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特型宇宙駆逐艦ふぶき

作者:忠雄
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抜描及び初陣編~プロローグ

 
前書き
イズモ計画からヤマト計画に移行された国連宇宙軍の計画。敵ガミラスにヤマト建造が察知され、ヤマト計画は前倒しで決行された。そしてこのヤマト計画はイズモ計画の頃からもう一つ計画が付随されていたのであった。それは... 

 
国連軍極東方面軍の小笠原葵三等宙佐は正面のモニターを凝視していた。
モニターには惑星間弾道弾を撃破し、大気圏外へと飛翔する人類最後の希望である宇宙戦艦ヤマトが映し出されていた。
「クッ!こんなに前倒しで計画が発動されるとは…」
小笠原三佐は数少ない稼働可能な宇宙船造船工廠である長崎県の佐世保にいた。
「そうですね、三佐。まさか敵にこうも早く悟られるとは思いませんでした。」
大柄の割には声のトーンがやや高い男が小笠原に話しかけた。
「時間の問題ではあったが…しかしこれで我々のミッションの変更は余儀なくされた訳だ。日下部一尉。いや…日下部副長かな?」
若干の微笑みを浮かべながら小笠原は日下部に言った。
「その呼称はまだ早いですよ。“艦長”。」
日下部は「フフッ」と軽い笑顔で小笠原の冗談に応えた。
「日下部。フネの方はあとどの位で完成するのか聞いているか?」
「ハッ。ヤマトのように偽装を施していませんので、外装に関してはほぼ完成しております。ただ「ガ式改」の波動エンジンの調整に時間がかかるようでして…」
と言い、「あと2週間程度はかかると聞いております」と質問の本来の回答を日下部はした。
「鹵獲品での独自改良では難しいか…」
「本来なら、あのヤマトとともにイスカンダルへ行くはずだったのだがな…時間は私達には味方してくれなかったか。」
そこに女性オペレーターから「小笠原三佐!極東指令本部情報七課の北澤一佐よりご連絡がはいっております。モニターコンソール右の1番です。」
「了解。出る」
小笠原は赤く点滅するボタンをタッチした。
スクリーンには細面で太めのフレームの眼鏡をかけ、白髪交じりだがキチンと頭髪をセットした国連軍の制服をまとった人物が映し出された。
「小笠原三佐。」少しガサ付いた感じの声色で北澤は小笠原に話しかけた。
「見ていたかね?残念ながらガミラスの察知が早く、やはりヤマト計画は前倒しで決行された。」
「はい。」小笠原は少し硬い表情でそれに答えた。
「このためにヤマト計画含まれていた我々の役目には変更を余儀なくされたのは承知だと思う。」
「おそらく艦体の完成とその後の抜描までには2週間はかかりそうだ。」
「そうですか…」
「うむ…正規のヤマト乗組員がガミラスの爆撃によりほぼ全滅してしまったのは聞いてはいるな?」
表情を硬くして小笠原は「はい。」と答えた。
「このため、予備人員が動員された関係上、そちらの乗組員の選定に狂いが生じてしまったのだ。」いまの地球では人材不足は深刻だった。
「当初の計画から副案である計画に移行して貰うことになるのだが、現状で乗組員の候補人員の選定確定しなければならない。その為に時間が必要なのだ。理解してもらいたい。」
さらに北澤は続けて「なお艦体や積載品に関しての変更は特にない。」
「人員選定には艦長となる君の意見も必要となる。その為に明朝ヒトヒトマルマルに私の所まで出頭してもらいたい。」
「了解いたしました。」小笠原は硬い表所は崩さず答えた。
「それではな。」
敬礼をした北澤に敬礼を小笠原は返した後にモニターから北澤は消えた。
「ふぅ…」小笠原は小さくため息をつき、クイっと首を回した。
「乗組員の選考か…」
小笠原の小さな呟きに日下部が語りかけた。
「三佐…選考と言っても、一佐の言う通り人材不足ですからね。好むと好まざるとかかわらずに概ねの人員はすぐに決まるでしょう。」
「そうだな。士官候補生の繰り上がりや予備役の投入も当然あるだろうな。」
「従来の突撃型と比較して人員も多くなる。日下部…お前には期待しているぞ。」
ニヤリと微笑む少し小悪魔じみた小笠原の笑顔に、日下部は少し動揺しつつも明るく「ハッ!覚悟しています。」
「では、明日に備えるとしよう。今日はこれで帰宅して構わんぞ。奥方とゆっくり話すといい…」
「ありがとうございます。お心遣い痛み入ります。艦長。」と日下部は丁寧すぎるくらいの言葉で謝意を示した。
 
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