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真田十勇士

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巻ノ九 筧十蔵その六

「そしてそうした者達から話も聞くうちに」
「興味を持ってか」
「学びそしてです」
「術を身に着けていってか」
「はい、そのうえで」
「術をじゃな」
「この術をどう使うべきか考える様になりました」
 そうなっていったというのだ。
「次第に、学べば学ぶ程」
「それで何故安土におった」
「ここがこれより栄え色々な者が集まり」
「術を知る者もじゃな」
「来ると思いまして」
 それでというのだ。
「それで学びました」
「正道に使うべきとじゃな」
「そう考えていたのですが」
 しかしその正道が何なのかをわかりかねていたのだ、正道といってもそれが具体的に何かをわかることは難しいのだ。
「しかしここで殿とお会いしまして」
「そしてか」
「わかった様な気がします」
「術は天下万民の為に使うものじゃな」
「少なくとも左道には堕ちず」
 このことは絶対だというのだ。
「義を守る」
「そのうえで使うものとじゃな」
「今は思っております」
「そういうことじゃな」
「はい、それがしの術は真田の為民の為に使います」
 筧は幸村に今誓った。
「これよりそうさせて頂きます」
「宜しく頼むぞ」
「はい、それでこの書ですが」
 筧はここであらためてだ、周りの書を見た。
 そのうえでだ、こう言ったのだった。
「どうしたものか」
「随分多いのう」
「はい、この書はどうしましょうか」
「ふむ、そうじゃな」
 幸村は腕を組みだ、ここで思案に入った。
 そしてだった、彼はあらためて筧に言った。
「この書は宝、失う訳にはいかぬ」
「売るなり捨てるなりはですか」
「してはならぬ、この書は天下万民の為に役立つものとなる」
「ではどうしましょうか」
「そうじゃな、安土も寂れたが」
「しかしですか」
「当家は織田家に従っておった、それで人もやり小さいながらも屋敷も持っておった」
 織田家の家臣達の様にというのだ。
「建てようとしている最中ではあったがな」
「では」
「その者達も去ることになろう、間もなくな」
「ではその時に」
「この書も上田に持って帰ってもらおう」
 これが幸村の考えだった。
「是非な」
「左様ですか、では」
「うむ、この書は全て上田に持って帰る」 
 こう筧にも言ったのだった。
「そうしようぞ」
「有り難うございます、では」
「すぐに真田の屋敷に行き話をしよう」
 こうしてだった、幸村はすぐに真田の屋敷に向かってだった。そこで話をつけて書をまずは屋敷に運ばせてだった。家の者達に言った。
「では頼むぞ」
「わかりました、では」
「我等も間もなく上田に戻りますので」
「それではです」
「この書もです」
「持って帰ります」
「ではな」
 幸村は家の者達に微笑んで告げてだ、そしてだった。
 書は家の者達に任せ筧も加えた上でだ、己の家臣達に言った。
「ではこれよりじゃ」
「はい、都にですな」
「そちらに向かいますな」
「そうしようぞ、いよいよじゃな」 
 感慨を込めてだ、幸村は家臣達に応えた。 
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