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ダンボール戦記ZERO

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第四話 謎の進行

 
前書き
前回の続きです!
感想が聞きたいのでコメント下さい! 

 
カチャカチャカチャカチャガャチャ----カチャッ
左腕の駆動系の回路が一部断線してるのか、直すのは一苦労だな。
廃棄処分寸前の高級車の車内、僕はアキレスZEROの修理に取り掛かっていた。
修理用のパーツは常時持ち歩いてるので修理の場所は選ばないが、困った事に直すのに苦労する部分を壊された様だ。
「左腕部の回路を一度全部・・・断線してる部分のみの修理は無理かぁ〜
なら、一旦左腕を外してっと」
左腕を失ったアキレスZEROの完成! パチパチパチパチ・・・ゴメンなZERO。
破損箇所の修理は帰ってするか、流石にTO社の設備を借りても完全な修理は不可能だと思うし。
アキレスZEROは市販のアキレスをベースに僕の手で造られたオリジナルLBXだ。
手間暇掛かった僕の相棒なのだ。その修理は困難を極め、徹夜は確定だ。
「直りそうか、」
僕のアキレスZEROの破損状況を見て、海道 ジンは言った。
「家の設備なら、完全な修理は可能かと。
僕のアキレスZEROは市販のパーツは使ってないんで、結構、整備が面倒なんですよ」
「そうか、だが、研究室の設備を使えば一瞬で直る筈だ。
あそこの設備は世界トップレベルだ。オリジナルパーツで造られたLBXでも完全な修理が可能だろう」
世界トップレベルの設備----なら、コイツの修理も。
イプシロン・air。
僕の技量でも、完全な修理は不可能かも知れない機体。
設備の問題あるが更なる問題点は構造の把握だ。
イプシロン・airの内部の部分部分『腕』『頭』『胴』『腹』『足』の中央箇所、駆動系の伝達回路の隙間に『カプセル』の様な物体が見られる。
調べると、イプシロン・airはそのパーツを外すと自動的に機能停止状態&データの初期化が行われる様で、大まかな推測のみで言えば重要な秘密が隠されていると予測する。
って僕は子供か!こんな玩具に秘密が隠されてる訳ないじゃん!
「あ〜僕って・・・はぁ」
子供ポイな僕。
二次元の扉は目の前だ! みたいな感じだよ。
大体、そんな重要機密をLBXの内部に隠すなんてナンセンスだ。
もっと、ほら、隠す所は有るだろ? 金庫とか体内とか・・・・まてまて! LBXの内部に隠すのと同義じゃん!
発想が微妙ってか馬鹿だろ僕。
片腕を失ったアキレスZEROを鞄の奥底に置きながら、僕は思った。
結局、僕って・・・なんなの?
被害者と言われても、詳細を聞かないと納得するのにも時間が掛かると言いますか、そもそも納得するのも無理な訳でしてハイ。でも、秒殺の皇帝の生バトルも見れたし別に良いかな〜なんて思い込んでる僕が密かに心の奥底で笑っていた。
「到着だ、」
オンボロ車『高級車』は気付けば地下の駐車場に駐車していた。
あれ? でも、ここって?
「えっと・・・・・・ジンさん?
ここってトキオシアデーパトの地下駐車場じゃあ・・・?」
「ああ、そうだ」
そう言ってジンは歩き始めた。
僕は疑問を感じつつ、その後を追った。
ちょっと前まで休業してたけど復活したんだ、地下の駐車場も一新されてて綺麗になってる所を見ると繁盛してるんだなぁと思わせる。数年前の事件は傷跡は未だに癒えず、現在も修復作業を行っている地域も多いが、ここら辺は随分綺麗になった。LBXは復興を果たし、現在の『世界』は平和だ。
問題は残ってるけど事件の起きた数年前に比べればちっぽけな問題で、平和その物と言える。
でも、完全な修復は不可能な訳で。
僕の様な『異例子』が増えた問題点は早急な対応が必要だと日本の政府は言っている。
あの事件がキッカケで、とある一部の子供達は病気を患った。
『ORS』
通称 オーバロード・シンドローム
治療法不明の難病だ。
掛かれば最後、寿命の尽きる迄『特殊能力』を与えられる。
僕の場合は『未来予測』
僕の心拍数が一定を超えると自動的に脳は、その現場の状況を分析し、不規則な未来の現実を見せる。
不確かな未来だ。絶対じゃない。
でも、的中確率は90%。その未来を見れば現実で起こる可能性は非常に高い。
-----素晴らしい能力だと思うよね。
でも、リスクを伴うのさ。
1回の発動毎に吐気・頭痛・心臓麻痺を引き起こす最悪で災厄な病気なんだ。
あの事件以降、約10000人に1人の割合で掛かったそうだ。
僕は運が良いのだ。ある意味で、ね。
と言っても生まれつきORSを患っている人も僅かならがら実在するらしい。
その割合は更に低く。
1億人中1人の割合と言われている。不確かな情報なので、僕は信じないが。
「着いた、」
海道 ジンは壁の前で立ち止まった。
まさか、この展開は・・・ゴクリッと息を飲む。
ジンは怪しげな手付きで、壁の一部に触れた。
すると。まぁ、予測通りの展開で、壁の一部は扉の様に展開し、ジンはその中に入っていった。
「あの、タイニーオービット社の研究室ってのは?
秘密基地の勘違いでは?」
「まぁ、言うな。
進めば時期、解るさ」
通路を進めば螺旋階段の登場。
階段を下ると見えるのは通路! 通路! 通路!
先の見えない通路・・・あぁ、疲れるな。
「あの〜ジンさん?
先が見えないんですけど?」
「だろうな、目的地は約1kmだ」


