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僕のお母さんは冥界の女王さまです。

作者:LAW
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拝啓お母さん。護堂お兄さんに会ってきました。

 
前書き
再び頑張って更新 

 
「ハイ・・・、ハイ、申し訳ありません引き続きお願いします」

受話器を置いて私は小さくため息をつく。
昨晩、家から飛び出していったひかりの行方がつかめないからだ。必死に追いかけたが彼女と私の運動能力の差は歴然で直ぐに見失ってしまった。
甘粕さんにも探してもらっているが未だに見つからない。何か事件に巻き込まれてしまっているのだろうか。 怪我はしてないだろうか。そんな事ばかり考えてしまう。
しかも昨日委員会より羅刹の君、草薙護堂に接触せよとの通達を受けた。内容は神具、ゴルゴネイオンの所在。
世界に厄いをもたらすというモノが日本に持ち込まれたということでも私の中では一大事なのに更には妹の失踪。
今にも倒れてしまいそうなのを私は必死に堪えて、王のおられる学院へと向かう。
もしもの事があったらひかりの帰る場所がなくなってしまうのだから。
どうかせめてゴルゴネイオンなんてモノが日本にありませんように。










だが現実は無情だった。






「貴殿方は私達をなんだと思っているのですか!?」

七雄神社に私の怒号が響く。
ゴルゴネイオンは持ち込まれていた。王はそれを記念日か何かだと思って受け取ったそうだ。しかも、本人には罪悪感の欠片もなく。それを授けた騎士はこね状況を新たな王のである彼に託したと言う。

「プリンセス・アリスによる予言を覆すことができるのはカンピオーネにおいて他ならないそれは貴女も分かっているはず」

「それならばサルバトーレ卿、ヴォバン侯爵にご依頼すれば済むはずです! よりによってまだ若く、王としての自覚もない草薙様にその重責を押し付けるのですか!?」

「万里谷祐理、それは我が王に対する侮辱よ。口を慎みなさい。それにね。世界が滅ぶも残るも王次第なのよ」

彼女の言いたい事も分かる。
どんな思わくかは知らないが神々のもたらす厄にはカンピオーネでしか対処できない。それほどまでにまつろわぬ神は強大なのだから。
だが理解はできても納得はできない。
何故今なのだ。何故妹が見つからない今なのだ。
妹は恐らく関東にいるだろう。また、ゴルゴネイオンはここにあって間違いなく関東は災厄の舞台となる。そうすれば妹にも危険が及ぶ。

「草薙王!!」

私は王に向けて叫んだ。


「どうか。どうか災厄からこの国を御守りください。どうか、どうかお願い申し上げます」

涙を堪え、地に膝をつき頭を下げる。

「対価を望むのであれば私を差し上げます。どうか、どうか。この国の民を・・・ひかりを」

「お、俺は・・・」

王が戸惑うような声をあげた。
王次第と云うならば私にはこうするしかなかった。
王が戦ってくれるなら日本が滅びることもない。
被害は伴うだろうが具申し、少しでもここから遠ざけるべきだ。
ひかりのことは甘粕さんに任せよう。

だから私は王に戦っていただくように頼んだ。








「王次第と云うならばそれは僕が引き受けましょう」

 まだ、幼い少年の声がした。
ゆっくりと顔を上げて境内の入り口、鳥居の方に向けるとそこには車椅子の少年がいた。
金色の髪を風で靡かせるその少年はひかりと同じくらいの年にしか見えない。
次に私の視線が移ったさきは少年の後ろ、車椅子を押す少女へと向けられた。

「ひか、り?」

その少女はひかりだった。彼女は家を飛び出した時のような寝間着ではなく、黒いワンピースと柘榴をあしらった銀色の髪飾りを身に纏っている。その表情はいつもの天真爛漫なモノではなく、一人の巫女としての表情。
その視線は若き神殺し。草薙護堂を真っ直ぐ見据えていた。

「子供?」

「あら、どこで私達の話を聞いてたのかは知らないけどお姉さんたちは大事な話をしているの。デートに静かな場所を選ぶのは中々のチョイスだど思うけど今は先約があるからまた後でいらっしゃい」

草薙さんとその騎士であるエリカさんは困惑した。だけどエリカさんは直ぐに二人にこの場を去るように促しながら歩み寄り少年の頭に手を伸ばした。

「この御方を誰と心得てその御頭に手を伸ばしますか」

だがそれはひかりによって遮られた。
その声にははっきりと敵意が満ちている。

「下がれエリカ・・・」

「護堂?」

草薙さんがエリカさんに下がるように言った。
その言葉をの真意を確かめようとして、彼を見た瞬間私達は目を見開く。草薙さんから呪力が溢れていた。およそ人の持てるそれではなく、それは神々や同胞と相対するそれと同じであった。

