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最後の突撃

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第三章

「その誇りを忘れるな」
「はい、では」
「勇敢に攻めましょう」
「ドイツ軍にもです」
「その勇を見せましょう」
 こう話してだった、そのうえで。
 隊はこの日は食事をしっかりと摂り休んだ、そして朝早くにだった。
 野営地自体を引き払いだ、ナストゥラは大隊の者、戦える者が全て馬に乗ったところで全員に言ったのだった。
「ではだ」
「はい、これから」
「敵軍に対してですね」
「攻撃ですね」
「そうだ、既に戦えぬ者は下がらせた」
 この指示もだ、ナストゥラは出し手いたのだ。
「攻撃の後はだ」
「私が倒れた場合はだ」
「はい、私がですね」
「指揮を執ってもらう」
 こうマリシュに言うのだった。
「いいな、それで部隊が落ち合う場所はだ」
「そこは」
 ここでだ、ナストゥラはマリシュにその場所を話した、それは彼等の大隊が所属している師団の司令部があるトルニだった、ウィスラ川流域にある港町だ。
「わかったな」
「あの街ですか」
「そうだ、そこに行くぞ」
「わかりました、では」
 その下がる場所についても指示を出してだった、そして。
 そのうえでだった、ナストゥラは部隊を率いてだった。
 進撃して来るドイツ軍に向かった、するとその先頭にだった。
「戦車ですね」
「装甲車もいますね」
「その後ろに歩兵が続いていますね」
「オートバイもいます」
「サイドカーも」
「大層なものだ」
 ナストゥラは部下達の言葉を聞きつつ述べた。
「機械化部隊というやつか」
「ドイツ軍が戦争前からやたら喧伝していた」
「その機械化部隊ですね」
「そして我が軍をこれまで押している」
「ドイツ軍の精鋭ですね」
「そうだな、これまで確かにしてやられていた」
 それも徹底的にだ。
「しかしそれでいいか」
「いい筈がありません」
「やられたらやり返せ」
 ここでこうした言葉も出て来た。
「軍人がそれでいい筈がありません」
「ましてや我等はポーランド騎兵」
「誇り高きポーランド騎兵です」
「そうだ、ポーランド騎兵だからだ」
 それ故にとだ、ナストゥラも言ってだった。
 彼は全騎兵にだ、こう命じた。
「全員突撃だ」
「では」
「これより」
 マリシュ、キュリーに続いて他の者達もだった、彼の言葉に応えて。
 ナストゥラがサーベルを振り下ろすとだ、彼に続いてだった。
 馬腹を蹴り雄叫びをあげてだった、馬を前に突進させた。それと共に全員サーベルを抜きそのうえでだった。
 一気にだ、敵に迫った。ドイツ軍の将兵達はその彼等を見てだった。
 怯んだ、このことは確かだった。
「来たぞ、ポーランド騎兵だ」
「まさか俺達に向かって突進して来るなんてな」
「勇気があるな、やっぱり」
 その勇気に怯んだ、だが。
 彼等はそれでもだった、その怯みをだった。 
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