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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第七十二話






ズシュウゥッ!!

 雪蓮の右の脇下辺りに日本刀で斬りつける。あ、血が顔に付いた。

「グッ!?」

 雪蓮は、痛みに顔を歪める。

「………腰を捻って串刺しだけは避けたな雪蓮」

「そ、それはありがと」

「思ったより良い反応だ………が」

「ッ!?」

「詰めが甘いッ!!」

ザシュゥッ!!

 俺はそのまま横薙ぎの攻撃に変換して、雪蓮の胸に横一文字の傷口を作る。

「雪蓮ッ!!」

 下で周瑜が叫ぶ。

 ゆっくりと重力に引かれて落ちようとする雪蓮の頭を蹴った。

バキィッ!!

 蹴った衝撃も加わって雪蓮は地面に激突した。

「……く……」

 雪蓮がヨロヨロと立ち上がる。

 雪蓮は胸から流れる血をペロっと舐める。

「………いいわ、流石長門だわ。血が疼くわ」

 雪蓮が恍惚とした表情をする。

「俺は嫌なんだけどな………」

 俺はそう言いつつ構える。

「今度は此方の番よッ!!」

 雪蓮が一気に俺に向かうが早いな。

「ちィッ!!」

 俺は牙突で雪蓮の頭を狙う………はずやった。

ヒュッ。

「なッ!?」

 き、消えたッ!! い、いや違うッ!!

 俺は咄嗟に下を見た。

 雪蓮が下から攻撃をしようとしていた。

「う、ウオォォォォォーーーッ!!」

バキィッ!!

 俺は左足の膝を雪蓮の顎にぶつけた。

ドガッ!!

 雪蓮が撥ね飛ばされて壁に激突する。

「……………(今の動きは速すぎる。まさかこれが雪蓮の本来の動きか?)」

 ふぅ、心臓がドキドキするな。

「……………」

 ………雪蓮の目付きがいつもより違うな。

「……………」

 俺は牙突に構えて雪蓮に突っ込む。

 雪蓮は突っ立ったままだ。

「フンッ!!」

 俺は突きをする。

 雪蓮はそれを普通に左に避けただけだ。

「(速いけど、横薙ぎの攻撃をわすれている避け方だな………なッ!?)」

 その時、避けると同時に半回転した。

「ハアァァァッ!!」

ガッ!!

「ガァッ!?」

 雪蓮の南海覇王が俺の後ろの首に当たって吹っ飛んで壁に激突する………けど、剣の腹の部分での峰打ちだと?

「………どういう事だ雪蓮?」

 口から血が出る。

 あ、右頬が切れてるな、口の中が鉄の味がする。

「どういう事? 長門が私に手加減をしたでしょ? この胸の傷………本当ならもっと酷いでしょ?」

 ………確かに少し浅すぎたとは思ったけどな。

「だから私も手加減をしたのよ。これで貸し借りは無しよ」

 雪蓮はそう言って南海覇王を構える。

「………成る程な。雪蓮らしいというかなんというか………」

 俺は苦笑しつつ牙突の構えをする。

「相変わらずその構えね」

「この構えが好きなんでな」

「姉様ッ!!」

 その時、思春を従えた蓮華がやってきた。

 ………よく見たら星とクロエもいるし。

「………そろそろ年貢の納め時じゃないのか?」

「あら? それはどっちに言っているのかしら?」

 頭から血を流す雪蓮が笑う。

「………行くぞ」

「えぇ」

 俺達は同時に突っ込む。

「「ハアァァァッ!!」」

「止めなさいッ!!」

 俺は雪蓮に突きをいれようと、雪蓮は俺に袈裟斬りをしようとした時、一人の女性の叫びが俺達の耳に聞こえた。

「「夏蓮(お母様)ッ!!」」

 叫んだのは夏蓮だった。

「何で此処に………」

「この砦はほぼ袁術軍が占拠したわ。後は此処だけよ。私は美羽の許可を得て来たのよ」

 夏蓮が俺達に歩み寄る。

「剣を納めなさい雪蓮。孫策軍は大半が降伏したわ」

「………嫌よお母様。私は呉の王、降伏するくらいなら私は死を選ぶわ」

 雪蓮は降伏を拒否した。

「自分の首と引き替えに皆を助けたいからかしら?」

「な、何でお母様がそれを………」

 雪蓮が驚く。

「私は貴女の母親よ。貴女が何をするか大体は分かるわ」

 夏蓮は雪蓮にそう言った。

「………私の判断で此処まで来てしまったのよ。責任は全て私にある。だから………」

「自分の首を引き替えに周瑜達を助けようと?」

「………そうよ」

 雪蓮は頷いた。

「………全く………」

 俺は溜め息を吐いた。

「お前が死んだら悲しむ奴等がいるだろう」

「………雪蓮」

 その時、周瑜が雪蓮に近づく。

「………ゴメン冥琳」

「お前が死んだら私はどうしたらいいんだ………」

 周瑜が目に涙を浮かべている。

「………それでどうするんだ雪蓮?」

 俺は雪蓮に問う。

「………袁術軍に降伏するわ」

 雪蓮はそう言って南海覇王を鞘に戻したのであった。






 
 

 
後書き
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