛は食されたことがないのですか」
「信濃にいたので」
 山国のそこに生まれ育ったからだというのだ。
「ですから」
「左様ですか」
「こうした貝に海老もです」
 そうしたものもというのだ。
「見たこともありませんでした」
「では昆布も」
「左様です」
 それもというのだ。
「使っております」
「ではこのだしの味は」
「昆布も入っています」
「それでこの味ですか」
「そこに味噌が入り」
 そしてというのだ。
「魚に貝とです」
「これは牡蠣じゃ」 
 猿飛は柔らかい貝を箸に取りつつ述べた。
「安芸の牡蠣は美味かったが」
「ほう、あちらの牡蠣を食されたことがありますか」
「うむ、しかしこの牡蠣もな」 
 実際に口に入れて味わってみての言葉だ。
「たいそう美味い」
「これがここの牡蠣です」
「そうなのか」
「他の貝もよいぞ」
 清海は牡蠣以外の貝も食べていて言う。
「それに海老もな」
「はい、この海老も美味です」
 伊佐も海老を食べている。
「まことによい味です」
「これは何じゃ」
 穴山は白く長いものを食べている。
「足か。蔦みたいじゃな」
「それは烏賊です」
「烏賊とな」
「はい、それもまた海にいるものでして」
「食えるのじゃな」
「そうです」
「ううむ、美味いのう」
 穴山はその烏賊を食べつつ述べた。
「確かに」
「こっちの赤いのも美味い」
 海野はそれを食べていた。 
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