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真田十勇士

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巻ノ九 筧十蔵その十一

「そしてじゃ」
「当家ともですな」 
 今言ったのは本多忠勝だった、四天王の中でもその武勇は随一とさえ言われている者だ。
「ぶつかると」
「わしは徳川家を大きくするつもりじゃ」
 今以上にというのだ。
「しかしその大きくなることがな」
「羽柴殿にとってですな」
「厄介な存在となる、だからな」
 それでというのだ。
「羽柴殿と戦になるやもな」
「やはりそうですか」
「その時までに甲斐と信濃の多くを手に入れたい」
 これが家康の考えだった。
「とはいっても焦らぬ」
「はい、焦ってはです」
 四天王の最後の一人である井伊の言葉だ、徳川四天王において最も精悍かつ清廉な心の持ち主として知られている。
「ことをし損じるますな」
「そうじゃ、明日の一万石よりもじゃ」
「今日の百石ですな」
「ことは慎重に進める」
 このことは絶対に、というのだ。
「これまで通りのわしのやり方でいく」
「では甲斐、信濃に兵を進めても」
「無理はせぬぞ」 
 家康はまた酒井に応えた、四天王筆頭でありそのまとめ役である彼に。
「一歩一歩兵を確かに進めるぞ」
「はい、では」
「その様に」
 家康の言葉にだ、四天王は頷いてだった。
 そのうえでだ、自分達の主に述べた。
「では我等も」
「殿のお言葉に従い」
「そのうえで、です」
「それぞれ兵を率いて戦にかかります」
「頼むぞ、とはいっても従う国人達はそのまま迎え入れよ」
 家康は四天王にこうも言った。
「わしは常に言っておるな」
「はい、いくさ人といえどもです」
「仁の心は忘れるな、ですな」
「当家に入るものは快く迎え入れよ」
「そして民にはですな」
「民には一切手を出してはならぬ」
 このことは厳命するのだった。
「よいな」
「無論です」
「我等も徳川の者」
「無用な戦はしませぬ」
「民には一切手出しをしませぬ」
「うむ、戦は戦の場でするもの」
 そして戦をする相手とするものというのだ。
「それ以外の時で武を振るってはならぬのじゃ」
「そしてですな」
「兵を進め」
「従う者は快く迎え」
「民には髪の毛一本も奪わず指一本触れませぬ」
 四天王も誓った、そして。
 他の家臣達もだ、家康に頷いて言った。
「では我等も」
「無用な戦はしませぬ」
「それは全くです」
「手出しをしませぬ」
 このことを誓ってだった、そのうえで。
 徳川の者達は兵を進めていった、慎重にかつ無用な戦を避けてだ。それは上田にいる昌幸をしてこう言わせるものだった。
「流石は三河の麒麟と言われただけはある」
「確かに」
 その昌幸の言葉にだ、信之も頷く。 
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