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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第71話 全ての黒幕


3人が立ち去った後も、キリトとリュウキは油断無く、その先を見つめていた。
 索敵スキルの効果によって、オレンジ色のカーソルだけは視界に表示され続けているからだ。2人は、実を言うと、PoH以外の2人とは初対面だった。ただ、ブリーフィングを受けた時に説明があったのだ。

《子供っぽい外見の毒使い。名をジョニー・ブラック》
《やけにボロボロな服を着たエストック使いの赤眼のザザ》

 だが、当然ながらカーソルにはその名は表示されていない。外見から、恐らく一致させた様だ。

 あの2人が幹部だと言う事を。

 キリトは、裏を取ろうとシュミットに確認をしようと思っていたが直ぐにやめた。次に合うときは、問答無用の殺し合いになる事は想像ができるからだ。剣と剣を使った戦い。それをする時にそんな相手を名前を知りたくは無いと思っていたのだ。
 ……この手にかける可能性のある相手を。

「……あいつ等、此処まで来るのだけでも、バカにならない費用だった筈だろうな。……溜飲下がるってものだ」

 リュウキは、放っていた威圧を解いていた。そして、軽く苦笑いをする。いつものリュウキ。いつもの笑顔だった。それを見たキリトは同意しながら笑う。

「……だろうな。オレンジは、街には入れない。だから、ここまでの手段は限られてくるだろうから」

 犯罪者プレイヤ-であるオレンジは、アンチクリミナルコードに護られた街や村、そう 即ち《圏内》には入ることは原則出来ない。
 入ろうと思えば入れるんだが、普通の町がそのオレンジにとっては鬼門に早変わりするのだ。入った途端、それこそ、本物の鬼の様に強力なNPCに囲まれてしまうのだ。それは、設定を理不尽にされているような強さで、仮に勝てたとしても、際限なく無限に現れると推察もできる。恐らくはどんなプレイヤーでも勝てない仕様になっていると思える。リュウキは勿論、キリトも、当初は挑戦してみようか?と思ったこともあった(勿論、βテスト時代)。
 だが、その為に≪オレンジ≫になって、更に評判を落として さらに終わった後の解消クエストを行う労力を考えたら直ぐにやめたのだ。

 そして、3人のカーソルが消滅したのを確認すると2人とも安堵につつまれていた。

 あそこまで強行姿勢を崩さなかったリュウキもそれは例外じゃないようだ。

「さて……クラインにメッセージ、頼めるか?」
「ああ。大丈夫だ、今やったとこ」

 キリトはそう答える。キリトは10数人を引き連れてこちらへ急行中であるはずのクラインにメッセージを送っていた。

『ラフコフは逃げた。街で待機していてくれ』……と。

 その後は、シュミットも麻痺毒から解放され、立ち上がることが出来ていた。そこで、まだ血の気を失って座り込む死神ローブのプレイヤー達に声をかける。少しばかり皮肉になってしまうのはこの際仕方が無い事だった。

「また会えて嬉しいよ。ヨルコさん。それに、はじめまして、かな?カインズさん」

 キリトはそう言うと 軽く笑みを浮かべた。

「まあ、確かに……な」

 リュウキも同様に言おうとしたらしく。頷いていた。

「全部終わったら……きちんとお詫びに伺うつもりだったんです。……といっても信じてもらえないでしょうが……」

 ヨルコは、俯かせた。他人を騙すような事をするプレイヤーを信じられるわけないと思っていたのだ。だが、ヨルコのそんな思いも一笑する

「それは、今度奢ってもらうメシの味によるな。言っとくが怪しいラーメンとか謎のお好み焼きはカンベンだからな?」
「………あれはトラウマだな。思い出したくない」

 リュウキもキリトの言葉を聞いて軽く笑う。それは、以前行った事のあるNPCの店の話。そこへは、ある話をする為に 血盟騎士団 団長のヒースクリフ、そしてアスナ、レイナ、キリト、リュウキの5人でそこへと言ったのだ。

 ……その味は。

 思い出すのもはっきり言って嫌だから割愛させていただく。 


「はじめまして……では無いですよ。お2人とも、あなた方とはあの瞬間……目が合いましたね」

 カインズは落ち着いた様子でそう答えた。どうやら、彼も安心しきっていたようだった。カインズの言葉にリュウキは思い出す。

「ああ……確かに、消える瞬間。転移する瞬間目が合ったな」
「そういえばそうだったな」
「ええ……。あの時、この人たちには バレてしまう、見抜かれてしまうと予感はしていたんですよ」
「買いかぶりすぎだと思うぞ?」
「ああ、そりゃそうだ。オレ達皆、すっかり騙されたんだからな。コイツの《眼》も眩ませるなんて大したものだと思うぜ?」

 そんなやり取りで、苦笑いが続いた。
 僅かに緩んだ空気をガシャリと全身鎧を鳴らしていたシュミットがまだ緊張の抜けない声で再度引き締めて言った。

「……リュウキ、キリト。助けてくれた事には感謝している。……だが、何で判ったんだ?あの三人が此処を襲ってくることを」

 その巨体の男、シュミットが食い入る様に眼を見返した。キリトはその眼を間近で見たためか、少したじろいで、言葉を捜す。

「判った。と言うわけじゃない。皆で導き出した結論だ。ありえると言う推測だがな。ただ、相手がPoHだと判っていたら、逃げ出していたかもしれないな」

 少し言葉を濁しつつそう言う。この時ばかりは、リュウキでも同様に返すと思っていた。
 これから語る真実。

 それは3人に衝撃を与えるだろうからだ。全ての演出を書き、演出し、主演までした彼ら2人でさえ その存在には気づいていない。云わば……真の首謀者、《プロデューサー》がこの事件の陰に潜んでいる事。キリトはリュウキと目を合わせた。リュウキも頷く。皆、全てを知っておかなければならないだろう。真実が……どれほど残酷だったとしても。

