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ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
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第41話 陽海学園



~陽海学園~



 陽海学園行きのバスも無事乗る事が出来たジャックと燦。その足取りは、重たそうにしていたが、精一杯の笑顔は出来ていた。

 そして、あのトンネルの中を通過する。このトンネルを抜けた先が妖怪の世界だ。トンネルを抜けた先には赤い空が広がっている。

「ヒヒヒ…… さあ 付いたぞ」

 バス停の前につくと バスの扉が開いた

『ああ ありがとな』
<ありがとうございました>

 送ってくれた彼に一礼をし、燦も筆談をしつつ、頭を下げていた。

「ヒヒヒ…… いいさ、しかし君はほんとに優秀のようだ。人間界での活躍聞いてるぞ〜。流石は冥王の1人といったところか?」

 唐突な話を突然訊いて、苦笑いをしてしまうのはジャックだ。特に冥王という言葉を訊いて。

『ん……? 冥王? 何でオレが冥王? 違うぞ?』

 確かに、後に三大冥王と呼ばれる3人と組んで戦った事があるのはある。が、何故このバスの運転手の彼が知っているのかが疑問だった。

「……確かに、呼ばれてはおらんがね、その真実を知っているのはごく一部… いや、わたしがそう思ってるだけさ… 気にしないでくれ。それじゃあ、またな」

 彼はいつも通り、葉巻をふかしながら、ヒヒっ と嗤いながら、扉を閉め、バスを走らしトンネルへと消えいった。




 バスが去った後、燦は、不思議そうな顔をしてジャックの方をみていた。

<?? お父さん……めいおう、って何のこと?>

 どうやら、燦は、さっきの会話 バスの運転手との会話が気になった様だ。めいおう、と言う意味もよく判らず。

『あははは…… んー、そうだな。お父さんが ずーっと昔に、この学園の理事長や他の仲間達と共に悪い奴をやっつけたからかな? ……その名前が付いたんだよ。なんだか、呼ばれている方も悪いイメージがする名前っぽいのが玉に瑕だけど』

 ジャックは、燦の頭を軽く撫で、笑いながら話した。

<あははは! ほんとかな? それ>

 燦もクスクスと笑い、笑顔を見せてくれた。ハニカム仕草が本当に可愛らしい。ジャックは暫く頭を撫でていたんだけど……、直ぐに思い出した。

『あ……、そう言えば、オレはやられちゃったんだった……』

 そう言いながら頭を掻く。燦はそれを訊いて。

〈あはははっ お父さん、がんばらないとー!〉

 再び笑いながら そう言っていた。










~陽海学園・理事長室~


 
 以前の様な事があったら、どうしよう。と何処となく心配だったのはジャックだ。今は1人ではなく、燦もいるのだから。だが、心配をしていたことは杞憂だった。今回は何事も無かったからだ。

「やあ ジャック……、思ったより早かったな。連絡は受けているよ。その子については安心したまえ。既に編入手続きの方は取ってある」

 迎えてくれた御子神には、燦については一通り説明していた。彼女の生い立ち、そして妖力が高い事を。その正体はセイレーン《音曲の大妖》だという事。
 様々な妖が集うこの学園だから、大妖と言う事自体は驚かないが、セイレーンについては、『最も神に近い妖』と謳われている事もあるから、少なからず 驚いていた様子だったが、分け隔てなく迎え入れてくれた。
 それは 彼女の生い立ちを説明した事もあるだろう。

<あ あの… よろしくお願いします>

 燦も必死に頭を下げ、筆談で挨拶をした。

「ああ こちらこそ。 この学園は君のような孤児も沢山いるからな。 彼らのことを君ならわかってやれる、だろう? そして 新しい家族は本人次第でできるということもな」

 燦は自分と同じ境遇の子達だ沢山いることを聞いて、

<はい!>

 力強く答えていた。 自分が…これまでしてきた経験を、役に立てるかもしれないからだ。今まで守ってもらってばかりだったから、心から守ってくれていた事ばかりだったから。
 その事が、彼女に勇気を齎してくれた。ここで、やっていけるかどうかが、心配だったから。

 そして、学園に関する説明に入る。

「説明はこの猫目先生がしてくれる、判らない事は何でも聞きなさい」

 御子神がそう言うと、理事長室で控えていた、猫目先生が一歩前に出た。

「はぁい! よろしくね~!! 燦ちゃん」

 猫目は、にこりと笑いながら、燦に話しかけた。燦は少し驚き、たじろぎもしたけれど、直ぐに。

<こちらこそ、よろしくお願いします。>

 そう挨拶を交わした。目を見たらよく判るから。
 良いひと、だと言う事が。そして、この理事長である御子神もそうだ。表情は見えづらいし、目も見えないけれど、自分が最も信頼している、大好きなジャックが信頼しているのだ。それだけでよく判ると言うものだった。

 燦は、そう思うと同時に、ジャックの顔を見た。そして目が合う。

 燦はにこりと笑った。そして、ジャックも同様に笑っていた。

 
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