「そいつは・・・」

「はじめまして。七番目、いや八番目の王草薙護堂さん。僕はルカ・セフィーネ。今代四番目のーーー」

少年がにっこりと笑った。

「「カンピオーネです(だ)」」












草薙さんとルカ君の会合が始まった。
ルカ君の名乗りにより硬直するお姉ちゃん達。

「流石のお母さんの権能でも草薙さんの近く、ましてや目の前では気付いちゃいますか」

ルカ君はわたしに手を離すように促したので素直に女性の手を離した。女性はすぐさま飛び退いて草薙さんを守るように前に立つ。

「護堂、あの子は本当にカンピオーネなの? 覇気どころか呪力も感じられないんだけど」

どうやらルカ君が本当にカンピオーネなのか未だに疑っているようです。

「じゃぁ、呪を解きますね。流石にこのままじゃ連れの前では格好がつかないので」

直後、噴き出すように溢れだした呪力。金髪の女性よりも、お姉ちゃんよりも、カンピオーネである草薙さんにも勝る黒い呪力。冥界の皇子にふさわしい“死”を体現したかのようなそれ。
カンピオーネとして覚醒したことにより動かなかった脚に力が、光を映さなかった瞳に光が宿っていく。
その光景をわたしはうっとりとした表情で見つめた。
そして溢れる呪力の本流が収まった後にゆっくりと車椅子から立ち上がる。それにあわせて前を譲り、彼の一歩後ろで恭しく頭を下げる。

「では、改めまして自己紹介です。ルカ・セフィーネです」

にっこりとと笑う彼に皆さん、特にお姉ちゃんと金髪の女性はは呆然としている。
ルカ君が本当にカンピオーネだとは思わなかったのだろう。
沈黙が続きそうだったのでここはわたしが場を進める。

「草薙王はよしとして、何故我が君が貴女方より先に名を明かさねばならぬのですか?」

この言葉により、お姉ちゃんと金髪の女性が慌てて膝を着いた。

「この七雄神社にて巫女を務めております。万里谷祐理と申します」

「ミラノ、赤銅黒十字にて筆頭騎士、王であらせられます草薙護堂様の騎士を務めておりますエリカ・ブランデッリと申します。恐れ多くも御身に対する数々の無礼、どうが御許しください」

やっと二人が相応の態度をとるようになったのでこんどは私の番とルカ君の横にならんで草薙さんに向かって優雅な礼をる。

「お初に御目にかかり恭悦至極にございます。恐れ多くもルカ様から庇護をいただいております。そちらの万里谷祐理の妹になります。万里谷ひかりと申します。先程はお見苦しいところを晒した大変な無礼をお詫び申し上げます」

「え、万里谷の妹!?」

「あ、ひかりさんのお姉さんでしたか」

驚愕によりお姉ちゃんをみる草薙さんと笑顔でわたしを見てきたルカ君にそれぞれ顔を伏せたまま頷き、また笑顔で返した。

「さて、自己紹介も済みましたね。いろいろ聞きたい事もあるでしょうがあまり時間もないので、ゴルゴネイオンの処遇についてお話ししましょうか」

「恐れ多くも、発言を御許しください」

  最初に口を開いたのはエリカさんだった。
ルカ君はにこやかにどうぞと言って発言を許可した。彼の空気に目の前の三人の緊張が少し解れたように見えたが私は緊張を崩さない。これは王の会合なのだ。まず始めに草薙さんが発言しなければならないのに彼を押し退けて彼女が出張ってきた。

「ゴルゴネイオンは我が国イタリアが我が君に託した神具です。されどセフィーネ王と云えど無闇な干渉は避けていただきたく存じ上げます」

「うん、普通ならそうするんですが。ならば事情を説明してイタリアで迎え撃てば良かったですよね? 貴女が真摯になって草薙さんにお願いすればもしかしたら引き受けてくれたかもしれませんよ?」

「そ、それは・・・」

「まぁ、大方新しい権能とこの国での発言権が目的でしょうが」

エリカさんが言葉を詰まらせた。ルカ君の考えは的を射たようだ。

「けど、僕はそれを見逃す訳にはいかないんですよ。今まで隠れていたとはいえ、僕も王です。庇護に置いているひかりさんの国が危険に晒されるとなると黙っている訳にはいきません」

「すまん。その、ルカも神殺しをしたのか? 四番目と言ったが今は何歳だ?」

草薙さんが口を挟んだ。ゴルゴネイオンの処遇については全く関係ないが彼が発言する分には問題ない。

「僕ですか? 僕は11年前にカンピオーネになったらしくて、今は12才です」

「11年って、生後一年で神殺しになったのか!?」

「まぁまぁ、僕の事はいいじゃないですか。ちなみに僕は全部で七柱の神を倒してます。あ、内四柱は纏めて一柱ですから、全部で四柱ですね。ですからカンピオーネとしては草薙さんより先輩ですよ?」

