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メイド

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第六章

「夏樹君虐めてたわね」
「それ僕から言おうと思ってたけれど」
「やっぱり覚えてたのね」
「忘れる筈がないよ」
 ムキになってだ、夏樹はここで言ったのだった。
「絶対に」
「そうよね、やっぱり」
「いつもからかわれて虐められて」
「何度も泣かしたわね」
「忘れる筈がないよ」
「御免ね、あの時は」
 あまり申し訳なさそうにだ、彩奈は夏樹に謝った。
「私酷いことしてたわよね」
「本当にだよ」
「もうしないから」
「しないっていうか当たり前じゃない」
 それはとだ、夏樹は智和にすぐに言った。
「そんなことは」
「そうだけれどね、けれど私これでも中学校の時からはね」
「虐めしていないんだ」
「というか小学校の三年の時からよ」 
 その時からだとだ、彩奈は言った。
「虐め止めたの」
「そうだったんだ」
「三年の時もクラスの子虐めてけど、先生に見付かって怒られたのよ」
 よくある展開ではある。
「それでなのよ」
「虐め止めたんだ」
「自分がされたらどうかって言われて」
「それで今は」
「しないわよ、絶対に」 
 彩奈はこのことははっきりとした声でだ、夏樹に答えた。
「もうね」
「だといいけれど」
「ましてやね」
 夏樹を見て言うのだった。
「奥沢君は絶対にだから」
「当たり前だよ」
「むしろサービスするわよ」
「サービス?」
「メイドとしてね」
 それをするというのだ。
「それもうんとね」
「花江さんがなんだ」
「そうよ」
 その通りだというのだ。
「だから安心してね」
「そうなんだ」
「虐めたりしないから」
 笑ってこのことを否定するのだった。
「昔みたいにね」
「じゃあ僕はご主人様になれるんだ」
「このお店にいる間はね、奥沢君は私のご主人様よ」
 猫の様な笑顔でだ、彩奈は夏樹に答えた。
「ずっとね」
「複雑な気持ちだよ」
 彩奈のその猫を思わせる笑顔と言葉を聞いてだ、夏樹は微妙な顔と声で答えた。
「花江さんがそうなるなんて」
「奥沢君のメイドになるなんて」
「本当にね」
 それこそというのだ。
「想像もしていなかったよ」
「そうよね、私だってね」
「花江さんも?」
「想像もしてなかったから」
 それこそというのだ。
「まさか奥沢君が来るなんて」
「お客さんとして」
「ご主人様としてね」
 お店のことも笑って言うのだった。 
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