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何故ばれる

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2部分:第二章


第二章

「では銭はじゃ」
「いつも人間を化かすように木の葉を変えてじゃな」
「そうじゃ。それでどうじゃ?」
「うむ。ならばそれで行こう」
「それがいい」
 狸も狐もここで合点して言いました。
「それでは早速」
「化けて。行くとするか」
「そうしようぞ」
 三匹は思い立つとすぐに山を下りました。そうして人間に化けて市に出ました。市は人間達でごったがえしていてお店も左右に一杯並んでいます。
「また随分と賑やかじゃのう」
「そうじゃのう」
 人間に化けている三匹はその市を見回しながら話をしています。市を回って品を見ている人達も商いをしている人達も活気に満ちていてとても明るい顔をしています。そうした顔も見てさらに機嫌をよくさせています。
「それに美味そうなものも一杯じゃな」
「おお、いい魚じゃ」
 川獺は魚を売っている店を見て楽しそうな声をあげました。
「あれは美味そうじゃな」
「あそこの野菜もいいぞ」
「ほう、揚げもあるぞ」
 狸も狐もそれぞれ好物を見つけて言います。
「柿もあるではないか。程よい堅さじゃのう」
「揚げ方が絶品じゃ。あれを食うともうそれだけで」
「そうじゃのう。しかしじゃ」
 けれどここで川獺が顔を引き締めなおして二匹に言うのでした。
「今は我慢しようぞ」
「おっと、そうじゃったのう」
「その通りじゃ」
 ここで狸も狐も我に返って真面目な顔になるのでした。
「わし等はまず菓子を食わねばならん」
「その砂糖をたっぷりと使った菓子をじゃ」
「その通りじゃ。菓子じゃ」
 川獺もこのお菓子のことを言うのでした。
「まずは目的を果たしてからじゃ。よいな」
「うむ、わかった」
「それではじゃ」
 二匹はその引き締めなおした顔で川獺の言葉に頷きました。
「その店に参ろうぞ」
「銭も作ったしのう」
「これじゃな」
 川獺は懐から何枚かの銭を出したのでした。
「これで買おうぞ」
「うむ。しかしのう」
「人間とはわからんのう」
 ここで狸も狐も首を捻って言うのでした。
「どうして何かを手に入れるのに銭なぞ必要なのじゃ?」
「自分で取るかものともので交換すればよいじゃろうに」
「わしもそう思うのじゃがのう」
 こう考えているのは狸と狐だけではありませんでした。川獺もでした。彼にとっても人間がどうしてものを手に入れるのにそんな銭というものが必要なのかわからなかったのです。
 それで彼等は首を傾げています。そんなことを話しながらそのお菓子を売っている店に向かいます。店に着くと何か頑固そうな親父がいてその前に色々なお菓子を並べています。
「おお、ここじゃな」
「この店じゃな」
 三匹はその出店を見て言いました。店は簡単な木造りです。
 丁度今人間のお客がそのお菓子を買って店を後にするところでした。そのお客はもうお菓子を食べてとても嬉しそうな顔をしています。
 三匹はその人間の顔を見て。それでまた言い合うのでした。
「本当に美味いようじゃな」
「そうじゃな」
「そうでなければあんな幸せそうな顔にはならんぞ」 
 このことを確信するのでした。
「それではじゃ。買うか」
「うむ」
「そして食おうぞ、菓子をのう」
 こうして三人はそのお菓子を買いに行きました。彼等はその頑固そうな親父のところに来ました。ところがこの親父の傍にいたのは。
 
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