無言で、進むのだ。
ジンの話だと「奴等の目的はイプシロンと、このLBXだ。
人目の付かず、一般の人間が知らないルートで移動するのが最善だ」
この道を辿ればTO社の研究室だとさ。信じたいね。この状況だと。
疲れた、我慢の限界だ。
予想を裏切る展開は、好きと見せかけ実は嫌いだ。
オーバロード発動後は体力大幅downで疲れるんだよね。
酸欠の様な症状は低下した体力を更に低下させ、僕の足を鈍らせる。
「大丈夫か、ペースが落ちてるぞ」
海道 ジンは歩き慣れてるのか、体力に自身が有るのか余裕の表情だった。
「だ、だ、大丈夫・・・・・・・・・・・・で、あッ」
ヤバ、視界が----ブレる。
オーバロードの後遺症で、動けない。
「少し、休憩しよう」
壁に背中を預け、ジンは座り込んだ。
冷静な人だな。尊敬するよ。


「---創太君、君は不完全な物と不確かな物。
望むなら、どちらが良い?」
寝ぼけた頭で、聞き取った言葉は・・・アレ? その質問、前に誰かにされたような?
「不完全な物は、言葉通り『不完全』な物。
不確かな物は、言葉通り『不確かな』な物。
僕は望むなら『不完全』な物を望む」
逆の結論---知ってる。
あの人は言ってた。不確かな物は理論上、現実的な物を超越した物。
その物を私は望む。不確かな物は現実を交え、私の人生を変えた。
「不完全な物は完全を望んだ副産物、数年前の僕は完全を望んだ。
でも、それは幻想だった。完全な物は不完全な物を完全と読んだ愚者の戯言なんだよ」
「戯言・・・戯言って、戯言って、なんだよ」
実際、僕の声はジンの耳に届いていない。
掠れた声だ・・・久々の連続使用はキツイな。
でも、ジンに伝えたかった。
逆の結論を逆の真理を---あの人の言った言葉の意味を。

