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お母さん狐の冒険

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1部分:第一章


第一章

                    お母さん狐の冒険
 ある森の中でのお話です。この森には狐の一家が住んでおりました。
 お父さんが御飯をとってきて、お母さんが子供達の面倒を見る。そうして一家は暮らしていました。
 そんな一家の冬のある日のことです。子供達がお家の洞穴の前で前足を磨り合わせながら話していました。
「寒くなったね」
「そうだね」
 子供達は口々に言います。冬なのでもう毛がない足が寒いのです。子供達はそれで困っていたのです。
「手袋があればいいんだけれど」
「手袋?」
 それを聞いたお母さん狐が洞穴の中から顔を出して尋ねてきました。
「うん、手袋」
 子供達はそれに答えます。
「寒いから。前足を覆ってくれる手袋が欲しいなあって」
「お母さん持ってる?」
「そう言われても」
 けれどお母さん狐はそれを聞いて困った顔をしました。
「今聞いたばかりだから」
「ないの?」
「ええ」
 お母さんは答えました。
「悪いけれど。うちにはないわ」
「そんな」
「じゃあ僕達このまま寒い思いしなくちゃいけないの?」
「葉っぱじゃ駄目かしら」
 お母さんは尋ねました。
「それで前足を覆って」
「今冬だからそんな葉っぱないよ」
 けれど子供達は困った顔をしてそれに答えました。
「枯れた枝みたいな葉っぱばかりで」
「あんなのとてもつけられないわ」
「そうなの。それは困ったわね」
 お母さん狐は子狐達の言葉を聞いてさらに困った顔になりました。
「お父さんは今揚げを買いに行ってるし」
 狐の大好物です。お母さん狐も子狐達もこの揚げが好きで好きでたまりません。狐はこれが出て来たら化けていても尻尾を出してしまう位好きなのです。
「それじゃあどうすれば」
「お母さん」
 一番年上のお兄さん狐が言いました。
「手袋は町で売ってるよ」
「町で?」
「そう、人間の町で。そこにならあると思うよ」
「町にあるのね」
 お母さんはそれを聞いてあることを思いつきました。
「ねえ貴方達」
 そして洞穴から出て来て子狐達に対して言います。
「暫くおうちで大人しくしていてね。お母さん今から町へ行って来るから」
「手袋買って来てくれるの?」
「ええ」
 お母さんは答えました。
「お母さんが町まで行って買って来るから。それまでお留守番お願いね」
「うん、わかったわ」
 お姉さん狐がそれに頷きました。
「それじゃあ行ってらっしゃい」
「留守番お願いね」
 お母さん狐は洞穴を出て買い物に向かうことになりました。子供達に留守番を任せて。その子供達に手袋を買ってあげる為に。


 
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