「………オレ達がおかしい、って思ったのはほんの30分前だ」



~30分前~


 ここにくる直前にまで話をしていた事。ストレージ共通化で導き出された真実だった。
リュウキがそう想像した事は間違いではなかった。そして、結婚の制度に関しては、アスナが以前にヒースクリフ団長に聴いていたことがあるらしい。そして、その中でも肝なのが離婚時のアイテム分配率。たとえば、無条件の離婚は自分が0%、相手が100%となる。そう言った具合にだ。だが、普通の離婚には自身が得られるモノを手に入れようとすれば、離婚の被害者になるしかない。
 
 そう……普通ならだ。

 ただ、例外として、死別の場合は別だった。相手が死んだ場合、アイテムストレージは共通化から 本来の容量に戻る。その時、持ちきれない場合は足許に全てドロップするのだ。




「……なぁ、カインズさん、ヨルコさん、アンタ達は、あの武器をグリムロックさんに作ってもらったんだよな?」

 キリトはそう聞いた。その問いにヨルコが、頷くと

「グリムロックさんは、最初は気が進まないようでした。帰ってきたメッセージはもう、彼女を安らかに眠らせてあげたいって書いてありました。でも、私達が一生懸命頼んだら やっと武器を作ってくれたんです」
「……残念だが、アンタ達の計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃない」

 リュウキはそう返した。その言葉に動揺を隠せないのは2人だ。グリムロックの言葉それは、もう疲れきった様子だったんだ。

 当然だろう、自分の大切な嫁が亡くなった事件。

 もう、思い出したくないと言う気持ちだってあるに違いない。でも……リュウキとキリトの言葉は180度違っていた。

「……圏内PKの様な派手な事件を演出し、大勢の注目を集めれば、いずれ誰かが気づいてしまうと思ったんだろう。……この世界では稀だが、結婚の制度を悪用に気づく連中が出てくると。そう、『離婚ではなく死別すれば、アイテムがどうなるのか』にな……」
「え……?」

 リュウキの言葉に意味が解らないと言うようにヨルコ達は首をかしげた。それは無理もないことだろう。何故なら、リュウキの言うとおり、この世界で結婚を行っているのは極稀なのだから。健全なVRMMOであれば、見ず知らずのプレイヤーと仲がよくなれば面白がって……行うプレイヤーも増えるだろうが、これはデスゲームだ。
 最大級に信頼しあった2人じゃなければ、その境地には至れない。
 そして当然、ネットゲームにおいて、男女比率で圧倒的に女性の割合は低い。その中で、結婚まで行い、尚且つ離婚するのも極稀の中でも更に稀。その理由が片方の死別ともなれば尚更だろう。そう結論付くまでは、皆が指輪は殺人者の懐にドロップしたと信じて疑わなかったのだから。

 そして、この場にいる元・黄金林檎のメンバーに全てを話した。

 導き出されたその真実を、その答えにシュミットを含む3人とも驚愕の表情を浮かべる。

「じゃ……じゃあ、グリムロック……が? アイツがこの事件の犯人? グリセルダを殺したのも……?」

 シュミットは、震える声でそう聞く。その問いにキリトは首を振る。

「……直接手を汚してはいないだろう。恐らくは殺人は《レッド》に、笑う棺桶に依頼したんだろう」

 だからこそ、この場所にさっきの連中が来たのだ。それは、 疑い様が無い。何故なら間近で見たのだから。……恐怖を感じたのだから。

「そんな……っ、ならなんで? 何で、グリムロックさんは私達の計画に協力してくれたんですかっっ?」
「アンタ達は、グリムロックに今回の計画の全てを話していたんだろう? なら、それを利用して、今度こそ指輪事件の真相を闇に葬るつもりだったんだろう。……永久にな。シュミットにヨルコさんにカインズさん……3人が集まる機会を狙って纏めて消してしまえばいい」

 キリトの説明には説得力があった。……否、納得せざるおえない。この場に来たあのレッドのトップスリーの存在。そして、この場所に集まる事を知っていた人物。この場にいない人物。
 それは、グリムロックただ1人だから。

「……多分だが、グリムロックは、グリセルダさん殺人の依頼をした時から、≪奴ら≫とのパイプはあったんだろう。……反吐がでる」

 リュウキは3人から顔を背けながらそう吐き捨てた。

「そ……そんな………ッ……」

 ヨルコは力なくその場に崩れ落ちる。そんなヨルコを側にいたカインズは支えた。
その時だ。

「……見つけたよ」

 十字の丘の入口から声がしたのだ。

「……後の事は本人の口から聞いてみよう」

 キリトは誰が来たのか、確信できていたようだ。それはリュウキも同じであり、頷いていた。

 全ての真相が、今明かされる……。
 

  
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