「ほぉ、その結論は哀れの一言だな」

ふと見れば黒のスーツを纏った中年位の男性が立っていた。
霞む視界の先はLBXの大軍。先程の数十倍以上のLBX達は見知らぬ男の背後で、指示を待っている様に見える。
そのLBXの大軍の中には、僕を襲った同タイプのLBXが多数、見られた。
「海道 ジン。その少年とイプシロン・airを渡せ」
一歩一歩距離を詰める。
その度にLBXの大軍達は一歩ずつ進み始める。
「断ると、言ったら?」
「拒否権は認めない」
LBXの大軍達は一斉に構えた。
「そもそも何故、お前達が、このルートを知っている?」
「時間稼ぎのつもりか? まぁ、良いだろう。
どうせこの数には対抗できまい」
男が手を上げるとLBX達は武器を収めた。
警告だ、僕達を何時でも殺せると。でも、時間稼ぎは成功の様だ。
「我々のボスは元タイニーオービット社の研究員でね。
色々と社内状況を把握してるのさ。まぁ、色々と知り過ぎでLBXのデータを盗んでる訳だが」
「お前達の目的は?」
「目的・・・ふむ。実際の所、私は知らん。
私は命令されて来たのだからな」
その男はCCMを取り出した。
「まぁ、私に与えられた任務はイプシロン・airとdevilの回収。
それと可能なら、そこの少年を連れて来いと言われたが、私の私情とは関係ない。
どうだろう? 私とバトルしないか?」
軍隊の中の一体のLBXは男の肩に乗った。
『ルシファー』
独等なナイトフレームのLBX。
最近発売された高性能CPU搭載型・・・そのプレミアム版だ。
通常状態の僕ならテンションMAXアゲアゲモードで、飛び掛ってるが動けない。
「神谷 コウスケ製の純正品だ。
君も知っているだろう? コイツの恐ろしさを」

『アッタク・ファンクション!『デビルソード』』

ルシファー専用の必殺技!?
紫色の剣は周囲を薙ぎ払った。
「無茶苦茶な奴だッ!
必殺ファンクション!」

『アタック・ファンクション!『ブレイクゲイザー』』

破壊力抜群の必殺技と固有必殺技が激突した。
なんて威力だ、LBXの質力を超えてるぞ!?
特別な機体なのか所有者が優れているのか、そんな考えをする暇を現実は与えず。
「なんて、機動性だッ」
ルシファーの特徴はエネルギーで構成された翼だ。
飛行能力を与え、爆発的な推進力を武器にジ・エンプレスを翻弄する。
ジ・エンプレスの攻撃は当たる前に躱され、回避と同時に攻撃に転じられる。
秒殺の皇帝の異名を持つ、海道 ジンが苦戦している。それ程の実力者なのか?
まぁ、あのルシファーを扱える技量の持ち主って事は僕でも解るが、あのLBX・・・加速から加速するのか? 一旦加速すると不規則な飛行と加速を強いられてるのか曖昧な不規則な行動だ。
すると奇妙な場面を目撃した。
攻防の中一瞬の瞬間、ルシファーは優勢だった。
ジ・エンプレスにダメージを与えられる隙が、ほんの一瞬有った。
その隙を付かず奴は一歩引いた。
攻撃のタイミング―――回避行動パターン―――若干下がった右肩。
まさか、アンサングル・バースト?
「少年、気付いた様だな」
不敵な笑みで男はコチラを見詰める。
「アンサングル・バーストだね。
近代三大発明と言われてる高出力モータ・・・と言っても欠陥品だけど」
「その通り! よくぞ見破った!」
当たってたのか、最悪の正解だよ。
アンサングル・バースト。
高出力マイクロモータの進化型だ。
無数の小型歯車を微弱な小型モーターで回転させ集まった回転力を主格の前輪と後輪に集結させる。
その場で集まった回転力を使用せず、その回転力で充填された無縁のエネルギーを優先的に使用する。
その後、残された本命エネルギーを使用するのだが、エネルギーの質量が多すぎてモーター自体が逝かれるのだ。それをLBXに搭載するなんて、無茶の範疇を超えてるぞ。
「このルシファーは実験機でな。
外見はルシファーその物だが中身は別物だぞ。
小型され、運用可能となったアンサングル・モーター搭載! CPUは4年前のアルテミスの優勝賞品『メタナスGX』のレプリカ・・・・」
最後の方は小声で、聞こえなかったが相当高性能なLBXの様だ。
でも、不可解だ。何故、あのLBXは稼働できるんだ?
アンサングル・バーストを搭載する機体。超高密度エネルギーを発電するモーターの熱量は相当な筈だ。
小型化したアンサングル・バーストモーターでも、その発電エネルギーはLBXのコアボックスを溶かす程、それを耐える程の金属で構成されているのか?
「更に、悪い知らせだ。
このLBXのコアスケルトンはスタンヒィール・インゴットで精製されているのだ!
耐久性は世界一チィィィィィィィィィ! 熱耐性も世界一チィィィィィィィィィ!!」
ジョジョのシュトロハイムの名言をパクった口調で、男は攻撃を開始する。
攻撃は徐々に猛烈に。
速度は徐々に加速に。
相性の問題じゃない。機体のスペックの問題だ。
如何に秒殺の皇帝が優れようとLBXの性能差で押し負けている。
駄目だ、勝てない。
そう、思った瞬間に。