  改めて聞くとこの年で神殺しを成しているとわかるとずごいとしか云いようがない。

「ですから僕に預けてくれた方がそちらの云う予言を覆す確率も高いと思います。まあ、エリカさんでしたね?貴女の思わくは知りませんが。けど、草薙さんは王とか名誉とか要らないといった方みたいですし、何より日本から核爆弾的なモノがなくなるので丁度いいかなと」

  正にWIN‐WINの関係ですね。
とルカ君は終始笑顔を絶さずに言った。

「ちなみに・・・」

そんなルカ君に草薙さんは神妙な面持ちで聞いた。

「ルカはゴルゴネイオンを日本以外の何処へ持っていく」

「イタリア、ミラノですよ?」

私を含めるルカ君以外の全員が息を飲んだ。

「お待ちください!」

エリカさんが慌てて大声をあげるがルカ君は無視して草薙さんに話し続ける。


「大丈夫ですよ草薙さん。向こうはこちら以上に術者や騎士の錬度が高いと聞きます。もちろん僕も戦いますし。もしかしたらイタリアにいるっていう剣の王の手助けが入るかもしれません。運が良ければ僕達の大先輩も手助けしてくれるかもです。手練れのカンピオーネ三人、どんな災厄も裸足で逃げ出しますよ」

「セフィーネ様、今一度御一考を!此度の件は全て私に非がございます!どうか、どうかイタリアの民に御慈悲を!!」

「まぁ、流石に被害を出さない自信はないのでもしかしたらイタリアが焦土になるかもですけと」

「おい、ルカ。本気でいってるのか?」

 草薙さんの呪力が高まるのが分かった。どうやらルカ君の物言いに怒っているようだ。

「本気も何も護堂さんとエリカさんがした事を言っているだけですよ? 流石に他のカンピオーネ達を招いて戦うというのは言い過ぎましたが。言うなれば現状が今言った状態ですね。しかも神の来訪を待つという制限時間つき。さっきも頼まれましたよね?この国を、民を守ってくださいと」

ルカ君の声が小さく、鋭く、冷たくなっていく。
草薙さんは何も云えない。むしろルカ君の雰囲気に飲まれつつあった。

「草薙さん、ゴルゴネイオンは核爆弾といいましたが。それは僕達もなんです。僕達が戦えば大なり小なり被害が出てしまう。僕も四つ目の権能を手にする際のたたかいで山を三つ全焼させてしまいました。物的被害はもちろん怪我をした人や亡くなった人もいます。けど戦わなければもっと多くの人が死んでしまいます。神々と話し合えばいいと思うでしょうけど神殺しの話を聞いて聞いて説得に応じてくれる神はいません。人の命を尊いと考える神はほんの一握りです。神殺しなんてなりたくてなったんじゃない、王なんて俺は知らない。なんて僕達は云えないんですよ。なってしまったのなら僕達はやるしかないんです。誰にも指図されず自分の意思で」


ルカ君はずっと怒っていた。エリカさんがとった愚かな行いに。神殺しである草薙さんの降るまいに。

「エリカ・・・」

草薙王は己の騎士の名前を呼ぶ。

「ここからは俺が話すお前は口出しするな」

「仰せのままに我が王よ」

その声はお前に拒否権はないと言った意味が込められていた。

「ルカには悪いがゴルゴネイオンは持ち出させない。これは俺が自分で作った責だ。他人にしかも年下のお前に尻拭いをさせたとなっちゃ俺は末代まで笑われる羽目になる」

「僕はこの国に被害が及ぶなら黙ってはいませんよ?」

「今までの話から察するにこの国にもイタリアでいう魔術結社があるんだろう? そこに戦闘可能な場所を用意させてそこで戦う。巨大建造物もないただだだっ広い場所でだ」

「それでも被害が出る場合は?」

「その際は仕方がない。俺にできるのは神を殺すことだけだ」

じっと見つめあう二人。緊張が走る。

「では、被害がでたら半分をエリカさんの処で持ってもらうとしましょう」

ルカ君が再び笑顔で柏手を打った。
途端に軽くなる空気中。ニコニコとした彼に腰が砕けたのかお姉ちゃんとエリカさんがへたり込む。

「護堂さんがよかったら僕も参戦します。基本被害が想定外の場所に及ばないようにするためのサポートですが有事には僕も前に出ます。どうですか?」

「いいのか?今回は俺がやらかしたんだから自分でなんとかしないといけないと思ってたんだが」

「あははは、なに言ってるんですか。この国の魔術結社の手を借りようとしてるところが既に自分でできてないじゃないですか」

指摘されて、気まずそうに頭を掻く草薙さん。
それにと、ルカ君がが続けようとした時

「あ、・・・」

わたしはルカ君に引き寄せられ、彼の腕の中に収まった。

「自分の妃の故郷を護るのは当たり前ですよ」







「「「はい?」」」 
 

 
後書き
ぐだぐた? 
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