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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第三話 第一回フロア攻略会議

MMORPG«ソードアート・オンライン»が正式サービスを開始してから既に一ヶ月。
平均規模のMMOならば、既に初期レベル上限に達するプレイヤーが現れ、マップも端から端まで探索し尽くされそうかと言う頃合いだ。しかし、あの人が作ったSAOがそんな単純な造りでないことは、この副ゲームマスターたる俺には分かっている。
自発的ログアウト不可、アバターの死は自らの死を唄うものになったSAOは大半がβテスターのような平常運転に近かった。それでも、この一ヶ月間の間で双方で死んだプレイヤー数は二千人に登る。現実は、残酷な物であった。














「クウトー」
迷宮区から最寄りの街«トールバーナ»に帰還して、別行動を取っていたクレイが、此方に走ってきた。
「クレイ、どうかしたのか?」
「第一回攻略会議があるって!行こうよ!!」
その話を聞いて、ほう、と呟く。
迷宮区は、一階から最上階のボス部屋まで二十階層存在する。地味に俺製作なのは謝るべきだろう。
しかし、たった一ヶ月でボス攻略会議が行われるのは、既にボス部屋に近い位置まで居るからなのだろう。
「んー……βテストよりは難易度は上がってる筈なんだけどなー不謹慎ながら」
「コボルド量産地帯だからねぇ……」
遠い目でクレイが言うと、俺は言う。
「まぁ、攻略が進んで何よりだ。俺達も参加して、貢献するとしますか」
俺はそう言うと、クレイから聞いた場所に向かって歩き出した。












四十六人。
それがトールバーナの噴水広場に集まったプレイヤーの数だった。しかし、連結パーティーを作るにはあと二人足りない。今の状況で死者ゼロにするなら、少なくともレイドを二つ作らねば行けないが、大半ははじまりの街に存在しているため、人数的にはまだ攻略不可能のレベルではない。
「うわー、いっぱいいるね!」
「呑気だな……」
俺は思わずため息を付くと、パンパン、と音が響く。
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせて貰います!皆、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっち来ようか!」
その声の主は所々に金属防具を付けた片手剣使いだ。彼が今回呼び掛けを行ったプレイヤーなのだろう。
「今日は、オレの呼び掛けに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!オレは«ディアベル»、職業は気持ち的に«ナイト»やってます!」
因みに、SAOにそんなものは存在しない。あくまで自称なのだ。
「どう思う?」
クレイが聞いてくる。
「平均的にレベルはそこそこあるだろう。指揮力もあるみたいだし、問題は無いと思うけど」
ディアベルについて話していると、話の間にトゲトゲ頭が割り込んで来た。
その男はディアベルの言葉に鼻を鳴らすと、名を名乗る。
「ワイは«キバオウ»ってもんや」
一瞬、「あ、こいつ面倒臭そうだ」と思ったのは言うまでも無い。














実質、会議らしい会議が行われなかった日の翌日、二十階層をそれはもう素晴らしいスピードで攻略がなされ、午後にはディアベル率いるパーティーがボス部屋を発見し、顔を拝んできたと言う。無茶苦茶すぎる。
その後、パーティーを作りーーーー当然、俺はクレイとのパーティーを作りーーーーアイテムの分配方法などを決めて解散となった。
「ふぃー……。つっかれたぁ……」
「コボルドの漏れこぼしを倒すって、ボス攻撃できないじゃん」
未だにクレイは文句を言っていた。
「まぁまぁ、雑魚を殺すのも仕事のうちだって」
静かになだめると、俺は言う。
「とは言え、ボス戦には代わりないんだ。HPが危ないと思ったら下がって回復してくれ。良いな?」
「言われなくても分かってるよ。心配症だなクウトは」
笑いながらクレイが言うと、俺は頷いてそれぞれ寝泊まりする宿屋に帰っていった。
























翌日、十一時に出発した攻略部隊が、十二時半に最上階を無事に踏破したことに胸を撫で下ろした。
この連結パーティーでは、大体が初心者の筈だ。その«初めて»が例外なく事故を引き起こす事が多い。
「クレイ、わかってると思うけど」
俺はクレイに話し掛けると、クレイは言う。
「うん。必要以上に出過ぎるな、でしょ?」
「ああ」
分かっていてくれて何よりだと思いながら歩いていると、ディアベルが丁度七つのパーティーを並ばせた所だった。ディアベルは左手を大扉に当て、
「ーーーー行くぞ!」
短く叫び、押し開けた。
すぐにパーティー全員が入ると、それは姿を現す。
「グルルラアアアアア!!」
獣人の王、«イルファング・ザ・コボルドロード»。その近くには取り巻きの«センチネル»が現れた。
「クレイ!」
「いっくよぉおおおおお!!」
俺とクレイは近くのセンチネルを狙い、駆ける。
だがその間、嫌な予感がしたのは、気のせいだと思いたい。 
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