「慣れた」

ジ・エンプレスの攻撃は当たった。
掠った程度。でも、当たったのだ。
「その機体のスペックは把握した。
確かに、優れたLBXだ。だが、欠陥品だ」
「な、なんだと!?」
「それを僕が証明しよう」
秒殺の皇帝が動いた。
防御に徹していた皇帝が攻撃に転じた!
怒涛の攻撃を繰り出すジ・エンプレス、その攻撃を回避するルシファー。
見事な攻防一体だ。でも、若干、ルシファーが押されている?
あの自慢の機動性が落ちてきているのだ。
「ば、馬鹿な!!!!」
今度は完全にジ・エンプレスを攻撃は直撃した。
吹っ飛ばされ、壁と激突。その後、機能停止に陥った。
「そのLBXに搭載されたモーターは確かに高性能だ。
初手でトドメを刺されていれば僕の敗北は確実だった。貴様の敗因は自分の腕を過信した、己の欲だ!」
「ッ!?」
奴の完全な敗北だ。
でも、性能差は圧倒的だったのに何故、勝てたんだ?
「不思議そうな顔だな」
見破られた様だ。
そして敗因を認められない男は。
「何故だッ!? 何故、私は負けたのだ!!
性能差は圧倒的! 敗北する程の要因は微塵も感じなかった!そもそも何故、貴様の操作速度を上回った演算処理速度を有した私のルシファーは敗北するのだ!!」
敗因を納得する事を拒んでいる様だ。
駄々を捏ねる子供の様に男は大声を上げ、怒声を撒き散らす。
「五月蝿い奴だ、貴様の敗因を加えるぞ。
貴様は自身のLBXの特性を理解せず、機体の性能差を使った力業からだ。自分の力量に見合ったLBXを探せ、そうすれば勝機は見える」
敗因を加えるってよりアドバイスを言ってる様に聞こえるんだが。
でも、ジンの言葉でハッキリした。
あのルシファーは搭載されていたモーター『アンサングル・バースト』は莫大なエネルギーを量産するモンスターモーター。その質力はLBXには耐えられず、長時間の戦闘は不向きと言える。ジ・エンプレスとの戦闘で最初は優勢だったのはモーター自身のエネルギー質量の反動に耐えられたからだ。その耐えられる時間内の間に勝負を決めればジンは敗北していた。だが、奴は途中から勝利する事を忘れ、純粋にバトルを楽しんでいた。
その切替が、勝敗を別けた。
アンサングル・バーストの造り出したエネルギーにモーター自身が耐え切れずオーバーヒートしたのだ。
よって途中からルシファーの機動性は激的に低下した。
途中の合間合間はオーバーヒートを防ぐ為にダメージを与える機会が有っても攻撃せず、距離を置いてモーターを休ませた。
そのスタイルを貫けば勝てただろうに・・・惜しい奴だ。







僕の視界は、そこで途切れた。










 
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